私の観劇記録2004年〜2011年

  全くの独断偏見です。ごめんなさい。ネタバレもします。 ついでに映画も ついでに


〜2012年  2011年〜2004年  2003年〜1998年 

2011

今年は40本 
 

 おもしろかったのは
   「元気うどん」
とにかくはまってしまった。笑って笑って泣いた
   「日本人のへそ」「たいこどんどん」
井上ひさしはいい
   「シングルマザーズ」「国民の映画」「みんな我が子」
「殿様と私」上物のお芝居
   「雨と猫といつくつかの嘘と」
「ペテン・ザ・ペテン」
小劇場と商業演劇と
   「当世流小栗判官」
「籠釣瓶花街酔醒」「盟三五大切」
歌舞伎も

 )2011年12月29日(木)    HDD ☆☆
   「メンフィス」 作・演出   チャッド・キンバル,モンテゴ・グローヴァー
      黒人歌手がラジオに出られなかった時代。メンフィスのDJが女性歌手を見つけ
    ラジオにのせ成功する。それは非常に危険なこと、女はおそわれる。はちゃめちゃなDJの人気はおとろえず
    黒人仲間のダンサー・歌手達とぐいぐい伸びていく。彼女と北部に行かないかと誘われた時、彼女はニューヨークへ逃げたがり
    黒人仲間を切り離すことが出来ない彼は失脚する。歌が強烈。ダンスが迫力。小気味よさにわくわくしたり、泣きそうになったり
    祈りの曲でえぐられる。ニューヨークで成功し婚約者も出来た彼女は落ちぶれたDJにコンサートに出てくれとやってくる。
     一度壊れた愛はもとにはもどらないがもどかしい。コンサートに彼は登場しみなとともに歌う。
    生で見たいなあ。でも英語か…

40)2011年12月17日(土)  鳥獣戯画 企画 waste time
   「知念さんちの夜会」 
      
詩や小説の一部をちねんさんちの三人が歌や踊り交えて朗読したりの夜会
      楽しく過ごす そのあとのおしゃべりも 

39)2011年12月11日(日)  平成中村座 ☆
   菅原伝受手習鑑より「車引き」 勘太郎
      
小屋が小さめなせいかわかりやすい 車引きも3度目ぐらい、軽い感じだった。
   「賀の祝」 彌十郎
      車引きで勝負は後回しといった意味がわかった。まずは松王・梅王の兄弟喧嘩。そして桜丸の自害。
     んーそれがいいのかなあ

  「寺子屋」 勘三郎・菊之助
      子供達元気いっぱい。わらいもとれて。
さあ、これはどうなるんだ。隣村に行った母親はどうなるんだろ、とかの
     サスペンスのあとの結末。最後まで緊張して見続けられた。けれどこれはあの身替わり美談だったのかと。

38)2011年12月8日(木)  新橋演舞場
   「銀のかんざし」 舘直志・作  藤山直美・坂東薪車
      髪結い
のおかつは若い大工に惚れてともに住んですごい焼き餅。回りが引きはがそうとしてもどうしても離れない。
    でも男を大事に思う余り髪結いの仕事も手につかず、客も離れ、金もなく、ついに3月の間だけ男は大工に戻る。
    賢明に働いた三ヶ月後、まわりは男の嫁を見つけて。大騒動。焼き餅焼きの様、客の髪の毛を引っ張り出す様
    笑えるけれどラスト元の鞘に収まった時、すごい不安を覚える。だめになるんゃないか。周りの目が温かくなっているので
    救えるんだけれど。男の芝居にどうしようもなく客にも愛される姿がないからか。

  「殿様茶店の恋日和
 藤山直美・
      茶店娘の18才と、焼き餅焼きの奥方と、女盗賊と三役をかわる直美と、ほれっぽい馬鹿殿と盗賊を早変わりする薪車
    それにしても殺陣が長い

37)2011年12月7日(水)  スズナリ 猫のホテル
   「わたしのアイドル」 千葉雅子・作・演出  千葉雅子・佐藤真弓
     越路吹雪と岩谷時子のような二人。歌手と作詞家との協同作業の年月を再現していく。でも、じみだなあ。

36)2011年12月6日(火)  船橋市民文化ホール 文学座 ☆☆
   「殿様と私」 マキノノゾミ・作  西川信廣・演出 奥村泰彦・美術  たかお鷹・加藤武・富沢亜子
     明治の華族の殿様とその家臣、かわりゆく回りにあわせられずぶつかってばかり。
    息子が考えたことは鹿鳴館で踊れれば見直されると。ダンスの先生に来たアメリカ人女性と通じない会話が連続する。
    はじめ殿様の足の悪い娘がガイドとなり手紙を読む形で進行していく。
     笑顔が出来ない殿様がひきつったまま踊ったり花瓶を割ったり日本語でしゃべれと怒ったり。モンマルトル号の事件が起こり
    異人を裁くことが出来ないことに殿様思わず討ち入りでのりだし、それをつれてきた外人と娘との恋に話が移る。
    けれど外人は不実でそのショックで舞台がしんとしたあと、ダンスの先生の告白があり、外人の不誠実な中の誠実さも娘によって
    披露され、娘のアメリカ留学の話しも前向きになり、殿様と先生はダンスを踊って幕。
     マキノノゾミらしい社会性と娯楽がよく混ざり合った本。明治の子爵の洋館の障子がすけて日本庭園が見えるセット。
    ランプに火をともすあかりがきれい。西洋嫌いの殿様の家具はみな西洋物?

35)2011年12月3日(土)  新国立劇場小ホール ☆☆
   「みんな我が子」 アーサー・ミラー・作  ・演出 美術・ 音楽・  長塚京三・麻美れい
     アメリカ。緊迫した舞台。引っ越した隣人の娘を呼んだ息子。その娘は弟の彼女。けれど弟は行方不明のまま。
    父は実業家。工場主。戦争中欠陥部品を出荷した罪で投獄されるも無罪を勝ち取り戻ってきて再び会社を立ち上げた。
    投獄されているのは娘の父。欠陥ボルトにより戦闘機が21機も落ちた。工場主は作業員が一人で判断したとして無罪になった。
    ただが投獄された男は知っていたと主張。純粋な息子は徐々に確信に近づいていく。だが、そこに弟の死の原因が明らかになり
    工場主はある行動をとる。
      長塚京三の年取って力ないが往年はやり手だった感じ、麻美れいのいらだち。会話だけで、しかも人数二人だけの会話で話が進行していく。

34)2011年10月18日(火)  新橋演舞場 十月大歌舞伎 夜の部 ☆☆
   「当世流小栗判官」 亀次郎・笑也・右近
      天馬に小栗と照手姫がのって、宙乗り、馬が良く動いて。馬から落ちそうになってと。ああこれは楽しいなと思ってしまう。
     照手姫に横恋慕する兄弟と父で照手の父を殺し照手をさらってしまう。屋敷に乗り込んだ小栗判官に荒馬をけしかけるが
     小栗は見事乗りこなし馬ごと碁盤の上に立つ。
       亀次郎二役目は漁師の浪七、照手をかくまっていたが、奪われおいかけ自分の腹を切って船を呼び戻す。
     三役目は小栗に惚れる小娘の役、早変わりで見せる。八幡宮でならず者にかまわれた所を小栗に助けられ惚れ、
     今宵は祝言とまでもいったものの、そこに下女として買われていた照手と小栗の再会。お駒は母にあきらめろといわれ
     狂いついに母に殺され小栗を呪う。小栗の顔は変容し歩くこともかなわなくなって熊野詣に。
       この道行きがのんびりだなあ。あの奇っ怪な姿となった小栗を引いている照手見たかったなあ。
     念仏踊りで湯浴みで治って一気に大団円に。

33)2011年10月13日(木)  シアター・クリエ ☆
   「ピアフ」 ・作・演出 美術・松井るみ 音楽・  大竹しのぶ
     とにかく大竹しのぶ。巻き舌ではないけれどだみ声。落とすところも。ステージで歌えなくなって抱えられて去るから始まる。路上で歌い拾われ、事件に巻き込まれ、
    売春宿で過ごし、歌い、男を渡り歩き、イブモンタンを育て、モルヒネで体を壊し、車いす。激しくそして悲惨、しかし、その人生をラスト歌で力強く結んでいく。

32)2011年10月2日(日)  スズナリ 鳥獣戯画 ☆☆☆
   「元気うどん」 知念正文・作・演出 音楽・雨宮賢明
     元気うどんチェーンは、大手の傘下に入った。売り上げの悪い店はつぶすという。
    ここ青物町店は店長の人を見て採用する暖かさでおいしくて客も元気。派遣された監督者にマニュアル通りやれと言われて
    味が落ち客足は急下降。責任をとって店長がやめる事になる。そのお別れ会が開かれて…と、わかりやすいストーリー。
     けれど元気体操から始まって、リズムが入り、従業員一人一人の実状紹介になるとふとしみ出す。
    お別れ会の昭和ヒット曲メドレーが楽しくて、洋服屋さんの歌がよくて、離婚する公務員の手品ショーすら心に響いて
    パフォーマンスが笑いと涙を引っ張り出す。

31)2011年9月25日(日)  紀伊国屋サザンシアター ☆☆
   「キネマの天地」    井上ひさし・作 栗山民也・演出 宇野誠一郎・音楽 石井強司・美術 服部基・照明 麻美れい・三田和代・木場勝巳
     松竹・築地の東京劇場の舞台。監督助手が椅子を並べるところから始まる。格の違う四つの椅子。まず表れたのは新人売り出し中の若い子。
     紹介たっぷりのあとで、中年の幹部女優、悪口をさんざん言って威張りちらしたあとで、大幹部女優が登場、さんざん悪口を言ったあとで
     年長の大幹部女優登場、膀胱炎自慢やら白内障自慢やら。何故4人が集められたか、それは一年前舞台稽古の最中に死んだ女優を
     殺した犯人を捜すために夫であった監督が仕掛けたわとわかる。
      売れない大部屋男優が刑事に扮し、4人の殺害動機を暴いていくのだが何故かそのたびに4人はチームワーク良く動機をなんでもない事に
     変えていく。この売れない男優がある時は劇評家に扮し演技論を披露していく。「うそをまことに変えていく」等々。こんな言葉が客と女優達に
     突き刺さっていくうちに、笑いと連帯感が生まれてくる。どんでん返しの連続がこの芝居に軽さをもたらし、ハムレットよ、フォルスタッフよ、の台詞を
     切ない物に変えていく。 
      木場勝巳がいいなあ。麻美れいきれいだなあ。難しいことをやさしく、辛いことを楽しく、しみるなあ。

30)2011年9月6日(火)  新橋演舞場 秀山祭九月大歌舞伎 夜の部 ☆☆
   「沓手鳥孤城落月」 福助・又五郎
      大阪城が落ちる時、淀君の気が触れ、秀頼が嘆くてな話し。
   「口上」 又五郎・歌昇
       三代目又五郎と四代目歌昇の襲名披露。吉右衛門を中心にずらりと列座、古式に則り、思い思い勝手なことを言って
      襲名を祝う。おじさん二代目又五郎に世話になった話し、実の親子が同時にする襲名披露。ここら辺が楽しかった。
   「車引」 又五郎・歌昇・吉右衛門
       又五郎は初日あけて二日目にアキレス腱をゆ割がた切ってギブスで固めての梅王丸。
      やたら後見に椅子を出して貰っての美枝が多いなと思ったのはそのため。無論六法を分で花道を去るなんてとんでもない。
      でもそれを感じさせない。桜丸の藤十郎が小さくて稚児風で不思議。
   「石川五右衛門」 染五郎・松録
       絶景かな絶景かな、で笑いと拍手が起きる。浜の真砂はつきぬともでも。密書を奪い取る幕開けから、下馬下馬の出会い。
      屋敷での秀吉と五右衛門の笑顔の再会。そして葛籠抜け。山門。と軽く楽しい話が続く。

 )2011年9月3日(土)    HDD  KAKUTA ☆☆
   「目を見て嘘をつけ」 作・演出 桑原裕子
      そばや、今日は母の三回忌、店主の友人が店主を訪ねてきている。
      恋人の相手の男を刺して職を失い故郷に帰ってきたけれど実家に帰れないで居る。店主の父親はそれを曖昧に受け取り
     弟は明らかに嫌う。店主の兄が女の姿で表れる。店主も弟もこれを嫌う。父はあまりにもなくなった母の姿とそっくりな息子に戸惑う。
      女の姿をした兄、まだ女とその相手を殺したいと思ってしまっている男と、店主の妻の元彼からの電話を、起爆剤としてぶつかり合いが
     すすむ。情けない高校の教員と丈夫すぎる女性の同僚、描けなくなった漫画家と男勝りの女子マネージャー、ぶつかりながらも
     やがて溶けていく。鏡に向かってにくんでいないにくんでいないと確認しなければならないいらだちと、鏡に向かって私は男だ男だと確認する男が
     その思いをひらいた所から、話はプラスに向かっていく。ラストは私は女だ女だと連呼して、はけていく。

29)2011年8月24日(水)  新橋演舞場 八月花形歌舞伎 第三部 ☆☆
   「宿の月」 橋之助・扇雀
      たのしくてそれでよいの踊り。三三九度の杯、女から飲み、そのかわりかいがいしく世話をし、やがて亭主を牛耳る。
     それが舞踊になるのだからうらやましい。
   「怪談乳房榎木」 勘太郎・獅童
       早がわりが目を引く。情けない小間使いの男と、どうしようもねえ悪と階段の上り下りで入れ替わる。
      滝の中では暗い中、同じ顔が二つ浮かぶ。え、これはもう訳がわからない、どっちがどっち。
      怪談とあるが、それほど、お化けではない。怨念が絵を完成させた事、滝の中からわが子を救ったことにとどまる。
      4役目、圓朝ででてきてもその格はない。乳房榎からが本当の怪談になるだろうねえと思わせてしまったのではもったいない。

28)2011年7月17(日)  本多劇場 加藤健一事務所 ☆
   「滝沢家の内乱」 吉永仁郎・作 高瀬久男・演出 倉本政典・美術  加藤健一・加藤忍 
     高畑淳子が声のみ録音で滝沢馬琴の妻をやる。かんしゃく持ちで病気持ち、ちょっとの間の出演ではなくほとんど出ずっぱり。
    高畑淳子だとわかると笑いが出る。客席は最後列のパイプ椅子、満席。本多も最後列となると結構舞台から離れている。
    馬琴の息子に嫁入りした5日後、梅の実をもいで馬琴に怒られる。あと五日待ってこそ収穫期なのだと。
    息子は医者であるが病持ち。嫁とは口も聞かぬ。友達も居ず口の利き方も知らぬ。かんしゃく持ちの姑はことあるごとに怒鳴りまくる。
    そんなところに来たのに嫁はひょこひょことお辞儀をし楽しそう。大名のほとんどが読んでいる大作家の家に来たのが嬉しい。
     子供が二人も生まれたけれど夫の病気は進みやがて他界。渡辺崋山の描いた息子の肖像画絵をみながら二人は動いていく。
    ひょこひょこお辞儀していた嫁が、姑に蒲萄の房を傷つけるなと、注意したくましく、姿物腰が変わっていく。6役ぐらいの変化だろうか
    それが楽しい。

27)2011年7月5日(火)  新橋演舞場 七月大歌舞伎 夜の部 ☆
   「吉例寿曽我」 
      きれいな奴の衣装。石段のがんどう返しの上の二人が楽しいかな。
     大磯曲輪外ではああこりゃたのしいだけだ、わかんねえ 
   「春興鏡獅子」 海老蔵
       小姓弥生から後仕手の獅子。獅子の方がいいかな。どうやら元気回復したといったところ。
   「江戸の夕映え」 大佛次郎・作 団十郎・福助・海老蔵・左団次・壱太郎 ☆
      壱太郎が女にみえる。大川端のセットと民家セット。民家や船宿の方が緻密で魅力。
      幕府が無血開城。残った旗本は上野で破れ、江戸は官軍が我が物顔に通る。
      旗本小六は許嫁をのこして函館に参加する。許嫁の父は気骨が高く、官軍になびかず、借りた民家さえ追い出されてしまう。
      さっさと旗本をやめた大吉がよったそば屋に、戦いに敗れぬけがらとなった小六が現れる。
      ぐずぐずした気持ちとただ待っていた許嫁の純粋さを夕映えが照らす。

26)2011年6月29日(水)  STEPS  船橋市民文化ホール
   「Boy be ..」    横山由和・作・演出 
     ちょっとびっくり。セットもシンプルなだけ。戦火の中を逃げ延びた人々が集まってくる。中には古びたロボット。
    みんなが忘れてしまったこのロボットを怪しげな兄妹が語り出す。ここの導入はさすがミュージカルとわくわくするのだけれど
    アトム誕生のような設定から、怪しげな軍隊の登場、街への逃亡で出会ったお屋敷。怪しげな興行師。
     でも言葉がわからないロボットが言葉や人間を理解していく姿か深くない。統一性がない。やがて戦争がはげしくなって
    ドイツとロシアの国境に?サウンドオブミュージックもどきから、漫画チックになり、わけがわからなくなる。けれど泣いてるおばさんたちは多くいて

25)2011年6月12日(日)  新橋演舞場 六月大歌舞伎 夜の部 ☆
   「吹雪峠」 宇野信夫・作 染五郎・孝太郎・愛之助
      吹雪の中、舞台が回りながら登場なんざ、大劇場に来て良かったなどと思ったけれど、地味な芝居だった。
     やくざの兄貴の恋女房を奪って逃げた男が夫婦で身延参り。八王子への帰りに巻き込まれた吹雪で逃げ込んだ山小屋で
     ばったりその兄貴と会う。口移しの薬が決めてかね。
   「夏祭浪花鑑」 吉右衛門・歌六・福助
       床屋に入ってさらっと着替えて、義兄弟になってのあたりは何をやるのかなてな雰囲気。
      舅殺しに入って、あ、これがやりたいのねとなる。しかしまあ歌舞伎ってほんとに殺しがすきだねえ。
      どろに使って本水で流して、祭りの御輿担ぎに飲み込まれて逃げていく。正義もへったくれもない。
   「かさね」
 染五郎・時蔵 ☆
      かさね、きれいだね。足の悪さの動きが面白く、怨念の力も楽しい?  

24)2011年6月12日(日)  シアター・コクーン ☆
   「盟三五大切」    鶴屋南北・作 串田和美・演出・美術 橋之助・菊之助・勘太郎・彌十郎・笹野高史
     客ラストに回り舞台がぐるぐる回りながら過去の各場がよみがえってくる。現実とは少しずつ違って、もしあの事がなかったら
    こうなっていたかもしれないというように次から次へとディズニーランドのカリブの海賊のように。
     舞台は歌舞伎本公演に対し布の書き割りで済ますなどシンプルがベース。けれど本水の雨、霧雨、ここらで豪華。
     何故にこの浪人にそんなにたかるのか、何故にだまされてしまうのか。小万も長屋に来た時は小気味がよい。
    だましの場、五人切りの場、そして、手を切り裂いていく、小万殺しの場、陰惨な迫力に拍手をする客。
    現実にこの場を見たら大変なことになるだろうに、それを拍手に変えちゃう歌舞伎って、うーん……すごいのかなやっぱり。
    

23)2011年5月27日(金)  俳優座劇場 ☆
   「シンベリン」    シェイクスピア・作 小田島雄志・訳 出口典夫・演出  戸井田稔・篠山美咲
     抑えたしゃべり、本棚だけのセット、グレイの床でシンプルなドレスと、ブレザーの出口演出。
     後半、シンベリン王の驚きあたりから笑いが生まれるようになり、シェイクスピアはまあ良くこんな大団円をつくれるなあと終わる。

  )2011年5月26日(木)    DVD  ままごと
   「星の時間」 DVDだとこのスピードとSE一緒だとやはりききとりにくい。なるほどこうやっているんだと、演出はわかる。
    

22)2011年5月25日(水)  シアター・コクーン ☆☆
   「たいこどんどん」    井上ひさし・作 蜷川幸雄・演出 伊藤ヨタロウ・音楽 小峰リリー・衣装 中越司・美術 勝柴次朗・照明 中村橋之助・古田新太・鈴木京香
     客席から定式幕全体にLED風のひかりがべたっと当たっている幕前。客席には赤提灯。定式幕が引かれると波や船や富士山やそして沢山の奥の人々。
    蜷川お得意の鏡だけれど赤提灯が向こうにも並ぶことになり、効果大。
     ものすごいテンポの古田新太のしゃべくりで「舌が回ってないぞ」みたいな勢いだけれど、黒子が鏡の前でセットをずらしたり、
    波布や土布走り回ったり、うすべり投げたり、船運んだり、そんなこんなが勢い一杯で楽しい。ぐいとひっぱられる。
     色っぽいというか、もうもろというかお色気というか、ぐいぐい、江戸品川遊びの夜から船での逃走、嵐、東回り船、釜石で女郎上げて、
    売って売られて、鉱山で働かされて、逃げて、富本語って、出会って、かさかいて、足失って、戻って来たら、鰯屋はなくなって、江戸もなくなって
    東京になっていて、でもそこが出発だと歌い切っちゃう。そしてそこに津波が押し寄せる。でもここが出発だと舞台が言ってくる。
    休憩含んで3時間半、見応え充分だった。

21)2011年5月24日(火)  銅鑼  船橋市民文化ホール ☆
   「はい、奥田製作所」    小関直人・作 山田昭一・演出 内山勉・美術  鈴木瑞穂
     従業員を何人か抱えている小鉄工所の世代交代劇。初めのうち沢山の登場人物と速いテンポの業界用語の乱発でついていけない。
    見事な職人の社長が倒れ、経営危機にあるこの場を救おうと大手の会社を退職してきたばかりの息子が張り切る。
    年老いた者、使用期間の者をやめさせ安い部品の納入先をさがし、まるで巨悪のような振る舞いだけれど、なりきれない。
    自分も徹夜連続で仕事を始めた頃まわりも理解していく。やはり焦点がやや広めにとってあるので一つ一つのドラマが薄い感じがする。

20)2011年5月22日(日)  新橋演舞場 五月大歌舞伎 夜の部 ☆☆
   「籠釣瓶花街酔醒」 河竹新七・作 吉右衛門・福助 通し狂言
     発端から大詰めまでの通し狂言休憩込みで4時間がさほど長く感じなかった。
    発端の父親の旧妻殺し。浪人に助けられ剣を習いやさぐれと対した佐野の時代。吉原に来て花魁に一目惚れしたこと。
    なじみとなって心憎からず見受けもまとまった時の愛想づかし。さりげなく初回を返しての大詰め。
     どの場も飽きることなく。佐野でのチンピラとのやりとりも面白かったし、一目惚れ宿には帰れなくなったも
    しんと静まりかえる中での愛想づかしも、杯を受けさせるところも、八つ橋のたおれるところも、堪能した。
   「あやめ浴衣」 あやめの中での舞、重い通し狂言の後ふと楽になってお帰りとのこころづかいと見た

19)2011年5月22日(日)  新橋演舞場 五月大歌舞伎 昼の部
   「仇討天下茶屋聚」 幸四郎  通し狂言
     悪役が主役となる。ただわかりにくいのは戦国時代それも関ヶ原前後、どちらが正しくどちらが謀反なのかがわかりにくいこと。
    とにかく追われることとなったいかにも大悪漢の剣豪が仇として狙われる。でも何故追われることになるのか。
    謀反を暴いて相手方家老を殺した家老を殺した大悪漢が追われるのだけれど、うーん、とにかく仇討ちありきで仇討ちが美談に
    なっている所からのスタート。
     幸四郎はもう一つの悪役、のんべで間抜けで寝返る奴もやっている。のんべのくだりなど最近のお手の物。

18)2011年5月15日(日)  紀伊国屋サザンシアター 青年座 ☆
   「をんな善哉」 鈴木聡・作 宮田慶子・演出 伊藤雅子・美術 中川隆一・照明
     まるで青年座の公演ではなく高畑淳子の座長芝居の雰囲気。ロビーには沢山の高畑宛の花。お帰りの時にはチョーヤの梅っ酒まで貰えた。
     セットはまるで喇叭屋。仏壇と会話する高畑淳子の雑巾がけから客席から笑いが起きる。生理が遅れてるの、でまた笑う。
   52才ながら若い子に惚れ、焼けぼっくいに火がつき、それでも身を堅持し、この下町をしっかりととらえる。
   見慣れた筋運びで安心と言ったところか。

17)2011年5月8日(日)  楽園 鳥獣戯画 
   「春の夜の夢芝居」 知念正文・作・演出 
     まあご愛敬と言ったところかな

16)2011年5月8日(日)  本多劇場 鳥獣戯画 ☆
   「国盗り嫁娶り案山子合戦」 知念正文・作・演出 
     武田信玄と上杉謙信の六度目の川中島の合戦をモチーフにシェークスピアを一杯入れて歌って踊りまくる。
    広い本多で踊りが楽しい。フォルスタッフやらロミオやらパックやらおなじみのキャラもいっぱい。
    そして何より4組の結婚で両国が仲良くなっちゃうシェイクスピアの大団円。還暦であれだけ歌って踊って書いて。

  )2011年4月20日(日)    HDD  
   「現代能楽集X『「春独丸」「俊寛さん」「愛の鼓動」』能「弱法師(よろぼし)」「俊寛」「綾の鼓」より」
    川村毅・作 倉持裕・演出 堀尾幸男・美術 岡本健一/久世星佳/ベンガル

15)2011年4月3日(日)  新橋演舞場 四月大歌舞伎 ☆
   「絵本大功記 尼ヶ崎閑居の場」団十郎 「男女道成寺」松録・菊之助 「権三と助十」   三津五郎・松録・左団次・時蔵 
     なぜ竹槍で母をつくことになっちゃったのかなあ。
     松録の男白拍子はいかにも松録 でも まあ常磐津と長唄の掛け合いも楽しいかな
     岡本綺堂の権三と助十・装置は伊藤熹朔とある。二つの長屋、間に駕篭。助十の女房とのやりとりも面白い。
     彦さん、と入って、柝がちょーんと入って、きゃくせきがぱあっと明るくなる。チョンパーが初めて気持ちよかった。

14)2011年3月25日(金)  シアター・コクーン ☆☆
   「日本人のへそ」    井上ひさし・作 栗山民也・演出 小曽根真・音楽 謝珠栄・振付 妹尾河童・美術  辻萬長・笹本玲奈・石丸幹二
     キャストは14人、緞帳あくと吃音から一音一音かたるカタカナの国のアイウエ王の物語が始まる。
     これがアメリカの大学から帰ってきた教授の吃音矯正講座だ。堂々たる音量で吃音が人間らしい悩みである事、
     歌ではどもらないこと、騒音の中ではどもらないことなどが解説され、ヘレン天津の物語の上演のアナウンスがなされる。
      それにしても音楽のブロードウェイミュージカルのような使い方。それに見合った振付。田舎娘が出てきた時はガーシュインのアメリカ人で踊るし
     やくざはウエストサイドストーリーを踊る。近親相姦、ストリップなど、恥ずかしくなるような話題なのに、客席は女性が多い。若い女性もそれなりの女性も
     「かははかはは」と笑ってござる。一幕がヘレン天津の出世物語、その黒い日の丸の元、つぎつぎと金で買われつつ上りつめていくその最後に
     殺人事件が起こる。ここで幕。傾斜舞台を囲む大きな出入り口が何カ所も空いていた舞台は二幕には豪邸の一室に変わる。大きく空いていた穴は
     全てドアが入り、腰板が囲み、絨毯の上に応接セットがある。そこから始まる大騒動、誰が誰やら犯人やら。
      3時間楽しめる。

13)2011年3月21日(月)  PARCO劇場 パルコプロデュース ☆☆
   「国民の映画」    三谷幸喜・作・演出 堀尾幸男・美術 服部基・照明
     二週間ぶりの劇場。渋谷は電気が消えて、別世界。地震の後ということもあって当日券が楽にとれた。
    前から5列目の真ん中。開演に先立ち、三谷幸喜が緞帳前に立ち、「ごらんのようにピンスポットもなく、節電…」
    と笑いをとり、「地震の翌日から考え迷ったが、今、この灯りを消してはいけないと思い上演を続けてきた。」と挨拶。
      幕が上がると小日向文世(ゲッペルス)が執事に映写機を回させチャップリンを楽しんでいる。
    ピアニストがあらゆる音で全てをサポートする。ゲッペルスの評伝劇。
    ゲッペルスやゲーリング(白井晃)やヒムラー(段田康則)がキャストの肉体となってそこにある。ゲッペルスの女好き、
    映画好き、本当の眼力の欠如、など小日向のそのままを使いながらヒムラーの行動から、やがて、笑えない、苦い現実に
    入っていく。

  )2011年3月20日(日)  NODA.MAP  HDD  
   「表に出ろぃ」    野田秀樹・作・演出 堀尾幸男・美術 中村勘三郎・黒木華・野田秀樹
     WOWOWのインタビューが面白い。観に行ったらやっぱり笑っちゃうだろうな。ハイテンション極めちゃう、というのも、なるほどという感じ。
    誰が留守番するかから始まり、妻はジャニーズのコンサートに、娘はマックの景品に、夫はディズニーランドに行きたがる。
    互いを認めず、認め、ついには鎖で互いを閉じ込めて。娘の電話から大転換する。書道の家元の言葉を信ずる娘。ザ・キャラクターといきなり
    結びつく。言葉の勢いの元、父と娘が水を巡って張り合い、やがて悲劇が訪れる。 

12)2011年3月6日(日)  赤坂レッドシアター  THE GLOBE TOKYO PRODUCE
   「TRAVELING」    野坂実・作・演出 佐藤アツヒロ
     ホテルの一室501号室、壁の絵が切り替わると401号室、窓から落ちると過去へ、ダストシュートから落ちると未来へ。
    このアイテムを駆使して夫の浮気で心が壊れた妻と、介護疲れの夫の物語が始まる。台詞にあまり力がない役者たち。
    タイムパラドックスぎりぎりですり抜けるスリルで笑いをとり、浮気の代償と素直になれない自分をエネルギーにすすめるのだが
    最後は適当に未来へ飛ばして解決したことにしてしまったなあ。

11)2011年3月4日(金)  新橋演舞場 三月大歌舞伎
   「源氏物語 浮舟」北条秀司 作・演出 吉右衛門・染五郎・菊之助
 
  「水天宮利生深川 筆屋幸兵衞」河竹黙阿弥・作 幸四郎
   「吉原雀」
梅玉・福助
     浮舟、初めは男でこのテンポで平安の着物着て、あのしゃべりは無理とか思ったけれど、吉右衛門のスケベ本音男で
    見やすくなった。舞台セットフル転換のためさすがの演舞場でも1分では転換できない恨みがある。寝所に忍び込み落としていく
    ところはさすがかなと。 幸兵衞は狂っての引っ込みを楽しめばいいのかな。吉原雀、浅葱色がきれいだった。

10)2011年2月27日(日)  紀伊國屋ホール 加藤健一事務所
   「コラボレーション」    ロナルド・ハーウッド・作 鵜山仁・演出 美術・倉本政典 加藤健一・福井貴一
     リヒャルト・シュトラウスの山荘。ツヴァィクにオペラの台本を引き受けてもらえるかと恋い焦がれている所から始まる。
    あうとすぐ意気投合し新作に燃える二人。ただ時代はヒットラーが伸び始めた時、そしてザルツヴルクにすむツヴアイクはユダヤ人。
    恐妻家のシュトラウスが笑いを分担し、秘書に助けられるツヴアイクがロマンスを担当して、時代に抗して生きようとする二人を
    描いていくのだが、後半になってブラジルで自殺したり、委員会で証言したり、事実に乗りすぎていく過程が窮屈に思える。
      井上ひさしのような何かが欲しくなる。最初の場面の奥行き、転換の鮮やかさはおーってなものだったけれど、
    ブラジルのシーンでのセットは一体どうしたものか、黒布?それをさらにエンディングまで使うのは、うー。 

9)2011年2月21日(月)  東京芸術劇場小ホール1 二兎舎 ☆☆☆
   「シングルマザーズ」 永井愛・作・演出 大田創・美術 中川隆一・照明  根岸季衣・沢口靖子・吉田栄作
     シングルマザーズの支援団体の事務所。新顔が簿記を習おうと来ている。安普請のアパートの二階。
    下の部屋にいる事務局長を呼び出すには床を足でたたいてモールス信号を送る。ヤンママの新顔に簿記教えようとすると
    相談の電話がかかってくる。妻を捜す男からも。男はやがて現れ、事務局長はその男と話している間にパニックを起こす。
     別の時、養育費が途絶えていると相談に来た女と話していると事務局長ももらっていないと分かってくる。
    国会に請願書を出し署名を集めロビー活動をしようとする彼女の離婚の原因はなんなのか。
     男が現れて説得する彼女が、彼女が受けていたDVが重なってくる。時を経て、男は修正プログラムを受け、ボランティアに参加し
    心の交流が始まっている。けれど奥さんが別の男と結婚した時彼は再び…
     飽きることなく笑いを誘いながら快適なテンポでシングルマザーを囲む状況を開いて見せながら人の交流を感じさせる。
    力強く生きていくことも。

8)2011年2月20日(日)  新橋演舞場 ☆☆
   「ペテン・ザ・ペテン」 鈴木聡・作 ラサール石井・演出 堀尾幸男・美術 中川隆一・照明  藤山直美・渡辺えり・柄本明・ベンガル・ラサール石井・小池栄子
     終戦の復興と復員兵があふれる日本の温泉地に二人組のペテン師が落ちてきた。折しも温泉を発掘中で新館も建つらしく土建屋が出入りしている。
     旅館の女将は金を節約し掘削に金を回すのだがその金は掘削業者に流れ込む。
       芸者の踊りとレビューとで景気づけてしゃきしゃきと話が展開する。舞台も小気味よく変わって、笑わせて、あ、商業演劇も良いなあと思わせる。
     戦争の傷跡がペテンの根底にあるとしてビターなエッセンスを盛り込んで、いつものようにぼやーっとだらけていない。
     勘三郎のお休みによってかえってしまったのかもしれない。

7)2011年2月16日(水)  スズナリ
   「ダイダラザウルス」  深津篤史・作演出
     大きな階段が正面に。どうやらこれが電車の中のように、銀河鉄道のように、車の中のように
    死に近づいたものがみるジェットコースターとなる。猫とか女とか色気が入りそうで、夢の中のように
    繋がらない会話が、時に母の思い出だったり、彼女の思い出だったりと、繋がっていく。
    死に近づいたものが見る夢パターンでそう珍しくなく、また、そうどきどきすることなく終わった。 

6)2011年2月15日(火)  船橋市民文化ホール 前進座
   「三人吉三巴白波」  河竹黙阿弥・作
     船橋市民文化ホールの斜めの仮花道を揚げ幕の音とともに使う。ところがそこが白い壁で引っかかる。
    盆を使えない劇場で転換のたびにトンカチの音が響き渡って大変そう。大川端の三人吉三の出会いから、
    火の見櫓まで3時間で見せる。わかりやすいのだけれど、本当は8時間とか。ラストにせっかく妹弟の首を落としてまで
    義兄弟を救おうとしたのに太鼓ならして捕まっていく過程がジャンプした感じになるのはカットのせいか?
      演舞場の歌舞伎を見慣れて、花道といい、大川端の奥行きのなさといい、捕り手の少なさ、地味な感じが少しわびしい。

