私の観劇記録 2012年~2020年

  全くの独断偏見です。ごめんなさい。ネタバレもします。 ついでに映画も ついでに

~2012年  2011年~2004年  2003年~1998年 



2021年に観たお芝居
今年、劇場で見た中では マクベスが一番

7)2021年11月26日(金) 船橋市民文化ホール 東演
  「マクベス」 シェイクスピア・作 ワレリー・ベリャコーヴィッチ・演出・美術・衣装 
    
巨大な金属の門四枚がぐるぐる回る、その間を走り抜け、跳ね、動き回る人々。
   半裸のロシア人男性三人が魔女となりロシア語でうなる。
   もともとスピーディーなマクベス、前半圧倒されまくりだった。


6)2021年10月26日(金) ザ・スズナリ 劇団鳥獣戯画
  「魔須具」 知念正文・作・演出 佐々波雅子・美術 
    
懐かしいメンバー。藤原道長の世で、疫病が流行り、
   紫式部や清少納言などが活躍した時代、そこに架空の話を作り込む。

5)2021年9月28日(火) 船橋市民文化ホール 銅鑼

  「花火鳴らそか ひらひら振ろか」 小川未玲・原案 松本祐子・台本・演出 長田佳代子・美術 
    
両脇に柱が4本づつ。水面に浮かぶような能舞台風。
   舞台面の黒い水面(アクリル板?)に映る人々の景色。
   美術も演技も演出もちゃんとやってる。
   自分はあんな風に立つこともしゃべることもとうてい出来ない。うらやましいと思う。
   けれど、なぜか自分には……。お盆にふさわしいハートフルコメディなんだけど、
   ありえない状況を、きちっと展開することが、なにか……不満を抱いてしまう。


4)2021年8月17日(火) 船橋市民文化ホール 民芸

  「夏・南方のローマンス」 木下順二・作 丹野郁弓・演出 島次郎・美術 
    
ハードな、きついお芝居、全ての台詞を聞き分けられたわけではないけれど、がちっと捕まれた。

   
はじめの場は、公園、さびたブランコ、砂。そして裁判の場、楕円形の空が現れる。
  逆アーチを描く縦板の壁、ああ、島さんのセットだ。新宿でお酒を飲みながら新国立劇場の三好十郎の浮標のセットを
 「自信作だよ」とおっしゃっていた島さんのセットだ。セットにも圧倒された。


3)2021年6月9日(水) 船橋市民文化ホール 青年劇場
  「キネマの神様」 原田マハ・原作 高橋正圀・脚本 藤井ごう・演出 乘峯雅寛・美術 
    
パンフの原作者のコメント、ふうてんの寅さんのような父、それは面白い。けれど舞台はそこまではじけない。
   まじめに普通に名作座の生き残りに向かうてんやわんやが示される。 


2)2021年4月8日(木) 船橋市民文化ホール 東京ヴォードヴィルショー ☆
  「終われない男たち」 鈴木聡・作 鵜山仁・演出 石井強司・美術 佐藤B作・石倉三郎・綾田俊樹
    
いつもの面々、新宿セントラル街がつぶされようとしているところを立て直そうとするドタバタ、伏線があって、客の予想ラインをはずし、
   笑わせ、ちょっと良い事言って、ショーアップ。ちょっと似てるかな、負けないぞと。って

1)2021年2月2日(火) 船橋市民文化ホール NLTプロデュース ☆
  「しあわせの雨傘」 バリエ&グラディ・作 鵜山仁・演出 乘峯雅寛・美術 賀来千香子・井上純一・永島敏行
    
40年前の本だろうか。富裕な資本家、工場主の夫婦がテーマ。女性は家の飾り物で良い、飾られていろに対して
   労働騒ぎが起きた時に、妻が社長として大活躍してしまう、女性が台頭していくのが前半。
   息子の結婚したい相手が夫の浮気の相手の子となり、兄妹の結婚となる事を恐れる事が、実の子が妻の浮気の結果の子と
   わかり大混乱の艶笑喜劇。妻は賀来千香子、スリム、世話焼き。前半、労働争議が妻のあの演説だけで収まるのかと疑問。
   あとからカトリーヌ・ドヌーブの映画があると知る。恰幅の良いドヌーヴと、太った労働組合幹部なら大いにあり得そうと納得。

