第33回関東高等学校演劇研究大会(前橋会場)の結果報告
1、期日 平成10年1月24日(土)・25日(日) 2、会場 前橋市民文化会館大ホール 前橋市南町3丁目32番6号 0272−21−4321 (JR両毛線前橋南口から徒歩5分)
結果 最優秀賞 埼玉県 筑波大付属坂戸高校「ぼくの先生」 大塚雅史・作 優秀賞 栃木県 作新学院高校「TOKYO・JAPAN・栃木県」演劇部作 群馬県立伊勢崎工業高校「ココロとカラダに5pのずれ」 センチメンタル・アマレット・ポジティブより。青山一也翻案 新潟県立新潟西高校 「遊びの時間」やまもとけいぞう・作 創作脚本賞 栃木県 作新学院高校「TOKYO・JAPAN・栃木県」演劇部
劇 | 得点 | 辛口寸評・合評会から |
「根っこ」 |
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ウェスカーの本は良い。それを大胆に長野県に置き換えてしかもそれが自然なのがとても良い。ただ都会で出会ったインテリの男に振り回される女の子という立場は十分には、現れてはこなかった。家族達は長野の中で、根っこを持って生活しているように思われ、彼女の方が根っこを失っているように思われるのに、彼女の方が全てを悟って理解したようになるのはおかしい。 |
赤のソリスト | 1 |
照明を使い、ブラックボードを反転させるとホワイトボードになり、パソコンのオンオフを暗示するセットは良いが、ものと人間が対立してしまうというテーマだとすると、もっとSFを完成させる寮のあるセットが欲しくなり物足りない。 前半は快調だが、後半、スリルとサスペンスが高まることがない。 |
TOKYO.JAPAN. 栃木県 |
4 | 元気がいっぱいで素直で明るい。主人公の女の子が演劇部を引退し、勉強に打ち込むが、迷い、やがて立ち直ってくる。工夫も多いが、一つ一つのエピソードが甘い。冒頭で小さいときにころんだ主人公を背負うシーンが、高校生のラスト近くにふたたび現れるが、高校生なら転んで怪我はしないし、もしそれなら、10年間の彼女の成長はなかったことになる。栃木県の歌も何故歌うのかが分からない。 |
FOREVER |
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平台をむき出しに重ねただけのセット、よくない。小さな工夫でも何か空気を表す小道具のようなセットが欲しい。声が良く聞こえない。生命が半分になっていく美しさは、吸血鬼でも、人間でも変わらないはず。その吸血鬼に自分の命をささげる少女は無償の愛の姿、その美しさに絞れば可。 |
唇に聴いてみる | 1 | 屋台崩しのあるセット。ラストは壁が崩れ空き缶がアパートの部屋に満つ。ラストは送風機で赤いハンカチーフがドアの後ろから火事のように送り込まれるなど、いろいろ頑張っている。だが、間口の広い舞台を使い切っているとは言えない。唇をかみしめた。勝ちたかったね。空き缶がワイングラスに思えてくる。などよいイメージが多いが、全体のテキストレジに問題があるのか、イメージがうまくあがってこない。力みすぎて台詞が聞こえず、笑いをとれなかった。 |
ぼくの先生 | 5 | 確かなセットプラン、照明、音響、衣装、道具の出し入れが良く計算されている。ラグビーボールが正確にパスされたり、腿上げがしっかりできているだけでも、少しの価値あり。物語の中身、エピソード自体は他愛ない話が多いが、それをテクニックでカバーするやりかた。そのテクニックの一つに、全体を街の滅亡=ヒロシマが覆っているのだが、時空が混乱する。ヒロシマで通すならさりげなく現代の芝居と見せておいて、すり切れたラガーシャツなど、いつでも戦前に戻れる仕掛けを施すべきではないか。近未来でいくなら、エノラ・ゲイなどだすな。 |
ココロとカラダに5pのずれ | 3 | ものすごい、パワーの男ども。工業高校の生徒はムラムラむらむらムラムラしているなど、笑ってしまう。ただその生徒が自殺を考えるようになってくると話が合わなくなってくる。31才のOLとつきあっていて、本当に好きな彼女もいて、うち明けられないなど、彼のパワーなら、それを楽しんでしまう様な気がする。翻案だが、ならば、創作で別の芝居を作れるはず。 |
Looking for bird | 1 | のんびりとした台詞まわしだが、初めて、ホリにころがしに寄るシルエットをだしたり、青い鳥を紫の86番あたりで小さなピンで表し、鳥かごからプロセニアムへ飛んでいく等、舞台を知っている。だが丁寧ではない。通じない思いが吹き寄せられてくる公園という、設定は良い。一つ一つのエピソードが細切れで十分に描けてない。団地にとけ込めない奥さんのエピソードなどなぜだか分からない。 |
さまようパーツ | 2 | 事前に本を読んだときに気持ち悪く、また良くできていると思った。上演も他校と比べて比べものにならない。相変わらずの、ものすごいレベル。結果、得点が入らなかった。謎解きだけ、説明しすぎとも言われた。火曜サスペンスの謎解きになってしまったのかもしれない。臓器移植で自分がなくなっていく、心理・哲学的には別役風のおもしろいテーマであると思う。のだが、そこまでは踏み込み切れなかった。医療への風刺にも踏み込んでいず、結果的に「移植コーディネーターの人が見たらいやだろうな」と無神経だけに思われた。でも、ここまでやれれば十分なのにな。セットを野外でなく、待合室にした方が、もっと発展したかもしれないとは石丸さんの弁。 |
夢見る放課後 |
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3年最後の大会まで地区大会に出られなかった悔しさを語る、マイナー演劇部の話。ものすごくわかりやすい設定なのだから、がんがん行って欲しい。たんたんと進むのが、いらいらを表現できない。顧問の代理の大きな熊のぬいぐるみが、木から吊されているが、首吊りのように見えるので、ついでに、引き落としたり、蹴り飛ばしたり、「分かるぞその気持ち」と言わせて欲しい。顧問に負けるな。 |
遊びの時間 | 3 | ださい男が頑張っている。謎解き形式で、大人になりたくなくて消えてしまった女の子の消息をたどる旅が続くが、その答えが安易。タッパいっぱいのつりもの、紗をあけると、巨大なものすごくきれいな公園が現れる。この造形力はものすごい。 |