5)2011年2月12日(土)  東京芸術劇場中ホール  NODA・MAP
   「南へ」  野田秀樹・作演出 堀尾幸男・美術 衣装・ひびのこずえ  妻夫木聡・蒼井優・渡辺いっけい 
     左右に配置されたパイプ椅子に役者が座り必要に応じてコロスとなり役者となる。コロスは時に素早く舞台を横切り
    時に斜めに時間を止めて動く。メインに連れ込まれたのは富士山の隣の無事山の火口に飛び込もうとした嘘つき女。
    やってきたのは新任の火山学の青年。噴火の予知を巡って天皇の行幸の是非を問うようになる。是非を問うている間に
    300年前の噴火の直前に舞台は飛ぶ。その時にも天使が下ってくるが、江戸のこの世では帝の事など庶民は知らない。
     火山を使いながら天皇を信ずる事を問うといった風にとらえたらいいのか知らん
    

4)2011年2月9日(水)  スズナリ
   「国民傘」  岩松了・作演出
     斜めに切った壁、スズナリに奥行きがある。床や壁のマチエール。正面奥窓外の奥行き。人とまごうミイラ。
    舞台見学。壁の後ろにはモニター。
      傘立てを移動して罪に問われる母娘と、さまよい続けるとジャングルの中の兵士達と、映画を撮ろうとする社長達と
    繋がらないが繋がる会話が連続していく。母娘と監督達は近づいていくのだけれど

3)2011年2月6日(日)  アトリエ春風舎 青☆組  ☆☆
   「雨と猫といつくつかの嘘と」  吉田小夏・作演出
     ちゃぶ台で一人でカップ麺をすすりながら新聞を見ていると、傘をたたんだ見知らぬ女がドアをノックする。
    「ふうちゃん、ひさしぶり」母親だというのだ。「母はずっと前になくなりましたから」と追い出すと、
    両脇のボックスに待機していた俳優二人が、娘とその結婚相手となって一人暮らしの父に「夢見たんじゃないの」と
    話を続ける。結婚の挨拶に来たのだが父は母と別れて一人暮らし。娘も適当に去りたいらしい。父の還暦の誕生日なのに
    娘はおかきしか買ってきていない。婿候補はそれはないよと、雨の中、駅前にケーキと何かお祝いになる赤いものを
    買いに行く。いつしかそれは男の幼少時代になる。母が誕生日のプレゼントだとくれたのが娘のくれたつつみ。
     滅多に帰ってこない父がビールを飲んで子供に楽しげに語りかける。
    男の人生の60年の間のこまかないくつかのエピソードが男の誕生日と雨と猫を中心に現れては消える。
    ラストに猫のじゃれが、きゃくの思いと違った方向で明らかにされたり、ちょこちょこと笑いながら、しんと感じる。

2)2011年1月30日(日)  シアターX   キンダー・スペース
   「新・牡丹灯籠」  三遊亭圓朝・原作 原田一樹・台本演出 松野潤・美術
     牡丹灯籠全体に初めて触れた。元々は中国の話から明治初代圓朝が15日間話し続けたという長大な話。
    その全貌から3組の男女を拾い上げようというのが今回のねらい。初っぱなから過去と夢と三組の物語が同時進行し
    時々、三人の圓朝が語る。からーんころーんとやってくる下りはさすがに話しもこなれていて、あとは謎解きに挑んだような形で
    同時進行する。栗橋に行ってからが長いかな。

1)2011年1月23日(日)  新橋演舞場 初春花形歌舞伎 ☆
   「寿式三番叟」「実盛物語」「浮世柄比翼稲妻」浅草鳥越山三・吉原中町  団十郎・三津五郎・福助
     鶴屋南北は面白いのかも。色男にみつぐ下女と、吉原きっての花魁。雨漏り激しい貧乏所帯に花魁道中。
    花魁から太鼓持ちが狭い長屋に並んでしまうのはやはり面白い。どうしようもない盗人の造形、気がつかずに仕込んだ
    毒酒を飲んでしまう過程。命と彫った入れ墨を見て情けをかけるなど。

2010年
今年は35本 忙しかったなあ
 

 おもしろかったのは


 「おそるべき親たち」「さらば八月のうた」「三屋清左衛門残日録 夕映えの人」
 「ガラスの仮面 二人のヘレン」「夢の裂け目」 「シャンハイ・ムーン」


35)2010年12月9日(木)  本多劇場  大人計画 ☆
   「母を逃がす」    松男スズキ・作演出 島次郎・美術
     満席・通路は補助席で一杯。そして良く笑う客。一挙手一投足に笑い転げている。
    東京を遠く離れた農場。イントロに訳のわからない原人登場。被害は鶏や豚。翌朝大騒ぎの頭目や警備員や飼育係。
    わかってくることは頭目は父が病に倒れた上に兄に刺され瀕死の状態であること。兄は服役中で、自分が兄嫁ごと
    頭目を引き継いでいること。権威をふるいながらも自分の力のなさを感じていること。
     隣の農場から男が二人迷い込んでくる。知恵の足らない男と、その面倒を見ている男。二人に友情を感じ頭目は気持ちを吐露していく。
    頭目の母は、瀕死の夫を抱え、農場を盛り上げようとしている。父の死とともに母を逃がす計画を考えた訳だ。
     一つの世界が丸くなっていてああ、こりゃそれを楽しんでりゃいいんだな、こんな人間模様描くの面白いぜと。

34)2010年12月7日(火)  船橋市民文化ホール  俳優座 ☆☆
   「三屋清左衛門残日録 夕映えの人」    藤沢周平・原作 八木柊一郎・脚本 安川修一・演出 広瀬誠一郎・美術
     シンプルな黒と銀の塀、しかも斜めに切ってあり、高さに傾斜がある。そこに雷や木漏れ日をあて、二つの引き枠を前後させることによって
   多場面に対応する。テンポが良い展開にすうっと入り込めた。事件は次から次へと起き、あれよあれよと思う。
   長編を2時間枠にはめるとこうなるかとと思うけれど、やくざな庖丁人、飲み屋に集う職人達、軽妙な奉行などキャラを楽しめた。
    飲み屋のおかみはもっと若くなければなと思ったけれど、えっ?16才も先輩なんだと、その色っぽさにびっくり。

33)2010年12月4日(日)  紀伊國屋サザンシアター  文学座
   「くにこ」    中島淳彦・作 鵜山仁・演出 石井強司・美術
     でだしからとんとんとんと話が進む向田邦子の伝記もの。まるで井上ひさしみたいなと思ったら
    何か失速する。浮気によって傷ついた、自分もその一人だった、だからものがかけるようになったといった
    ただの説明になってしまいそう。どんでん返しや仕掛けがある井上芝居とは違ったものだった

32)2010年11月7日(日)  スズナリ  かもねぎショット
   「必ず訪れる日 石けん工場」    高見亮子・作 永井寛孝・演出 
     セットを見て、あ、がっかり。始まって、あ、……

31)2010年10月24日(日)  東京芸術劇場小ホール2 tpt  ☆☆
   「おそるべき親たち」  ジャン・コクトー・作・ 熊林弘高・演出 島次郎・美術  麻美れい・佐藤オリエ・中島朋子
     小ホールに赤い円形ベッド。その上にクッションが積み重なっている。ベッドの上には散らばったトランプ。
    開演前に麻美れいがため息をつきながら登場。トランプをいじってふて寝。すると場内係が「携帯電話をお切り下さい。」とくる。
    麻美れいは目の前で寝ている。佐藤オリエが黒い服を着て背筋まっすぐにあらわれ、亭主が心配げに現れる。
    インシュリンの注射をした時に、手元に角砂糖を置いていなかったミス。ミシェルが一晩帰ってきていない。電話もなく。
    何かあったんだと騒ぐ母に、母の妹が女ができたと断言する。姉は妹の恋人と結婚したのに今三人は同じ家にいるという情報も告げられてくる。
      息子が帰ってくる。母と息子は抱き合いキスしあい、そして息子は言う「恋人にあってくれ。」とたんに母は嫉妬に狂い出す。
    父親に相談すると父はパニックを起こす。この三ヶ月冷たくされている愛人が息子の恋人だったから。
    叔母は策略を巡らしみんなで恋人に翌日会いに行くことにする。
      機関銃のように言葉をぶつけ合う姉妹、黒とグレイのチェックに光る床、床はゆっくりと回って不安な心理をあぶり出す。
     役者は客席フロアーまで下りてきて、ついには隣の席に座って待機する。珍しくないけれどこの手のせりふ劇では珍しい。
    恋人の部屋は白が基調。今の若い恋人を愛するけれど自分を救ってくれた年取った恋人を愛していないとは言えない。
    散らかしっぱなしの親子に対して清潔好きの彼女は叔母の気に入る。
     仕掛けられた嘘を解くために母の部屋に戻った時、そして解決がついた時、母は壊れてしまう。
    母が壊れた時に息子が壊れる。恐るべき親ではなくて、ありうる組み合わせと言った話。1938年一次大戦と二次大戦の間の作品。

30)2010年10月20日(水)  zepp Tokyo
   「CUT」  鈴井貴之・作・・演出 宇梶剛士 木下智恵 占部房子
     モーターがついた舞台、チェーンで巻き上げられていく。最後には人までも乗っけて。
    はらはら。10年前に作った当たらなかった良心的映画をリメイクしようとする男の話。
    現場はスポンサーがつかず、女優も落ち目で内面不安定。
     バタバタの導入から「良い作品をつくるには売れなければ」、「作品にかけるあつい思い」という
    落ち着いたテーマに収束する。
     主人公の死んだ妹という設定で、使われている、といった思い。個性派というより実力派、の方が
    ほめ言葉だと思うのだけれど、芝居のしどころがないなあ。

29)2010年10月11日(日)  日生劇場
   「カエサル」  塩野七生・原作 齋藤雅文・脚色  栗山民也・演出  松井るみ・美術   松本幸四郎
     前日の情熱大陸が栗山民也の特集で、カエサルの美術についても語られていた。
    そっくりな舞台だったらいやだなと思ったが動く神殿はそれなりに楽しめた。スケベ親父のカエサルもそれでよいと。
    シーザーにやりて政治家の面もあったかと、幸四郎もバタ臭い役は似合うなと前半期待しつつ見る。
     突然あっけにとられるクレオパトラの登場。えっ?なにこれ。こうなると寛容が大事との主張もますます嘘っぽく
    んーっ……と、終わった

28)2010年10月3日(日)  新橋演舞場 八月花形歌舞伎 ☆
   「近江源氏先陣館 盛綱陣屋」「神楽諷雲井曲毬 どんつく」「艶容女舞衣 酒屋」    仁左衛門・団十郎・福助
     江戸幕府の元で大阪夏の陣の芝居を打つ。幕府の許可が出る訳がないから北条時政を家康の代理として出す。
    兄弟で豊臣方と家康側に別れて戦っていたが今回は家康の勝利。家康の部下となった兄の一子が、弟の一子を捕まえてくる。
    家康はそれを餌に父親をおびき出そうという魂胆。息子のために名誉を失ってはならぬと母に孫の切腹を頼む兄。
     いやがる子供だが、父親の首が届けられた時、あっという間に切腹する。その魂胆を察して弟は、という話なのだけれど。
    二人の子役がりりしくいじらしく、それでゆるしてしまえる。
     酒屋もにわかに理解しがたい話。酒屋の嫁は夫が家に寄りつかず女郎の子まで産ませているので、父親に連れ帰られている。
    ところがその父親が娘を連れてくる。離縁されるなら連れ帰るが自ら引き取るなどと恥ずかしいことをした。娘は娘で一度嫁いだからには
    舅姑と共にいたいと。実は夫はだまされて人を殺し追われている。一緒に居る女郎も、とかいていくと、まあ、ほんとに、うーん。
     ただぼそぼそとつとつと父舅姑が語っていくので見ていられる。もっとも娘はそこまで泣き叫んじゃだめだろ。

27)2010年9月26日(土)  スズナリ  鳥獣戯画
   「ダンシング・オールドでぃ・クラブ3」    知念正文・作・演出・振り付け 雨宮賢明・作曲 
     30人のキャスト・本多一夫まで出演、台詞を忘れて回りが必死にフォロー、でもマチネーではとちらなかったとか。
    そのせいもあってか満席、追加公演まで開き、五月には久しぶりに歌舞伎ミュージカルを本多劇場でやるそう。
    予告編楽しかった。ありこにもっと若い役やらせたいな。

26)2010年9月20日(月)  パルコ劇場  パルコ・プレゼンツ ☆
   「ハーパー・リーガン」  サイモン・スティーヴンス・作 長塚圭史・演出 松井るみ・美術 小林聡美
     壁、そこに寄せられる女。上司が現れ、病気の父に会いに行くために休暇をという女の要求を徹底的に突っぱねる。
    娘や夫の話を引き合いに出しながら。娘が17で、夫が仕事にトラブルあることがわかる。
    女は、途中橋のところで景色を眺めている少年に出会う。あやしく近寄って行きさえもする。
     家に帰ると娘はカレッジの試験の勉強を父親としている。その完璧さはいらだちを呼ぶ。夫は2年前児童ポルノをとっていたという疑いを
    かけられ司法取引で有罪を認める。そのために一家はここに引っ越してきた。女の母は有罪だと決めつけ、女が好きな父親まで連れてきて
    わかれろと言っていた。母は父と離婚し、その父が今死にかかっている。
     無断欠勤して駆けつけた時、父はすでに死んでいた。昼間から酒場に行った女はからんできた男に傷を負わせて逃げ去る。
    さらにネットで男と出会いホテルに泊まる。そして母に会う。そこで聞いたのは母ではなくて父が疑っていたとのこと。母が自分に思いを寄せていて
    自分がそれを突っぱねていたとわかること。
     女は家出していた家に戻る。自分を突っぱねる娘も違って見える。夫も全てを含んで見つめるようになる。
    なんで壁の一部しかつかないんだとぐるぐる回るセットにいらだっていた。が、セットがつり上げられ中に箱庭のような庭で
    女が草に水をやり家族の朝食をつくり野外のテーブルで3人で食事をする景色になると、ああ、この為にこのセットはあったんだとわかる。

   )2010年9月13日(月)  DVD 歌舞伎座
     「義経千本桜」四のキリから  市川猿之助・坂東玉三郎・市川門之助
     1993の録画。猿之助が元気。はじめ解説なしで見て、しぐさに注目、字幕つけて話がわかり
     解説つけたらさらに楽しめる。DVDもいいなあと。

25)2010年9月7日(火)  船橋市民文化ホール  青年座 ☆
   「社長と妻と九ちゃんと」  鈴木聡・作 宮田慶子・演出 ・美術 中川隆一・照明 山野史人
     新派でも納得できる舞台。昭和を惜しむ。親子の世代の断絶と移り変わり。気っぷの良い元ホステスの奥さん。
    ダメ社員でもそれが大事ではないかという主張。九ちゃんと九条が絡まっちゃうと、それは鈴木の方なのか
    それとも青年座の方なのかと、引っかかってしまう。

24)2010年8月21日(土)  彩の国さいたま芸術舞場 ☆☆
   「ガラスの仮面 二人のヘレン」  美内すずえ・原作 青木豪・脚色 蜷川幸雄・演出 中越司・美術  夏木マリ・大和田美歩
     なつかしいガラカメ、漫画通りの台詞、人物の掘り下げでがっかりすることもあるが、
    「15分前です。」のアナウンスから始まり、バックステージに申し込んだ一般客がどやどやとステージの中を歩き回り、
    キャストがてんでに体を温め始め、ついにオープニングのダンスとなる展開や、臭いところをそのまま歌に昇華させてしまうので
    充分に楽しめる。
     テンペストのダンス、一角獣のラップ、引き枠に乗ってスタッフによってさいたま芸術劇場の一番奥から走ってくるセット、
    くささぎりぎりの夏木マリ、あきない。そして演劇に対するメッセージ、が一つの味付け、メッセージとして届いてくる。

23)2010年8月15日(日)  新橋演舞場 八月花形歌舞伎 ☆
   「東海道四谷怪談」三角屋敷を除く通し狂言  勘太郎・海老蔵・獅童
     身をやつして店番をしているお袖、直弼が迫っても知らん顔。
     伊右衛門は使い込みの不正を見抜いた舅を取り直そうとするが失敗。
     ところが売春宿で直弼に買われあわやの所に亭主の世茂七と出会い直弼は言い面の皮。
     その夜二人はそれぞれ二人を殺しそれぞれお岩とお袖の姉妹を仇討ちをしてやると手に入れる。これが一部。
      二部は、お岩に赤子が生まれたものの隣家の娘に惚れられて鞍替えをする伊右衛門。
     しかも隣家の伊藤家は死には至らないが面体がかわる毒薬をお岩に与え嫁入りを成功させる。
     こんな無茶苦茶な人間たちっているのか、居るよ、というのが鶴屋南北なのだろうか。
      勘太郎のお岩はやせていて嫌みがない。鏡を見ておののき髪をすいて抜けていく。血だらけの部屋に嫁御が到着し
     狂った伊右衛門は新婦も新婦の祖父の首もはねてしまう。
      三部は隠亡堀、逃げ隠れている伊右衛門、直弼、世茂七と4つどもえになるはずだがここいらは少しはしょり気味で意味がわからなくなっている。
     三角屋敷は舞台番が出て説明だけ。大詰め仇討ちで、雪の中チョンパーで締め。

22)2010年8月15日(日)  紀伊國屋サザンシアター  MOP ☆☆☆
   「さらば八月のうた」  マキノノゾミ作・演出 キムラ緑子
     2010の電光掲示板、これが物語の構成を見るのに重要な要素。ON AIRの掲示。ラジオのディスクジョッキー。
    神崎カオルがリスナーの手紙を紹介し、柴田君が突っ込む。86歳のお世話をしている介護士からのリクエスト、「いつかわかれ……」
    の歌詞の歌がわからないか、曲は流せないか。柴田君は知らぬと言いカオルは有名な曲だと言って歌い始める。
     この歌の出所を軸に1932年、1943年、そして2010年と時間軸は随所に飛び始める。場所は横浜に係留されている寒川丸のデッキの上。
    戦前は客船として、戦中は病院船として活躍した船、今は観光地。
     はじめはただエピソード、コントがばらばらに連続した話でうんとごにいくのかなと思ってしまうが、1932年シアトルから帰る航海上、
    振られて自殺しかかった船員と作曲家の男に利用され捨てられたとわかり死のうとする歌手の女がであうあたりから時間の流れが一貫してくる。
    やがて二人は漫才師となり、戦地を回り、病院船でみんなと出会い……。それとは別に2010年のドラマ、その1960年のドラマも進行していく。
     キムラ緑子の太い声、関西弁のお笑い、充分に楽しんだ。


    )2010年8月7日(土)  HDD こまつ座 ☆☆
     「組曲虐殺」 井上ひさし・作 栗山民也・演出 小曽根真・音楽  伊藤雅子・美術 服部基・照明
                   山本龍二・山崎一・高畑敦子・井上芳雄
     録画した物を見ているので、前半は重く弾まない感じがした。後半、「全身で書け」そうすると「かたかたと映写機が回り始める」
     と、歌い始めると、心が騒ぎ出した。
      6人の登場人物しかでない3時間、しかも一人はひとつの人間しか演じない。だからその人の心の変化がよくわかる。
     29歳で拷問に耐えてこの世を去った若き小林多喜二。小樽のパン屋さんに生まれたと言うがこのパン屋の下りは後半効いてこない。
     代用パンという安いパンも買えない人々が居ると言うことに気がついたというのだが、それだけでは、29年の生涯の全エネルギーを
     たたき出す訳にはいかないだろう。
      特高刑事との出会い、特高刑事の前もって調べ上げた情報によって、名もない男は自分が小林多喜二だと認めていく。
     一度目の逮捕の後から、姉や、恋人や、多喜二を支えたふじこと広がっていく。
      刑事の一人が小説家希望で見張りをしていた多喜二に匿名で自作を渡すあたりから笑いがこぼれてくる。
     かたかたと映写機が回り出すとそれぞれの一番大切な記憶が語られる、それがひとりひとりの人間をさらに愛せるようになる。
     けれど特高と赤の関係は崩れず、虐殺されて多喜二は去る。

21)2010年7月26日(月)  すみだパークスタジオ 桟敷童子 
   「蟹」  サジキドウジ・作 東憲司・演出 塵芥・美術  
     喫茶店の裏、駐車場の下を劇場にした。倉庫の時と比べるとタッパが低く、奥行きも浅くなった。
    木組みで中央に水、LED独特の光が照らす。海獣の装置とよく似ている。どこまで壊れるのかと期待する。
    オープニングからいきなり舞台一面本水の滝。たどり着いたところは現在海に没しようとしている廃坑の入り口。
    ここにはくいつめた人間達が住み着いている。港に戻ってきた二人の復員兵、元はこの炭鉱で育った孤児。
     終戦時アメリカ軍が物資をかくまうために先人達はもう追い払われ残っていたのはきおくの定かでない婆。
    強引な力業での運びとブルーのパーライトのバックサスで隠れる手法、やくざが隠し金に気がついて
   復員兵の一人に掘らせるというごく普通の筋ならば、この力業で怒鳴りまくる以外にも手があるのではないか。
   最期にメインの三人も死んでいくというのも多すぎ。
    期待通り廃坑は爆発し、さあ、どんな屋台崩しがとも思ったが全てが変わるほどではなかった。
    

20)2010年7月18日(日)  東京芸術劇場中ホール ☆
   「キャラクター」   野田秀樹・作演出 堀尾幸男・美術 ひびのこずえ・衣装  宮沢りえ・古田新太・橋爪功・
     俤の中に弟が居る、儚い中に夢がある。セットが割れて訳のわからないものが飛び出してくる。天使の羽。
    地の割れ目から次々とわいてくる集団の中から女が弟の俤を語り出す。姉の袖にすがっていた弟、その袖がちぎれて
    弟は落ちていった。弟を捜す旅。入ったところは熱狂的な書道教室。その狂信性の中に弟ははまり込み
    やがて狂気の手先となってビニール袋にこうもり傘を突き刺す。
     あと2人のところでS席がなくなり立ち見でつらかった。もう一度見ても味わえるかもしれないなあ。

19)2010年7月11日(日)  新橋演舞場 七月大歌舞伎 ☆
   「暫」「傾城反魂香」「馬盗人」  団十郎・吉右衛門・三津五郎
     花道からあられる暫の衣装?鶴岡八幡宮のセットとともに楽しい。
     ども又の手水鉢の抜ける絵
     馬のおしり、ひざ、腰が魅力的

18)2010年7月4日(日)  本多劇場 ナイロン100℃
   「2番目、あるいは3番目」  ケラリーノ・サンドロヴィッチ・作演出 
     斜めに倒れかけた舞台。これが世界を作る。しかも映像とぴたりとはまるところなどはまずコンピーターで設計したのかと。
   柱が斜めだけでなく床も全て斜め。こわれかけた近未来、そこに生き延びた人間達のあいもかわらぬ情けなさと言ったところか。
   

17)2010年6月20日(日)  帝国劇場
   「キャンディード」  ジョン・ケアード版  ヴォルテール・原作 バーンスタイン作曲  中川隆一照明  市村正親
     円形舞台・中央につづら・彼が考え始めると、円形舞台の枠組みが持ち上がり金の道と金のリングができあがる。
    一人踊り始める彼の方へ金の道を人々がやってくる。やがて周りを囲み操り人形として操られ踊る。
    やがて剣や小道具や衣装が投げ渡され物語が始まる。この序曲が素晴らしい。
     理想を説かれた若者が城主とならぬ恋に落ちるが追い出され、次から次へと難事件に出会っていく。
    奇想天外な復活を登場人物達はなしとげる。ころされたはずの娘は兵士にかわれ、隊長に売られ、次から次へと
    助かっていく。理想を説いていた学者は縛り首になるが息を吹き返している。
     さされた男も傷が治る。けれどまた裏切られ、またへいにつかまり、また海賊に襲われ、人生うまくいかないの連続。
    やがて真の愛は小さな農場を持ち作物を育てることと気づいて歌い上げる。
     もっと小さな劇場で楽しみたいな。長くて飽きる気もした。

16)2010年5月30日(日)  プーク人形劇場 鳥獣戯画
   「へったくれ 〜牡丹灯籠より〜」 かとう知恵理・作演出
     天使とロミオとジュリエットと牡丹灯籠をくっつけて、最期はあの小さなプークで宙乗りまでしこんでがんばってました。

15)2010年5月24日(月)  新橋演舞場 五月花形歌舞伎 ☆
   「熊谷陣屋」「うかれ坊主」「助六由縁江戸桜」  染五郎・海老蔵
     熊谷陣屋だけを見るとやはり唐突に始まる感じがする。我が子の初陣を心配して来た妻をなぜ来たのかと驚く熊谷。
    その小太郎を自分の手で首をはねたからだが、平敦盛の母が復讐に来るのも、義経が一枝をおらば一指を切ると立て札
    出させ良くその心を読み切ったとほめるのも、頼朝のもとに走る間者をしとめて兄弟を助けたことを悔しがる元平家も
    もうなんだか形だけのような気がして、いやだなあ。
     吉原のまがきの前の一杯舞台。花魁達がずらり並んだ絵がきれい。この絵が楽しいのだなと。
    助六のこしらえも絵になる。紫はちまきも。助六が実は曽我の五郎で、喧嘩を売りながら相手に刀を抜かせ、
    ともきりまるをさがしているのだという。まあこうも他愛ないともういいかということ。でも海老蔵の啖呵、きれが良いとは
    言えないなあ。染五郎や江戸和事たのしそう。

14)2010年5月9日(日)  パルコ劇場  パルコ・プロデュース ☆
   「裏切りの街」  三浦大輔・作演出 秋山菜津子・田村圭・松尾スズキ
     ポツドールと大人が結婚するとこうなってしまうの?すけべなところはそのままに、けれど話は昼ドラに。
    舞台装置がポツドールの良さを消してしまっている。一杯飾りで息を切らさずに強烈なシーンを続けていたのが
    暗転暗転暗転。回り舞台はともかくとして、スライディングステージの出入りにやたら時間がかかる。
    おまけに裸になったりきちんと着込んだりにも時間がかかる。すると、え、やばいと思ったところから
    あーそーなるのねーまでに時間がかかり、冷静になり、なにこれ、平凡な筋じゃんになっちゃう。
     無責任なニートの悪は書けている。でも、それを取り巻く人物もみんな悪だとすると、なんかぼやけちゃうな。
    愛の渦の、罪を感じつつ痛みを感じつつ、ドライにパサッと切れちゃうのとは大違い。


13)2010年4月25日(日)  赤坂レットシアター
   「職員室」  福田雄一・マギー・作演出 マギー
     はじめはどうなることかと不安になったけれど、小気味の良い暗転からパシッと作る空気につられて
    笑ってしまった。どんなコントだったの?といわれても目玉の親父が汗だく出てたことしか覚えていないのだけれど。
    90分のショートショートコント。地の芝居もできるメンバーだから飽きさせないのかな。

12)2010年4月13日(火)  新国立劇場小劇場 ☆☆
   「夢の裂け目」  井上ひさし・作 栗山民也・演出 石井強司・美術 服部基・照明 角野卓三・木場勝巳・キムラ緑子・熊谷真美・土井裕子
     狸合戦の紙芝居をうろ覚えに書いて無料で演じていたと男が連れてこられる。ここは紙芝居家の天声のうち。
    讃岐の殿様が引き起こした戦の責務を、次郎家老が太郎家老におしつけてあわれ潮来に縛り付けられて海に流されるという話。
    戦後の焼け跡をたくましく生き抜いていく天声たちだが、戦中に軍国紙芝居をやったことについてGHQから証人になるよう召還される。
     普通の人には罪がないと裁判に参加した天声だが、東京裁判は狸合戦と同じ、天皇の責任を東條閣下になすりつける枠組みだと
    気がつき、それで紙芝居をして評判の人に。けれど占領目的妨害罪に問われ、理念と現実の間にはさまれる。
     でも、でも、でもと歌は続く。日々の暮らしはなんといとおしいものなんだろう。責任は普通の人にも一人一人にあるのだけれど
    でも、でも、生きていくって、まずそれが大事と、繋がっていく。
      終幕に9人の役者が小さく円に集まって星を見上げる、そこに先日他界した井上ひさしがいるかのように。
    クルト・ヴァイルの音楽が耳に残って離れない。

11)2010年4月4日(日)  新橋演舞場 陽春花形歌舞伎 ☆
   通し狂言「四谷怪談忠臣蔵」  市川猿之助・演出  右近・門之助・笑也
     冒頭に高師直に新田義貞の怨念がとりついて添加をひっくりかえさんとする発端がつく。
    この事により忠臣蔵に妖術が使えるようになり、ラスト忠臣蔵に何の関係もない?大滝の中での立ち回りが
    つく。本水の中での立ち回りは、やはりかなり気持ちよく、ストーリーなんか関係なくすかっとする。
     発端の後に東西東西当今の口上があり、忠臣蔵と忠臣蔵の裏の四谷怪談を強引にくっつけて一晩で演じますと
    なんでもありと断る。まあ、いっぺんに両方の芝居を見る訳で、これはこれで全体をつかむのにはよく、楽しかったりする。

10)2010年3月30日(火)  サンシャインシアター キャラメルボックス
   クロノス・ジョウンターの伝説「ミス・ダンデライオン」「南十字星駅で」原作・梶尾真治  脚本・演出・成井豊
     劇団の25周年公演。年をとりがっちりした役者が多くなった。が、どうしてこうも変わらないんだろう。
    「銀河旋律」と同じタイムマシーンのパラドックスをどう解決するかに最新の敬意が払われていると感じたミス・ダンデライオン。
    病気を未来の薬で治す。その一点に絞られたストーリーでは、人間の細やかな複雑な思いがわき上がってこない。
    バック・トゥ・ザ・フューチャーの面白さは、入り込んだ世界の中が充分に面白いからなのだなと確認した。
    そこではタイムマシーンはつじつま合わせではなく大いなる味付けになっているから。
     最終章となる?南十字星の方が楽しかった。慣れちゃったのかな。

9)2010年3月26日(金)  MAKOTOシアター銀座
   「贋作 椿姫」作・演出・出演 佐々岡美幸  「巨匠 溝口健二」作・演出 大野裕明   溝口健二
     一人芝居・椿姫を一人で演じてストーリーがわかる、だけでは。本に工夫が必要。
     溝口健二が一人+黒子三人+声の応援、いっぱいで溝口の後を追いかけながら空気を伝える。これはたのしめた。

8)2010年3月23日(火)  スペース雑遊 アル・カンパニー ☆
   「罪 ある温泉旅館の一夜」   蓬莱竜太・作演出 平田満・井上加奈子・占部房子 黒田大輔
     信州の温泉宿らしい。せっかくの家族旅行なのに妻はジグーパスるを買ってきて始めてしまう。
    お湯から上がってきた定年になる夫は「せっかくの」と不満。風呂から帰ってきた娘も携帯ばかりいじっていて
    かぞくのつどいには無関心。息子がお土産物屋によっているとの夫の言葉に娘も妻も騒ぎ始める。
    そこへ兄戻ってきて肩たたきやらエプロンやら時刻表を買ってくる。知恵が足りないらしい。
     そして家族の問題もここにある。懸命に作ろうとした団らんの中テレビが壊れる。娘は結婚をやめると言い出す。
    もちろん結婚して欲しい。家を出られない理由は兄のせいらしい。罪を感じているとそれぞれが明らかにしていくのが
    全て異空間の中だったというしかけが、だらっと会話が成り立たない家族の劇に落ちそうな所を一気にすくい上げる。
      雨が降り、あかりが異様な空気を示した時、それは現実ではない心の中の会話、しかもそれが現実とないまぜになっていて
    いつ移行したのどこへ戻ったのかもかも定かでない。四人でかこんだパズル「あ、はまった」で闇が四人を包む。

7)2010年3月10日(水)  日生劇場
   「染模様恩愛御書  細川血達磨」  三世河竹新七・作    市川染五郎
     なんとも直接的な。歌舞伎の明るさはやはりあの歌舞伎座や演舞場の舞台にあるのだなと。日生劇場だと空気が変わってしまう。
    客も真剣に見る?横山図書のねたみまじりうわさ話から始まり、婚姻をくずそうと浮気しているとの讒言を吹き込み、あっさり図書は
    妻を切る。刀が欲しいばかりに持ち主を切る。これがいきなりの開幕。講談で話をつなぎ、切られた侍の忘れ形見が細川家の小姓
    となって色っぽいとのこと。そこに大川某なる若侍と禁断の恋。笑わせる帯ときやシルエットでのサービスなどがあるが、
    妬いた女が不義を報告、切られるところを仇討ちの大望あると訴え。許した細川公に忠義立て。一方図書は偶然にも切った男の名を名乗り
    大川友右衛門の妹わ内儀とするも、昔の闇討ちをネタに揺すられての貧乏暮らし。細川家で仇とねらわれるが屋敷に火を放ち逃げようとしたところを
    あっぱれ仇討ち成就。火は屋敷を飲み込み宝蔵の御朱印を焼かんとす。朱印守るべく火中に飛び込んだ友右衛門は進退窮まって
    腹をかっさばき朱印を体内に入れ火から守ったという話。なんともまあ、気色の悪い。腹をかっさばいた死体に泣きすがって
    あっぱれと言う暗い幕切れ。
     歌舞伎の本来とはこんなにも暗かった物なのか。火の宝蔵のシーンはさながらディズニーランド。ムービングスポット、スモーク、カノン
   が客席にあふれ、階段落ちまで染五郎が演じ、うーん。
    昔の作品の掘り起こし、それが新作歌舞伎に繋がるとするならば、それまで待つしかないのかな。
   

6)2010年3月6日(土)  東京芸術劇場小ホール1
   「農業少女」   野田秀樹・作  松尾スズキ・演出 加藤ちか・美術  多部未華子・山崎一・江本純子・吹越満
     ロビーには土、そして米の種。種でもまいてやってくださいとの松尾スズキのコメントつき。
    セットは稽古場風。むき出しの平台、木で作ったテレビ、中割でつくったやぐら。
    楽しければいいとプログラムのコメント。宇宙人、野田秀樹が怠け者のアリ、遊び心はいっぱい。
     おっと思う多部未華子のかわいさ?でも、なんだろう、こういうスタイルでしゃべってみろと
    言われているような気がする。本で読んだ時には、もう少し世界が見えてくるような記憶が
    あったのだけれど……

5)2010年2月24日(水)  紀伊國屋サザンシアター こまつ座 ☆☆
   「シャンハイ・ムーン」   井上ひさし・作  丹野郁弓・演出 島次郎・美術  村井国夫・有森也実
     ブレヒト幕が上がる。内山書店の二階に斜めに光が当たる。六人の登場人物が浮かび上がり、一人一人
    魯迅を語る。その声が良く響く。こんなに響くのだとあらためて感心。
     国民党の目が光って何人も連れ去られていく日々の上海。魯迅は暗殺者を恐れてはいけないと、いいながら
    妻や友人の薦めによりこの内山書店に潜んできた。さて、そのついでに友人達は魯迅の体を治してしまおうと
    医者や歯科医をあつめる。医者を極度に嫌う魯迅と握手している間に脈をとり、あくびを誘った間に舌を見る。
     改造社から出る魯迅全集にのせるんだと肖像画を描きながら歯の診断をする。どうにも手こずった友人達は
    笑気ガスを使うのだが、誤認症という大変な事態を招く。魯迅が迷惑をかけた人たちに謝り続ける。
    心の負担を減らせば治るとやっと戻った時、今度は言葉取り違えが起こる。もうここまでくると声を立てて笑ってしまう。
     誤認や言葉取り違えという井上ひさしなじみの手法の中で、時代と、時代を超えた人間のつながりに、なんともいえない
    暖かさを感じる。現妻の「魯迅先生を許せなくなりました」あたりが深く感じさせるのだろう。