2020年
観たお芝居
今年 劇場で見たのは わずか 17本
   ☆☆☆は 「ミセス・クライン」「明日の幸福」
   ☆☆は 
「しゃぼん玉」「馬留徳三郎の一日」「ダンシング・オールドでぃ・クラブ4」「砂塵のニケ」
          「ウェストサイドストーリー」「セビリアの理髪師」「大阪の 家族はつらいよ」
          「人情噺文七元結」
「黄昏」歌劇「紅天女」


17)2020年12月16日(水)  シアター風姿花伝 ☆☆☆
  「ミセス・クライン」 ニコラス・ライト・作 上村聡史・演出 乗峯雅寛・美術 那須佐代子・伊勢佳世・占部房子
    
ナチが猛威を振るい始めた頃、ドイツからイギリスに移った精神分析医ミセス・クラインのもとに
   ナチに追われる夫と離婚し、ドイツに娘を残してきたユダヤの精神分析家の女性が留守番役・秘書・患者?
   といった立場で訪ねる。ミセス・クラインの精神は不安定。会話に引きずられる形で判ってくることは、
   息子が死んでそのためにベルギーに行こうとしていること。あまりの強引さに笑いも散発する前半。
   クラインの娘の精神科女医がやってきて、弟は事故でなく自殺であるとなり、母の子に対する分析が
   逆にいびつな親子関係を作り上げ、それによって娘はいらだち、弟は追い詰められたと母親を責める。
   どうしようもない言葉の戦い、バトルの末、見守って来た女が自殺ではないと報告し、今度は自分の
   分析を始めてもらううちに実はミセス・クラインの心を分析していく。まあ、よく、2時間40分、三人の強烈な
   心理戦が続くものだ。しかもミセスは次第に激昂してマシンガンのように怒鳴り続ける。
   その芝居に訪ねてきた女・まるでアニータ・ローベルのよう・もただ引っ張られ続けているように見えてくる。

16)2020年11月24日(火) 船橋市民文化ホール 文化座 ☆☆
  「しゃぼん玉」 乃南アサ・原作 斉藤祐一・作 西川信廣・演出 乗嶺雅寛・美術 佐々木愛・藤原章寛・津田二朗
    
九州宮崎の平家の隠れ里には源氏方が見逃し共にすんだという伝説と祭りがある。
   ヒッチハイクした車から振り落とされたどうしようもない男、
   バイクで事故った89才のおばあちゃんを病院へ、そして家に泊まることに。祭りはあるものの過疎の村、
   若い者はみんなでていき、男にはみんな親切。複雑な思いを抱えつつ、通り魔をした恐怖におびえつつ、
   おばあのやさぐれ次男と戦いつつ、新しい関係がつくられていく。
    4枚の移動パネルをスクリーンとして、山や祭りの画像を出し転換をスムースにする仕組み。
   新しいような古いようなやりかた。が、佐々木愛はじめかっちりした普通の芝居が気持ちよい。
   

15)2020年10月14日(水)  Geki地下Liberty Fever Drgon Neo ☆
  「砲弾家族 ~さちの物語~」 小田竜世・作・演出 大辻酒造・大道具 大多和愛子・大田正裕
    
反戦的軍人の残された妻と娘二人、気丈に暮らす。時代が進む中、そこに集まる海軍中将、弟、
   探ろうとする満人の刑事、特高、戦争の終結を願う男たちとつぶされることを願う男。
   キーになるのが亡き父と同じ目を持つ末娘、でもこの子が男たちを狂わせていくまでの
   幼さ・純粋さがない。砲弾作りやらソ連との交渉やらよくぞ組み合わせたものだと思うけれど。


14)2020年10月7日(水)  高円寺1 青年団 ☆☆
  「馬留徳三郎の一日」 高山さなえ・作 平田オリザ・演出 杉山至・美術 田村勝彦・羽場睦子・山内健司
    
信州の山深い家に電話詐欺士がやってくる。ところが、それを迎えた夫婦も、隣人たちも、何か狂っていて
   誰が本当のことをいってるかわからない。孤独の中で呆けて、それを思いやって嘘をついて、それがまた嘘で。
   ときどきのぞく人の思いが話を引っ張っていく。柳美里とオリザと高山のトークショーが面白かった。   


