たるんの日


たるんは突然貧血で倒れました。
びっくり仰天。
昨日まではぴんぴんしていたんですよ。

病院に入ったら、いろいろ検査。
その結果を聞いてびっくりしたのは友達達でした。
もう毎日毎日病室に押しかけて大騒ぎ。
毎日15本も輸血をしているので、病人とは思えないほど、真っ赤なほほを輝かせて思い出話に笑い興じています。
でも、病気は、とっても重くて、骨髄移植を考えなければなりませんでした。
さいわいに一つ年下の弟のかるん君が同じ型。ラッキー、これであとはどうころんでも大丈夫です。
みんなは毎日練習終わると病院に駆けつけて、代わりばんこにいくのだけど仲間が20人も30人もいるから病室は5人以下になることがなく、お見舞いのメロンやリンゴをみんなであっという間に食べて、花を飾って折り紙作って、時には部で必要なものも作りました。
みんなは病室による時間をとられていたのに、大会は勝ち抜きました。入院してから2ヶ月が過ぎるとお医者さんは
「大会の一日ぐらいなら病院を出ていいよ。ただし気分が悪くなったらすぐ連絡をしなさい。」といってくれました。
喜んだたるん、なかよしのらんらんといっしょにみんなの大会を応援に行きました。そしたらなんとそこでも優勝しちゃったのです。
「あらあ」
「あれ、大丈夫なんですか。」
「今日ぐらいなら、きていいって言われたから。」
「おめでとうございまあす。」
「あんたたちも本当によかったね。おめでとう。」

不思議でした。骨髄移植しか治療法がないと思ったのに、どうやらそれねやらなくてすみそうです。でも、声は薬のせいでかわったし、まだまだ不安。
「今度は全国大会だね。」
「八月です。これますか。」
「いこうかな。」
「あれ、いいんですか、そんなこといっちゃって。」
「へへへえ」

ところが本当に、がんばれちゃったのです。徐々に徐々にですが自分の力で血液を作り出すことが出来るようになって、ほんとにほんとにその半年で、遠出が出来るようになったのです。
全国大会の会場に来て。
「えへ、きちゃった。」
「あ、たるん先輩。」
「がんばってね。」
「はい。」

なんと全国一位になっちゃったのです。もう大騒ぎ。
「よかったあ。」
「先輩もよく今日これましたね。」
「うん、調子いいの。昨日検査だったの、それで結果が良かったら」
「結果が良かったら」
「退院って言われてたの。」
「それで」
「治ったって。」
「へ?」
「先生が言ってた。信じられないけれど、治ったって。」
「えー!」
「信じてなかったな、あたしが治ること。」
「いえいえいえそんな」
「奇跡だって言われちゃった」
「じゃ、こつずいなんとかは?」
「しないよ、そんなもの。」
「うわあ」
「ただし再発するかもしれないからちゃんと検査は定期的に来て下さいって。」
「よかったですね」
「うん」
「よかったあ」
「おたがいね」

それから10年、たるんは元気、元の顔と体にもどって、お菓子屋さんで働いてます。


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