4)2010年2月17日(水)  東京芸術劇場小ホール1 モダンスイマーズ
   「凡骨タウン」   蓬莱竜太・作演出
     開演から暗闇の中で指示が続く。薬を売りに行くメンバーに指示を出している。
   この真っ暗な中の静かな会話が結構つらい。時間は常に錯綜するけれど、男の過去がどう組み合わさっているかという事。
   それほどわかりにくい訳ではない。小学生の時にうなぎで救った男が、結局、彼のルーツである、そのルーツから
   逃れたかっているのだけれど。母の居ない妹と祖母との三人暮らし、祖母は小学生の彼にひどいことをし、
   ルーツの男のところに居た小学生の女に救われる。5人の関係はからみあって、今が作られるといった夜光ホテル主人公の
   解説のような話。

3)2010年2月14日(日)  新橋演舞場 つかこうへい事務所
  「飛龍伝 2010ラストプリンセス」  黒木メイサ・
     つかの芝居だというのはよくわかる。機動隊山崎の神林美智子に対する最初の対面の台詞がそれだ。
    蒲田行進曲を思い出す。つかの芝居では、蒲田行進曲、銀ちゃんのこと、が好きだ。設定に無理がないからではないだろうか。
    全共闘をやくざ集団として芝居の道具として扱い、東海村を適当に織り交ぜる。どうしてもそこに無理を感じてしまう。
    明日の日本のために、それは学生運動の合い言葉であり、かつ、大日本帝国の合い言葉である、という事なのだろうけれど。
     

    )2010年2月7日(日)  HDD ホリプロ
     「キーン」 ジャン・ポール・サルトル・作 ウィリアム・オルドロイド・演出  市村正親
     借金だらけの年取った名優。社交界の女にだらしがない。今回はデンマーク大使の奥様に惚れた。
    楽屋に呼び出したら、女優志望の財産家の商人の娘が家出してやってきた。大使夫人と逃げ出したいキーン。
    家出娘と恋敵皇太子と愛する夫人の前でオセローのデズデモーナ殺しの場をやる羽目になったキーンは
    皇太子に刃物を持っておそいかかろうとする。これだとドタバタ喜劇の説明になってしまう。
    舞台で見ないとわからない。サルトルに夢中?になって読んだ昔の印象とまるで違う。

2)2010年2月4日(木)  本多劇場 阿佐ヶ谷スパイダース
   「アンチクロックワイズ・ワンダーランド」   長塚圭史・作演出
     新聞が男をとらえる。何度も。妻は胎児の形の人形を彫り続ける。編集者に電話がかかる。
    同時展開してずれていく絵柄に緊張。これはどうやら売れっ子ホラー作家が、新しいスタイルで書き始めて
    けなされているという話だとわかる。長塚ってギャグホラーから脱却しようとしているのか、それが観念的と
    けなされているのか、と、興味を引っ張る。で、登場人物達が、作家が書いた人物達らしい、となってくるあたりから
    退屈してきた。そしてエンディングはまさにその図。

    )2010年1月31日(日)  HDD 劇団四季 ☆
     「思い出を売る男」 加藤道夫・作 浅利慶太・演出 林光・音楽  土屋茂昭・美術 吉井澄雄・照明
     高校時代に読んだ本。これも初めて見た。美しいセットが想い出を醸し出す。
    懐かしく、優しかった。

   )2010年1月31日(日)  HDD 劇団四季
     「ひかりごけ」  浅利慶太・演出 金森馨・美術 日下武史
     くっきりはっきりしゃべる。四季節。硬質な金森のセット。噂のセットを初めて見た。
   のぞき込む穴と、光によってしゃべり出す面。私は我慢していたのです。あえて硬質なしゃべり。
   本で読んだ時はもっとなまめかしかったと思ったのだけれど。

1)2010年1月4日(月)  新橋演舞場 初春花形歌舞伎 ☆☆
   「寿曽我対面」「黒塚」「春興鏡獅子」「伊達の十役」  獅童・右近・海老蔵
     寿曽我対面は歌舞伎の型のお勉強。黒塚は照明にもこったつくり。鏡獅子、珍しく胡蝶の舞を後見が踊った。
     丁寧に10役をこなしていく。それを見る楽しさなんだろうな。


2009年

2009年に見た劇のベストイレブン
 今年は51本 まあ良く観たもんだ
 

 おもしろかったのは


 「高き彼物」
「ブラッド・ブラザーズ」  「東京原子核クラブ」 「愛の渦」「海獣」
 「ゼブラ」「僕たちの好きだった革命」
「女の家」 「化粧」「春でもないのに」「バイパー」

51)2009年12月20日(日)  俳優座劇場  俳優座劇場プロデュース
   「グレイクリスマス」  斎藤憐・作 高瀬久男・演出 島次郎・美術  三田和代・石田圭祐
     島さんにしてはおとなしいセット。階段壁への影を出すなどぎくしゃくしたあかりの使い方、気になる。
    伯爵が階段から下りてきたのと娘が上に駆け上がるのと、実際に起きたのか、それとも時空を飛ばす演出であったのか。
    27年前の自由劇場らしい飛躍のある本なのか、しっくりこない。そして五条華子は一体いくつなんだろう。
    後妻で進駐軍相手のホステスとして魅力あふれる女主人、それでいて、日系アメリカ兵と恋に落ちる。
    それがどうしても納得できない。本は面白いと思う。あり得た話、リアリティがあると思う。なら、なぜこの……

50)2009年12月13日(日)  銀河劇場 ホリプロ
   「ANJIN 〜イングリッシュ・サムライ〜」  マイク・ボウルトン・作 グレゴリー・ドーラン・演出 金井勇一郎・美術  市村正親・オーウェン・ティール・藤原竜也
     劇場に入ると黄金の雲に縁取られた鏡に客席が映っている。円形の銀河劇場の2階と3階が区切られた鏡に弧をなして映る。
     期待。けれどやっぱり難破から始まるだろうなの予想通りの難破。最初にキリスト磔があったけれど引っ込みがださい。
     難破の影絵もださく、港に着いた舟が帆がしっかりとついていて難破船に見えないのもつらい。
      通訳のギャグは笑いをとっていたけれどワンパターン。
     プロセニアム中央にかかった字幕と床面の役者見比べて行くことになるけれど、それだけの努力をしつつ話は何か進んでいかない。
      藤原竜也の役は本当にいたのだろうか、それとも藤原竜也を使うために無理矢理設定したのだろうか、
     宣教師になった過程も、侍とキリストの教えに惑う葛藤も、侍に戻ることも全て説明的で実感がわかない。

49)2009年12月8日(火)  鈴木興産倉庫第2スタジオ 桟敷童子 ☆☆
   「海獣」  サジキドウジ・作 東憲司・演出 塵芥・美術  
     倉庫の中に入ると、廃材の丸太でくまれたすけすけの舞台。上手に作りかけ骨組みだけのあばらや
    下手にぼろぼろのあばらや。小舟らしきものが立てかけられている。奥はぼさ。その奥に網。そこに白い光。
    舞台前方に上下SS、LEDで緑と青が丸太に色をつけている。時に赤のLEDもつく。
     オープニングにむしろ旗とおもいきや時代説明を書いたのぼりを下で握っていただけ。
    快調なテンポで舞台設定が説明されていく。
     黒船が来港し、貧しい漁村、横浜村に偉人が来るようになるという大騒ぎ。郭ができるまで買ってきた四人の娘を
    満月の夜までの二週間預かってくれと言う。
     偉人に抱かれると鬼になる。子供達の恐怖、いらだち、さけび、喧嘩。多少くどいなと思いつつ、
    どこまでやればリアリティなるものがうまれるのか思案しつつ
    食いつぶした浪人者が攘夷をとなえ始める過程に、これもねらいかと思いつつ
    海獣の叫びの向こうに救いがあるのメッセージに共感しつつ
     浮かべた小舟がロープの上でゆらゆらとゆれ、9尺はあるかもしれない役者の落下に怪我はしないのかと
    心配し、ラストに「さあ、このセットは床が全部動くはずだ、いつだ、どうやって」と興奮しつつ
    やった、ここまで、傾けるかと、感心して終わった。

48)2009年12月6日(日)  歌舞伎座 ☆
   「操り三番叟」「野崎村」「身替座禅」「大江戸リビングデッド」    
     鶴松の踊り・孝太郎のあやつり・
     三津五郎と勘三郎と染五郎の狂言からつくられた恐妻家の大名話、楽しい。三津五郎の玉の井が笑えて。
     宮藤官九郎の初歌舞伎・まあ歌舞伎役者をこういう風に使えたら作者は楽しいのかな。
     

47)2009年12月2日(水)  パルコ劇場 ☆
   「海をゆく者」    コナー・マクファーソン・作 栗山民也・演出 松井るみ・美術 平田満・吉田剛太郎・小日向文世
     きたなーい。吉田剛太郎がいかにもきたなーい。痰を吐きちらしあちこちになすりつける。平田満の弟が世話をしている。
    どうしようもない酔っぱらい。風呂も入ったことが無くものすごく臭い。めがねを無くした酔っぱらいも加わって汚さが増長する。
    そこに弟の女をとった友人と見知らぬ客。徐々に弟が禁酒している理由が明らかになっていく。
     そして謎の客の要求が。後半のポーカーーシーン、面白い。そしてこんなどうしようもない人間を、どうしようもない兄貴が
    どうしようもない方法で救おうとした後、あちらの人に好かれた人間が生き延びる。ふっと変化する照明が語ってる。

46)2009年11月29日(日)  本多劇場 加藤健一事務所 ☆☆☆☆
   「高き彼物」    マキノノゾミ・作 高瀬久男・演出 加藤健一・小泉今日子・占部房子 滝田裕介
     本当に名作だと思う。俳優座プロデュースで見たのは船橋市民文化ホールで箱も大きく遠くから見ていた。
   本多の中程から見た暖かさは、まるで違ったもののように思えた。高橋長英と加藤健一との違いであるのかもしれない。
   バタ臭いけれど、生っぽい、生臭いように見えた。事故の真相あたりからもう泣いてしまった。

45)2009年11月23日(月)  スズナリ  鳥獣戯画
   「ダンシング・オールドでぃ・クラブ2」    知念正文・作・演出・振り付け 雨宮賢明・作曲 
     昨年は見逃した。その続編。続編だからの笑いが起きる。取り残される感じ。ダンスは楽しい。
    フィナーレのダンスもいいなと思ってしまう。くみこの踊り、ユニコの踊り見比べていた。

44)2009年10月17日(土) シアタークリエ
   「ガス人間第一号」  後藤ひろひと・脚色演出 池田ともゆき・美術
     空中につってある柱と、階段の脇から転に向かう柱。これに蛇腹を通り抜ける光が当たっているセット。
   盆が回って場面転換。頼りなさげな刑事と週刊誌の記者が事件を突き止めていく。
   東宝の原作映画へのオマージュとのこと。問い詰めていくサスペンスの前半はともかく、ガス人間が
   消えていく後半になると映画にかなわなくなるんだろうな。だから劇場舞台の最後が信じられなくなってくる。
     それに付け加えた山荘のシーンはまあともかくとして。もともと歌手とガス人間の恋が信じられないのだな。

43)2009年10月16日(金) 本多劇場 岸野組  戸田恵子
   「か・ら・く・り」  
     ロベール・トマの原作はさぞ面白いのだろうなと言うのはわかった。それにしてもなぜ黒ゴム張りの床?
    ミュージカルにしたかったのかな、セットも安っぽくてすぐ転換しそうだし、と思ったら全く転換しなかった。
    長屋の酔っぱらいの文七の奥さんが居なくなったと大騒ぎ。やっと戻ってきて一安心したら「誰だおめえ」
    と文七の口から大変な言葉が。それをあたりを暗くして一気にアカリでぶち抜く。
     このわかりやすさがえんえんと続くのだけれど、必要なのかな。お笑いてんぷく劇場ののりで話が進むのは
    あまりにもったいない感じがした。

42)2009年10月13日(火) 青山円形劇場
   「abc 青山ボーイズキャバレー」  
     ダンスショー・殺陣・ファッションショー組み合わせたショーが開かれる一時間前、様々なドタバタがあるのだけれど。
    殺陣は笑えるのだけれど

41)2009年10月4日(日) 中野ザ・ポケット 三田村組 ☆
   「home」 田村孝裕・作演出 
     介護が必要ない人だけを集めている老人ホーム。たばこを吸っている老人のところにあらわれた新参の女性は
    老人の元彼だった。こりない老人男三人組ははしごを作って若いヘルパーの入浴シーンをのぞき、捕まって怒られて。
    娘を呼び出されて。ぼけが始まった女性と寄り添いたいと思う男性も居る。焼き餅を焼くいい女も居る。
     けれどそうは先がない老人だと言うことははっきりしている。痛い芝居だが色気のどうしようもなさが救っている。
    ラストは苦しんだ末の結果なのかしらん。

 )2009年9月21日(月)
  「リチャード三世」 こどものためのシェイクスピア 山崎清介・脚本・演出 HDD
     クラッピング・黒いコート・10人だけのキャスト・動く椅子と机。同じアイテムでどんなシェイクスピアでもこなす。
    30年続いたバラ戦争の最後・リチャードは前王の娘を奪い・最後には殺し、実の兄を殺し……。次から次へと
    嘘と策略とでついに王冠を頂きリチャード三世となる。しかし裏切りの果てに得た王位は、呪いと部下の裏切りにより
    はかなく消える。今回のシェイクスピア人形はリチャードの醜い左手としてリチャードの別の心を語る。

40)2009年9月13日(日) 新橋演舞場 ☆☆☆
   「おんなの家」 橋田壽賀子・作 石井ふく子・演出 波乃久里子・水谷八重子・沢田雅美 
     もちろん四女(沢田)が39才だとか、長女(水谷)が50才だとか、そんなことが気にはなるのだけれど、
    しっかりした台詞、はらはらさせ、しかも不安材料を予測させる、堅実な筋運びは、いいなあ。
     路線価格5億円で相続税のために処分を迫られている炉端焼きのお店「花舎」。長女が離婚だあと帰ってきたからまた大騒ぎ。
    若くして無くなった次女の娘は育ててくれた4女のためにもこの店を離れられない。長女と四女は店の独り者の客に恋心抱くけれど
    その男は……。笑って、そうだろうなあと泣いて、一晩の芝居楽しんだ。

 )2009年9月7日(月)
  「風が強く吹いている」 鈴木裕美・演出 アトリエダンカンプロデュース HDD
     大学の陸上部の寮。走が紛れ込む。10人になった寮生を前にハイジは箱根駅伝に出場すると宣言する。
    わかりやすく順序立てて、素人たちが駅伝のランナーになっていくかを追う。わかりやすすぎちゃうのかな。
    箱根駅伝のレース中も走り台を走るだけ。生で見たらまた違うもしれないが。

39)2009年9月4日(金) 日生劇場 ☆
   「ジェーン・エア」 シャルロッテ・ブロンテ・原作  ジョン・ケアード・脚本演出 ポール・ゴードン・作曲 松井るみ・美術 中川隆一・照明
      松たか子 橋本さとし
     歌詞が聞き分けられる。ジェーンエアの歌はストーリーを語るためか、良く聞こえる。ブロードウェイ版とセットが全く変わり、
     派手なセットをカットし傾斜舞台の中を俳優がセットを移動する。オーケストラピットをつぶして張り出し舞台にし客席と近づく事を
     望んだ。足りなくなった客席は舞台上手奥と下手奥に配置。
      一幕の終わりの歌をカットし、コミカルな歌もカットし、日本での稽古の間中、歌詞も台詞も練りつづけた。それが聞き取りやすいミュージカル
     になった。その顛末を話してくれたジョン・ケアードのアフタートークもおもしろかった。
      ムービングスポットを一面傾斜にあてた照明。馬の登場の演出。最上階の部屋の秘密。ジプシー占い。これはいったいなんだというサスペンス
     を楽しんだ。松たか子が「私は美人じゃない」と泣き叫ぶところはさすがにしらけた。ミスキャストかな。うまくなったと思うけれど。

38)2009年8月16日(日) 新橋演舞場
   「石川五右衛門」 樹林伸・作 市川海老蔵・団十郎・中村七之助
     五右衛門の釜ゆでで始まってつづら抜けで終わる。石川五右衛門が突っ張った相手の豊臣秀吉はなんと実の父だった
    という他愛もない話。なぜ滝のシーンが出てきたかもよくわからず。うーん古典を作るのは大変だ。

37)2009年8月16日(日) シアタークリエ ☆☆☆☆
   「ブラッド・ブラザーズ」 ウィリー・ラッセル・脚本・音楽・歌詞 グレン・ウォルフォード・演出 松井るみ・美術 武田真治・岡田浩輝 鈴木亜美 金志賢
     久しぶりに良いミュージカルを見た。ロンドンの貧乏なジョンストンさんは子だくさん、マリリンモンローを夢見ながら、夫はやがて逃げていき
    双子を身ごもってしまった夫人はもう生きていくことが難しい。夫人の雇い主の奥さんに子供を一人あげる契約を交わしてしまう。
    これが不幸の始まり。家政婦としていたジョンストン夫人があまりにかわいがるのを見たライオンズ夫人は大金を与えて彼女を追い払う。
    けれどライオンズ夫人は自分の子ではないと恐れが募るばかり。
    七年後。双子の一人エディーは大金持ちの家で何不自由なくお坊ちゃんとして育ち、双子の一人ミッキーはちょー貧乏にんの
    どうしようもないやんちゃ坊主。ばったり出会ってしまって友達になってしまう。ミッキーの幼なじみリンダも加わって三人は大の仲良し。
     田舎に逃げ出した大金持ち。市から田舎に与えられた住宅に引っ越した貧乏人。三人は再び出会ってしまう。蜜月の日が続く中
    働き口もなくなったミッキーと大学生活を謳歌するエディーの格差は広がるばかり。
     エディーの差し出す金も受け取れず、ミッキーはやくざな兄貴の言うまま犯罪に荷担。銃で人が死に、七年刑務所に閉じ込められ
    薬漬けになってしまう。そんなミッキーに耐えきれずリンダはエディに心を寄せていく。狂ったミッキーは銃を持って、
    予言迷信の通り、エディーを銃で撃ち自らも警官の銃に撃たれて死ぬ。二人の母親と二人の恋人は二人の遺体に寄り添って強い歌となる。
    バックから強烈なパーライトがさし終わる。
     悲惨、でもそれはどうしようもない格差からくる。二人の心の動きは常に自然にどうしようもないものとして感じられ、死に至らしめられた偶然の力にも
    納得する。すると浮かび上がってくるのは、二つの社会と言うこと。
 

36)2009年7月19日(日) 新橋演舞場
   「シャネル」 齋藤雅文・作 宮田慶子・演出 妹尾河童・美術 中川隆一・照明 大地真央・今井翼 
     女が苦労してのし上がった。マイク気になるなあ。

35)2009年7月6日(月) あうるすぽっと ガイアデイズファンクションバンド
   「トーキング・トゥ・テロリスト」 Robin Soans・作 古城十忍・演出
     直径8センチぐらいの棒が並び、DANGERと書かれた黄色いテープが客席からステージに向かって貼られている。
    テーブルに集まった役者たちが次々といろいろな人の証言をしゃべっていく。順番にではなく同時に少しずれて。
    誰が何をやっているのかどんな立場なのか瞬時に理解しなくてはならない。
     アイルランド・レバノン・パレスチナ・ウズベキスタン・NHKの特集のような内容が次々と。
    これを書いた人がヨーロッパの人間でアイルランドもレバノンも常に近く感じているから通じるのだろうな。
    どれがどの事件か豊かなイメージが喚起されないのがつらい。
    秋葉原や大阪の道頓堀でとなったらいてもたっても居られなくなるだろう。
     それが客席にのんびりとできてしまう。教科書を学んでいるように聞いてしまう。それがつらい。

 )2009年7月4日(土)
  「returns」 三谷幸喜・作演出  HDD
     シアタートップス最終公演・10日間で作ったメーキング付き。
    東京サンシャインボーイズの15年ぶり公演。それぞれのメンバーの同窓会的、雰囲気。これはこれお祭りとして。

34)2009年7月2日(木) 船橋市民文化ホール  俳優座劇場プロデュース ☆☆
   「東京原子核クラブ」 マキノノゾミ・作 宮田恵子・演出  横田あつみ・美術 中川隆一・照明
     東京の下宿「平和館」理科研究所の意見交換で引け目を感じた友田晋一郎(朝永振一郎)は京都に引き上げようとしている。
    下宿には東大の野球選手・ばくち好きのピアノ弾き・どん底を歌い上げる新劇俳優・レビューダンサー・理科研究所の実験班・同僚
     も世話になっていて、話はすべて一階の玄関脇の広間で行われる。
    時代は昭和の戦争に向かっていく。量子力学で世界と並ぼうと意気込む人々は、やがて原子核エネルギーの解放に
    夢を抱くとともに恐怖に近い不安を覚えている。下宿の大家の娘、だまされては帰ってくる不思議なダンサー、偽学生事件など笑いを
    振りまきながら、時に時間をさかのぼって、思い出で謎解きをしながら、ついに原爆が落とされ、下宿も半分が焼け落ち、
     あきる事無く見られた。朝永振一郎をただのいい人でなく、客に嫌われるほどそのエゴの部分も見せていく。
    脇の人間はそれほど嫌われないのに。梁の陰が壁にかかるあかり不思議だな。ピンのフォローもこうなのかと納得。

33)2009年6月28日(日) 新橋演舞場
   「NINAGAWA 十二夜」 シェイクスピア・作 蜷川幸雄・演出  金井勇一郎・装置 勝柴次朗・照明
     きの音とともに定式幕がひかれていくと、妖しげな光が現れる。それが鏡に映った自分たちの姿だとわかると
     客がどっとわき、鏡の中に光が入って一面の桜があらわれると拍手がわく。これぞ蜷川マジック。
     台詞回しはゆったりと、かっちりと。演舞場の客にはこれがちょうど良いらしくよく笑う。
      けれどシェイクスピアシアターや子供のためのシェイクスピアや鳥獣戯画のスピードになれた身には
     結構つらいものがあって鏡のマジックだけでは、物足りなく……。うこん色の衣装も美しくおかしくなく惨めでもなく、
     海外や演舞場ならほめられるんだろうな。
      菊之助の獅子丸と琵琶姫、よし。亀次郎のまあ、時蔵の織笛姫もそれなりに良く、女形に嫌みがないのは良い。

32)2009年6月27日(土) スズナリ 桟敷童子
   「ふうふうの神様」  東憲司・作・演出  塵芥・美術 
     神隠しにあった子供の身代わりに、妻が生まれ故郷の山の中に帰っていく。一緒に来た夫は別れたくないと言い張るのだが
    二人を迎えたのは、へんな子供二人と、もっとへんな子供一人。
    帰り着いた村は「お帰り」とみんなが声をかけてくれる小さい村。けれどそこには愛のもつれがあり、神隠しに対する恐れがあり、
    人間てひどいものだ、てな展開があるのだけれど、みんな隠れ里にいる幻かもしれないし、ここを仕切っていた気まぐれな
    神様の仕業かもしれないと言った、遠野物語と福岡の言葉がむりやりくっつけられていて、この劇団で見てきた
    リアルな物語の上に立った飛躍ではなく、おとぎ話をパワーもって語ったような感じ。やや悲し。
     紅葉一面の劇場はおっと思わせるけれどやや単調。ラストの屋台崩しはやるだろうなの範疇を超えていない。

31)2009年6月15日(月) シアタークリエ  ☆☆☆
   「ゼブラ」 田村孝裕・作演出  香坂奈々・美術 中川隆一・照明
     商業演劇の場で小劇場の芝居。斉藤由貴が長女、南海キャンディーズのしずちゃんが三女。
    セットは紀伊国屋で緻密な舞台を見るような、でも大きさは遙かに大きい。台本は昔読んでいた。
     病院に入院中の母がすでにぼけていて、留守を預かる次女に負担がかかっている。三女は嫁入りが決まり
    その引っ越しの日に人が集まってくる。長女の旦那は浮気がばれて微妙な立場。四女の旦那は新車に乗り
    でもパチンコ狂いが抜けきっていない。四女はしかも妊娠しているらしい。
     父が出て行った日の夜の思い出から、今日に場面が飛び、そこに母が生前に契約していた葬儀屋がきたから
    話は複雑になる。これをoneor8はどういうアンサンブルでやったのか気になる。しずちゃんはしずちゃんだし、
    矢部太郎は矢部太郎。笑いがその特殊性によって導き出されるのは何かつまらない。
     母の葬儀が終わり四姉妹それぞれの問題が解決した後半、残された次女の背中が固まり、その前に次から次へと
    母と一緒に過ごした日々が浮き上がってくる。照明の力、まざまざと感じる。涙があふれそうになる。
     そして父からの電話、拒否、再び取られない受話器。苦く、そしてそうなのだろうなと納得しつつ暗転。

30)2009年6月7日(日) 座・高円寺1  ☆☆
   「ユーリンタウン」 グレッグ・コティス・脚本  マーク・ホルマン・音楽  坂手洋二・台本  流山児祥・演出  千葉哲也
     エイサーの脇を通って入場。入り口にはヘソ出しの女警官、劇場に入るとそこはステージの上。恐ろしげな警官たちと
   こわーい女警察官が「こっち」と案内する。大道芸の間をさけながらステージから客席に階段をおりる。
   20日前ここにきた時はここは絵本の広場で
   へっこんで居たところでマリンバが演奏されていた。それがタッパの高い空間となり、あやしげな街となる。
    巡査部長と女浮浪児が進行役。よくこんな芝居見に来たな、と脅してかかる。近未来。地球規模の水飢饉の後、
   トイレの水を節約しようと有料化に踏み切った。うっかり立ちションなどしようものなら逮捕されユーリンタウン送りとなる。
    街を支配する公衆トイレの社長の令嬢が大学を卒業して街に帰ってきた。公衆トイレの管理人と出会い恋に落ちる。
  まるで普通のミュージカル。普通でないのは、曲や振り付けがある時はウエストサイドストーリーだったりレミゼだったりする
  なんでもありの世界。台詞や歌が明瞭に聞こえてこない時もあるが、警官隊と革命者立ちが戦うダンスシーンなど
  白いドレスの令嬢に猿ぐつわと首つりのロープがかけられたまま展開する。
    そして水を失った地球の危機は容赦なく人間のエゴさえ押しつぶしていく。ヒーローは突き落とされね悪役も倒され、
  え、そんなに簡単にリーダーになれるの?と疑ってしまう馬鹿令嬢も、道を誤って居るぞ、との客の期待通り、人類は滅びていく。
  うん、これはおもしろいかも。 

29)2009年5月30日(土)  森の21ホール  わらび座
 
「火の鳥 鳳凰編」 手塚治虫・原作  齋藤雅文・脚色  栗山民也・演出 妹尾河童・美術 甲斐正人・音楽
     ちょうど一年前に見たものを今度は部員全員と見た。森の21ホールの白い客席から見ると何かセットが白く見える。
    盗賊の踊りなど相変わらず力強い。

28)2009年5月27日(木) シアターΧ ☆☆ 
   「小栗と照手」 遠藤啄郎・脚本・演出 ケイタケイ・振り付け
     最初やや眠気を感じたが、小栗が地獄に落ち、見る目童子が出てきたら俄然面白くなってきた。一つ目の仮面、柔らかな声、しなやかな動き。
    えんまの采配により小栗が裸にむかれ餓鬼阿弥となり、上人に預けられ、いざり車にのせられてひかれていく。
    ススキやひもがきいて、踊りがはねる。説教節と二人のパーカッションが素晴らしく。おもわず足でリズムをとってしまっている。
     熊野の湯に入れて再生するのも一連の群舞の中だけれど、後ろに引っ込んで着替えてくるのが丸見えなのは、もう一つかな。

27)2009年5月26日(火) あうるすぽっと シェイクスピアシアター ☆ 
   「じゃじゃうまならし」 シェイクスピア・作 出口典夫・演出 
     速いしゃべり。ちょっと不思議な動きもねらい?スライが結婚式に暴れ込んだ外枠から、見事に雷娘を手なずけるまで。
    そして、元に戻って。縄で縛られたビアンカ、慌てふためく結婚式の参加者、スピーディな展開に笑いも出る。
    ラストのビアンカの貞淑の演説。何かここでさめてしまうのはおしいなあ。

26)2009年5月20日(水) 東京芸術劇場中ホール kokami@network ☆☆☆ 
   「僕たちの好きだった革命」 鴻上尚史・作・演出 松井るみ・美術   中村雅俊
     芸劇のロビーに入ると鴻上が何人かとフォークを歌っている。開演前のステージも学生らがたむろしている。
   脚本は前に読んでいたけれど新鮮に楽しんだ。というか懐かしかった。鴻上がどうしてこうもわかりやすくなったのだろう。
   愛媛大会の時、石原哲也の「俺たちの甲子園」がでた。鴻上がどう評価するのか注目が集まったがベタほめだった。
    そんな感じを持った。機動隊の催涙弾の直撃で意識を失って30年、突然目覚め高校に復学する、というアイデアだけが
   え、そんな、というだけで後はもうリアリズムといってもいい。
    1969年はもう大学にいた。一年生だった。青山高校の紛争で文化祭が中止になり自殺未遂がでた事は札幌で聞いた。
   だから1999年の高校生とのギャップに素直に笑える。客席には若い世代とジーパンをはいたあの世代が同居していた。
   だから笑うところも同じだ。ラップをフォークと言い、ギターで弾きがたる、その歌が心地よかったし、熱かった。
    未来を信じるくさい台詞も、ドン・キホーテの形をとっているだけに、嫌み無く心地よかった。

25)2009年5月17日(日) 座・高円寺2  ☆☆
   「化粧」 井上ひさし・作  木村光一・演出 石井強司・美術   渡辺美佐子
     今月オープン・一ヶ月間のこけら落とし。テントのような劇場の入り口の外では大道芸、中ではフリーマーケット。
    絵本がずらりと並んで大人も子供も腰掛けて読んでいる。その地下二階にある劇場。
     五月洋子ののぼりや小道具が並んだ、透けた柱の楽屋。中央に化粧道具。
    一度暗くなると女座長が蚊を追い払いながら寝ている。
    客入れの時間、化粧を始める。勢いが良い。足も腕も顔も白塗り。座長の周りの人間は見えない。
    こけらおとしの公演の初日、伊三郎の母との出会いを張り切っておさらいをしているところにテレビ局がきたらしい。
     座長が赤子の時に手放した子が見つかったので対面しないかという。あうわけにはいかないんだ、と、舞台へ。これが一幕目。
    二幕は引っ込みから切り口上の手前まで。どうやら息子がきてしまった。動転する座長。
     大衆演劇を上演している中身と上演する人間を重ね合わせただけかと思いきや、それから、さらに展開していく。
    息子としゃべっていくうちに心が乱れていく姿がかわいらしく、そしてさらなる展開が、苦みを持ってくる。
     渡辺美佐子、まだまだ元気。

24)2009年5月13日(水) 赤坂レッドシアター イキウメ  ☆
   「関数ドミノ」 前田知大・作・演出 
     赤坂レッドシアターに初めて入った。一階には外人さんばかりがビールを飲んでいるカフェ?バー?
    劇場は手頃でしかも客席は急傾斜、各座席にはテーブルまでついている。
     幸福のドミノ、思ったことを本人が気がつかずに実現してしまう。神から与えられた運の良い奴。
    ドミノの回りは傷つけられる。だけどあいつはドミノなんだ、だから自分は損しているんだと思うことで自己満足できる。
    あり得ない交通事故を巡って売れかけの作家がドミノだろうと立証実験を始める人間。
     ドミノに怒りをぶつける提唱者がいかにわがままかみんなが気がついていく。そして結末はわがままがテーマとなる。
    さらには、強い意志を持ったわがままな実現者はヒットラーに通ずると言い放つ。
    事件をくみ上げていく運びに不満はない。自己満足と自己否定の連鎖もわかるけれど、その現実感が重いし軽い。
     誰もがあることだと思うけれどそこまではしないと思う客の心が無視されている気がする。そこに行くとポツドール
    面白かったな。
     

 )2009年5月11日(月)
  「ヲ競艶仲町」 南北 HDD
     橋之助・福助 
   橋之助の与五郎、後半小気味良いかも

23)2009年5月10日(日) 花園神社 紅テント 唐組  ☆
   「黒手帳に頬紅を」 唐十郎・作・演出 
    まだまだこの人若いなあ。似顔絵描きがもらった黒手帳に導かれ鏡池の下に潜っていくと……。
   わかる必要ないと、台詞の旅に変わるDFやT1のアンバーやブルーの明かりと、臆面もなく変わる音楽を
   楽しみ、テントの奥があいて端の席から見えぬところから、みんなの拍手を受けながらの登退場みていると
   興奮のうちに終わりまで突っ走れる。それにしても客は若く、キャストも若くて、梁山泊より品もよく感じてしまった。

22)2009年5月10日(日) 新橋演舞場  ☆
   「祇園祭礼信仰記 金閣寺」 芝雀・吉右衛門・染五郎   「らくだ」 歌昇・吉右衛門・由次郎 
    いかにも歌舞伎の派手派手さ。文字が桜。桜の巨木が二本。金閣寺の下手側庭に巨大な滝。
   向こうも見えなく降る桜吹雪。ネズミが雪姫の前に飛び上がると、桜となって飛び散る。雪姫が結構きれい。
   大善が中央台上で決めとなってちょんぱー。
     落語のらくだそのままに、実際に演じたらどうなるか。死体の動きが面白く、逃げ惑う段四郎が足が立たぬ様やら
   楽しそう。くず屋の久六が酒が入ると人格が変わるのもパターンでおかしいのだが、さてその時同時に起きる血なまぐさい
   事件は必要なのか知らん。

  )2009年5月6日(水) HDD  モダンスイマーズ  ☆
   「夜光ホテル」  蓬莱竜太・作・演出 
   函館のホテルのスイートルームに三人の男。かつて八ガラスと呼ばれた悪どもの一部。
   16年前に抜け今は青森でりんご園を開いているメンバーが呼び出され、仕事に巻き込まれる。
   さらにルームサービスのボーイまで巻き込まれにっちもさっちも行かなくなる。
     暴力、と悪。ああこういうタッチが蓬莱竜太なのかとおもった。パンセは無理矢理な気も。
    最後にリンゴをしゃりしゃりと食う。それがいい。

21)2009年5月5日(火) スズナリ  渡辺源四郎商店  ☆
   「3月27日のミニラ」 畑澤聖悟・作・演出 
   「シューさんと修ちゃんと風の列車」「県立戦隊アオモレンジャー全国放送版」ドラマリーディング
     劇の象徴を何かにたとえる。今回はゴジラの子ミニラ。親の傘をきて、けれど孤独。
    河童のように60分の中には収まらない。大人たちの世界が広がるから。その分物足りなく思った。
    舞台美術節約なのかなあ。
     シューさん……は寺山修司と太宰治が自殺まがいの少女と汽車に居合わせる。生音響楽しい。
     アオモレンジャー、かけねなく面白い。拍手。
   

20)2009年5月4日(月) 新橋演舞場  ☆ 
   「鬼兵犯科帳 狐火」中村吉右衛門 「お染め七役」 ・福助  
     鬼平が面白い。フル装備の舞台で転換に時間はかかるが、しまっている。
   二代目に二度と盗みはしないとの約束の証文に、腕を差し出せ、へい、スバッと腕に刀傷をつける所など、歯切れが良い。
   染五郎の悪役、かっこよすぎで、苦しみ見えないかも。芝雀のおまさ、女形ってこうやるんだよとか思った。
    福助はやはり顔が濃いなあ。

19)2009年5月1日(土)   本多劇場   ナイロン100℃ ☆ 
   「神様とその他の変種」  ケラリーノサンドロピッチ・作演出  犬山イヌコ・みのすけ・峯村リエ・大倉孝二
     いきなりホームレスの神様が出てきて「私は神様です」となのる。はじめは別役。引きこもりの小学生に家庭教師がついた。
    家庭教師は過去が思い出せない。小学生がよその子の顔を棒で殴って歯を折ったと、被害者の両親がやってくる。
    動物と話ができる小学生は、とう゛やら逆にいじめられていたようだ。このあたりから転移21になってくる。
     小学生の母は気に入らない相手に色つきのカップで紅茶を飲ませ、それを飲んだ人は行方不明になる。
    掲示の探りも入りわかってくるのは小学生の父が家族を守るためにしていた事、ここいらからケラの世界になる。
    どうどうと別役実と山崎哲を借りて、最後おのれの作品を作った。

18)2009年4月26日(日)  スペース雑遊  ツツガムシ ☆  
   「ヤコブ クラヴィエツキ」  林竜之助・作演出  二瓶鮫一・占部房子
     ワルシャワゲットー、子供が駅での待ち合わせに来なかった。
    母親はそのときから正気を失い、ゲットーに収容された今は自分を17歳と思っている。
    18歳の誕生日に若い音楽家と恋に落ちるのが彼女の夢。召使いのように見守る夫は、ゲットの中の俳優に恋人役を依頼する。
    50万人居たゲットーのユダヤ人はついに東方におくられることになる。それにあらごうとする夫と、従おうとする俳優。
     40年後、ロスアンゼルスの売春婦がボスに頭が上がらない男を手錠で縛り付け危険な脱出をする。
    ベンチにホロコーストの生き残りの俳優が青酸カリをあおって倒れている。
     時間は再び40年前に戻り、収容所に着いた時ナチの援助を拒んで死んだ夫と、ガス室で死んだ妻が再会する。
    そして40年後、売春婦は俳優の手助けにより本格的な自立の旅へと出発する。
     ホロコースト・ワルシャワゲットー、懐かしく見た。
   そしてこのテーマで今思うのがイスラエルとパレスチナ。これを思わずしてこの劇は成立するのだろうか。
    ゲットーの中での中での我が身を18歳と思う妻。何か嘘っぽく感じてしまう。
   顔立ちが18歳を無理矢理やっている役者と見えてしまうからではないだろうか。夫の顔の年齢とつりあう俳優だったらどうなるのだろう。
   アンネの日記の造形と同じ造形、キャスト間違いかと苦しんだ。
    がらっとかわってロサンゼルスの娼婦。これはあてがきかと。強引な筋運びを、正当化させてしまう。危ない役は「ささやく声」
   以来かなと思うが、色気もかわいさも激しさと同時に要求され応えていた。それにしても強引だ。

17)2009年4月22日(水)  インボイス劇場 ☆
   「ブルーマングループ」 
     芝居ではないが劇場で見たのでここに。幕開き前から電光掲示板で笑いをとる。
   岩手からの修学旅行生が入っていて客席後方は大騒ぎ。ドラムで幕開き。客を舞台に上げてのショー。
   一言も口をきかない彼らは、目と顔の向きと体で言葉を伝えてくる。客は正確にそれを受け止めている。
   笑って興奮して、それだけと言えばそれだけ。パフォーマンスと言うこと。

16)2009年4月19日(日)  新国立劇場小ホール ☆
   「シュート・ザ・クロウ」    オーウェン・マカファー ティー・作 田村孝裕・演出 伊藤雅子・美術 中川隆一・照明
     開場と同時に壁にタイルが貼られていく。最上階がどうやら一階。二階か三階ともう一つ上の階の部屋に別のスタイルのタイルが貼られていく。
    余分に届いたタイルを盗んで金にしよう。それぞれの部屋で別々に相談がまとまる。別の部屋にいる二人が昼休みにどっかいったすきに
    タイルを盗み出しちまおう。ところが一人が抜けかけたところで話がねじれ、妙な三角関係、そしてよじれた四角関係になり
    笑いが多発される。けれどどうしようもなく仕事は進み、また一人世を去っていく。
     若者の台詞は何を言ってるかわからず、それが「何言ってるかわからねえ」の台詞で吹っ飛ぶ。
    暗転の間にタイルが全て貼られていて時間経過を示す。

15)2009年4月18日(土)  紀伊国屋ホール  青年劇場
   「ばんさんかい」    高瀬久雄・作・演出 伊藤雅子・美術
     理屈。理屈を展開するためだけに役者が均等に使われていく。芋煮のにおいが客席にあふれてくるだけに何とかならないのかと思う。

14)2009年4月17日(金)  日生劇場
   「赤い城 黒い砂」    シェークスピア・原作「二人の貴公子」より 蓬莱竜太・脚本 栗山民也・演出  片岡愛之助・中村獅童・黒木メイサ 
     赤い国と黒い国はいつも戦ってきた。名乗りを上げ一対一で戦う。黒の国の二人の戦士の前に立ちはだかったのは赤の国の王女。
    戦いの中、黒の獅子は恋を感じるが、そこに大量破壊兵器が飛んでくる。牢獄から人質としてだされたもう一人の貴公子が、赤の国に残り、
    身を隠し、王女の親衛隊長隊長となっていく過程などシェイクスピアらしさを感じ楽しくなってくるが、全ては死の兵器商人の作り出す、
    戦いの構図、と繰り返す説教臭さがうるさい。二幕に入るとますます理屈っぽくなり、牢番の娘の怨念など、訳がわからなくなってくる。

13)2009年4月15日(水)  シアターグリーン ビックツリー  鳥獣戯画 ☆☆
   「春でもないのに」    知念正文・作・演出・振り付け 雨宮賢明・作曲 
     大きな舞台での再演・演芸会ネタなど二度目であるだけにどうなっちゃうのかと不安になったけれど
    ユニコが大きくなって子供に見えなくなって不安になったけれど、ギターがはじかれ歌が始まると、これでいい、
    と、思ってしまう。パターンなんだけれどパターンって強いなあ。

12)2009年4月12日(日)  シアタークリエ ☆
   「ニュー・ブレイン」    ウィリアム・フィン・作詞作曲 ダニエル・ゴールドスタイン・演出 石丸幹二・マルシア・畑中洋
     久しぶりのミュージカル、それだけで楽しかった。意味もなくマルシアの歌におーっとか思ってしまう。
    売れない作曲家が脳の血管障害、手術をして、失敗すればあるいは死、あるいは廃人。
    子供番組の作曲に忙しく取り組む中から、発病、検査、母を呼び、恋人を呼び、幻想から歌が始まり、手術に及ぶ。
     大小のサークルになったジョーゼットがぐるぐる回り、色とりどりに変わる大きな光るリングが下りてきてMRIになったり
    天使の頭の輪になったり、シンプルだけれど工夫されたセット。

11)2009年3月22日(日)  歌舞伎座
   「元禄忠臣蔵より 南部坂雪の別れ・仙石屋敷・大石最後の一日」    真山青果・作 真山美保・演出 伊藤熹朔・美術
     雪深い泉岳寺に現れた浪士たちと団十郎の内蔵助、討ち入りの決心を人に隠すためにそしりを受けている。
     討ち入り後の朝、仙石屋敷に集まった47士。
     朝の門前からの導入は面白いとして、片岡に左右衛門の内蔵助を中心とした報告会、
     主君の遺志をついでの仇討ちであるとの訴え……やっぱりわからないよ。赤穂浪士のやったことって。
     幸四郎の内蔵助は、切腹の場に出る直前の内蔵助の思いやりを描く。ここだけ歌舞伎ではない。
     琴の爪をもっていた十郎左右衛門(染五郎)が恋をしていて、
     その相手が死の間際訪ねてきているそれを討ち入りのためだけに利用したのではないと、わからせて切腹に向かう。
     歌舞伎には珍しくあかりも暗になって終わる。

10)2009年3月15日(日)  阿佐ヶ谷プロット  ミカヅキミナト
   「赤鬼」    野田秀樹・作 霍本晋規・演出 
     第一回公演との事。とんびが座長。4人の力量はまあ頑張っているのだけれど、水銀が女というのはあまりにも無理がある。
    どんな下手な役者でもいいから男にやってほしい。とんびを女がやればよかったんじゃないの?金取るんだから。

9)2009年3月15日(日)  新橋演舞場 ☆
   「獨道中五十三駅」    鶴屋南北・作 市川猿之助・演出 金井俊一郎・美術 吉井澄雄・照明
     刀と印の家宝を巡って京から江戸までそれぞれの宿場での出来事をつないでいく。全体としては特に意味もない。
    一幕目は最後の化け猫が楽しい。おー役者(右近)楽しんでるなあ、と様々な声色を楽しむ。
    殺され化け猫にあやつられる女房がすごい。とんぼ、きりきり舞い、型だけでないアクションと踊り、下座音楽、
    拍手が出るわけだ。
     二幕目は滝。三国志の滝の立ち回りの亀次郎と比べると物足りないけれど、滝が倒れて本水があふれる
    しかけは楽しい。
     三幕目は15役の早変わり、というけれど、イヤホンガイドで聞いていた私は何役目と数えられたけれど
    あまりに変わりすぎていて別の役者が出てきたと、早変わりに気がつかずおもしろさが半減する人も。
    まあとにかく、一人で15役やってそれなりにみせられるぞというだけの芝居なので、ストーリー全く関係なしなのが
    やはりもったいないかなあ。

8)2009年3月4日(水)  シアタ−トップス ポツドール ☆☆☆
   「愛の渦」    三浦大輔・作・演出 田中敏恵・美術
     非常に計算された芝居。オープニングから音楽ががんがん鳴り響くマンションの一室。
    台詞が何も聞こえないままでも空気がしっかり作られていく。時刻を映し出される白い幕が暗転幕として使われ
    完全暗転の後、一気に明るい乱交クラブの待ち時間が現れる。この幕と暗転と次のシーンの始まりが強烈。
    マンションの上の部屋はベッドが三つ並んでいるがそれもはじめはスクリーンできられていてわからない。
     仕掛けがものを言っている。演技に嘘がないように仕組まれている。
    それは誰もが覚えがある裸のコミュニケーションを求める瞬間。会話が弾まない、なんとか通じようとする。
    徐々にクラブの本質が達成されるとそこは饒舌な世界、全員がそれぞれ何か語り合っていて大騒ぎ。
     やがて、そこに喧嘩がはじまり、仲違いが始まる。その頃に遅れてきたカップルが、気にしないすよっと
    いいながら、さっと変わっていく。そんなところも人間らしく。初めてで下手だった男がテクニシャンといわれるように
    成長し、乱交の中でもしかしたら本当のカップルが誕生したかもしれないのをたくみに引き離し、窓を開けて
   強烈な朝日を部屋に呼び入れ、セックスのけだるい後のように人々は去っていく。
    こんな本かけないしかこうとも思わないけれど、この役者や劇団が何歳までやっていられるかもわからないけれど
    性という強烈な媒体でしっかりできた芝居を感じた。
    

7)2009年3月3日(火)  梅ヶ丘BOX 燐光群
   「屋根裏」    坂手洋二・作・演出 じょん万次郎・美術  鴨川てんし 占部房子
     前説が英語、ヨーロッパ帰りらしい。噂には聞き、台本も読んでいた、屋根裏のセット。
    基本の軸は弟がこの近年売り出された屋根裏キットの中に引きこもったまま死んだという事。
    その兄がここをたずね、だれがこの屋根裏を発明したのかを探っていく。
     閉じこもっていた屋根裏の壁には落書きがあり、その男も具現化する。
    屋根裏は売りに出され、こもりたい女に買われて、と、一応のつなぎはあるけれど
    こんなところにこもっているのは誰か、そこから出てくるイメージは何かと次から次へと
    シチュエーションが変わる。登校拒否の女子中学生だったり、その先生だったり。雪山だったり。戦場だったり。
     入り口が奥の扉だけだと思ったら上からも下からもあくようになりイメージが転がっていく。
   最後には屋根裏を形作っていた黒パネルがはけ、本当に立体的な屋根裏が現れる。
     そのイメージの連鎖を楽しめばいいのか。

6)2009年3月1日(日)  吉祥寺シアタ− モダンスイマーズ
   「トワイライツ」    蓬莱竜太・作・演出 鶴田真由 山本亨
     「あなたとはうまくいかない気がしていた」別れ話。
    野球カードで遊んでいた小学生達。その三人の男の子があこがれているのが中学生の女の子。
    けれどその兄貴は猛獣と呼ばれる飲んだくれ。小学生のカードを取り上げ燃やし。
     そんな兄貴に困っている女の子を助けてついに結婚する男の子の話が第一話。
    同じシチュエーションで、株でのしあがる男が彼女と結婚する話。
    同じシチュエーションで、豪快な男が結婚する話。
    やがて飲んだくれの兄貴が誰なのかとぐるっと回ってくる。
     めぐり逢う時間のような、それぞれの話は大してふくらんでは行かないのだけれど
    話をもしこうだったらと展開していく、しかけで引っ張ろうとしている。
      でもだったら女の子はもっと引っ張られていく、あるいは引きずり回す、魅力があっていいのではないか。
    

5)2009年2月15日(日)  パブリック・シアター こんにゃく座
   「ネズミの涙」    鄭義信・作・演出 萩京子・作曲
     ネズミの扮装をして紛争に巻き込まれてでも強く進む夫婦の旅芸人。
    肝っ玉おっかあの幌馬車の代わりにブリキのバスを押す。朝鮮のサムルノリののりでこなす。
    ネズミに託しただけあって話は単純。
    クマネズミとドブネズミの戦地の間を渡り歩く旅芸人の天竺ネズミの物語。
    天竺ネズミの持つ演目は西遊記のみ。猪八戒がお父さん、孫悟空が息子、三蔵が母、
    その活劇を面白く見ていけばいい?けれど戦いに巻き込まれて息子は民間人を虐殺し英雄と祭り上げられ
    死に、妹は恋人を助けようと太鼓をたたき続けて殺される。どちらの時にも父は「最初っから子供はいなかったんだと
    思えば耐えられる」と母を慰めるのだが。
     子供向けオペラとしてはいいのではないのかな。でも、ネズミに託したらやはり絵空事で終わってしまう気も。

4)2009年2月14日(水)  吉祥寺シアター  MONO
   「床下のほら吹き男」    土田英夫・作・演出 柴田隆弘・美術
     なかのよい四姉妹の家に穴が開き、リフォーム屋が呼ばれる。
    その穴の中は広々とした倉庫のようであり、そこにまたわけのわからないほら吹き男が登場する。
    インチキリフォーム屋のキャラの違いと個性のはっきり違う四姉妹の思いの違いが
    ほら吹き話でお互いの傷が誘発されてくる。ほら吹きはあくまでもほら吹きで。
      遅れてしゃべるキャラって楽しいけれど、何かパターンかなあ。最後に姉が父母を殺したのは
    私でだからあんたたち妹が怖かったというのは無理矢理過ぎないかな。

3)2009年2月13日(金)  シアター・トラム ☆
   「ピランデッロのヘンリー四世」    ピランデッロ・作 白井晃・演出 松井るみ・美術 斎藤茂男・照明
     写真スタジオをイメージしたセット。雪、木、城、の映像が現れる。
     カノッサの屈辱のヘンリー四世。その世界が始まったと思ったら、そこに新しい役者が入ってきて現実に戻る。
     ただその現実が信じられない。王様のいうとおりにすればいいのだという。王はこの家の主人。気が触れているらしい。
      そこに主人の恋人だった女と夫と娘が医者を連れてやってくる。この家の主人を刺激しないためとりあえずは
     11世紀の王様や王妃の格好をして主人の前に現れる。現れた王は、やはり狂っている。公爵夫人の手を取り顔を寄せ
     恋敵の男をけちらかす。いったい本当に狂っているのか居ないのか。いったいこれは何だと、思っている間が面白い。
      顔の寄せ方はあきらかに男が女に迫る姿。やがてわかってくるのは20年前に仮装姿で馬から落下して狂ったこと。
     そして実は狂っていたのは12年間だけで、その後は狂ったふりをしていたのだということ。
      虚々実々。それが緊張を続けさせる。

2)2009年2月11日(水)  シアター・トップス スロウライダー
   「クロウズ」    山中骼沽Y・作・演出
     島にウィルスの感染者たちが生き残っている。彼らはすでに一度死亡しゾンビとなっているが防腐剤の力によって
    生きながらえている。ウィルスの絶滅をはかって防腐剤の配布を止めようと二人の県職員が派遣されてきた。
     と、設定は、うん、さあ、どうなるかと思わせ、トップスいっぱいのセットとゾンビの恐怖の登場で最初は引っ張るのだけれど
    ゾンビに人格があり、平等を求め、仲介に入った者が努力し、などとなると、いかにも古く、情けない状態に

1)2009年2月8日(日)  シアター・コクーン 野田地図 ☆☆
   「バイパー」    野田秀樹・作・演出 堀尾幸男・美術 小川幾雄・照明 宮沢りえ・松たか子・橋爪功
     今年初めて舞台を見た。コクーンの中央のやや後ろの席。宮沢りえや松たか子には気がつかなかった。
    それほど普通の役者になっていた。野田秀樹や橋爪功はすぐわかったけれど。
     火星、滅びつつある、人間が移住してきてから900年がたった。ストアの店長と二人の娘。
    新しい女の連れ子に、店長は鎖骨の瞳を使って歴史を見させる。鎖骨の瞳を自分の世界にあてたとたん
    世界はワープする。そのワープが興奮する。40人は居ようかというコロスが傾斜の向こうからスローモーションで
    やってくる。キルの時に見た光景だが、まっすぐ向かってくるときは驚く。
     希望に満ちて移住した人々の中に暴力が位置ずく。幸せの計算値だったバイパーが幸せと不幸せを混同する。
    争いの中バイパー値は元に戻っていく。
     けしてわかりにくい台詞の連発ではない。宇宙船にも興奮する。でも、ダイモスの母とフォボスの長い掛け合い
    ついて行けなかった。帰ってきて月間新潮掲載の台本を飛ばし読みした。この方が面白いかもしれない。
    たくさんの言葉のつながりの中でうわーっと思って客は帰っていく。それが野田の芝居。けれどその活字の中には
    たくさんの大切が詰まっている気がする。

  )2009年2月1日(日) 「道元の冒険」 HDD
      井上ひさし・作 蜷川幸夫・演出 阿部寛・木場勝巳
     道元の寺の僧たちが鎌倉の使いの武士やら朝廷の使いやら比叡山の荒法師やら宋の僧やら次から次へと
     演じて、只管打坐、の悟りを開くまでを演じている。が、それは、現代の怪しげな男の夢かもしれず、その男こそ道元のみている
     夢かもしれない。けれどそれは最後には精神病院の患者たちの妄想かもしれない。そこに降りてくる液晶モニターから
     今こそ正しく見る事が必要な狂った時代が写ってくる。
       長いけれどわかりやすく。

  )2009年1月3日(土) 「女教師は二度抱かれた」 HDD
      松尾スズキ・作演出 大竹しのぶ・市川染五カ
     悪夢から始まる。工場で大学で要領の悪い青年がロボットらしきものの生産ラインの一部を
    任されていて要領悪く怒られている。働いていた女工と二人になった時、女工は顔がないと
    騒ぎはじめる。それが風俗で寝ている時の夢。
     青年は小劇場で売れ出した演出家。高校時代演劇の全国大会に出て、上京。明治大学の演劇から
    小劇場に。高校時代に恩師と恋仲になったことが次第に明らかになる。女教師はそれによって婚約を破棄され
    青年を待つが帰ってこず、今東京に出てきた。
      筋立てはわかりやすいのだが、テレビで見るとロボットなどの幻想が幻想に見えてこない。ライブのバンドも
    あたりまえにみえてしまう。生で見るものか。



2008年

2008年に見た劇のベストナイン
 今年は48本
 なんといってもすごかったのは
「焼き肉ドラゴン」

 おもしろかったな全般的に


 「太鼓たたいて笛吹いて」
「親の顔が見たい」  「大阪ぎらい物語」
 「冒険王」「詩人の恋」
「THE DIVER」
「女将」「鬼灯町鬼灯通り三丁目」

ネタバレ承知でどうぞ

44)2008年12月21日(日) 新国立劇場 中ホール
 「舞台は夢 イリュージョン・コミック」 ピエール・コルネイユ・作 鵜山仁・演出 島次郎・美術 堤真一・段田安則 
   まるで大きな谷間をのぞきこんでいるような劇場。
  どんな大きなスケールのお話が始まるのだろうとワクワクしたけれど、話は1600年代のフランス喜劇をぬけてない。
  400年前のフランス貴族の恋愛と下僕の出世の模様。それが洞窟の中に住む魔術師が紡ぎ出し、
  いつかそれがどの時点にいるかが逆転するかという仕掛けがあるのだが、
   ほらふき隊長といい、実感で迫ってこない。

43)2008年12月14日(日) 新橋演舞場  ☆☆
 「大阪ぎらい物語」鍋井克之著・舘直志脚色 「お祭り提灯」 舘直志作・星四郎脚色 藤山直美・小島慶四郎・小島秀哉
   「大阪ぎらい物語」は二度目。でもますます無駄なくこなれて笑えて、「おかあちゃんねついたばかりや」に泣いて。
   50歳で嫁入り前の娘、充分できる。お祭り提灯は、いわゆる喜劇、最後に落ちがついて、来年も頑張りましょうってな雰囲気に。

42)2008年12月7日(日) 駒場アゴラ劇場  青年団 ☆☆
 「冒険王」 平田オリザ・作・演出 杉山至・美術
   久しぶりに青年団を見た。ずいぶんうまくなったと驚いた。15年前見た時の不自然な喋りはねらっていたのではなくて
  下手だったんだと納得。イスタンブールの安宿。一泊二百円。あちこちを回ってきている日本人たちが部屋にいる。
   ヨーロッパから来たもの、インドから陸路来た者、シリアに行く者、三ヶ月前にでてきた在日がもってきたウォークマンが
  話題を集め、山口百恵が三浦友和と結婚したニュースにもだえる。
    この芝居を面白く感じてしまったのは自分もあの空気を味わったからだ。大学の同級生は一年も帰ってこなかったし
  自分も41日間さすらった。そんなもう自分の国がどこだかわからなくなった日本人たち。そこに、日本から帰ってこない夫を探しに来た
  奥さんがあらわれて、息詰まる、どうにも居場所がなくなっておたおたする場や、
  観光旅行の学生の正しい目がやたらずれていておかしい、笑いがこぼれる。
  

41)2008年12月6日(土) シアタートップス 南河内万歳一座
 「夏ざんしょ」 内藤裕敬・作演出
   OA機器の営業マンたちがおでん屋の前に集まっている。大騒ぎの中、照明と音で派手に誇張され、狭いトップスの中を
  あとでひっくり返るセットの前っかわのさらに狭い場所に二十人ほどの営業マンたちが梅雨の熱さにうだっている。
  夏の暑さに気を失ってどちらがこちらかわからなくなったイントロから比べ、えっ、ただのカツオ船の資金繰りがつかなくなった話?
   ペテン師としての成功?けれどやっぱり海原への憬れ?もっともっとロマンにつれてってくれてもいいのになあ。

40)2008年11月28日(金) 紀伊國屋サザンシアター こまつ座 ☆☆
 「太鼓たたいて笛吹いて」 井上ひさし・作 栗山民也・演出 石井強司・美術 服部基・照明 大竹しのぶ・木場勝己・梅沢昌代
   最初のうちは、騒がしい。平凡な歌だながさつだなと。六人の登場人物。
  ポリドールレコードのプロデューサーが林芙美子に歌詞を頼みに来る。そこに島崎藤村の姪がくる。
  林芙美子の母の行商仲間の二人が来る。騒がしい中に、林芙美子は貧乏をねたにした「放浪記」から従軍記者となり
  お国の片棒をかつぎ、敗戦後、かかなくちゃねと復員兵や戦争未亡人の話を書き続けて早死にする。
   そんなにも激しい人生だったかと。お骨を前にぐっと静かになった母を見て涙ぐんだ。後半はシャープ。
  漢江の放送を聞く母からどうしようもない沈黙が響いてくる。長野の役場でのいかりから、死んだはずの男が帰ってきた
  理不尽さまでまっすぐになんの迷いもなく言ってくる。これはなあにと。

39) 2008年11月25日(火) 船橋市民文化ホール                            前進座
「山椒大夫」 ふじたあさや・作 香川良成・演出
 説教節。念仏集が客席入り口より登場し、舞台はお経であふれる。この枠の中でなんとも残酷な話が展開される。
のんびりした狂言風お芝居にたるいなぁと思いつつみる。舟の表現など参考に。
 水攻め火攻めの安寿殺し。ノコギリで首落としの意趣返し。出世した厨子王が次郎に地頭の地位を与えるなど
それが人々がほしがった事なのだろうか

38) 2008年11月3日(月) 大宮ソニックシティ                                       キエフオペラ☆☆ 
「トゥーランドット」 カルロ・ゴッツィ・作 プッチーニ作曲
 召使いのリューが、その人の名前は言えぬ、その人への愛の為に死ぬといって兵士の剣を奪い胸に刺す。その歌が、いや状況が泣ける。
そんなバカな、えっ、その後王子は、召使いの犠牲の力を利用して、姫の心を得てしまってハッピーエンド?
男のエゴじゃん。と、思いつつも字幕を見ながらの音楽と歌にはまってしまった。
 ここでトゥーランドット姫が、男を受け入れるには、二幕で謎解きの時にしっかり揺れておく必要があったのだ。それは揺れていた。
ここで姫が男を受け入れるには、いかに北京が残酷な街になっていたか、
氷の心を持つ姫の恐ろしさを皆がおそれていたか大切になるのだろうな。
 解説を読んでいたのと同じ量のストーリーなのでわかりやすかった。その上であの単純な謎解きのシーンが
興奮できるのは、音楽の力なんだろうな。本場のオペラ座でも見てみたいがそこでは日本語字幕はないのだろうな。

39) 2008年10月26日(日) 紀伊国屋サザンシアター 加藤健一事務所☆☆   
「詩人の恋」 ジョン・マランス・作 久世龍之介・演出  小田島恒志・翻訳 岩谷時子・訳詞 石井強司・美術 加藤健一・畠中洋
 幕が開くと所々をカットしたウィーンの大学315号室。ピアノを教授が弾いている。必ず同じところで間違える。間違えた手を叩く。また間違える。叩く。
ウィスキーが手放せない。やっと明るくなって部屋の全貌が見える。
 アメリカからホフマンがやってくる。天才ピアニストだが一年もピアノが弾けないでいる。声楽家のレッスンを3ヶ月うけるように
指示をされたのだ。シューマンの歌曲集「詩人の恋」を一番目からレッスンしていくうちに、いらだったホフマンの怒りは、マシュガン教授への
尊敬の念へと変わっていく。16シリングのパンを20シリングと偽る教授だが、歌の心がわかっている。
 プロテスタントのホフマンはミュンヘンに行き収容所を見に行く。あれて帰ってくる。教授は自殺癖がある。
二人芝居。明瞭な発音と、見事な歌声と、頑張っているピアノで加藤がそこにいる。過剰かなと思う髭と白髪の中でこれでいいのだと思ってしまう。
畠中の方は自然の発声を、そして見事なピアノを。
 音楽を通じながら悲しみと喜びが同一に存在する人生の深みを味わっていく。

38) 2008年10月11日(土) シアタートラム                                      ☆☆           
「THE DIVER」 野田秀樹・作演出 野田秀樹・キャサリンハンター
 障子をイメージ。後ろにはかけてぼこぼこした満月。下手端には太鼓・銅鑼・鉦など。
刑務所の中、犯罪を犯した女、二人の子を焼き殺した女ゆみが精神科医の元に連れてこられる。
彼女への質問「今日は誰?」。海底から子を救い出した海女。葵の上、夕顔、六条の宮、つぎつぎと変わっていく。
女は源氏物語と重なりながら、妻子ある男をうらみその子たちを焼き殺したらしいとわかってくる。
自分の子をかきおろしたらしい事も。あるいはそれは源氏物語の中だけかもしれないが。
死刑が確定し、つられ、野田とキャサリンは再びダイブする。
 あきる事無く、筋を必死に追いかける。今回は太鼓など楽隊がいたのも多いに参考に
37) 2008年10月11日(土) 歌舞伎座                                     ☆          
「恋女房染分手綱 重の井」「奴道成寺」「魚屋宗五郎」「藤娘」 福助・松緑・菊五郎・玉三郎・芝翫
 嫌じゃ嫌じゃの嫌じゃ姫を慰める為に馬子を呼んだがその馬子が別れた息子であったの「重の井」、やはり、子とわかれる気持ちがわからないなあ。
菊五郎の宗五郎、笑えた。無理矢理の大団円も笑えると和やかに許せる。玉三郎のおはま、面白く枯れてていいなあ。
暗転からぱっと明かりが入る、予想はしていたけれどおおっと声が出る。80歳の芝翫の藤娘。濃い。

36) 2008年9月7日(日) 新橋演舞場                                                                    
「源平布引滝〜義賢最期・竹生島遊覧・実盛物語」「枕獅子」 海老蔵・権十郎・時蔵
 平家に下った木曽義賢の元に、三人ずれが尋ねてくる。七年前に失踪した夫がここにいるから合わせてくれと言う。
その夫は源氏のゆかり、それを見破って、源氏の御旗を託し、義賢は平家と戦って死ぬ。
 白い御旗は尋ねてきた女に渡され、彼女は琵琶湖で源氏に密かに心をよせる、実盛に腕を切られて死ぬ。
義賢を詮議に来た平家の武将が実の父であるなど、どんどん勝手に筋を結びつけてしまう歌舞伎の乱暴さにあきれるが
まあそれもありかな。ふすまの上に立ちそれを崩す。さかさに階段落ち。ふすまが倒れると遠近法によって巨大に見える海老蔵。
 それ以上に、首をはねる、腕を切る、などなんと残酷な場面を多発する芝居か。

 枕獅子は鏡獅子の元。胡蝶の舞、頭をまわすなど後半は全く同じ。

 )2008年8月24日(日) 「音楽祝祭劇 トゥーランドット」 HDD 
     鈴木勝秀・脚本 久石譲・作曲 松井るみ・美術 中川隆一・照明 ワダエミ・衣装 宮本亜門・演出
      アーメイ・岸谷五朗・中村獅童・安倍なつみ
      オペラに似ていて違う。三つの謎はあっという間に解き終わり、トゥーランドット姫はカラフ王子の恋に落ち、平民出の将軍が
     二人を引き裂く。力で国を治めるというテーマと恋がうまくかみあわない。終幕近く、力で押さえ込もうとしたが、平民の力が沸騰して
     というあたりがいかにも苦しい。巨大なドロップ、動く階段、群衆の衣装、日本語がたどたどしい姫は面白い。

35) 2008年8月23日(土) スズナリ                                                  トムプロジェクト     ☆☆
「鬼灯町鬼灯通り三丁目」 東憲司・作・演出 島次郎・美術 秋野暢子・川島なお美・富樫真・六角精児
 昭和21年、女だけの三人暮らしの所へ、男が帰ってきた。部隊全滅の報を受け、葬式まで出した死んだはずの男・大吉が引き上げてきた。
妻はたった三日間の夫婦だったからと男の事はきっぱりと忘れ、好きだった勇佑を待つ事にし、その勇佑の母と、母の仕事仲間と暮らしている。
死んだと思われた男は立場がない。けれど町の人は奇跡の生還と、期待する。女郎屋を仕切っていた母は、大吉の髪の毛でお守りをつくり大もうけ。
御利益に預かった人から、奇跡の生還が伝えられるにつれ、帰ってこない恋人を待つ女と母の悩みは深くなるばかり。
 4人だけの登場人物にしぼり、あとの人は玄関の引き戸の開け閉めで表す。お客をまきこんでの商売も楽しく、鬼灯のあかりが動き回るのも
川島なお美の、わずかなボタンをかける仕草も色っぽいし、桟敷童子風のがなり立て芝居をこの四人がするのが面白い。
 雨戸の不思議さ、鬼灯の光りなど、島さんらしいが、桟敷童子の強引なしかけも見たかったかな。。

34) 2008年8月15日(金) 新橋演舞場                                                                    
「幕末純情伝」 つかこうへい・作・演出  石原さとみ・真琴つばさ
 まず音楽からはいって、女の子がかっこつけて。幕末と昭和が入り交じって。
坂本龍馬が憲法9条と婦人参政権を新しい日本の憲法に入れたいと主張、だから皆に殺されかける。
沖田総司はみかどの労咳持ちの娘、赤ん坊の時から新撰組に育てられ……。
沖縄の悲劇の責任は、若狭の貧乏の責任は、アメリカ軍にこびを売っていた日本の責任は
などと口立てでイメージをふくらまし、色っぽく、沖田総司は女龍馬を切り捨て、自由の戦士となっていく。
 笑って楽しめていればいいのだけれど、客の笑いは、すべて「あらあら役者さんて大変ねえ」といったたぐい。
イメージを共感できたかつての客たちではないし、それはすでに、つか自身あきらめているように見える 
33) 2008年8月2日(土) スズナリ                                                        グリング            
「ピース 短編集のような」 青木豪・作・演出
 他の劇団に描いた短編作品が2つ、そこに4つの短編をくっつけて一本にしちまおう。蛾が大発生した街の病院。鱗粉があちこちにつく。
入院中の彼女が携帯でメールを打ち続けている。不安で仕方がない。
子供のぜんそくで病院来ている不動産屋の社長。偶然女の教え子の父親。車いすの男性患者。これが外枠。
 第一話は車いすの男の弟の妻と、同窓の夫婦一組。陽気な夫婦は浮気騒ぎで大騒ぎ。車いすの弟夫婦は兄を迎える事でいらだっている。
       そしてその相談を受けているうちに、不倫関係が見えてくる。
 第二話は、社長の息子が女性患者の教師時代の教え子。外へ出る事が嫌いな子が毎日行ける事になったのが先生のせいだと感謝。
       そこに車いすの男があの女はマルチ商法の手先かもしれないと中傷。粘り強く社長は誤解をほどき、
       車いすの男がしかけた盗聴器を発見、男を責める。
 第三話は、車いすの男を世話している夫婦が、兄を殺し死体を隠そうとしたが、第一話の男が兄にエレベーター掃除を頼まれていた所から始まる。
       弟がドライアイスを買って帰っていざと思うと兄はまだ生きていた。そして復讐をする。これは旧作
 第四話は、社長の愛人を若手社員が問い詰める、その時に第二話の盗聴器が使われる。これも旧作
 第五話は、それらをまとめて、退院した女と、社長。なぞ説明。メールはまだ見ぬ我が子へのブログ。一人で産む重圧で苦しんでいたが
       世の中は汚いが、頑張ろうとで終わる。
  途中何か不快になった。現代の暗部を浮かび上がらせていく、という事なのだが、それをただ暴いて不快にさせて、それでいいのか
  という苛立ちがあった。シングルマザーとなっても生きていくぞという表明はあるけれど、あ、そうという気になった。
客席には扇田さんや小田島さんも来ていたがどういう劇評になるのか知らん。
 
 

 )2008年7月27日(日) 「MIDSUMMER CAROL がま王子とザリガニ魔神」 HDD ☆☆☆
     後藤ひろひと・作 G2・演出 吉田剛太郎 春風亭昇太
     連夜にわたって吉田剛太郎。
    仏壇を見に来たへんな男が、持ち主の若者に仏壇の中にある写真の人物と、絵本について語り出す。
    たたき上げの社長が入院。心臓か?人に嫌われるわがままジジイ。自殺未遂の俳優をたたき出す、花壇の花は引っこ抜く。
    ところが絵本を手にした少女にちょっと引っかかる。翌朝ライターを亡くしたことに気がついたジジイ、
   少女が持っていたので腹を立て
    少女を撲っての大暴れ。ここで場面は元に戻り、その少女の記憶は一日しか持たないと明かされる。
     さらに翌朝、すっかりと記憶を失った少女は、ジジイが頬に触れた時、「昨日も?」と問いかける。
    白紙になった記憶の一部に自分が残っている。
    わがままジジイは一生にはじめて涙を流す。なにかこの少女にできないか。誕生日にもらった絵本のがま王子の話、
    水草の不思議な花に
    何かを気がついたがま王子の話を病院のみんなで演じよう。
     録画ながら、泣いてしまった。ひどい話も面白いかもしれないけれど、こんなのがやりたいんだと、思ってしまう。吸収できないか。
      

32) 2008年7月26日(土) パルコ劇場                                                        パルコプロデュース  ☆            
「Sisters」 長塚圭史・作・演出 松たか子・鈴木杏・吉田剛太郎
 シェフでもあった一家の女主人が自殺した為に寂れたホテルに、東京のレストランのシェフと、その新妻がやってくる。
ホテルのオーナーがいとこのシェフに料理を教えてもらおうというのだ。二人が案内された部屋は、女主人が実した時に発狂した女従業員が
洗剤を使ってこすりつづけている部屋。その異常さよりも、ツインの部屋でベッドが二つに分かれていることに対する新婚の妻の反応がさらに異常。
ヨーロッパでの新婚旅行中の夜、なにかがあった。
 この部屋と同じ間取りの部屋が他にあって、そこには奇妙な父と娘が10年も住んでいる。父は女主人の兄である。
この二組が接触していく毎に、父に傷つけられた彼女の地獄が広がっていく。
 大変な緊張をしながら謎解きに熱中している間に、黒枠で区切られたフロアーにいつの間にか水が満ちてきて、パニックを起こしている人々は
いつしか水の中で争うようになる。詩をイメージする曼珠沙華が冒頭に切り取られてくるが、血のイメージと供に死人花の花だけが
舞台奥より流れ出てくる。
 あきないね。

31) 2008年7月24日(木) 船橋市民文化ホール                                                        テアトル・エコー              
「ルーム・サービス」 ジョン・マレー/アレン・ボレッツ作  酒井洋子 訳・演出 安原義人・熊倉一雄
 文化ホールの箱のせいだろうか。前半何故か弾まない。70年前の芝居。ブロードウェイにかける芝居の話。
キャストを集めてホテルに泊まらせ五ヶ月も稽古をしている。けれどお金はないのでつけがたまるばかり。
ホテル経営者の査察が入って、客を追い出せという。当のプロデューサーはスポンサーがついてくれないでやきもき。
貧乏人の作家も出てきて、仮病を使って、抱腹絶倒になりそうなのだけれど、その一歩手前といった雰囲気。
終幕近くになると笑い声も大きくなった。ベテランから熊倉までのもうこれは日本の喜劇だよといった遊びが楽しいのだけれど
少し聞き取りずらかった。マイクシステムのせいかな。役者の遊びなら藤山直美のファンの方が素直に反応するし、
ブロードウェイどたばたならもっと笑いたいなと。

30) 2008年7月20日(日) あうるすぽっと                                                   ☆☆         
「シンベリン」 ウィリアム・シェークスピア 山崎清介・脚本演出 伊沢磨紀・
 子供のためのシェークスピアを舞台で見たのは初めて。
木の机と木の椅子が城壁も部屋も山もあらわせる。黒いコートの八人がハンドクラップで登場したときから、おおっと思ってしまった。
役がはっきりするにつれて黒コートを引きはがすと役の人物になる。役が終わると黒コートに戻り舞台を進行し、別の役も演じる。
スピードのあるやりとりで、複雑な長い話をぐいぐいと進めていく。
ブリテン王シンベリンは娘と一緒に育てていた男が、娘と結婚したので追放する。二人は指輪と腕輪を交換し変わらぬ愛を誓う。
追放された男はイタリアで妻の貞淑を自慢したために、反感を買い、妻を賭の対象としてしまう。
妻を口説きにかかったイタリア人は失敗するが嫉妬にたるだけの材料をあつめイタリアに戻って男を狂わせる。
単純な話だが、誰でも引っかかる嫉妬をエネルギーとし、シーザーの侵攻とイギリスの戦いを舞台とし、巧みに組み合わせて
見事にハッピーエンドをくみ上げる。笑いながら興奮しながら、うまく言った事に涙しかけながら、
エンディング、イタリアとブリテンはこのとき見事な戦争終結をしたが、この後戦争はなくならないことを明言して、真っ黒な世界にハンドクラップが響いて終わる。
ん、面白い。


 
 )2008年7月13日(日) 「THE BEE」 HDD ☆☆☆
     日本バージョン 野田秀樹・浅野和之・秋山奈津子 ロンドンバージョン キャサリン・ハンター
     筒井康隆の「毟りあい」をもとにロンドンで3年間のワークショップを重ねてからたちあげたこの脚本
     まずわかりやすい。おそろしい。日本バージョンから見た。紙のセット。映像と紙を破るから作り上げていく。
      脱獄囚に妻と息子を人質に取られた平凡なビジネスマン。ひょんな事から犯人の妻と息子を人質に取ってしまう。
     密室での女と6歳児と犯人。台所と食卓と男と女と6歳児の指。気が狂いそうな設定だ。それをそのまま押し広げて、
     時には官能的にさえなる。
      ロンドンバージョンは男と女が逆転するがそれに気がつかなかった。字幕で全ての台詞がきっちりわかるのも
     日本バージョンと違った所。すける鏡のセットと色彩感覚が赤と黒を基調としているのが違う。

29) 2008年7月11日(金) 赤坂ACTシアター                                                   ☆          
「かもめ」 チェーホフ・ 栗山民也・演出 島次郎・美術 藤原竜也・鹿賀丈史・麻美れい
 もしかしたらかもめをちゃんと見たのは初めてなのかもしれない。田舎にくすぶっていらいらしている青年、トレープレフ。
型にはまっていない新しい芸術を求め、モスクワから戻ってきた大女優の母の前で、恋する人ニーナを使って一人芝居を披露する。
母はこれはくだらないと遊びだし、息子は痛く失望する。おまけに恋人のニーナは母の愛人はやりの作家トリゴーリンに気に入られようと必死。
息子のいらいらは高まるばかり。トリゴーリンはものを書き続けつつ、トルストイには及ばない自分の自覚にいらだっている。目の前の若いニーナに心を奪われる。
母の経済状態は決して良くない。兄の屋敷にこうして身をよせていても管理人にあしらわれてしまう。管理人の娘は息子に実らぬ恋をしながら
しがない教師と結婚してしまう。それぞれの人生の変遷を経て、ついにトレープレフは。
 オレステスのような藤原竜也。自然で色っぽい麻美れい。大竹しのぶのような前半のニーナの美波、けれど後半変化に乏しい。
鹿賀丈史もただのおじさん、年とったものだ。藤田弓子が別世界のような楽しさ。
28) 2008年7月6日(日) 新橋演舞場 ☆☆
「おしん」 橋田壽賀子・作・脚本 石井ふく子・演出 長山藍子・小林綾子・前田吟・山本陽子・赤木春恵・諸星すみれ
 冒頭、雪の河原、父と母と祖母が7つの子を奉公に出す出さないで喧嘩しているとき、さっとあらわれた子役の姿にまず「おぉっ」と思って泣いてしまう。
 テレビドラマの舞台化ゆえに他場面を丁寧に取り替える。雪の場面から、材木問屋へ、雪中の隠れ漁師小屋へ、そして村近くの山道に一幕の間に4つのセット。さすがに暗転で切り替えるしかなかったのか。
 子役も一生懸命、元気はつらつ、普段もの食べているなと感じさせる貧乏生活者?こんな正論でかでかと喋るな!とか思うけれど、ときどきツボにはまってしまう。まことに達者。
 二幕の加賀屋では盆をぐるぐる回し、大きな屋敷がスピーディーに場面が変わっていって気持ちがいい。16歳になり役者交代、あのテレビのおしんが35歳で娘役。
あの頃の面影が残ってる。加賀屋を出て村へ帰ると肺病に姉が倒れ、待合いに売られる所を、姉がおしんを東京へ逃がす。前田吟も最後には寅さんのように暴れ、最後には酒を飲んで踊って命を全うする。
 加賀屋の女将も押し出しよく、ベテランがほどよく力を出して笑わせ、そこここで泣かせる。

27)2008年7月2日(水)  調布市せんがわ劇場 燐光群+グッドフェローズプロデュース ☆
 
「ローゼ・ベルント」 ゲアハルト・ハウプトマン・作 坂手洋二・台本・演出 伊藤雅子・美術  占部房子・西山水木・大鷹明良
   
食肉加工工場、日曜なのにラベル貼りの仕事をしているローゼの所に社長が入ってくる。カイルと結婚するのか?
  僕の気持ちは妻もおまえも愛している。食肉加工の技師が俺の方が好きなはずだ、とせまる。
   ローゼは社長にも社長夫人にも温かく見守られて育ってきた。裏切れない。けれど他の男との結婚にも踏み切れない。
  倉庫の側には冷凍室、反対側には挽肉工場。従業員達は、賞味期限を切れた品を食べ、豚肉を混ぜ、安く作り高い利益を得る
  この仕事に誇りを持っている。ローゼの結婚にも技師の放埒にも噂が絶えない。
   縦線はこの屋敷で育てられた娘が、屋敷の主と恋に落ち、恩ある婦人に気を遣い、技師に迫られ、ふぎを重ねていく。
  結婚相手と技師とで刃傷沙汰となり、裁判に呼ばれ一気に自体が明るみに出ていく。その過程が緊迫した空気の中でぐいぐいと
  押し進められ、どうなるだろう、どちらにいくんだろと思わせる。と同時になんだこれはミートホープか偽装加工か、この工場は
  なにをやって居るんだと、話がどっちに向かうかわからなくなる。
   結果、娘の嘘の証言と鬼気迫る行動に出、同時に社会的な事に追い詰められた社長も技師も自殺してしまう。
  ではローゼはなんだったの、朝日新聞の夕刊(7/4)には能の後仕手のようと書いてあったけれど、唐突な感じに襲われた。
   アフタートークは永井愛と坂手洋二、「坂手さんに聞きたい事がいっぱいあるの。」「はー」「へー、そうだったの」
  とのかわいい永井愛さんの言葉にほっとした。

 )2008年6月28日(土) 「赤鬼」 HDD
     4人芝居のこのバージョンは初めて見る。 HDDだと台詞の細かいニュアンスが伝わらない。
 )2008年6月29日(日) 「Right eye」 HDD
     3人芝居 やはりHDDはきついな。本で読んだときにはもう少しわかりやすい気がしたけれど。

26)2008年6月29日(日)  シアターX オフィス古川
 
「本当の私を捜して」 ルイジ・ピランデッロ・原作 ヒュー・ホワイトモア・脚本 高瀬久夫・演出 石井みつる・美術 浅野温子
   
さて浅野温子を含むチームがピランデッロとどうマッチするか。何かちぐはぐな、美術も安っぽいし……。
  なるほどこれがピランデッロと思うけれど。ドイツ、ベルリンのクラブの二階。荒れ果てて歌い、男達をもてあそぶ女。
  そこにあなたは10年前に姿を消したルチアだと断言する男があらわれる。彼女を囲っている作家は心を痛め銃で己を撃つ。
   ここに居る作家の娘の存在が訳がわからない。安っぽい黒幕でごまかしたセットの中での男の自殺未遂もわからない。
 元の夫の豪邸に戻った彼女だが四ヶ月間妹にも会わなかった。一体自分は誰なのか。客も夫も迷いながら少しずつ確証を得ていく。
  ここいらがさすがという所。妹の秘密を明かす場などますます混乱してくるのだが、車いすの女が誰なのかは別として、
 主人公は去っていく。

25)2008年6月22日(日)  新橋演舞場 新派公演
 
「鹿鳴館」 三島由紀夫・作 戌井市郎・演出 伊藤熹朔・美術 波乃久里子・水谷八重子・市川團十郎
   天長節に
練兵場をのぞむ影山伯爵のはなれ。鹿鳴館に討ち入る若者を助けてくれと伯爵夫人が泣きつかれるところからはじまる。
  その青年は婦人の実の息子であった。鹿鳴館に自分が出れば、息子の父は計画を思いとどまる。
  一気に考えた作戦が成功するやに思われたとき、伯爵が侍女を落として全貌を掴み、それを上回る計画をたてる。
  いざ会が始まると討ち入りが起き、馬車で銃声が鳴り響く。
   ストーリーは良くくまれ、伯爵夫人と伯爵のやりとりも緊張にとんでいて面白い。(ただ団十郎が台詞を噛む)
  問題は、きらびやかなダンスには年齢が行き過ぎている事。これはやはりきつい。台詞だけなら許せるけどな。

24)2008年6月22日(日)  新橋演舞場 新派公演
 
「婦系図」 泉鏡花・作 大場正昭・演出 波乃久里子・水谷八重子・片岡仁左衛門
   
芸者とつきあう事が、恥とされていた時代、この設定をしっかり固めておかないと最初につまずく。
  鏡花自身18歳の芸者とつきあい、師である尾崎紅葉の猛反対を受けた。さらに尾崎紅葉自身幇間の父を隠し通していた。
  それらが全て、この作品に真実を与えている。
   のんびりと夫婦の生活をしていたお蔦と主税、師が二人を引き裂き、主税は師と女どちらを選ぶかと言われて師を選ぶ。
 湯島天神境内で別れてくれと頼み、お蔦も承知する。ここが今の世に誠に不思議に写る。一方師の娘は主税に思いを寄せつつ
 横恋慕を受けている。主税は静岡に引っ込み、お蔦は魚屋に身を寄せている間に体が弱ってしまう。
  師の娘が、魚屋を訪ねてきた時、お蔦の芸者仲間の女がこの子は私の実の子だと苦しむ。
 静岡でドイツ語学校を開いていた主税の元に電報が届く。ツタキトク。師は蔦に許しを請うが、蔦は主税が到着する寸前に息を引き取る。
  別れろ切れろは芸者の時に言う言葉の湯島天神の話、初めて全貌がわかった。
 芸者との仲が恥とされる時代なら、この芝居はうける。今回もうむうむとうなずきつつ。

23)2008年6月15日(日)  新宿大久保公園特設テント 東京ギンガ堂 ☆ 
 
「ねこになった漱石」 品川能正・作演出
   
漱石って、そんなに複雑な人生背負っていたんだと初めて認識した気がする。
  漱石の臨終の時、猫たちが集まってきた。抜け出してきた漱石がその一生を語り出す。
  聴き取りやすい歌とタップダンスで一気に盛り上がる。漱石は維新によって落ちぶれていく地主の最後の息子として生まれる。
  「恥かきっ子」とあずけられ、大道具屋から、別の夫婦にまわされ、実の父母は祖父母といわれ、養父は女を作って離婚、実の家に
  戻ったものの他人の子。母の死。兄の死。兄嫁への恋。神経衰弱。ストレスいっぱいのロンドン生活。
   そんな中に「吾輩は猫である」が生まれ、大ヒット。胃潰瘍に何度も倒れながら49歳で死ぬまで、
  とかく人の世は住みにくく、死後、猫になって救われる。テントの後ろがあき、歌舞伎町の街中となる。
  二階の建物から女性が下りてきて何気なくどこかに消え、数人の若者が騒ぎながら通り過ぎていく。
  この街の中に猫になった漱石は消えていくんだなと、不思議な感覚がわく。
   ラストの漱石の実のやしゃ孫、夏目ひみかの歌が素晴らしく、楽日の挨拶として語った、
  「漱石のやしゃまご」という事を11年隠し続けてきた。
  中学から学校に行けなくなり、漱石の名前を汚すまいと名を隠して音楽を続けて生きてきた、それが今回、名乗る事が出来た。
  この話が一番良かった。

22)2008年6月15日(日)  シアターアップル キャラメルボックス
 
「水平線の歩き方」 成井豊・作
   
ハーフタイムシアター。なんと言う事はない。一時間の劇。だが一時間ってこんなにも忙しいものか。強い強烈な早口とギャグ。
  笑いをとりながら時空をさかのぼって今に至る。
   酔っぱらって帰ってきた35歳の男。ソファーに座ると女の人。母さんだよと名乗る。
  母さんは23年前、心不全で冷蔵庫の前で34歳で死んでいた。
  ポテチ・柿の種・魚肉ソーセージをもぐもぐする生活感満杯のおかあさん。この23年間の間に何があったのと問いかける。
   かあさんが死んで茅ヶ崎のおじさんの家に引き取られ孤独を隠しながら生きてきた。ラグビーにのめりこみ、
  社会人ラグビーでも活躍。
  膝の怪我。手術をしてくれた女医と恋。引退した仲間の会社に呼ばれた頃、再び膝を痛め、無理して悪化。杖をつく生活に。
  酒におぼれ、今日に至る。会社の帰りに深酒を。車を運転し、今死の床に。だから死んだ母と会える。肉体に戻れば生き返れる。
   しかしもう嫌だという。ここからが許せない。35歳。だだをこねるか?
  携帯電話でかかってくる周りの家族の呼びかけでよわった意志を盛り返せるか?
  ハーフタイムシアターといえどそこごまかして欲しくない。そこまであるあるという路線まで来ているのだから、
  安易に助かったあなどと言って欲しくない。
   もっと苦くて、けれどやはり人生を引き受ける、それが出来るはずだ。

21)2008年5月25日(日)  新橋演舞場 ☆
 
「毛谷村」「藤娘・三社祭・勢」「一本刀土俵入り」 中村吉右衛門・福助・染五郎・亀次郎・錦之介
   剣術の試合から始まる毛谷村。額を割られたのに染五カの六助は親孝行の手伝いをしたとにこにこ。
  そこにわけのわからない老婆。親子になろうとの提案。そこに虚無僧に変装した娘の登場。なかなかに楽しい。
  許嫁と気がついてからのどたばたも型あってのこそと笑える。
   吉右衛門の駒形茂兵衛、これが吉右衛門かと見間違う感じで楽しい。しまった脚本はなかなかよし。

20)2008年5月18日(日)  青年座劇場 ☆☆
 
「評決 昭和三年の陪審裁判」 知国弘威雄・齋藤珠緒・作  鈴木完一郎・演出 中川隆一・照明
   
この時代設定が必要なんだろう。そしてラストの来年五月から陪審員制度が始まる、の台詞でしんとする。
  多数決の陪審員制度。7票入れば決定、6票では駄目。迷っている人が居たら審議は続行。
  最後の迷っている一人になった時の表情に客は大笑い。心情がわかるからだろう。
   女が家に火を放ち夫と姑を殺害。火災保険のお金で新しい男と結婚をはかる。という、膝を曲げ腰を折ってのお辞儀が
  深く印象に残る。だまそうとしているのか、育ちなのか。官権の無理な自白強要があったのだろうとは思わせるが、
  この時代の陪審員達は納得しない。男の社会だからだ。ブンナに出ていた役者達はみな年をとった。
   老人、壮年として登場している。十二人の怒れる男と同じように、有罪からはじまり、無罪へと近づいていく。
  それほどの緊張感はないが、パターン化された笑いは十分にある。飴なめる?で、もらい損ねた。
  そして、証拠のマッチ、女の深いお辞儀につながっていく。

19)2008年5月17日(土)  紀伊国屋ホール 新宿梁山泊
 
「リュウの歌」 コピヤマ洋一・作  李潤澤・演出
   
テントではない梁山泊。こんな芝居こそ、テントや狭い小屋が似合うのでは。段ボールが立ち並ぶ広場。
   一体時代はいつなんだろう。トランペットの幕開け。
   ドラム缶にはまった破れ傘の老人の「地平線が見える」の言葉。ビルからゴミが吹き出されてくる。
   その中に不死とも言える命をもった男。夢で生きる意味を知った。星の種をまき、見た事もない大樹が育つのを見守れとのおつげ。
   そこから死なない。ゴミの中に含まれていた赤ん坊、それがリュウ。リュウの命はおわろうとし、リンゴのにおいがする。
    都会側から保健所が送り込まれ、この地を整理しようとする。けれどこのホームレスの世界は終わらない。
   ぶつかり合いながら互いを思いやってるからだ。
    そんなファンタジーになりそうだが紀伊国屋のタッパの下に舞台セットが収まり、明るい照明に、えせ科学者の姿が並ぶと
   やっぱり安っぽくなる。もっともっとつれてって欲しい。

18)2008年5月14日(水)  プーク人形劇場 鳥獣戯画
 
「ヘコタレ」 知恵理かとう・作・演出
   みにくいアヒルの子からのなんちゃってメルヘンシリーズ。今回は竹内くみこが主役。歌って踊って泣き虫で、怒って、変身して。
  他愛のない話だし、つじつまが合ってないところ満載だけれど、なんとかするんだの、いきおいがおもしろい。
  あひるの卵の中で生まれた姿形も異なる毛玉。兄妹達に疎まれ、いじけながら、一体こいつは誰の子なんだろうと、
  考えていく。使える方法だと思う。

17)2008年5月9日(金)  日生劇場
 
「越路吹雪物語」 岩谷時子著「夢の中に君がいる」より 高平哲郎・脚本 宮田慶子・演出 松井るみ・美術 中川隆一・照明  池畑慎之介 高畑淳子 草刈正雄
   通路をはさんだ三つ隣の
客席には、岩谷時子さん本人。その前に永曾信夫先生。その他業界人いっぱいの初日。
   一幕目は、えっ、こんなに地味に、ただエピソードを少しずつつなげるだけ?と、ややがっかり。
   二幕目、あっ、ピーター歌えるんだ。越路吹雪はどうだったんだろう、でも、これはピーターのカバーと考えればそれでいいのかなと思った。
   それにしても高畑淳子の押さえた演技は、本物の岩谷さんの空気そのまま。それでいて笑いがとれるなど、素晴らしい。
    草刈正雄との車のシーンなど印象に残った。愛の賛歌の歌詞が誕生する時の台詞?詩の朗読、それだけで拍手がわいていた。

16)2008年5月4日(日)  新橋演舞場
 
「東海道四谷怪談」 鶴屋南北・作  中村吉右衛門・福助・染五郎
   髪すき、戸板返し、提灯抜け、火の玉、仏壇返し、江戸時代に見た人は楽しかったろうな。
  お岩が振り向くたびにおびえる宅悦にお客は大笑い。数ある仕掛けも怖がるというか、楽しむのみ。
  ホラーが映画でCG駆使しているので、舞台の上では慣れっこになっているのか、もうはじめから笑いを取りに行ってるのか。
   福助のお岩が、体の変調をたっぷりと見せていくのがすごい。
  だんまりや、大詰めのチョンパー等、途中省かれたシーンで、わけがわからなくなるのは残念。

15)2008年5月3日(土)  新宿文化センター  わらび座
 
「火の鳥 鳳凰編」 手塚治虫・原作  齋藤雅文・脚色  栗山民也・演出 妹尾河童・美術 甲斐正人・音楽  パク・トンハ
   
我王の仲間の盗賊達の登場。踊りが楽しい。歌が力強く聴き取りやすいのも良い。
   火の鳥の像を彫れと命ぜられた茜丸が我王に襲われ右腕の切られる。我王を止めたのはテントウムシの化身の速魚。
   絶望した茜丸をすくったのはブチ。仕事をしなくなり、仲間に襲われ、速魚を失った我王は、苦しみ僧良弁につれられて歩く。
   やがて、いかりの彫り物師に。ブチの中に観音様を見た茜丸は観音像を彫る。
   この時に火の鳥が感じられる。唄と一本のロープによって。
    茜丸は都人の大仏建立に携わり、我王と鬼瓦の対決をする。負けた茜丸は、我王が人殺しであった事を暴き、我王の残った右腕を
   切り落とされる。けれど我王は火の鳥の言葉のもと、命を感じさせ続ける。
    和製ミュージカルも久しぶり。力のある唄が多かった。原作を読みたくなった。話がすいすいすすんでものたりない感も。

14)2008年4月27日(日)  本多劇場 青年座
 
「ねずみ男」 赤堀雅秋・作 黒岩亮・演出 柴田秀子・美術 中川隆一・照明
   
妻が万引で捕まったあとに自殺した。夫は妻を忘れられない。万引きを捕まえたスーパーの女子店員をつけまわす。
   三年目のこの日、隣のホモの男性が彼女を拉致した。夏の盛り、汗で縛ったガムテープが何度も外れる。
   女は怒りおびえながらも、逃げ出さない。男の娘も、荷物を取りに帰ってくる。父とは疎遠。
   とらえられていた女の旦那が連れてこられる。こに愛はない。女は家出した日に拉致された、だから逃げなかった。
   女とその夫が出て行った後、娘が戻ってくる。持ち出した荷物の中に、父と母の交換日記があったからだ。
   広告の裏に書かれた日記はしっかりと閉じられ保存されていた。日記は喧嘩した日だけかかれた。けれどそれはほとんど毎日。
   他愛もない事。明日のお昼は何がいい?明日のお昼は?明日のお昼は?明日のお昼は?ここに夫婦が積み重ねていた時間が吹き出る。
   このシーンがいい。

13)2008年4月20日(日)  新国立劇場小ホール ☆☆☆☆
 
「焼き肉ドラゴン」 鄭義信・作 鄭義信・梁正雄・演出 島二郎・美術  申哲振 高秀喜 占部房子
   
1970年前、万博景気にわく、飛行場近くのトタン屋根が続く街。ホルモン焼き屋。
  末子の男の子が屋根に登り、街と家族を紹介していく。男は昼間から飲んだくれ、女はろくでもない亭主の悪口を言い合っている。
  いつも喧嘩がはじまるどうしようもないだいっ嫌いな街。
   アコーディオンとパーカッションと焼き肉で舞台ははじまっている。次女の結婚パーティの準備も終わり、酒宴ははじまっている。
  そこへ階段状になった坂を二人乗りの新婚二人が喧嘩しながら帰ってくる。旦那が市役所の役人ともめて婚姻届を破り捨てたという。
  おくれて帰ってきた豪快な母さんに爆笑。終幕、この階段坂をこの巨大な母さんがリヤカーにでんとひっくり返るように座り込み、
  片腕の親父が、リヤカーを引っ張る。あんのじょう段差でリヤカーは止まる。客が笑う。親父は三歩下がって、階段坂をリヤカー毎
  駆け上っていく。客が笑って泣いて。
   素晴らしい幕切れだ。こんなきれいな日の明日はきっといい物になる。昨日とは違った物になる。こんなくさい言葉が
  あの親父から二度放たれる。一度目は幕開き近く、息子と屋根の上に登って、桜吹雪で桃色に染まったトタン屋根の波を見た時。
  二度目は終幕に置かれる。息子は在日の苦悩の中で死に、長女は別れた男と再び一緒になり北朝鮮へ、次女は離婚して新しい亭主と韓国へ、
  三女は妻子ある男の二度目の妻としてここを去り、27年間暮らしていたこのホルモン屋は強制立ち退きで失われ、なにもなくなった
  そしてなにもなくなっていない、この桜吹雪がまう跡地でこの言葉が信じられる。

   あぽじとオモニがすごくて、終盤、一気に来た。奥行きのあるセット、島さんさすが。

12)2008年4月19日(土)  シアタートップス
 
「莫逆の犬」 田村孝裕・作・演出 
  
コンクリート打ちっ放しのアパートの一室。そこに閉じこもった男の十年間。婚約者の女と二人暮らし。お金は男の父が運んでくる。
 弟が突然やってきて、顔を隠す行為が異常となって現れる。ほぼ一年おきに時間がスライドし、結局耐えきれず、女は別の男の元に行き、
 男は残されて自滅していく。どうしようもない話。

11)2008年4月16日(水)  船橋市民文化ホール 銅鑼 ☆
 
「流星ワゴン」 重松清・作 青木豪・脚色 磯村純・演出 
  
船橋市民文化ホールのステージに巨大な天井がつられ中央が大きく円形にくりぬかれている。
  スモークがたかれムービングスポットが青い光の中にうごめく。2時間15分、特に激しいアクションもないのだが、客席を良く掴んで離さない。
  子供の登校拒否そして暴力、妻の浮気、リストラ、死期の近づいた父への見舞い、どうしようもない所に、夢を見る。
  案内人は交通事故死した同い年の男。引っかき回すのは自分と同い年の父。
  過去の大切な場面にジャンプして、そこを変えればなんとかなる。けれどうまくいかない。過去をなぞるだけになってしまう。
  無茶苦茶な同い年の父のおかげで、チャレンジするけれど十分にはいかない。
  けれど自分が理解していなかった事を深く理解することはできた。夢が覚める。ふと思う、片付けからはじめよう。語りかけから始めよう。
   携帯の電源を切るお願いをしている役者が、落ちてきたノートに集中して、入り込む。
  市民文化ホールの中としてはえげつないほどの性の言葉での描写などもあるせいか、客は離れない。
  なんだタイムトラベルものか、安易だよと、思って見ていると、終盤、結局過去は改変されていない。初めて出てくる現実のソファーは切り裂かれている。
  モンカフェの香りが客席にこぼれてくる。過去を見つめ直したがために、新しく一歩が進みそうな予感、この終わりかたで一気に救われる。

10)2008年4月13日(日)  吉祥寺シアター 文学座アトリエ公演 ☆
 
「ダウト 〜疑いをめぐる寓話」 ジョン・パトリック・シャンリイ・作 望月純吉・演出 朝倉摂・美術・衣装  沢田祐二・照明
  
教会の学校。校長のシスターは厳しい人。生徒にすかれようと思ってはいけない。システムを守る事が大切。歴史が好きで教える若いシスターをもたしなめる。
  生徒に人気の転勤してきた神父。生徒と何かがあったのではないかと若いシスターがふと漏らした事で、校長は徹底的に真実を知ろうとする。あるいは確信した事を
  つくりあげようとする。一端はこれで誤解だとわかったなと客が思っても、校長は納得せず、さらに凝り固まっていく。
  なんだこのばばあとかまで思ってしまう。生徒の母親の黒人の逆に思いやりの深い姿にも動かされない。
   神父と校長が直接対決し、ついに3年間で5回も転勤した神父の弱みを握ったように思わせる。この事件では無実らしい?彼も、過去の何かには弱みがあるらしい。
  はったりをかまして神父を追いやった事に校長は自信いたんでいる。
   理知的なようで居てただの凝り固まりの校長。力を握っている物の意固地。あまりにも類型的と少し感じたのは、最後付近の対決の台詞の一つ二つが
  聞き取れなかったからだろうか。

9)2008年4月6日(日)  シアターΧ 東京演劇アンサンブル
 
「日本の気象」 久保栄・作 広渡常敏・演出 林光・音楽 岡島茂夫・装置
    
終戦の夏、進駐軍が厚木に来る前夜、気象台分室のメンバー達が、疎開してあった書類を全て焼却する。研究成果が全て灰になる。
   広島で被爆した女性が入院している、その恋人だった男。やがて日は過ぎ、気象台に入ったメンバー達は、組合の結成に沸き立っている。
   やがて揺り戻し、人員は整理され、組合は縮小される。
    堅い台詞回しは相変わらずと思ったけれど年配層の役者にはそれがない。劇団の目指しているわけではなく役者の力量と考えていいのか。
   楽日なのにプロンプが入るのはやはり情けない。二幕で四時間近く、一幕より、年配層の役者が揃う二幕の方が見応えがある。

8)2008年3月23日(日)  東京芸術劇場中ホール
 
「浅草物語」 小幡欣治・作 高橋清祐・演出 内田喜三男・美術
    
昭和12年の浅草。布団屋に1男4女の兄妹達が集まっている。父が再婚したいというのだ。父の介護よりはと喜ぶが
   相手が吉原の女郎だったと聞いて猛反対。怒った親父(大滝秀治)。
    一方その相手はカフェのママ(奈良岡朋子)。気っぷが良くて度胸がある。旦那と呼んではいるが、その気はない。吉原時代にわかれた息子が新潟にいる。
   仕送りを続けていたが、あう気はない。あえば吉原のと、迷惑がかかる。
    この二つの軸を親父の娘(日色ともえ)が自分の家を守りつつ右往左往する。
   親父の設定は62才、82才の大滝秀治といえど、きつくないだろうか。民芸の周りの役者と比べて聞き取りにくい。
   色気もあり意地もあり子供っぽさもあり、にしてはいつもの枯れた印象の方が先行してしまう。
     奈良岡が杉村春子のような役。41才なら別の世界が広がりそうだと思った。

 )2008年3月2日(日)  HDD ☆
    
「天保12年のシェイクスピア」 井上ひさし・作 蜷川幸男・演出 中越司・美術 唐沢寿明 藤原竜也
   
    HDDに録画したものを見た。シェイクスピア全37本を一気に江戸時代の宿場町の争いの中に見せてしまおうという超こてこてもの。
      もうやりたい事やってるって感じ。

7)2008年2月24日(日)  歌舞伎座       ☆
 
2月大歌舞伎 
「寿曽我対面」「口上」「熊谷陣屋」「春興鏡獅子」
    
亡き松本白鸚を語る口上が面白かった。父、祖父、兄、叔父を幸四郎・吉右衛門・染五郎・雀右衛門・松録が語った。立場の違いが良くあられて。
   熊谷陣屋はきつい話。敦盛の代わりに我が子小次郎の首を切り落とす。そんなのありか。義経が頼んだからとて。思い入れたっぷりに幸四郎が演ずる。
   鏡獅子、弥生の染五郎、後仕手の獅子を踊る。

6)2008年2月17日(土)  青山円形劇場 ☆
 
「ウラノス」 前川知大・作  青木豪・演出 
   
 茶色の地絣。上手側に穴があってロープで囲っている。舞台奥は木造の古い家の壁面と引き戸。
   夜。男が一人血だらけで倒れている。家の戸が開き女が懐中電灯を持って出てくる。光におびえた男は逃げ去る。
   翌日。怪しげな背広の男が携帯をかけている。この家の女の子に家を売れと言っている。やがて、怪しげな弁護士も出てきて
   この穴の秘密がわかる。その秘密を隠して姉妹から買い取ってしまおうというのだ。姉は東京から帰ってきている。姉にも事情があるらしい。
    姉に思いを寄せていた役場の男は、土地を売る事に反対、ついに男達の計画を知ってしまう。
  たたりの言い伝えと、地球汚染をミックスさせて、50年後にどうなるのと登場人物に何度も言わせ、客に地球は大丈夫かと思わせる。
   姉と妹の微妙な戦いと思いきや、役場の男を穴に突き落とすという殺人?まで進んでしまう。
  最後は50年後、戻ってくるのを待つ、訴え続けるわとの姉の覚悟で未来にあわい希望を残す。
   異質な集団がくっついて面白い物を作ったなという印象。ラストの振り落としに、どき。

5)2008年2月14日(木)  船橋市民文化ホール  平野企画
 
「蔵のある家」 平野稔・作演出 有馬稲子・西沢利明
   
 紗を貼った格子の壁越しにホリゾントが透けて見える。幕が上がると桜の花びらが降っている。
   季節外れに一年中咲く桜の木の下に、うめの家がある。一人暮らし。戦争から帰って頼るところがなかった時に蔵に住まわせてあげた
   男が世話を焼いてくれている。長男は東京で小説を書き、長女は一宮で夫婦で工場を動かしている。
    この山間の家に盆、正月と人が集まり、戦時中の思い出話をし、主人公のぼけが進んでいく。
   最後の場の一つ手前、有馬稲子が亡き夫からの手紙を読み、思い出に浸りながら狂っていく、やせた演技ではなく、十分に
   笑いを取りながら進むのだが、次の場では突然死んでおり、ただ女性の晩年をなぞっただけか?とあっけなさにとまどった。

4)2008年2月12日(火)  紀伊國屋サザンシアター  こまつ座 ☆
 
「人間合格」 井上ひさし・作 鵜山仁・演出 石井強司・美術 服部基・照明 辻萬長 岡本健一
   
 仙台の駅前旅館のシーンが滅茶苦茶面白い。東京の下宿先で二人の学生と知り合う。
   お金を闘争にカンパして、飲まず食わずで風呂敷劇場でおにぎり貰っている二人。これでいいのか、地主は米を食い、小作は根を食う。
    六男坊の修一は地主の家にコンプレックスを持ち、左翼のシンパ、たちまち仲間となる。怪しげなバー、たわし売り、病院、物書き、
   時代とともに仲間は変わる。学生から役者になりスターになり落ちぶれる山田。
   青森の本家の番頭として坊ちゃんをただそうとする中北は、戦争の進行とともに天皇陛下に入れあげ
   敗戦とともにGIにいれあげる。太宰は女郎を身請けし、自殺に失敗し、小説が売れ、かつ迷っている。
    最後まで民衆の仲間であろうとした佐藤がいとおしい物に思えてきて、今回は太宰が主役でなく、佐藤が主役に思えた。。

     )2008年2月10日(日)  HDD ☆
    
「オレステス」 エウリピデス・作 蜷川幸男・演出 中越司・美術 藤原竜也 中島朋子
   
    HDDに録画したものを見たのだけれどもそれでも面白い。不倫の後、夫を殺した母を、オレステスが殺害した。
      アポロンの神託による行動だったが母殺しの罪に恐れおののき、物も食べていない。人々によって閉じこめられ
      裁きの集会が行われようとしている。そこに叔父が帰ってきた、頼ろうとするが、この男も逃げ腰だ。
      もはやトロイから戻ってきたヘレネを殺すしかない。
       ×のついた門。世間の仕打ちのように降る本水。黒い女達。ビニール傘。とらわれの場所から離れず、
      オレステスが広場に行った時の様子はかごを背負った男によって、屋敷の中の様子はプリキュア人によって
      報告される。やはり生で見に行くべきだ。

3)2008年2月6日(水)  新橋演舞場
 
「わらしべ夫婦双六旅」 中島敦彦・作 ラサール石井・演出 堀尾幸男・美術 中村勘三郎 藤山直美
   
一幕はばたばたしているだけで、なんだこれはと苦笑い。
   二幕も後半になって、笑いとペーソスのバランスが良くなってきてぐっとしまる。死のうとする二人の失敗続き、ここいらが芸の楽しいところ。

2)2008年2月5日(火)  昴ザサードステージ シアタートップス ☆☆
 
「親の顔が見たい」 畑沢聖悟・作 黒岩亮・演出 
   
え?これが高校演劇に書いている畑沢さん?と、まず、びっくり。
   笑いなんてずうずうしいおかあさんが遺書を燃やして、それを繰り返そうとした時に起きただけ。
   スリッパはいてないので「どおりでズック」でも笑いが。けれどその二カ所だけ。
   ふわふわと、いつもの語り口ではじまった物語は、一歩一歩のっぴきならないところへ、笑えないところへ進んでいく。
   中学生が自殺した。4組の親が集められた。担任宛の遺書。そして友達宛の遺書。バイト先店長宛の遺書。
   動かなくなるのが母宛の遺書。不思議な遺書、しつこいまでの遺書によって、実態が見えてくる。
   「あの子たち普通なんです。」「いじめられて転校してきたあの子がですか」「働いている同士で」
   いくつかの台詞がいがいがと胸に残る。「けれども生きて行かなくては」のラストの台詞も長く残り苦い

1)2008年1月18日(金)  三越劇場  ☆☆☆
 
「女将」 北条秀司・作 齋藤雅文・演出 二村周作・美術 水谷八重子 波野久里子 安井晶二
   
戦後、夫を戦争に取られ一人で留守を守ってきた女将、シベリアから帰ってきた夫と店も賑やかになってきた。
  その一人娘に縁談が持ち込まれた。昭和の現代っ子の前に女将のいらいらは募るばかり。
   お師匠さんを中心に序盤は話が進み、娘と女将との喧嘩ではらはらする。そこに持ち込まれた打ち掛けが夢をつなぐ。
  仲人さんの人物評価とはうらはらにお相手の東大の学生さんは二回に上がり込んでどんちゃん騒ぎ。
   夫婦の絆もさらに深まり、ほろりとする。いいなあ。


2007年

2007年に見た劇のベストセブン

    今年は良い芝居にいっぱい出会えた。約39の芝居の中で、☆をつけた作品は見に行って良かったと思う。 
  つけていなくても面白かったものもある。☆三つ・二つのものを集めてみると

 どきどきしっぱなしだった     「The beauty queen of Leenane」 
 
笑わせてくれちゃう、その力に  「冬のひまわり」
 
親子ギャグも含めて笑えて楽しめて泣けて  「春でもないのに」
 
森光子さんに            「寝坊な豆腐屋」
 パワーと熱中度に        「軍鶏307」
 
緊張しっぱなし          「きりぎりす」
 
笑った笑った           「妻の家族」

 

39)2007年12月27日(木)  パルコ劇場  ☆☆☆
 
「The beauty queen of Leenane」 マーティン・マクドナー・作 長塚圭史・演出 二村周作・美術 白石加代子 大竹しのぶ
   
息を飲ませない。最後には観客の息が荒くなってしまう。ものすごい緊張感、娘とその手を借りなければ生きていけない母の戦い。
  けれど、大竹しのぶと、白石加代子の戦いを見てると笑い声が出てしまう。隣の女性客なんて初っぱなから笑い続けていた。
   ああこれは、手紙を見せないぞと、客が読んだとおりに話が展開し、この火かき棒はきっと凶器になると思った通りそうなる。
 そして、ぎりぎりのところで客の読みを超えていく。イングランドに出稼ぎに行かなければ生きていけないアイルランドの小さな村。
 しかもその丘の上に二人の家はある。コンプラ?オートミールを巡る戦いから始まって、やけど、というヒントが出てくる。
  アメリカへ戻るという人の送別会というヒントが、娘の人生に大きな転機をもたらす。ついにどうしようもない、結末になる。
 「私の夢は変質者に母さんが殺されて首がごろんと転がっている事。」という台詞で客がどっと笑う。そして、その一部が現実となる。
 けれど、その最後に、娘が一人になってから、娘が母の揺り椅子に座る頃から、命がつながっていく。そっくりになり、動かなくなり、
 揺り椅子の大きな揺れもやがて止まる。
  どうしもない嫌さから、いつの間にか抜け出してしまう。暗い天国を家の奥に見てしまう。不思議な強い芝居。

38)2007年12月25日(火)  シアターX 円 ☆
 
「あらしのよるに」 きむらゆういち・作 小森美巳・演出 あべ弘士・美術 小森昭宏・音楽
   
場面の終わり毎に出てくる歌う蛙が楽しい。蛙になりきっちゃってて、終演後CD売る時も蛙のまま。
  第一巻の小屋の中より、第二巻の小屋の前の再会、そしてピクニックがものすごく楽しい。
  お弁当と一緒に歩く。おいしそう〜のオオカミがかっこいい。第三巻霧の中あたりから再び当たり前に戻ってしまうけれど
  二匹の蛙で全て許されちゃう。
  

37)2007年12月15日(金)  紀伊国屋 劇団本谷有希子 ☆
 
「偏路」 本谷有希子・作・演出 中根聡子・美術
   
28才で中途半端に役がついていた女優が、田舎に戻る。28才の本谷の周辺にいそうな事。
  でもおまえ当たってるじゃんとつっこみいれたくなる。田舎に戻れるかどうか試すためにおばあちゃんの仏壇がある
  叔母の家に親父と一緒に止まる。田舎に拒絶反応を示す娘を見て父もまた昔のように狂っていく。
  女優をあきらめきれない娘もまた狂う。ホームドラマ。みんな夢が捨てられず、他人の顔色をうかがい、時に切れていく。
   初めてこの劇団を見たが、それほどの毒を感じず、しつこく追いかけていくなあ、でもまあ飽きさせずに見せるなという印象。

36)2007年12月9日(日)  文学座アトリエ
 
「かどで」 森本薫・作 森さゆ里・演出 石井強司・美術 
 「華々しき一族」 森本薫・作 戌井市郎・演出 石井強司・美術  ☆
    意外な恋の告白は同じ。かどででは病に二年も伏している奥さんのために気をもむその母と夫。
    華々しき一族では、弟子の男と師匠の奥さん。華々しき一族が笑える。これが杉村春子だったらと重ねながら見てしまうところに
    杉村春子のすごさがあるのかな。

36)2007年12月8日(土)  新橋演舞場 ☆☆☆
 
「冬のひまわり」 佐々木渚・作 齋藤雅文・演出 石井強司・美術 塚本悟・照明 藤山直美・西郷輝彦 
   
サウンドオブミュージック。6人の子供と立派な父親。
   大きな違いはトラップ一家がナチの迫害と戦うのに音楽が重要な武器となったのだが、こちらはそんな事は全く関係ねえのである。
   家庭教員に入った藤山直美があっという間に子供達にすかれていく。そんな過程はちと急ぎすぎ。
   でも、それは藤山直美の楽しさではねかえされてしまう。泣かせる時に必ず笑わせる。他の役者だったらただのベタな芝居なのに、
   笑いに変えてしまう。「わたしとっても幸せ〜」と最後の台詞まで、笑わせてしまうのはとにかくお見事。

35)2007年11月13日(火)  新橋演舞場 ☆
 
「ナツひとり」 橋田壽賀子・原作 マキノノゾミ・脚色演出 松井るみ・美術 服部基・照明 仲間由紀恵・森光子・宇津井健 
   
橋田壽賀子のNHKドラマを日本に残ったナツだけを中心に一晩芝居にした。
   仲間由紀恵に大舞台など出来ないだろうと思っていたが、若い頃はやはりできてない。その頃は本もありきたりで面白くない。
   恋の話になると言われたとおりにやってるぐらいにしかみえない。
   他の女優なら、演出家が予想できない部分がぐわっと浮かび上がりそうだろうなと思う。
   が後半年をとってから舞台はしまってくる。いつゴクセンに戻るかみたいなはらはら感もそれはそれで使える。
   声しか出ない森光子だがさすが。なんだこりゃ、みたいな体操も、ラストシーンのためかと思ってみると許される。
  仲間の成長を待てば良くなるかもしれない。

34)2007年11月11日(日)  帝国劇場 ☆
 
「イースト・ウィックの魔女たち」 ジョン・アップダイク・原作 ジョン・デンプセイ・脚本作詞 山田和也・演出 松井るみ・装置
       森公美子・涼風真世・マルシア・陣内孝則
   レーザービームではじまって、乳房をもした半球が移動すると、女体をもした大きな傾斜舞台が現れる。
   生演奏のオーケストラとともに、帝劇のミュージカルの楽しさだ。大騒ぎの街広場の中に、魔法使いの男が登場。
   あぶれ者の三人の女を次々と陥落して魔法を教え込む。宙乗りで空に舞い上がった三人は、いたづらが過ぎて反省。
    あらたにひっかかった女は元の恋人と再び結ばれて一件落着。そこいらになると、無理矢理まとめてきたかになる。
   豪邸のセットやセクシャルな踊りが情念を持っていて残る。

33)2007年11月10日(土)  テアトル・エコー
 
「忘れられランド」 小川未玲・作 保科耕一・演出 熊倉一雄
   
かかしが見守る田んぼ。お米を見守っていた一人暮らしのおばあちゃんが無くなる。かかしが命を持って歩き回る。
  かかしが四人。娘が三人。蒸発した父が一人。カラオケに乗って歌うのだけれど、昨日の興奮が冷めないままの観劇で
  ぼーっとしてしまった。ほのぼのと暖かいのだけれど。

32)2007年11月9日(金)  スズナリ 鳥獣戯画 ☆☆☆
 
「春でもないのに」 知念正文・作・演出
   楽しかった。フォークが歌えてギター弾けて、それだけで泣いた。スズナリの狭いステージで19人が踊る。
  まあ無理だろうなところを無理矢理踊る。軽いセットとカーテン幕と無対象演技と数々のヒット曲でつないでいく。
  ユニコが高校一年になった。達者になった。親子がギャグがほんとに笑える。後半は禁じ手使いすぎ、泣いちゃうけれど
  いやだな。せめてコンサートは一緒にやってほしかったな。

31)2007年10月22日(月)  シアタートップス 自転車キンクリートstore ☆
 
「ツーアウト」 飯島早苗・作・演出 中川隆一・照明
   
わざわざの背景画。二人っきりの一回の裏から、七回の裏まで全て守りの時間に、話が進む。
  一回裏の二人っきりの時、これはやばいかなと思ったけれど、回が進んで、訳のわからない女の子が出てきてから
  楽しくなってきた。これは、不倫の話?いや親子の話?DNA鑑定で親子でないとわかる話?いや結局夫婦の話。
  裏ごとに、ゆっくりと、あほな三塁コーチ交えて、笑わせながら進むのが、気楽で、だよな、でおもしろかった。

30)2007年10月18日(木)  新橋演舞場 ☆☆☆
 
「寝坊な豆腐屋」 鈴木聡・作 栗山民也・演出 妹尾河童・美術 中村勘三郎・森光子
   
盆踊りの夜に街を二つに分ける大げんか。東京オリンピック目前の下町、新しいマンションを建てるか、古い町を残すか。
  そこに持ってきてしまうと、それじゃあ、動かないでしょ、都合つけちゃっちゃいやだな、とか思ってしまうけれど、
  ワイヤレスマイクがんがん使ってる森光子の、一言一言に、一挙手一投足に、気を吸い込まれた。
   力まないんだけれど、元芸者の、おかあさん。「言わなかったの?なら、あたしも言わない。」など小気味いい。
 勘三郎があまり遊ばないのも。花道横にいたので、勘三郎の背中に負ぶわれた近寄ってくる森光子がきれいだったのも心に残った。

29)2007年10月8日(月)  吉祥寺シアター
 
「ヘル」 スエヒロケイスケ・作 鐘下辰男・演出 島次郎・美術 中川隆一・照明
   
きついなあ。お岩の息子が伊右衛門をおいもとめる。
   真っ暗な中に足音がして、やんで、足音がしての始まり。レジ袋をかぶせられ、手錠をかけられた男たち。
   話を追えなくなった。 

28)2007年9月17日(月)  新橋演舞場
 
「憑神」 浅田次郎・原作 G2・脚本演出 中村橋之助
   浅田次郎が終わりをこう書いたのだろうか。ついてない男が、貧乏神に取り憑かれては宿替えし、疫病神にとりつかれては
  宿替えする。その苦しさと、逃げ切る力とが笑いを呼ぶだろう。が、最後の死に神からは逃げずに、受け入れる。それは時代の流れが
  男を飲み込んでしまったからではないだろうか。それがまるで大英雄になったかのように死にむかってあがめられていく。それが橋之助のせいだとしたら
  なにかいらだつ。盆を二つにして自由自在に場を渡るの前半は気持ちいいけども。

27)2007年8月31日(木)  麻布区民センター いたわさ ☆
 
「ハロー・ザ・ロンググッドバイ」 テネシー・ウィリアムズ ・作 冨田正久・演出
   前芝居に「欲望という名の電車
」「しらみとり婦人」「バーサよりよろしく」をコラージュしロンググットバイをゴスペルソングのピアノと
  ソロとコーラスで見せる。ピアノとソロが醸し出す空気があっている。この芝居は高校一年の時にやった劇。しゃべられる一言一言を覚えていて
  相手役の表情も浮かんでくる。自分たちが端から見てどう見えていたかはわからないが、相手役がどうしゃべっていたか、どう練習したかは
  思い出す。すべてを失っての引っ越し、荷物を捨てられず、倉庫に預け、その喧噪の中で家具一つ一つから過去が浮かんでくる。
  現実と過去とかぶってなきそうになった。

26)2007年8月23日(木)  世田谷パブリック・シアター シスカンパニー ☆
 
「ロマンス」 井上ひさし・作 栗山民也・演出 大竹しのぶ 松たか子 木場勝己 美術=石井強司 照明=服部基
   チェーホフの評伝劇。4人の男性と二人の女性。宇野誠一郎の音楽で歌う。
  中学時代のチェーホフ(井上芳夫)はボードヴィルにあこがれる、雑貨屋の息子。大学時代のチェーホフは卒業試験で満点を取る優秀な医者の卵。
  青年時代のチェーホフは貧乏に金をあげてしまうこまりもの。サハリン時代のチェーホフ(段田安則)、モスクワのチェーホフと時代を経て
  「笑いが人を救う」事を理解する。生活のために書いていた小説が売れ、モスクワ芸術座の誕生とともに、かもめがヒットする。
   スタニスラフスキーの新しい演技論もチェーホフの目指す笑いとは異なってくる。
  若い頃から気にしていた病気、結核。小さい時から死に至るまで、常に世話を焼いてくれた妹(松)。
  あでやかで彼の芝居に主演している女優(大竹)と結婚。
  病に倒れているチェーホフ(木場)るラストのトルストイを交えての芸術論がものすごく楽しい。

25)2007年8月9日(木)  シアターサンモール ケーダッシュステージ ☆
 
「メモリーズ2」 妹尾匡夫・作 中野俊成・演出 入山学
    
若手がマイクの力を借りてがんがんしゃべる。ちょっと単調。死の直前に記憶を入れ替えて幸せな気持ちで黄泉の国に
   向かわせたい。ここで音楽とヒップホップが有効になる。SFの世界へスムーズに移行できる。
   これにお笑いがはいる。 死の直前ではなく、やくざの鉄砲玉として使われるよう、仮死状態にさせられた親父が
   車いすに乗せて連れてこられ、手術チームの思惑と違い、元気なずれたガンマンとしてよみがえって大騒ぎ。
    どたばたに、娘への父の気持ちをたっぷり乗せて、楽しめる。

24)2007年7月26日(木)  SPACE雑遊 tfactory
 
「路上」 川村毅・作・演出 小林勝也 占部房子
    
50ずつ互いに直角に客席をつくり、そのコーナーにロープが一本下がっていて、あとは灰色に塗った箱状の椅子だけ。
   真っ暗な中で、いきなり他人同士が、交換殺人の打合せをする。一人は若く、一人は老人。一人は妻を殺してほしいらしく、
   若い方はバス停にたっている女を殺せと。暗闇の中で全てが進み、暗闇の中で登場人物も見えないまま、一人が去っていく。
   前半はこの暗闇と光の関係が面白い。
    制服を着た女がバス停にたっている。死にたがっている。老人は娘が高校生つまりあまりに若いから殺せない。
   練習しようと言う。一方、老人の妻を殺そうとした方も上手くいかない。妻が家に帰ってこないからだ。
   やがてクローゼットの中に死体が。
    小林勝也のとぼけ、枯れた笑いが生まれる。死という言葉で存在を確認しようとする三人がもがいている。
   三人芝居だが、路上で起きる事件に、観客もさせられている形になり、群衆劇の雰囲気を帯びる、
   だったら舞台はもっと狭い方が面白いかも。あきずに引っ張っていくが、最後の都市崩壊を経て、でないはずのバスが出発し
   ミイラ姿でびくんとふるえる女で芝居は切れる。え、もう、終わり?そうか50分芝居だったんだ。三人の中心は誰なんだろう。
    絵面からすると女。女が抱いた不安が巻き込んだ世界なの?そこまではくるみきれないか。

23)2007年7月18日(水)  船橋市民文化ホール トムプロジェクト ☆
 「カラフト伯父さん」 鄭義信・作・演出 
  ベンガル・冨樫真・岡田義徳
    三人芝居。劇場に入った時に、あ、このセットなら見てもいいなと思わせた。
   ダイハツハイジェットが乗り組んでくる。船橋市民文化ホールのステージを本当に運転して走る。
   三人だけ、二時間弱。なぜ、寂れた鉄工所なのか。なぜ、屋根が治っていないのか。何故、トラックの中に寝るのか。
   何故、実父が子供を気にするのか。馬鹿騒ぎをする元ストリッパーと、相変わらずふざけるベンガルの中で、
   30才ぐらいの子供だけが、ぶれない。謎を抱き続ける。謎は解かれてしまうと、ああそれだけのと思うけれど、
   そこまでを楽しめる。
    ふざけた親父といえど、宮沢賢治を使って少年にあこがれを抱かせた男なら、ベンガルではないような気がする。
  ラスト、ダイハツのトラックがまるで銀河鉄道のようにというなら、もう一つ仕掛けが激しくても良かったのかな。

22)2007年7月4日(水)  本多劇場
 「社長放浪記」 三谷幸喜・作 三宅裕司・演出 
  伊東四朗・佐藤B作・三宅裕司
    三谷戯曲だけれど、それより三宅祐司の臭いが濃い感じ。70才伊東四朗が面白い。自然で三谷の本が良くなじむ。
   佐藤B作もほどよく納まっていて、中村メイ子が締める。ほどよく笑ってなんにも残らず。伊東四朗の手の内か。
   アンコールでも笑いとりまくっていたのはさすが。

21)2007年5月29日(火)  船橋市民文化ホール こんにゃく座
 「フィガロの結婚」ボーマルシェ・原作 モーツアルト・作曲 加藤直・訳演出 衣装・合田瀧秀
    
一杯飾りの舞台。客はけっこう湧いていたけれど。

20)2007年5月22日(火)  鈴木興産2号倉庫 桟敷童子 ☆☆
 「軍鶏307」サジキドウジ・作 東憲司・演出 塵芥・美術
    
こきみよさ。この集団がある一つの方向をめざしている小気味よさ。倉庫の中で三階建てのセットが動き回り、
   一瞬のうちに病院となり、倉庫となる。
    導入はこの病院に入院する事になる女がどうしてこうなったかの説明なのだけれど、そのスピード感が小気味よい。
   いざ本編にはいると新劇的なスピードになる。堕胎が行われる世の中から捨てられた掃きだめの病院。
   復員の看護婦がやってきた。売春婦、性病患者、精神を病んだもの、そして子供を国に奪われた狂った母。
   飛行機の塔を作り出す。復員のくいつぶれ、やくざのばしりがやってきて、狂った女を差し出せと言う。
    男側は食い詰め、女はどん底。そこに軍鶏307と呼ばれる飛行機模型が夢をもたらす。ややパターン的な人物像
   だけれど、こうやってみせるんだのおもいっきりが小気味良い。

19)2007年5月19日(土)  ベニサンピット 地人会
 「ビルマの竪琴」竹山道夫・作 ふじたあさや・台本 木村光一・演出 
    
集団で台詞を割るので、全員が同じキャラに見えてしまう。人生が深まっていかない。
   ビルマの竪琴が全くの空想上に成り立っている、ということを始めて知った。となるとますます白々しく見えてしまう。

18)2007年5月18日(金)  青山円形劇場 ナイロン100℃
 「犬は鎖につなぐべからず」作・岸田国士 潤色構成演出・ケラリーノ・サンドロビッチ 美術・加藤ちか
    
7本の一幕劇を、切り貼りして、和装でダンスで転換して、いくつかの劇が同時展開して。
   となりの花、色っぽいし、驟雨もおかしい、弟もいいが、やはり長いよ。

17)2007年5月12日(土)  新橋演舞場
 五月大歌舞伎「妹背山女庭訓 三笠御殿」「隅田川続悌 法界坊・双面水照月」染五郎・吉右衛門 
    
妹背山、ここだけ見るとやはりわからないな。解説で納得するけれど。
    双面・法界坊と野分姫の亡霊を浄瑠璃と常磐津で語りわけ、瞬時に切り替わる演技。やりがいあるだろうな
    そこが面白い。

16)2007年5月11日(金)  紀伊國屋サザンシアター 文学座 ☆
 「ぬけがら」 作・佃典彦 演出・松本裕子 美術・石井強司
    
40才、郵便局員、真面目、でも同窓会で出会ったもと彼女と浮気した。別れ話をしに行った
   彼女の家を車で出る時に幼子をひいてしまった。首。そして母の死。そしてぼけた父。ぼけた父が
   突然脱皮。脱皮をくり返す度に父は若返り、ついに戦前の父まで戻る。父たちが並ぶと、
   父の人生が浮かび上がり、現在の息子の新しいゆるやかな再起を導き出す。そのしかけが飲み込めてくると
   ばかばかしいと思ったマジックが、過去の実現という温かさに変わる。そこに拍手。

15)2007年5月4日(金)  シアタートップス 道学先生
 「新しいバカをうごかすのは古いバカじゃないだろう」 作・中島淳彦 演出・青山勝
    
体育館ステージ脇のアンプとマイクと体育用具が置いてある小部屋。
   吉田拓郎が九州の田舎町にやってくるというので市をあげての大騒ぎ。招いた女子高生のもとに
   あらわれたのは売れないフォークシンガーたちとあやしげなマネージャー。
    市の期待と、レコード店主のなんとか仕様とするドダバタと、ばらばらでどうしようもないなフォーク芸人?
   手伝いに来ていた青年が希望をつなぐ。六角精二の、どうしようもない歌に、なるほど。
   青年の歌は最後はがなってしまったか。よくこれだけギター弾けるなあ

14)2007年4月14日(土)  シアタートップス 一跡二跳 ☆☆☆
 「きりぎりす」 渡辺淳一・原作 山田信夫・脚本 古城十忍・潤色・演出 磯田ヒロシ・美術
    
大変な緊張感をしいる芝居で、落ち着いて座ってられず、手がこわばり指がぴくぴくして見てた。
   バイトのベテラン医者が交代の医者を待っている。久しぶりに妻と、子と義父が博多行きのフェリーに乗る前に
   食事をしようというのだ。帰る間際、若い医師が声をかける。来て下さい。かけあがると14才の少女の心臓が止まっている。
   すぐ心臓マッサージ。酸素。薬。胸部切開。手づかみでの心臓マッサージ。優秀な看護婦でさえ貧血で倒れかかる。
   こちらも同じ。けれど、その中で、若い医師の言動がこちらをくすぐる。タバコをのみ、おしっこをもらしのマッサージに、
   ついに笑いが飛び出てくる。一つのセットの中に妻とおじいちゃんの光景が混じり、
   このベテラン医師の9年間の生き方が見えてくる。アメリカに三年居て子供が生まれた時も知らん顔。
   妻が交通事故で倒れた時も帰ってこない。離婚届をハンドバックにいれたまま待つ妻。
   若い医師の成長。夫婦の認め合い。きりぎりすの声。じわじわときいてくる一作だ。

13)2007年3月28日(水)  紀伊国屋ホール ラッパ屋 ☆☆☆
 「妻の家族」 鈴木聡・作・演出 
    
いやあ笑った。客席が身を乗り出したりリラックスしたり大笑いしたり、本当に久しぶりに一体感を覚えた。
   中庭があり、庭には池がある。舞台前面が離れ、その奥に中庭、その奥に母屋。ラッパ屋独特の奥行きのある舞台。
   喪服を着た新婚夫婦が帰ってくる。ハハキトク、母。と書いた差出人に気がつかなかったのだ。
   とにかくそのメールに釣られて、四人の娘たち夫婦と二人の息子、前夫二人が、計十二人がこの家に集まった。
   ストーリーを見つめるのは喪服で来た始めてこの家族に加わった新婚の夫。
   しかもしかも籍を入れて僅かの日、結婚相手と知りあってからもほんの数日。その小学校の落ちこぼれ教員が
   この家族を知っていく。
   バスの運転手の長男にこの大きな家を売ってお金の工面をしてほしいとそれぞれが言い始めたところから、
   事件はすすみ、お金、ゆらぎ、あつまる、とキーワードがしみてくる。

12)2007年3月17日(土)  スズナリ MODE ☆
 「美藝公」 筒井康隆・原作 天野天街・脚本演出
    
まあ、なんとも。二人で一時間四十分。映像を駆使して、くり返してくり返してくり返して。
    炭坑に埋め残されたイメージと、脚本が書けないというモチーフをくり返して、まるでゴドーのような
    くり返されるイメージ。タンゴも色っぽくないけれど、書けないの連続は面白かった。

11)2007年3月16日(金)  新国立劇場
 「コペンハーゲン」 マイケル・フレイン・作 鵜山仁・演出 村井国夫 島次郎・美術 服部基・照明 
    
島次郎のセットは、原子をイメージする。中央の円形の木製の床。それをとりまく円周。
   木製の床のエッジはブルー系の明かりで縁取られる。けれど物理は量子力学を中心に難しい。
   話を聞くにも相当の集中力が必要。ぼやっとしてしまった。

10)2007年3月12日(月)  スズナリ MODE ☆
 「変身」 カフカ・作 松本修・構成・演出
    
ベッドのあるグレゴール・ザムザの部屋。象徴的なオープニングでは三人で一匹の毒虫になっているが、
   芝居が始まると、健康な役者に対する家族と他の人々の反応で、変身をあらわす。
   部屋のドアと壁は紗になっていて、奥の食卓のある部屋とグレゴールの部屋とで話は進む。
    家族の期待を背負った兄が、ある朝、起きるのが嫌だなと思ったら毒虫になっていた。
   家族はおびえ、みとめ、困り、忌避する。そしてリンゴを投げつけられ、食事も満足に貰えなくなった毒虫は
   死んでいなくなる。二時間15分はやや長い。そこはかとなく面白い。

9)2007年3月7日(木)  HDD
 「売り言葉」 野田秀樹作・演出 加藤ちか・美術 大竹しのぶ
    
さすがおおたけ  録画なので

8)2007年3月7日(木)  新橋演舞場 ☆
 「出雲の阿国」 鈴木聡・脚本、栗山民也・演出 妹尾河童・美術 木の実なな
    
え?若いなぁ。ややこのダンスから始まって、ああ、この騒ぎを見に来たんだと納得。この笑顔が
   中心にどーんとある。中心にないときは求心力がちょっと落ちる。もてはやされ、時代に捨てられ、弟子に出し抜かれ
   江戸へ走り出すところでパンと終わる。それがこきみいいな。
   ピーターのずらがとんで、とり方がはめ直したので客席は大笑い。

7)2007年3月2日(金)  ベニサン・ピット tpt
 「薔薇の花束の秘密」 マヌエル・プイグ・作 木内宏昌・演出 朝倉摂・美術 安奈淳/毬谷友子 
    
舞台前面が白。舞台の上部は白い布が折り曲げられて。衣装もはじめは殆ど白。
   病院の一室。金持ちの厳しい老女が、個人で付添婦を雇った。やがて日が傾きアンバーから、ブラインドがなると
   ブルー系の白。幻想が始まる。互いの内面や過去が自在に登場する。
    老女は夫が浮気していた。娘は母を批判し、希望を託した孫は死んでしまった。
   介添え婦は、母の幻想を見る。一日しか持たないと思われた雇用関係は二週間も続きく。
   いきなりの緊張で始まる「私の薬に触らないで」。それが食べるシーンで笑いがとれて、少しずつ劇になじんでいく。
  二人が信頼しかける事と、だますことと、二人の幻想が入り交じり、ついて行くのがやっとになってしまった。

6)2007年2月24日(土)  スズナリ 弘前劇場
 「真冬の同窓会」 長谷川孝治・作演出
    
中華レストランのロビー。同窓会があるので次から次へと人が集まっては、くっちゃべって、なつかしがる。
   ここで働いている料理人の女の子が、ここでよく司会をしている男の離ればなれになっている娘で、その娘と
   ヤクザな道から劇作に身を投じようという男と今日同窓会の二次会で結婚式をあげようとする。10年という日々が
   どんな変化を人間にあたえてきただろうか。ブログから出発した小説家の女の子。馬にのってきた女。へんな先生。
   飲茶。飲茶に深く思いを寄せて、生きているのは娘の父と小説家だけという事になるのだが。

5)2007年2月17日(土)  シアターサンモール 青年劇場 ☆
 「博士の愛した数式」 小川洋子・原作 福山啓子・脚色演出 高橋あや子・美術
    
紗に数式や放物線がうつる、かわいいセット。家政婦の自宅と博士の家を照明の変化だけであらわす。
    たくさんの細かな場面の積み重ねで、少しずつ男に逃げられ一人で家政婦をしながら男の子を育てている女性が
    80分しか記憶がもたない博士のおうちに派遣される。おかあさんがどこかにそのまんま居る感じでいい。
    笑いを少しずついただきながら、息子の「博士は馬鹿って一度も言わなかったよ。」で落ちたりする。
    場面転換もっと少なくできないのかな。オイラーの公式の意味わからなかった。エンディング、夢で終わるけれど
    もっと教えて欲しかったと軽い欲求不満、と、リアルな芝居は注文が多くなっちゃうな。

4)2007年2月13日(火)  紀伊國屋サザンシアター こまつ座
 「私はだれでしょう」 井上ひさし・作、栗山民也・演出 石井強司・美術 服部基・照明 宇野誠一郎・音楽
   浅野ゆう子 梅沢昌代 大鷹明良 川平慈英

    
戦後、
東京放送会館の楽器置き場だった部屋。「尋ね人」のコーナーが作られその投書を読み、放送原稿を作る人々。
   自由を標榜したマッカーサーの元、組合運動が起き、新しい時代が始まったが、中国・朝鮮半島の半分が共産化すると共に
   進駐軍の統制が厳しくなっていく。サイパン島で記憶喪失した男を軸に話が進んでいくのだが、
   何かぼやっとした感じで、三時間半もつのだが、なにやら物足りない。
    桜町かみやホテルのように、悪役の手先となるものが舞台に登場しないからかも知れないな。

3)2007年2月12日(月)  スズナリ Theガジラ
 「セルロイド」 鐘下辰男・作演出、島次郎・美術 中川隆一・照明 岡まゆみ
    
白いビニールのゴミ袋が床一面におかれ、光を跳ね返すぐるぐる回るインテリアがぼんやりと自己を主張している。
   開演前のぼーっとした不安は、さすがと思うが、明かりが入るとつるんとグレイに塗っただけのパネルだけ。
   え?何回も血やしょう油が壁にたたきつけられるので、何回も上演できるようにふき取りやすい素材にしたと思える。
   1人の女が、血だらけの男を連れてきた。バットを持つ兄はいないような存在。やがて暴力的な父が現れ(立ち上がり)、
   兄妹はこの父から虐待を受け、母から食べさせてもらえず、やがて兄は母に暴力をふるうようになり、
   妹は父から性的虐待を受けていたらしい事がわかってくる。妹は子供を産むが、おむつを替えようとしてちんぽこがついている
   のを見て切り取ってしまいたくなる衝動に駆られ、育てられず、きいきいきいきいいう音にいらだち、壁にたたきつけ、
   頭に障害を負わせ、さらにダンボールに閉じこめたらしい。血だらけで飛び込んできた男も虐待を受けていて暴れると
   意識がなくなる。人を殴っているときだけが生きていると思えるように。話は連続して断絶し男は女の子供にも成り、
   三人全てが女の描いた幻想のようにも思える。ただ情念だけが渦巻く。
  

2)2007年2月8日(木)  新橋演舞場
 「殿のちょんまげを切る女」 中島淳彦・作、ラサール石井・演出 中村勘三郎・波乃久里子・藤山直美
    
明治維新前夜・九州で薩摩につくか、幕府につくかで迷う藩主。黒船から逃げ出した妖しげな通訳。
    秀吉の子孫であるというあやしげな奥方。ごり押しの島津。士族の身分を捨て百姓とともに、過ごした藩主が
    豊臣の埋蔵金をみつけ河川工事をして、ついに宮崎県知事となるというのだが。

1)2007年2月6日(火)  市川市文化会館 民芸
 「深川暮色」 作・藤沢周平 演出・高橋清祐
    
第一部は おみね  第二部は おしま、おりつ
   小さな話の二本立て。第一話は貧乏長屋の向かい側に赤子を抱いて途方に暮れている
   情けない男やもめが居て、赤子の世話を申し出た嫁入り前の娘と、ついに結ばれるという人情噺。
   第二話は、苦労の末に持った居酒屋に、自分を売って今は浮浪者のようになっている父が戻ってき、
   昔自分を食い物にしていた男も、島帰りとなって、再び、食い物にしようという話。
   第二話にははっきりした悪役が出てついに殺される。藤沢節というべきなのか。
   暗転によって舞台を大きく替えていくのがたるいな。

2006年

2006年に見た劇のベストフォー
    今年は忙しくて東京になかなか出られなかった。約30の芝居の中から
 かっちりとみせられた 「京紅ものがたり
 
心のひだひだに感じ、そして最後の水に  蝶のような私の郷愁
 
人の苦さと笑いに 酒坊ちゃん
 
演出に      「血の婚礼」

31)2006年12月16日(土)  スズナリ 鳥獣戯画 
 
「十八番」 知念正文・脚本 
    
一年ぶりに見た こなれた感じ ユニコが大きくなっていた

30)2006年10月120日(金)  新橋演舞場 
 
「獅童流 森の石松」 サタケミキオ・脚本 本木克英・演出 中村獅童
    
どうしようもない芝居を演出している獅童・だらだらと話が進み屋台で雷に打たれてタイムスリップ。
   といっても映画のように鮮やかにとはいかず、ただ芝居が続くだけ。ただ石松が死ぬ場所を知っているので
   その運命に逆らおうとするという設定がなんとか話を進める。はではでのスピード殺陣をやりたかったのだね。

29)2006年10月18日(水)  スズナリ The shampoo hat
 
「津田沼」 赤堀雅秋・作・演出 
    
古びた団地の一部屋。袖ヶ浦団地ぐらいのつもりかな。10年後の今、耳鳴りがして、鏡を見ると
   17才突っ張った自分がガンをつけている。10年前の高校時代のこの部屋で起きた事件と、その日につながる今、
   かわりばんこに同じ登場人物で、苦い日が浮かんでくる。今の奥さんをこの部屋に呼び出した日。
   悪ガキども、暴力団員、逃げようのない事件。それにつながる今。明るい奥さんのようで居て、許し難い苛立ちが
   わき上がる。それがねらいか。

28)2006年10月14日(土)  東京芸術劇場小ホール2 
 
「オホーツクの女」 本山節彌・作 岩村久雄・演出 内山勉・美術
    
総勢20人以上の漁師とそのかかあたちが、新造船での出漁の夜に集まる。酒とばかっぱなしと
   体制と。嵐と。

27)2006年9月25日(月)  HDD 
 
「蛇よ!」 松尾スズキ・作・演出 大竹しのぶ
    
大竹しのぶと松尾スズキの2人芝居 一日に5時間も稽古できて幸せとの公演後インタビュー。
    しのぶ、まさに、そこだね。

26)2006年9月10日(日)  新橋演舞場 
 
「魔界転生」 山田風太郎・作 G2脚本・演出 橋之助
    
あのいやらしくどきどきする山田風太郎がどこまで出せるかという所までは行かなかったね、やはり。
   花道を疾走する橋之助は気持ちいいだろうな。森のセットは厚みがあるけれど、ラスト幕切れの振り落とし
   及びその時のあかりはいかがなものかと。

25)2006年8月17日(木)  ベニサンピット tpt ☆☆
 
「血の婚礼」 フェデリコ・ガルシア・ロルカ・作 アリ・エデルソン・演出 板垣桃子 パク・ソヒ
    
L字型の黒光りする舞台・縁に並べられたスペインのグラス・ろうそく・靴。舞台を覆う透ける白い布と、支える赤い緋。
   ピアノ・ベース・ギター・パーカッションと歌で紡がれていく。花婿の母が圧倒的と思ったら、桟敷童子のおしの強い女優だった。
   よく見ると役者達も音楽座・四季・宝塚と、どうりで歌が台詞になって届くわけだ。
   生の音楽は婚礼の場ではタンゴ合戦の伴奏となりわくわく。
   花嫁とその昔の彼が、婚礼を前にしていらだっている。男のうその結婚、そして今その女の血が今、また沸き立っている。
   母の緊張の元、そのままに人がはまっていく。そしてついに奪い去る。夜の森、馬の背に二人がのって逃げていって悲劇が来る。
   月のヘア、あれでいいのかな。死の存在、と共に疑問。花嫁や男の方が月や死の役者よりはるかに人間の業を背負って神格化しているから。
 

24)2006年8月12日(土)  草月ホール 
 
「LOOT 薔薇と棺桶」 ジョー・オートン・作 鵜山仁・演出 安寿ミラ
    
グレイ系の書き割りで作ったセット。直線と平面のみ。クローゼットの等身大の鏡と中央の書き割りがブラインドで
   後ろから窓外の光景やら薔薇の絵が浮かび上がる。豪邸というイメージにこのセットは何かそぐわない。
   草月会館にぱっとあって居るのが大きな吊りもの。まるでもののけ姫のだいだらぼっちのよう。人の形に見えるのは
   ミケランジェロの天地創造の書いてある布。それに黒紗がかけてあり、最後に赤い薔薇が黒紗についているのがわかる。
   音楽を意図的に使い、照明を壁にくっきりと映し出す。
     最初のうちはなじみにくいものだったが、母の死体をもて遊ぶ息子、義眼をくりぬく女、どんでん返しをする刑事と、
   異常性が高まり、悪の打ち勝つ様に笑いが起きていく事に、そんな芝居にしたかったと、作り手の意志を感じた。

23)2006年8月8日(火)  SPACE雑遊 燐光群+グッドフェローズ ☆☆
 
「蝶のような私の郷愁」 松田正隆・作 鈴木裕美・演出 中川隆一・照明 奥村泰彦・美術 占部房子 坂手洋二
    
二人芝居 キャパ60ぐらいの客席に次から次へと人が入る。六畳間、一間間口の空間で置くが台所。そして窓。
   この窓に台風の夜が現れる。自己を予想されるヘッドライトも見事。そして終盤の六畳間が水中にある工夫。
   狭い空間の中でのタイトな芝居を楽しんだ。 年の差のある夫婦。ちゃぶ台に寄り添っている妻。
   駅前にマンションが出来たという話題を運びながら夫が戻ってくる。食べ物にまつわるすれ違い。
   そして、女の姉、夫の前妻へと思いが忍び込んでくる。

22)2006年7月24日(月)  紀伊国屋ホール 円
 
「ファウスト」 ゲーテ・作 石塚千明脚本 橋爪功 加藤ちか美術
    
一部マルガレーテのくだりだけは、なるほどこうやるかとも思う。二部ヘレナ・三部干拓と無理が目立ってきて
   訳がわかんなくなる。

21)2006年7月5日(水)  船橋市民文化ホール 前進座
 
「銃口」 三浦綾子・作 
    
本当に三浦綾子が書いたんだろうか。筋だけ追ったのだとするとなんと中身がなくなることか。
    前進座だから当然前を向いて演技する。でもそれ以上に客席に話相手を置いた事にして話しかける。
    これが説教となる。役者の交流など感じられなくなり、歴史事実だけを押しつけられることになる。
    途中、質屋の場から舞台は息を吹き返す。けれど特高取り調べ、満州、朝鮮とパターンだけになってくる。
    戦争の中の人間、形だけでは伝わらない。

20)2006年7月3日(日)  新橋演舞場 ☆☆
 
「京紅ものがたり」 水上勉・作 石井ふくこ・演出 十朱幸代
    
これが水上勉。どうしようもなく点と点の人が結ばれ糸になる。紅花を仕入れに行った先での、恋。京にやってきたとく。
   色つやの先代の心臓麻痺の死。同郷の仲居との出会い。清いままで別れられぬ男女。
   203高地から、昭和の終戦まで、京紅にかかわった、男と女。死に別れ、生き別れを経て、京紅の命を継いでいく。
   そのあやあやが面白い。

19)2006年5月24日(月)  船橋市民文化ホール 民芸
 
「明石原人」 小幡欣治・作 演出 松井るみ・美術
    
いかにも民芸らしく、かちっと人物が造形される。南風洋子のおばあちゃん。日色巴の音先生。
   松井るみのセットも壁を回転させて各場面を作る。かちっかちっと進んでいくけれど、ラスト付近理屈っぽいかな

18)2006年5月14日(日)  新宿花園神社境内 唐組
 
「紙芝居の絵の町で」 唐十郎・作演出 
    
赤テント。半分が失われた絵本の一ページにつられて、コンタクト屋が使い捨てコンタクトを貢いでいる。
   観客は老若男女、開演時期待の拍手が力強い。笑いもよく起きる。でもそれは身内の笑い。
   もともとわかることは期待できないが、一幕は何やら面白い。二幕に入って台詞のスピードは倍増。ついて行けなくなった。

17)2006年5月12日(金)  HDD
 
「おじいちゃんの夏」 G2・作演出 2002青山円形劇場
    
おじいちゃんのぼけが突然治って、借金とりに攻め込まれた一家を救っていく。
   小須田のじいちゃんと孫娘、息子夫婦が、笑いとペーソスで一騒ぎの夏を過ごす。借金とりと組の娘が悪役となって、
   ドラマを作っていくのだけれどこれはこれでいいのかなあ。

16)2006年5月4日(木)  新橋演舞場      ☆
 
5月大歌舞伎 
「増補双級巴 石川五右衛門」「京鹿子娘道成寺」「松竹梅湯島掛額」
    
石川五右衛門、いいとこどり。つづらぬけ、その瞬間見抜けなかった。南禅寺山門「絶景かな」だけで声が飛ぶ。
   相手は染五郎。 道成寺は福助、だんだん展開を覚えてきた。 
   八百屋お七は亀次郎。人形ぶりからいきなり、自分で演じる、歌舞伎の節操の無さ、面白ければいいは大いに参考になる。
   紅屋長兵衛のお土砂は笑いきれなかった。 

15)2006年4月28日(金)  シアター1010 ☆
 
「秘密の花園」 作・唐十郎 演出・三枝健起 美術・朝倉摂 三田佳子
    
水をかぶる席でなく見る唐。三田佳子の二役、朝倉摂の装置で、なにやら美しい。
    自転車が坂をかけおり日暮里の駅に漆にかぶれた彼が幻想の世界に巻き込まれる。
    生まれる前の港で未来を交わした男と女。心の中の旅がたのしいか。

14)2006年3月27日(月)  笹塚ファクトリー 燐光群
 
「フィリッピン ベッドタイム ストーリーズ2」
    「アスワン 〜フィリピン吸血鬼の誕生」作・ロディ・ヴェラ 
    「それで裸になったつもり」作・リザ・マグトト
    「フィリピンパブで幸せを」作・内田春菊

      フィリピンの俳優達がパワフル。アスワンが迫力。それを日本語バージョンでやる必要があったのかな?

13)2006年3月17日(金)  歌舞伎座       ☆
 
3月大歌舞伎 
「近頃河原の達引」「二人椀久」「水天宮利主深川」
    猿がいきなりとんだところに拍手・菊之助の踊りお見事・幸四郎の狂い、前半の堅さもこのためかと。
   御簾をあげての清元、それが狂いのための伴奏となる。現代劇ならみてられないものを、歌舞伎にしてしまうと
   見ていられる。

12)2006年3月16日(木)  船橋市民文化ホール 青年劇場
 
「喜劇キューリー夫人」 作・ジャン・ノエル・ファンウィック 演出・飯沢匡 黒柳徹子
    カーテンコールの黒柳徹子のトークが一番面白い、というのもなあ。原題が「シュッツ氏の勲章」というなら
   演出が違うのではないか。若々しい役者でやってみたいし暗転無しでやってみたいよ。

11)2006年3月9日(木)  日生劇場
 
「夏の夜の夢」 作・シェークスピア 脚本・小池竹見 演出・加納幸和 美術・島川とおる 尾上松緑
    役者の力ってこういうものだと、おしえるよう、4人の恋人達の場になるととたんに、空間が魅力が亡くなる。
    対して妖精の世界はそれなりに面白い。二重盆で鳥居と井戸と巨大な立木がまわる。日本がテーマと美術は初めから
    宣言しているのだがそれがわかるのは終幕、宴が去って松緑のパックが寂しげに残ったとき、盆の奥が開いて、
    現在の都会の夜の遠景があらわれ、ここは高台の神社となる。ここはきれい。

10)2006年3月4日(土)  シアタートップス ポツドール ☆
 
「夢の城」 作・演出 三浦大輔
    とにかくびっくり。黒幕がとんだと思ったら目の前にエアコンの室外機が置いてあって
    舞台の中が見えない。進行と共に客が笑い初め、見えないことに焦る。一場が終わると室外機も壁も消え
    部屋の中が丸見えになる。劇中台詞は一つもない。最低の人間の最低の生活を描くとのパンフ。
    雑魚寝の男四人と女三人、男たちはすっぽんぽんでうろうろ。すぐあはあはとなり、ゲームからはなれず、
    映像に時間をつぶし、どうしようもない時間がどうしようもなく過ぎていく。

9)2006年3月3日(金)  東京厚生年金会館       ☆
 
「トミー」
    久しぶりにロック・ミュージカルを見た。オープニングの時代説明、楽しかった。
   ピンボールにはまっていく流れも踊りも楽しい。
   時間的にいつかは聞こえるようになるとは思うのだけれど、鏡を割ったから、生まれ変わったというのも
   舞台上では単純に思える。わかりにくくなるのは、あるいは、ただ進んでいくだけになるのは
   後半、カルトの教祖的集団になってから。「あなた」についていくの「あなた」ってだれとか思ってしまった。
   トミー自身を語っている歌手が歌っているのだから、トミーの事かとも思うのだけれども。

8)2006年2月24日(金)  歌舞伎座       ☆
 
2月大歌舞伎 
「梶原平三誉石切」「京鹿子娘二人道成寺」「人情噺小判一両」
    幸四郎の梶原、まずまず。玉三郎・菊之助の二人道成寺、きれい。てぬぐいの踊り、色っぽい。
    吉右衛門・菊五郎の小判、悲しい結末、良し。

7)2006年2月21日(火)  本多劇場 三軒茶屋婦人会
 「女中たち」 作・ジャン・ジュネ 演出・G2 篠井英介・深澤敦・大谷亮介
    
やっぱり難解な本かなあ。強引な組み合わせの三人が力ずくで見せようとしている感じ。
   難解な本を男でやると、さらに色っぽくなるのか、すさまじい恐ろしさが出るのか、笑えちゃうのか。
   そこいらへんが中途半端な気がした。

6)2006年2月17日(金)  シアター1010 ☆
 「ベルナルド・アルバの家」 作・フェデリコ・ガルシア・ロルカ 演出・高瀬久男 舞台美術・朝倉摂 照明・沢田祐二 小川真弓・占部房子 
    
宇宙を切り裂いてきて浮かび上がっているようなセットが、おおっ。盆がまわって心理が変わる。
   緊張した舞台運び。娘達の情念の表出が面白くて。召使いが舞台を締めて。母正面切りすぎ?房子はまだ房子らしく。
   エンディングは美しくさえある。

5)2006年2月15日(水)  シアタートラム t-factory
 「フクロウの賭け」 作・演出 川村毅 舞台美術・島次郎  江守徹
    
暗転が多い・最初の内の暗転はトラムの柱や壁を様々に浮かび上がらせて飽きないけれど時間かせぎと感じる。
    江守徹が不気味でしかも笑いがとれる。そこにあまり無理がない。過去の事件が徐々に浮かび上がって
    くる。その時の互いの傷、そこに救いを求めるという事。

4)2006年2月11日(土)  スズナリ 桟敷童子
 「泥花」 作・演出 東憲司
    
筑豊の炭坑の持ち主の子ども達が、別の炭坑住宅に逃げ込む。そこでも時代に翻弄されていながら
   強く生きている人たちが居て、となるのだろうが、ただ単純に順を追っているように思えた。
   前回の博多湾岸台風小僧のどきどき感がない。ラストの泥花の機関車には期待していた分がっかり。

3)2006年2月4日(土)  東京芸術劇場小ホール1 桐朋学園卒公 ☆
 「ブンナよ木からおりてこい」 作・水上勉 脚色・小松幹生 演出・篠崎光正
    
全30年前の青年座の役者達の楽しさ、一人一人が思い出される。
    22才4年間を過ごしたとの一人一人のアンコール挨拶に真の演出が発揮される。
    そこが一番面白かった。けれど、初めの堅さ、前半の笑いの取れ無さ、蛇のちょっと物足りなさ、
    あるけれどそれなりのブンナを楽しめた。

2)2006年1月28日(土)  東京芸術劇場小ホール1 道学先生 ☆☆
 「酒坊ちゃん」 作・中島淳彦 演出・青山勝
    
全員が傷を持っている。そこに漱石の坊ちゃんときよが登場する。きよは母代わりに坊ちゃんを育て、
   その父に求婚されると坊ちゃんがいやがると思って出て行く。手紙を常に送って、何でも周りにしゃべっちゃうので
   このアル中断酒会の人はみんな「女癖が悪いんだって?」と聞いてくる。
    酒を飲んでは殴られる妻、別れる別れると他の男に寄っていきそうになりながら夫の側を離れない。
   断酒のために家族と離れ、子ども達に手紙を送り続ける男の元には、ラジオから子ども達がリクエストした美空ひばりが聞こえてくる。
  手が震えて水をこぼす手品師。落語たっぷりのカクスコの役者。ださいけれど面白い。

1)2006年1月24日(火)  船橋市民文化ホール 東京ヴォードヴィルショー
 「竜馬の妻とその夫と愛人」 作・三谷幸喜 演出・山田和也 美術・石井強司 
    
ラストにいろいろ落ちをつけて締めているけれど、ああただ女を奪い合っているだけだ、と思えてくると途中やや飽きる。
    佐藤B作の遊びに客は結構乗っているけれど、三谷幸喜らしくシチュエーションを組み上げた感じはしない。
    もちろんキーになる落ち、とか笑えるところは多々あるのだけれど。でもラスト、あれいっちゃっていいの?

2005年

2005年に見た劇のベストセヴン
    今年は約40の芝居を見た
 パワーが気持ちよかった 「博多湾岸台風小僧
 
心のひだひだを楽しんだ  「リタの教育」
 
苦さを逃げられた気がするけれど 「歌わせたい男たち」
 
笑って笑って苦くて      「片づけたい女たち」

 
かっちりとした芝居に仕上がっていて 「恋ぶみ屋一葉」
 
玉三郎 清姫の人形ぶり・知盛の踊り
 
 
番外でDVDだけれど 「フレンズ」

39)2005年12月26日(金)  スズナリ 新宿梁山泊
 「風のほこり」 作・唐十郎 演出・金守珍 
    
水かぶったぁ。ビニールシートを持ち上げつつ最前列での観劇。唐の世界にはっきりした筋を探すのは無意味と思いつつ。
    劇場地下に螺旋階段が水たまりに落ちていく。田中加代が書こうとする「尻子の旅」。義眼を彼女は借りている。文にしていくと
    イメージが広がるが、めくるめく次から次へとは行かなかった。水の底に鍵がありそれが最後に見られるだろうという期待が
    水の中から現れた鏡では不足だ。風の又三郎のテントが割れ降りしきる雨の中を飛行機が飛ぶラストには全てを許す力があると思う。
    スズナリでは、そこまでできなかった。スズナリもただの箱であるとわかってしまうという結末が悲しい。

38)2005年12月16日(金)  off off シアタ− 佐藤正隆事務所 ☆☆☆
 「リタの教育」 作・ウィリー・ラッセル 演出・高瀬久男 
    
富本牧子のリタがどんどん素敵な女性に変わっていく。だらしない有川博のフランクが落ちていく。
    脚本読んだ段階で面白かったが、ゆたかな観劇だった。十分で若返らせてあげると、はさみを使うリタと
    耳を切られたと居たがるフランクの笑顔を素敵。

37)2005年12月16日(金)  松戸市民会館 シアター青芸 馬橋高芸術鑑賞会
 「ウィンズ・オブ・ゴッド」 
    
漫才から力がない。笑いがとれない。生徒にはなんとか見続けたいという意欲はあった。
   声がよく通らない。
鑑賞会としてはなんとか成立している。

36)2005年12月14日(水)  歌舞伎座 ☆
10月大歌舞伎 「恋女房染分手綱 重の井」「船弁慶」「松浦の太鼓」
    
船弁慶の知盛(玉三郎)かっこいい。勘三郎は船弁慶の船頭、松浦の殿様と愛嬌があるのが楽しい。

35)2005年12月6日(火)  紀伊國屋サザンシアター  1980
 
「行路死亡人考」 藤田傅・作演出 
    
5才の時に別れた父が焼身自殺したと報告され、こだわるようになる。
    この父ではないか、こんな死ではなかったのか、こんな別れではなかったのかと、三話にわたって考えていく。
    5歳児をおぼれさせてしまった男、出稼ぎで解剖の献体にサインした立会人、精神病院に逃げ込んだ男
    早口でまくし立てる、女二人と口をきかないオッチャン。津軽から出てきたハイテンションな母娘。一つのスタイルだなあ。

34)2005年11月13日(日)  新橋演舞場 
 
「児雷也豪傑譚話」 河竹黙阿弥・作 尾上菊五郎・演出 菊之助・松緑・亀次郎
    
第一幕ではやばやと大蛇丸の蛇(神楽の蛇みたい)が登場し、谷に落とされた幼き雷丸が大きくなって復讐を誓う。
   児雷也のガマと綱手姫のナメクジ(この形はおもしろ)との夫婦で大蛇丸と戦う。さっそくガマは背が割れて、児雷也のワシにのり飛び去る。
   フォーまで飛び出す笑いの場、悪代官とその妻を児雷也がやっつける二幕。大蛇丸を倒そうとして毒気にやられる。
   姉の生き血を飲んで生き返る自己犠牲の三幕。硫黄燃えさかる中を戦う和太鼓付の立ち回り。と、てんこもり。

33)2005年11月12日(土)  スズナリ
 
「十八番 (おはこ)」 知念正文・作・演出 松井るみ・美術 沢田祐二・照明
  
 
大石内蔵助が切腹を前にうなされている。死を怖がっているのか?歌舞伎の夢を見ている。一時間45分の中で次から次へと
  十八番の一部が現れる。狭い中であせいっぱいで踊る。

32)2005年10月30日(日)  サンシャイン劇場
 
「サラ 追想で綴る女優サラ・ベルナールの生涯」 ジョン・マレル・作 宮田慶子・演出 松井るみ・美術 沢田祐二・照明
  麻実れい・金田龍之介
    
老残ということ。骨折のくだり、足切断のくだり、迫力。ピアノが屋外にあるセットなぜなんだろう。

31)2005年10月22日(土)  ベニサンピット ☆☆☆
 
「歌わせたい男たち」 永井愛・作・演出 太田創・美術 中川隆一・照明  戸田恵子・大谷亮介・近藤芳正
    
笑えないよ、これ。どうするんだよ。しょっぱな戸田恵子のセクシーシーンに笑い始まったものの、うーん、うーんと
    うなりながら、結局笑ってしまう。おー力業てな、装置と旗と照明との終盤近くの演説シーン、そうやって、
    どちらにもつかずに、終わらせるか。その中でシャンソンが心に響いてくる。たしかに一歩進んでいる。めがねと夕景とシャンソンと。
    

30)2005年10月15日(土)  紀伊国屋サザンシアター
 
「島清、世に敗れたり」 松田章一・作 高瀬久男・演出 松井るみ・美術
    上杉祥三の島清、占部房子のお嬢さまのあらそい、森尾舞との色事が面白い。天才と傲慢と狂気あたりがモチーフとなって
   動いていくのだけれど、色事だけなら風俗喜劇。虐げられた金沢時代がエネルギーの元という設定のようにも見受けられるけれど
   二人の娼妓たちと深く関わっているわけではない。貧しい、だから飛び出した、というだけでは、狂気にいたる事にはならないのではないか。

んといっても玉三郎の清姫すごい。人形ぶり、波布、金銀の蛇体。振り落として一面の桜。
    河庄はしつこいかも。

28)2005年10月10日(月)  新橋演舞場 ☆☆
 
「恋ぶみ屋一葉 齋藤雅文・作 江守徹・演出 朝倉摂・美術 吉井澄雄・照明 池辺晋一郎・音楽 高橋英樹・浅丘るり子
    しょっぱなから、きっちりと人物像が組み上げられていく。文士の元に集まる書生・編集・女中。
    長い物が嫌いな文士、一葉が無くなった事が一葉先生と呼ばれる女の登場で怪談もどきに。
    浅岡るり子が太い声と華でかざる。誰が書いた恋文か、客にはわかって登場人物にはわからない。
    こんな人間模様ゆったりとみていられるのも幸せなのかもしれない。
    朝倉摂のセット、盆を三つにわけているのだが、かっちりしていて舞台全体の空気を作り上げている。
    不忍池の蓮。石段にあたる光。良い。

27)2005年10月8日(土)  紀伊國屋サザンシアター 岡部企画 
 
帰去来 赤とんぼ ぶんととんだ
    若い役者達と何人かのベテランの集合
、野球選手が特攻に行った。
    状況説明に必死という感じ。

26)2005年9月6日(火)  歌舞伎座 
 
9月大歌舞伎 「平家蟹」 「勧進帳」 「忠臣連理の鉢植」
    平家蟹 芝翫の玉蟲が海に入っていく、所作いい。吉右衛門の弁慶がお客の笑いを呼び、
    弥七とお欄のやりとりに客がよく反応している。

25)2005年8月14日(日)  スズナリ ☆ 燐光群
 
「だるまさんがころんだ」  坂手洋二・作・演出
    
傾斜エプロンステージの横で見た。このセットは「私の戦争」と同じ。真横あるいはやや後ろから見るせいか
   ところどころ聞き逃す。特に字幕は見切れて英語の台詞はほとんどわからない。笑いそこなった。
   ヤクザのお兄さんの地雷調達の話が面白い。特に喫茶店で会う女との会話が肉を感じさせてよい。
   「今日会社で事件があってな」しかいわない無口な地雷作りの親父など何本かの縦糸が肉太。

24)2005年8月11日(木)  DVD ☆☆
 
「フレンズ」 飯島早苗・作 長谷川康夫・演出 升平香織・美術  齋藤由貴・七瀬なつみ
   
DVDでみたのだけれど いいなあ。ネタバレするけど、メモしておこうっと。男に振られて酔っぱらった東京在住の栗子が、
   家族写真が載ってない素っ気のない年賀状を出した、顔も覚えてないはるかにメールするところから、
   二人のメールだけの交流が始まる。恋バナに花を咲かせるうち、札幌のはるかの男が東京に行くから、「案内してあげて」と
   なる。パターンがあっという間に客に読めるけれど本人たちだけがわかってない。
   はらはらしながら、齋藤由貴の馬鹿さと強さにひかれ、どうしようもないい世界にはまっていく。
   ラストそう来るかといった苦い解決になって、二人のぐっと深まった人生だけが残る。 泣いちゃうよ。
   

23)2005年8月10日(水)  新橋演舞場
 
「もとの黙阿弥」 井上ひさし・作 木村光一・演出 高田一郎・美術 
   
おーっ井上ひさしが、大舞台の盆をぐるぐる回しながら、蜷川風に始まるなんて。
   23年前の大竹しのぶ・片岡孝夫・水谷良重・の方が面白そうだな。田畑が弱いよ。高畑は良い。
   井上ひさしにしては松竹新喜劇風、それを最後の結末で味付けているけれど、やっぱり役者の芸で見せる芝居かなこれは。  

22)2005年8月8日(月)  本多劇場  劇団健康
 
「東京あたり」 ケラリーノサンドロビッチ・作・演出  
   
一番笑えるのがケラが「キレイ」と「鈍獣」の本を公園のゴミ箱に捨て、手塚とおるにつっこまれるところ。
   小津の東京物語・黒沢の生きるを混ぜてぐちゃぐちゃにして笑いをとりにいってといったものだけれど、くすぐり程度。

21)2005年7月28日(木)  本多劇場  毛皮族
 
「銭は君」 江本純子・作・演出  照明・中川隆一 舞台・加藤ちか
   
元気いっぱい。宝塚と大人計画、ちらっと鳥獣戯画の若い頃
  歌いたい、踊りたい、脱ぎたい、キスしたい、暴れたい、ちょっとドラマもやりたいの大騒ぎ
  しいて流れを追える人物は、劇団を作って、借金増やして銭借りるだけになった人物、
  お笑いを絶望的に求め、結局は人を殺してしまう人物


20)2005年7月12日(火)  スズナリ  桟敷童子 ☆☆☆
 
「博多湾岸台風小僧」 東 憲司・作・演出
    
新宿梁山泊に木冬社を足したらこんな劇?テーストは赤テント。彼岸花がスズナリにお化け屋敷のように飾られている。
  マッチ工場から逃げてきた姉が曼珠沙華を食べて死ぬことばから、全ては始まる。唐風の地声の唄。音量いっぱいの効果音。
  曼珠沙華を切り抜く照明。全てを隠すスモークとブルーのバックパーライトの列。河あさりの長屋で、姉を亡くした弟がはい上がろうとしている。
  そこに女工が逃げてくる。スキンヘッドの戻しや達が追っかけて暴れる。元締め、小悪人、嫉妬、性病、官憲、と色濃く人間を塗り上げていく。
  舞台全体が船になり、曼珠沙華が吹き荒れる。面白い。

19)2005年7月10日(土)  吉祥寺シアター  桃唄309
 
「ブラジャー」 長谷基弘・作・演出
    
まとめてみると、大規模店舗に押されがちな商店街の人々と、手縫いのブラジャーをつくることになるデザイン学校出身の女の子。
   何もない空間に多数の男女の行列が行進してきて入場、合図の後、ばらけて演技の準備を始める。
   どんな役でも時代でもセット無しで飛びますよすスタイル。唄も入るのだけれど、ない方がいいかも。
   ブラジャーが発明された時、日本で作り始められたとき、商店街の一角で手作りブラを売りはじめる時、
   沢山の話をいっぺんにやったという事。

18)2005年5月28日(土)  東京芸術劇場小ホール2 PEEK−A−BOO
 
「Yell たとえきみにとどかなくても」 武松志朗・作・演出
    
取り立て屋が実はナィーブで、同棲記念日の花束を買いに行こうとして、自殺した者の家族に殺される。
   それだけの内実を持つモチーフだけれど、台詞で深まっていかない。

17)2005年5月22日(日)  シアター・アップル キャラメルボックス
 
「僕のポケットは星でいっぱい」 成井豊・作・演出
    
一体この人たちは成長しないの、とあきれた。銀河旋律の続編・広くて素敵な宇宙じゃないかの一歩手前。
   そこにストーリーを差し挟む能力は相変わらず。母の死を認めたくない少年の心を、タイムトラベルという安易な方法だけで
   解決してしまう。もっとかけないの?過去の二つの作品に頼っているということでも、二作を越えてない。

16)2005年5月21日(土)  俳優座劇場 シェークスピアシアター ☆
 
「冬物語」 シェークスピア・作 出口典夫・演出
    
隣国の王に滞在を続けるように妻が求めたら承諾しただけで嫉妬に狂ってしまう。開幕僅か五分ぐらいの速さ、これは見事。
  道化・シェークスピアにつきもののこの飛躍、やはりなじめない。 だがそのおかけで話が進み、不可能と思われる終盤を
  納得させてしまう。まったく不可能だよ。なぜ死んだと思ったの。なぜいきなりポーリーナが結婚しちゃうの。
  それをそれほど気にさせないのが仕掛けなのか、ちとうるっと来た。もちろんこれはポーリーナのせい。

15)2005年5月15日(日)  ブレヒトの芝居小屋 東京演劇アンサンブル ☆
 
「林檎園日記」 久保栄・作 広渡常敏・演出 林光・音楽 高田一郎・舞台美術
    
固い句読点で切るようなしゃべり。一回入ったプロンプ、はっきりしたとちり。あいかわらず難題。
  北海道に入った先駆者達がリンゴの木を植えた。士族のリーダーであった家は、あとから入ってきた者たちに負けていく。
  長女の日記を読み上げていく形で状況が作られる。
  金策のために買い足した土地を売って元の家に引っ越してきたその日。
  囲炉裏のみえる建物内だけで話が進む。
  ここに登場するのは林檎園を経営しようとする叔父・雇い人・長女、隣家の男。
  ヒットラーユーゲントとの交流にあこがれ仕事もしないでふらふらしている長男。
  林檎園の経営に破れ妻に死別し、鉱山に手を出し、林檎園を破産させてしまう父。
  官有地をいただいたと、国を敬う母。
  骨格のしっかりした人物達が、しっかり、組み合っていく脚本が良い。
  長い上演時間であるが見ていられる。
   あがめていた国を否定していく過程は良くわかるが、それから脱却することが、書いた小説を焼くことなのだろうか、
  今上演するに当たって、何かが違う気がした。 
   高田一郎のセットは食事の場面で映える。けれど新品のクレーン、家の中のつらら、役者が下がっていく二階は疑問。

14)2005年5月7日(土)  シアター・アップル KERA・MAP #003
 
「砂の上の植物群」 ケラリーノ・サンドロビッチ・作・演出  常盤貴子・筒井道隆・渡辺いっけい
    
近未来・日本に戻る飛行機が戦時下のある島に墜落。数人が生き残る。激しく軽快な音楽で映像にテロップが出されて進行する。
   現実に外にある戦争は、花火のような遠景で、軽く扱われるが、男と女、人間関係のどろどろは救いようもない。
   この救いようもなさがさらに進んだ未来に続くということで希望に続きそうなのだが、決して明るいとは言い切れない。
   この、救いのなさが言いたいことなのかとも思うけれど、「消失」の相手の記憶を消してしまうほどの愛情がない故に、むなしく、
   そらぞらしく、人物がただのこんなこともあるぞ、程度にしかなっていない気がする。有名タレントの使いすぎ?という気もした。
   なにか解け合ってない。、

13)2005年4月30日(土)  シアター・サンモール BQMAP
 
「イカロスの宇宙」 奥村直義・作演出
    
こちらはちょっとつらい。若者向けなのにねている客も。どこかの集団力高校演劇かと思う役者の使い方。
  美しくないダンス。下手な歌。嘘をついて好きな女の子に近づいていたつらさが役者の一人にかかっていて、
  それと宇宙船の中のドラマが同時展開するのだけれど、幻想が幻想になりえず、ごちゃつく。 

12)2005年4月29日(金)  本多劇場 動物電気 ☆
 
「寝太郎の新作カレー」 正岡泰志・作演出
    
ぐずぐすしているカレー屋のマスターが自信をつけていくだけのコメディなのだけれど
   飽きることはない。跳び蹴り、突き飛ばし、酢を飲む、娯楽はこうだよと示しつつ古典的な人情話になっている。
  本多初進出、まあ許せるかな、笑っちゃった。若い女の子中心に満席。補助椅子で見た。
  本多の補助椅子は前から5列目ぐらいなので嬉しい。 

11)2005年3月20日(日)  新橋演舞場
 
「ヤマトタケル」 梅原猛・作 市川猿之助・脚本演出 朝倉摂・美術 吉井澄雄・照明 市川右近
    
クマソの兄弟を倒すシーンが前に見たときからよっくおぼえている。カニとタコの背中の紋様、バラバラと落ちる壁。
   特にこれといった葛藤はないのだけれど、殺陣と舞台美術でのんびりと見られる。伊吹山の山神や姥神も楽しい。

10)2005年3月17日(木)  船橋市民文化ホール 無名塾
 
「いのちぼうにふろう物語」  山本周五郎原作「深川安楽亭」より 劇作・驕@巴 堀内紀男・舞台美術 池辺晋一郎・音楽
    
え、なにこれ? 見得を切りたいだけ? 絵に描いたような同じ演技。耐えきれない。

9)2005年2月20日(日)  本多劇場 阿佐ヶ谷スパイダース ☆
 
「悪魔の唄」  長塚圭史・作・演出 加藤ちか・舞台美術 
    
イントロから不思議な雰囲気。やがて腕がとれる兵隊、頭が割られている、顔が焼けた男、
    と前から二列目で見るには引いてしまうリアルなメイク。夫の不倫で精神が壊れた妻の養生に来た山間のお屋敷で、
    死者がよみがえる。それだけで成立しそうだけれど、そこにゾンビとなってよみがえった日本軍兵士の思いが加わる。

    と、逆に怖さが薄まってしまう感覚がある。日本兵としての口の利き方を持っていないからではないか。
    不倫によって壊れた妻とやり直そうとする男の気持ちの緊迫はよくわかる。
    トータルで「日本をまかせる」といわれた面白さもわかる。兵士の実在感、が中途半端かな。ドアのトリックはすごい。

8)2005年2月16日(水)  紀伊国屋ホール こまつ座 ☆
 
「円生と志んしょう」  井上ひさし・作 鵜山仁・演出 石井強司・舞台美術 照明・服部基 音楽・宇野誠一郎
    
円しょうと志んしょうが
満州に渡る。戦況悪化、大連に逃げ込む。その大連でしぶとく生き抜いて帰ってくる、
    と言った話なのだけれど、それだけに終わってしまっている。大連の宿屋、売春宿、喫茶店、路地裏、とすみかを
    変え、四人の女優達がそれぞれの場で違った役を演じる。優れているのは二幕の修道女達とのからみ。
    一言ずつが神の言葉に似て修道女の誤解を生む。けれど、笑いにより救われるという言葉は確かな重みがある。
      

7)2005年2月14日(月)  市川市文化会館小ホール グループ る・ばる ☆☆☆
 
「片づけたい女たち」  永井愛・作・演出 大田創・舞台美術 照明・中川隆一
    
幕が開いた瞬間に
客席のおばさん達はどっと笑い出す。なんとまあ、よく散らかしたものだと。
    それが自分の生活体験に根付いている笑いだから、あとは50代の3人の役者が何をしゃべっても笑い転げる。
    「あれよあれ、なんだっけ」と忘れるとか、腰が痛い、腱鞘炎、首痛い、片づけようとして散らかすとか。
    その中で、永井愛が生きていた高校時代が
    くっきりと現れる。ベトナム反戦決議。コーチとの事件。すべて跳び箱のかげでの会話で話していたこと。
    恐怖の電話。そしてその解決がとんでもない方角からやってくる。客が笑いすぎて台詞が聞こえないのが残念。

6)2005年2月10日(木)  スズナリ TFactory ☆
 
「クリオネ」  川村毅・作・演出 島次郎・舞台美術
    
団塊の世代は戦争をもうれつに仕事をする戦争に変えた。そのあとに来た、現在40代の人間。
    確かな物がない。
シナリオライターのところに映画監督がやってくる。殺人を起こした者にしがみついていく。
    もしかしたら、その事もはっきりしない。いらいらいするような中心の欠如。ただ一人の女もいいな。
    遠近法の見本のような三方の壁。
    扉のむこうにあらわれたクリオネのイメージ、照明見事。

5)2005年2月5日(土)  シアターX 京楽座 ☆
 
「をぐり」  ふじたあさや・作・演出 石井強司・舞台美術
    
小栗が暴れ馬を制するあたりから話が面白くなってくる。餓鬼になった人形の登場もいい。
    小栗の復活を喜ぶ父母、再会する照手と小栗のシーンも高揚する。荒唐無稽な話をどう実現するか。
    餓鬼になった小栗から見たら世の中はどう見えるかなどと本を読んだ時には考えていたけれど。
    よくさらっていたといった所か。

4)2005年2月2日(水)  PARCO劇場
 
「Shakespear's R&J」  シェイクスピア・作 ジョー・カラルコ脚色・演出
    
台詞がしゃべりきれない。滑舌の問題?シェイクスピアの台詞を回せない。
    演出家が日本語のニュアンスをつかみきれないのが原因?
    カソリック全寮制男子校の4人の生徒が夜中に「ロミオとジュリエット」を読む、という構成だけれど
    結局はロミジェリの一パターン。夜中に読み演じ始めてしまうがゆえに、時々外部が感じられるようにはなっている。
    何もない四角のスペースで演じる事は可能だと思ったし、手や足でリズムとったり、赤い布一本で剣もナイフも毒薬も血も
    あらわす演出はさえているとは思ったけれど、「ロミオとジュリエットしらない人にはわからないわよね」と隣のお姉さんが言い
    後ろの伯父さんはいびきをかいていた。台詞に力が無いと言う事でしょ。

3)2005年1月21日(金)  新橋演舞場 ☆
 
新春大歌舞伎「鳥辺山心中」岡本綺堂・作 「文屋・喜撰」 「御所五郎蔵」河竹黙阿弥・作
    
市川団十カの五郎蔵、左団次の土右衛門、なかなかしまった舞台。
    新春につき、切り結ぶ最中にチョンパー、チョンパーもここまで来るとすごいな。
    鳥辺山、心中物はなぜに死ぬかと思ってしまうな。

2)2005年1月12日(水)  歌舞伎座 ☆
 
初春大歌舞伎「鳴神」 「土蜘蛛」 「魚屋宗五郎」河竹黙阿弥・作
    
久しぶりの歌舞伎座 にぎやかで楽しい  
    鳴神は三津五郎 雲の絶間姫は時蔵 しゃくのシーンも楽しいし しめ縄きったあとの 絶え間姫の雨中の運びもすごいな
    宗五郎は幸四郎、幸四郎の酔っぱらいも、あまりバタくさくなく、なかなか。 
    番長皿屋敷と違い、無理矢理ハッピーエンドに持っていく運び うーん でいいのだろうな

1)2005年1月4日(火)  こまばスズナリ 青年団 ☆
 
「S高原にて」  平田オリザ・作・演出
    
堀辰雄の「風立ちぬ」をキーワードにしながら、サナトリウムの休憩室で、患者と見舞客達のドラマが
    展開していく。一人は半年もサナトリウムにいるために東京にいた時は毎日一緒にいた彼女が、
    久しぶりに訪ねてきて、その本人ではなく変わりに一緒に来た彼女の友人が彼女の結婚を告げる事。
    一人は、婚約者が迎えに来るが、彼自身はサナトリウムにいる女性患者をモデルに
絵を描き始めている。
    一人は4年もここで暮らしている男。砲丸投げの選手だった彼女に見守られながら、高原のピンクドラゴンと呼ばれるほど
    女にもてているが、体力が落ちてきてやがて死も近いものと思われる。
    久しぶりに青年団を見たが、随分上手くなったものだと思う。あのワザと下手にしゃべっているような感覚がなくなっている。
    

2004年

2004年に見た劇のベストセヴン
    今年は沢山の芝居を見た
 狂いそうになるぐらい考えた 「ささやく声」
 
レベルの高い娯楽  「高き彼物」
 
今をそのまま芝居に 「私たちの戦争」
 
笑って泣けて      「大阪嫌い物語」
 
初演のキャストにはかなわないけれど「父と暮らせば」
 
時代にはまった    「新三国志V」
 
どうしようもない笑いとつかみ「ウィンズ・オブ・ゴッド」
 
番外でVTRだけれど 「剛&剛」

40,41,42)2004年12月28日(火)芸術鑑賞会の為にVTRで
「夏の庭」
東京芸術座 
  夏休み三人の小学生の一人が祖母の葬式を経験する。
  死への恐れと興味。近くの一人暮らしの老人を見張り始める。
  心が触れ合うようになった時老人の戦時体験を聞き、奥さんを探し、二人を思いやり
  老人の死に接し、三人それぞれ成長していく。ビデオではあるが、
  子役と老人たちの力のバランスがよく、楽しめた。
「遠い水の記憶」 東京芸術座
   オリンピックの第一候補だった男が盲学校の先生になる。
   子どもたちと接しているうちに、自分に勝った男が泳ぐことに自信を失ってやってくる。
   一緒に指導しているうちに、三者とも泳ぎにめざめる。
   単純なマイムで泳ぎを表現できるなど、多分持つと思うけれど、
   盲学校の生徒たちが、一人のおちこぼれを救い出すだけの記号になってしまってると思う。
「剛&剛」コーロ
   中学でてフリーターの十五歳が宮大工の家にやってくる。
   本人は働く気などまるでないのだが家を追い出されたも同然の剛には行き場がない。
   もといじめられっこの少年、もと暴走族の青年と触れ合っていくうちに、
   徐々に剛の父のこともわかってくるようになり、弟子入りする。
   かたりのおばちゃんの大阪弁のせいだろうか、飽きることなく、ひとりひとりの人物像がわかってくる。
   水商売らしい母ちゃんもいい。とても十五歳に見えない役者だけれど、許せるかな。

39)2004年12月28日(火)  スズナリ にんじんボーン
 
「冬のモナカ」  宮本勝行・作・演出
    
前半はハイテンションな役者達の稽古場、後半は外部から来たまともな演出家の前で稽古する
    ハイテンション演技しか知らない役者達。そのずれのどたばたが笑える。意味はなく、見終わった後はストーリーも

    わからなくなっている。それをねらった作品でもある。    

38)2004年12月23日(木)  ブレヒトの芝居小屋
 
「銀河鉄道の夜」  宮沢賢治・作 広渡常敏・脚本・演出 林光・音楽
    
ジョバンニの学校での星と答えられなかったシーン、母との会話、牛乳屋、丘に登っての孤独、イントロは
    スムーズに世界に入っていける。列車の中に入ってからがなにかもたつく。難解な言葉が、鋭いイメージにならずに
    ああ、しゃべっているとしか思えなくなる。年に一度のクリスマス公演、客全員のキャンドルの火、お客が何より楽しみにしている空気
    が伝わった。

37)2004年12月18日(土)  ☆ 練馬文化センター小ホール  シアター青芸
 
「ウィンズ・オブ・ゴッド」  
    
転換スピーディ、後半あきたので暗転しない手もあるだろう。暗転中に白い服が動くのは情けない。
    ラスト近くの特攻、やや短いかな。100mのくだり何か足りない。
    さりげなく抑えられた中から激しい体の動き、気持ちが吐露される。こども劇場の子ども達が下ネタに乗らなかったのは
    愛嬌。けれど、時代錯誤に対して正確な笑いが起きる。そして泣いている。こんなによくわかるものか。

36)2004年12月17日(金)  市川文化会館  現代劇センター真夏座
 
「人間ども集まれ」  市川東高芸術鑑賞会
    
なにか勘違い。わかりやすいがいい?ところが生徒は静かに見ている。なんかなさけない。

35)2004年12月15日(水)  新橋演舞場
 
「丹下左前」  中村獅童 美術・松野潤
    
スクリーンの中村錦之介は華があるなあ。その錦之介の中から獅童が現れる。ぐっとスケールが小さくなった気がする。
   殺陣は映画にかなわない。なら舞台の殺陣ってなにか、シンプルな中の風格かな、左前という役もあるけれど乱暴な立ち回りが
   還ってスケールを小さくしているかも。くるくる回り、次々とシーンをかえるセットに感心。麿赤児がこわい、さすが。

34)2004年12月8日(水)  紀伊国屋ホール  ☆ ナイロン100℃
 
「消失」  ケラリーノ・サンドロビッチ・作・演出 島次郎・美術
    
なんと多才なんだろ。新しい月を打ち上げて、そこに人々を住まわせた段階で、破滅的戦争が起きて
    往復する宇宙船が出せなくなる。人々は宇宙からおくられてくる映像の中で全滅した。
    地上は、戦争が終わり一段落しているが、インフラは壊れ、空気や水は汚染されている。
    父母が不仲で家を出て行き、残された兄弟の話。あに39才、弟35才、共に独身。
    新しい彼女にクリスマスパーティで告白しようとしている。お笑いかコントか、と思っている内に、
    この弟に記憶の消失があるという事に気がつく。そして、殺人の臭いが漂ってくる。
    そんな中でも、互いを求めようとする男と女が居て、互いを思う兄弟が居て、壊れていく。
    ガスをひねると水が出て、水道をひねると電気がつく。そなんナンセンスギャグで笑いながら、はまっていく。
    これを見て、明日を生きていこうとかは思わないけれど、知的好奇心で引きずられた。

33)2004年11月9日(火)  駅前劇場 シベリア少女鉄道
 
「VR」  土屋亮一・作・演出 
    
VRとはバーチャル・リアリティの略、けれどこれはそれに「ER」のもじり。ほとんどNHKのER吹き替え番のままに
    ストーリーは展開していく。吹き替えのわざとらしさを誇張して。それが微妙に笑いを含まない。まじめなのか、ただ
    下手なだけなのか。妊娠中毒症の女性の出産に向かって、ERなみの緊張感が高まってくると、4つのモニターに
    それぞれの役者のまるで無関係な場面が現れ、場面と話の進行だけは、緊迫感を持ちながら、モニターでの日常的
    な台詞が、役者から発せられる。前半で設定が充分わかっているから、どんなにあほらしい事をしゃべっていても
    何を言ってるかわかる手法。これによって笑いが頻発するようになる。あほらしい言葉を聞きながら深刻な場面に接する
    わけだが、心情は伝わる。実験劇といった所。

32)2004年10月17日(日)  スズナリ 鳥獣戯画
 
「洋食のような和食」  ちねんまさふみ・作・演出 
    
役者はみんな上手くなってきていたけれど

31)2004年10月17日(日)  新橋演舞場
 「あかね空」  山本一力・原作 江守徹・演出 八千草薫 十朱幸代 赤井英和 
    
八千草薫につきるかも。十朱幸代が18才から老婆らなって死ぬまでを演ずるふみの思いを中心に
    長い日々が語られる。小説の方がもっときめ細やかであろうと思われる。演舞場には最近めずらしくしっとりとした芝居。

30)2004年10月6日(水)  ブレヒトの芝居小屋  東京演劇アンサンブル
 「ワーニャ伯父さん」  アントン・チェーホフ・作 広渡常敏・演出 岡島茂夫・美術 
    
初めて武蔵関の芝居小屋に行った。千葉からは遠い。高い天井まで届く森の木の幹が円形傾斜舞台を囲んでいる。
    チップがばらまかれていてセットだけでも面白い。客席中央足下にはレールが敷かれいて引き枠があるとわかる。
    固い台詞しゃべり。チェーホフが描く人間像がくっきりと現れてくる。

29)2004年9月21日(月)  船橋市民文化ホール  ☆☆ 俳優座劇場プロデュース
 「高き彼物」  マキノノゾミ・作 鈴木裕美・演出 川口夏江・美術 高橋長英 藤本喜久子 森塚敏
    
これは面白い。交通事故で友人を失った良い子の苦しみと父と娘の結婚話が第一幕。でも、これだけなら
   まだ平凡か。高き彼物を意識している元教員の過去の事件が浮かび上がり、その姿勢をたたえつつさらっと終わる。
   トータルでハッピーエンド、でも途中充分楽しんだ。

28)2004年8月25日(水)  市川市文化会館大ホール  こまつ座
 「花よりタンゴ」  井上ひさし・作 栗山民也・演出 石井強司・美術 旺なつき 鈴木ほのか 占部房子 小林勝也
    
ホールがでかすぎる。袖幕せめて、暗転幕閉めて。でも、客席も小さくしなければ。一幕は声がよく通らず。
    二幕は初日よりこなれてきた


27)2004年8月14日(土)  博品館 ザ・ライフ・カンパニー ミュージカル座 スイセイ・ミュージカル
 45分三本立て 「マンハッタン・プリンス」「三人の花嫁」「贈り物」 
    
2本目の花嫁が良い。友達三人が同時に式を挙げる。その花嫁の待合室。1人は2度目。1人は指輪をなくし。
    1人は車いすの人との結婚。
    バツイチの花嫁から笑いがとれ、笑い続けていくうちに、お、なるほどと思わせる。45分なら3人しか出さない。これがいい。
    1本目はひどい。3本目は、いつもの練習のダイジェストと言ったレベル。
    

26)2004年8月11日(水)  スズナリ  かもねぎショット
 「窓」  高見亮子・作 加藤ちか・美術 中川隆一・照明
    
盆が回るセット。でも何か安っぽいかな。窓からのぞいている人の力によって、自分をつかもうとした人?とくくってしまっていいのかな。
   黒ずくめの男女の食事を覗く三人の男女のシュールな場面は期待させる。リアルな展開とシュールな展開が混ざってくるけれど
   先生がしくんだのは、窓から覗いて欲しいという事なのだろうけれど、これがいったい何なのか、よくわからない。

25)2004年8月6日(金)  紀伊國屋サザンシアター  こまつ座
 「花よりタンゴ」  井上ひさし・作 栗山民也・演出 石井強司・美術 旺なつき 鈴木ほのか 占部房子 小林勝也
    
ダンス・ホール タンゴ・そして焼け跡の歌・月岡家の四姉妹と闇成金の男
。あいかわらずの笑いと歌の楽しさの中で
  楽しむ。歌、キスして(?)、上海リル などでなけてしまう。焼夷弾騒ぎで大いに笑って。後半に戦争責任が海の底にいるたぬきたちに
  あてられる。
  初日であったので、ロビーでビールが振る舞われ、紀伊国屋の支配人、作者、役者、お客小田島雄志さんの挨拶などがあったのが
  楽しかった。

24)2004年7月25日(日)  スズナリ ☆ 燐光群
 「私たちの戦争」  坂手洋二(LOST IN THe War) 渡辺修孝(戦場イラクからのメール) マリオ・フラッテイ(Blindness) 
    
剛速球の社会派、と坂手洋二を評する人がいたが、反戦といたづら書きし逮捕された青年が、アブグレイブ刑務所に捕まっている
    イラク女性と場面が変わり、彼女が、そしてその夫があの報道の通りに舞台上で虐待される。
    再び日本に戻るとアメリカ大使館前のデモに参加している女性に警察の手が回る。
     休み無く2本目にはいりイラクに入って拉致された二人のジャーナリストの物語になる。当事者の渡辺が語りつづる。
    イラクの人たちとの交流、日本人の立場、やがてこのわったんと呼ばれる彼が好きになる。つづけて3本目は、
    アメリカで戦死した友人の家にやってく夫婦の話。戦友でもある彼は目をやられているわけだが、
    やがてそれは家族が、情報から閉ざされている=見えていない、事実で終わる。

    緊張したまま見せ続けられる。渡辺さんがエープリルフールに「好きです」と言われる話がいい。イラクにはエープリルフールはないと。

23)2004年7月17日(土)  新橋演舞場 ☆☆
 七夕名作喜劇祭り「二階の奥さん」「大阪嫌い物語」「はなのお六」  美術・石井強司
    藤山直美 淡島千景
   
二本目の大阪嫌い物語が抜群に面白い。一場の大騒ぎの昆布問屋の出荷シーンから、徐々に誰かが恋仲に
   なっているらしい、片方が暇を出されたらしいことがわかり、店の中に入って長男が母に逆らえない事がわかり
   やっと、本人の登場となる。藤山直美の廊下から聞こえてくる声だけで本筋が一息に見え、登場しただけで大笑いになってしまう。
   もうあとは、ひっくり返され、笑わされ、なかされ、今日しか言わないつっこみに耐えられなくなった役者を楽しむ。
   わざ。

22)2004年7月15日(木)  船橋市民文化ホール こまつ座 ☆☆☆
 「父と暮らせば」  作・井上ひさし  演出・鵜山仁  美術・石井強司 音楽・宇野誠一郎 照明・服部基
    辻萬長 西尾まり
   
すまけいと梅沢で前に見た。大阪の高校も全国でやった。知ってるよ。前と比べて、等と思っていたのは
   前半の四分の一まで。きちっきちっとはまって、「この子達の夏」と同じ話を、笑うもんかと思いながら笑い、
   泣くわけないよと思いながら、泣き、父が娘に寄せる気持ちは、こう、そして最後に引き継いで貰いたいんだよ。
   と、悔しがる。こんな芝居かかなきゃね。

21)2004年7月9日(金)  四季・自由劇場
 「ひばり」  作・ジャン・アヌイ  演出・浅利慶太  美術・金森馨
   
ジャンヌ・ダルクをさばく。み声を聞いた少女が、隊長を操り、シャルル王を操っていく。その過程が面白い。
   けれど、何を裁こうとするのか、映画の「ジャンヌ」の時にも感じた宗教裁判が何をもとめているのかの、共通理解が
  ない気がする。

20)2004年7月7日(水)  スズナリ ジャブジャブサーキット
 「動物ダウト」  作演出・はせもとひろ  
   
小泉という前の前の総理大臣がオペラ歌手との不倫がばれて、と時代設定もさりげなくはじまって、
   日常的な中に近未来な、小さな事件が描かれていく。やがて、ばけものに対するノスタルジックな表現となっていくのだけれど、
   1つの世界をつくってはいるけれど、それだけかな。直線のパネルをつないだ檻のセット、安易な机の配置もなにか情けない。
 

19)2004年6月26日(土)  俳優座劇場 シェークスピアシアター
 「ヴェローナの二紳士」  作・ウィリアム・シェイクスピア 訳・小田島雄志 演出・出口典夫  
   
恋の誓いをあっさりとやぶり、友を裏切り陥れ、それでも報われない。展開の早さ、強引さは、シェイクスピア。
   ラストの裏切った友にごめんと言っただけで、すべてが許され二組の結婚式があがってしまうのも、シェイクスピア。
   それでも認められるのは何故だろう。人物配置の強引さと筋運びのスピード感ゆえ?
     シェイクスピアの装飾に満ちた台詞をどう日本語でしゃべるか。その抑えたしゃべり方は、不自由さを感じさせるのか、
   リズムをしみこませるのか。

18)2004年6月9日(水)  新国立劇場中ホール
 「INTO THE WOODS」  作・ジェイムズ・ラバイン 曲・ソンドハイム 演出・宮本亜門  装置・ 照明・中川隆一 
  諏訪マリー 高畑淳子 
   
飛んでいく三軒の家、おお、これぞ、国立。と思うけれど、やがて動く大木にも飽きてくる。ソンドハイムの曲は面白く
  出だしは好調、一幕の後半、あ、そういう事ね、と思うとちょっとだれる。二幕の不倫話、次々と訪れる死、何もどうしようも
  ない、けれど、の歌はよい。だけど巨人を殺すのに上からたたけばいいだけなのかな。オオカミの腹を引き裂いて、頭巾にかえる
  ほどの残酷さ、それを罪と意識して、受け入れようとしている登場人物たち、殺し方にもっと救いのなさがあってもいいのかな。
  初日、開演前いきなりロビーで中川隆一さんとであい、松田聖子がこわーいSP?に守られながら手を振りながら50p横を通り過ぎ、
  休憩時間に亜門が横にいて、フィナーレで作者が部隊に呼び出され、初舞台のさやかが泣き出すなど、現実のドラマの方が
  ちょっと上だった。

17)2004年6月7日(月)  世田谷パブリックシアター
 「時の物置」  作・永井愛 演出・江守徹  装置・妹尾河童 
  有馬稲子 辰巳琢郎 
   
淡々と短い場面を、きちっきちっとつなげていく。シャボン玉ホリデーに有馬稲子がはまっていくあたりから
   笑いがと絶えなくなる。60年安保の挫折、そこからスタートした学生。旧赤線から抜け出してきたらしい同居人、
   その謎をはらみながら3時間をつなげる。特に大きい事件はないけれど、登場人物達を慈しんでる作者が居る。

16)2004年6月3日(木)  船橋市民文化ホール
 「アンネの日記」  原作アンネ・フランク 作・グッドリッチ&ハケット 演出・丹野郁弓  装置・松井るみ 
   
久しぶりにアンネを見た。滝沢の演出からかわり、装置も松井るみになった。鑑賞会の客という事もあるが、
  よく笑いがとれた。笑いと緊張感と。奈良岡、日色、里居らベテランの力、財産だと思う。
   セットも変更されている。ただ松井と以前の枠が戦っていて、成功しているとは言えない気がする。
  松井が勝手に作ったらもっと思い切った、セットになっていたのではないか。

15)2004年5月24日  紀伊國屋ホール
 「曲がり角の向こうには」  ジョアンナ・マレー=スミス・作 鵜山仁・演出  剣幸
   
一体どこへ持って行くんだ。行方不明だった二人が戻ってくる事で、はっきりしてくる。曲がり角を曲がった向こうには
   火事があった。家を失った二人の信じがたい、さとりがあった。この奥さんが強烈。
   壊れかけた生活を必死に守っている4人に突如二人が光を当てる。本格的に壊れていく。だけどしょうがないだろ。
   セットは終幕に壊れていく家を表現する。

14)2004年5月15日  新橋演舞場 ☆
 「新三国志V」  横内健介・作 市川猿之助・演出  毛利臣男・装置衣装 ☆
   
仲達と二人の息子の三人が、悪役なのだけれど、アクションもないしセットもないなかで狂言回しのように語るのが、笑える。
   そして、その悪役が戦乱の世を鎮めたと、それを認めてくれということが、苦い。悲しい。
   「夢見る力」「のぞみはかなう」くさい台詞はそのままだが、笑いあり、
   すかっとするアクションあり、そして、なにより、イラク・パレスチナの情勢あり。
  はまりすぎて涙がでてしまった。猿之助にかわって段治郎が、主役。タッパがあり、見た目がよい。

13)2004年5月14日  ベニサン・ピット ガジラ
 「国粋主義者のための戦争寓話」  鐘下辰雄・作演出  島次郎・美術 中川隆一・照明
   
まるで合わせ鏡の奥をのぞき込んでいくような机と電球の配置、
   ベニサンピットの空間をめいっぱい使った美術。
   単純に大元帥・宮城を信じようとする少尉、それと比べるとニュートラルにみえる南方の戦線から帰ってきた古参兵。
   木製ロケットを過酸化水素でとばして成層圏のB29を迎撃するという狂気の中で、先遣隊が消えるという謎解きで
   前半は快調にすすむ。けれど狂ったような大尉の兄と、弟の少尉の対決の構造がよくみえない。
    地図に何も書かれていない白い所にすむ
   吊り橋のむこうがわの日本人が本当なら、そのものたちだって誰かを駆逐してきたのではないのか。
   吊り橋の向こうに自由があり、
   こちら側にそれがない、だから部下を30人も殺してしまった、ないはずの自由をどう出してきているのかわからない。


12)2004年5月1日  駒塲アゴラ
 「山羊 シルビアって誰」  エドワード・オールビー・作 バリー・ホール・演出  
   
山羊に恋をする。この異常性はどこにあるのか。妻は獣姦にとらわれ騒ぎ立てる。けれどあの結末なら
   他の何かをあぶり出せたのではないか。ウェルメイドといっては居られない切なさをあぶり出せたのでは
   ないかと思う。それともただ緊張感とアクションを楽しむだけの本名の?

11)2004年4月15日  船橋市民文化ホール シルバーライニング
 「私生活」  ノエルカワード・作 竹邑類・演出  斉藤浩樹・美術  岡田真澄・水谷八重子
   
ウェルメイド、岡田真澄と水谷八重子だけでお客は満足。
   口げんか好きな国民性が元?
   一幕目のセットはうーん、二幕目は大きな間口を埋めるのにはこれかな。


10)2004年3月27日  東京芸術劇場中ホール
 「ミュージカル 水、はしる!」  ふしだあさや・作演出
   
緊張しない。わかりやすい、分かり切ってしまう、玉川上水の完成譚。子ども向け、といってしまえばそれまで。

9)2004年3月26日  スズナリ MODE
 「ささやく声」  ・作 松本修・演出 ☆ 
 
 緊張感がずっと持続する。精神の病、病院から兄の元にあずけられた青年。どうにも解決できない兄と弟。
  弟は薬を飲まず、カウンセラーの元にも行かない。兄は父の店を引き継いでたった1人で生活し料理を作っている。
  やくざな男と暴力でつながった女と弟は出会う。ついに事件が起きるが、病院?刑務所?の中で兄が弟のために
  料理をつくる、電気コンロにフライパン、バター、タマネギ、そしてバジルと卵。香りが感じられる場がいい。
    役者は多重人格を本質として持つ。精神を病んだ者も多重人格をもつ。目の前で分裂したしゃべりを見た時
 これは病と思えるかどうかでこの芝居は決まる。「アメリカ」と似ているセット。18シーンすべてに転換が伴う。
 公演の後ろに台所のセットがそのまま、リアルさを大切にするなら、何か工夫がないものかとおもう。

8)2004年3月14日  紀伊国屋サザンシアター 青年座
 「殺陣師段平」  ・作 鈴木完一郎・演出  中川隆一・照明
     津嘉山
 
 新国劇の殺陣師の5つのエピソード、写実の殺陣を要求される・暴れて知る・奥さんが東京に送ってくれる
   殺陣が飽きられている・死の床で最後の殺陣を考える いかにも鈴木完一郎らしい演出で、津嘉山で笑いがとれて
  でも、後半飽きてしまうな。きっと病気ながら殺陣をつけるとわかってしまうから

7)2004年2月22日  紀伊国屋サザンシアター 地人会
 「世紀末のカーニバル」  齋藤憐・作 木村光一・演出  
     渡辺美佐子 順みつき
 
 ブラジル帰りの渡辺美佐子のおばあちゃんに実はもう一人子どもが居て、それは下北半島に捨てた
  実の子で、今は地上げ屋として現れる。さて、その対面は、どうなる。あたりは十分しまっていて
  泣くかと思った。そのままこの怪しげな息子が舞台を引っかき回していくのかでは無く、悪役はバブル経済、無責任な政策
  になるところから、ぼんやりしてくる。
  移民で行ったり来たり、一世二世三世、どちらが祖国か、どちらも地球の中じゃてなところなんだろうけれど。
  

6)2004年2月20日  本多劇場 加藤健一事務所
 「すべて世は事も無し」  ポール・オズポーン・作 加藤健一・演出  舞台美術・石井強司 
     加藤健一 山口果林 一柳みる 岡まゆみ 竹下明子 清水明彦
 
 二度目の観劇となった。開演前に石井強司さんとお話が出来、終演後はセットにあがって、
  おお、こうなっているのか。と、階段や杖の仕掛けににこにことしてしまった。

5)2004年2月16日  新橋演舞場
 「空想万年サーカス団」  阪本順治・作 串田和美・演出  舞台美術・朝倉摂 照明・齋藤茂雄
     勘九郎 藤山直美 柄本明
 
 貧乏サーカスが戦前にあり戦争という時を経た頃にはつぶれてしまう。でも、空想の中では復活する。
  穴の中で育てられた女の子とか、ブランコで落っこちて頭がおかしくなった団長の息子とかだが特に
  何があるというわけでもない。三人の芸をみせるだけの前半にいらだちもしてしまうが、勘九郎の口伴奏での
  直美の踊りは笑っちゃう。演舞場の中に串田和美の世界が笹野高史のトランペットから導かれて、空中ブランコや
  朝倉摂のセットで広がっていく。

4)2004年2月10日  三百人劇場  劇団昴
 「羅城門」  芥川龍之介・原作 愉盗より  菊池准脚本・演出  舞台美術・加藤ちか
 
 新宿副都心のビルに赤い灯がちかちか、プロセニアムから客席に飛び出すくずれかけた羅城門の一部
   とこれは現代と荒廃した京をあらわすセットだと一目でわかる。ビル街ははじまったら邪魔だろうと思うていたら
  明かりが入ると、よしずが切ってつられている。
  休憩無し1時間50分。
  4人の中の、どれか二人の会話の形式で進み緊張するが、やや半ばにあきる。
  どちらが本当の事を言っているかを、かんがえつつすすむのは「藪の中」の一段階前の作品として考えればいいらしいが、
  まさに一段階前と感じてしまった。

3)2004年2月6日  東京芸術劇場中ホール  わらび座
 「アテルイ」  高橋克彦・原作  中村哮夫・演出  舞台美術・朝倉 摂 照明・服部基
 
 まじめなわらび座のアテルイ。導入の台詞を全員で割っていくのは、せわしなくてどこかの高校が
  よくやっている。反省。中程は見ていられる。デュエットやトリオの歌が聞いてられる。
  和太鼓も伴奏に徹している限り
、いい。岩手山の爆発などでは意味がない。
  星になる必要があるのだろうか。アテルイ・田村麻呂どちらにしても殺人者。戦わしてどちらかが勝ったで
  終わらしては行けないの?

2)2004年1月12日  新橋演舞場
 「おはつ」  マキノノゾミ・作  鈴木裕美・演出  舞台美術・松井るみ 照明・中川隆一
 
 近松に勝てるか?勝っていないと思う。心中という訳のわからない情念の世界を身分、
  労咳、恋の手本で絵解きしようとしたとみえてしまう。松井るみの柱を中心とし、太いひもで情念をあらわしたセット。
  まるで朝倉摂のような雰囲気。ならば近松心中物語と比べたくなってしまう。

1)2004年1月9日  栗原小巻プロデュース リリオホール ゲネプロ
 「アントニーとクレオパトラ」  シェイクスピア・作  アレクサンドル・マーリン・演出  舞台美術・コモーロパ
 
 博物館の係員とお客からはじまる導入と終わりはおもしろい。ぐいぐい引きつけられる。
  シェイクスピアが始まるとともに、すこしついて行けなくなる。言葉と人物をつかむのに時間がかかる。
 

〜2012年  2011年〜2004年  2003年〜1998年 

 

2007年 2006年 2005年 2004年 2003年〜1998年

松戸馬橋・船橋旭演劇部の目次に戻る