13)2020年9月30日(水)  ザ・スズナリ 劇団鳥獣戯画 ☆☆
  「ダンシング・オールドでぃ・クラブ4」 知念正文・作・演出 雨宮賢明・音楽 知念正文・石丸有里子・竹内久美子
    
コロナを乗り切っての公演、それだけで価値がある。亀田さんも元気。レオさんも元気。チーボーもかわらず。
   旭川のバーから、だまされ音楽ツアーに出た老人たちが、ないツアーを実現してしまう。結婚式も葬式も
   やってしまう。ちくちくとコロナ対策への不満を散らせる。ラストは明日に向かってバイクをぶっ飛ばし権力と戦い
   天国で再会。お疲れ様でした。


12)2020年9月8日(火)  船橋市民文化ホール 青年座 ☆☆
  「砂塵のニケ」 長田郁恵・作 宮田慶子・演出 伊藤雅子・美術 中川隆一・照明 野々村のん・綱島剛太郎・横堀悦夫
    
コロナ騒ぎ始まって以来の劇場。鑑賞会を運営するのも大騒ぎ。定員を500人に。受付をメンバーごとに時間指定。
   体温測定、消毒後、座席券発行。入り口指定、ホール内一方通行。退場は列ごとに指示。
    それはともかくエーゲ海に浮かぶサモトラキ島の神殿の柱、それにカーテン、舞台空間に散らされた絵画、むせび泣くような客入れ音楽。
   まずは満足。母親の重圧に耐えかねた娘が睡眠薬を大量に飲んで助かったところから始まる。母の重圧だけで自殺まではかるかどうか、
   そこが信じられるかどうかが難しい。世話になっている画商の絵の修復以来でパリに赴き、その画家が住んだアパルトメントの一室が舞台となる。
   そこにいた苦しんでいる画家の苦悩と狂気と呼べる熱情はよくわかる。サモトラケのニケのポスターに負けた女も。一つの部屋で過去と現在が
   入り混ざるうちに、娘の来歴が判ってくる。盆も回る。

)2020年4月22日(水)  HDD ☆☆
 
  「夏祭浪花鑑」 串田和美・演出 1996年のコクーン歌舞伎 中村勘三郎(団七)・片岡孝太郎・中村橋之助・市川染五郎・中村獅童
    
お鯛茶屋ではお芝居に興じていた磯之丞をいさめるところから始まる。
   全九段もあるのだから全てを通せるわけではないが泥場だけを見て何故こんなに
   残酷を娯楽にしてしまうのだろうと思っていたが、だいぶ解明された感じ。
   勘三郎、串田和美、みやすい 


11)2020年2月17日(月)  新橋演舞場 劇団新派 ☆
 
  「八墓村」 横溝正史・原作 齋藤雅文・脚本・演出 古川雅之・美術 水谷八重子(小梅) 波乃久里子(小竹) 喜多村緑郎(金田一・要蔵) 河合雪之丞(美也子)
    
ラジオの尋ね人が流れ明るくなると弁護士事務所。遺産を継ぐ為に探し出された辰也。
   水谷・波乃の双子の姉妹が待っている。いかにもな二人。必死に合わせようとしている。二人の見せ場は
   鍾乳洞の中で息子を殺すシーン。金田一が去るとき「名探偵さん」と水谷が言う、笑いがとれる。
   金田一、活躍せず。狂った要蔵の時のみ頑張ってる。美也子も貫禄ありすぎか。関ジャニの辰也はなんか変。


10)2020年2月9日(日)  IHIステージアラウンドシアター ☆

  「ウェストサイドストーリー」 ジェローム・ロビンス原案 レナード・バーンスタイン音楽 スティーブン・ソンドハイム作詞 ディビット・セイントIHI版演出
                    村上虹郎(トニー) 宮沢エマ(マリア) 宮澤佐江(アニータ) 廣瀬友祐(ベルナルド)

    
日本語で歌うと「落ち着け、アクション」になってしまうんだ、情けない、と思いつつ、やはり音楽が良い、ほとんどの曲を覚えている。
   客席がぐるぐるまわるステージアラウンドシアター、ニューヨークのあの街があちこちに仕掛けられていて、客席が移動する。
   今日は100万人達成とのことで終演後100万人達成記念くす玉がわられた。
     初演からもう50年、ロミオとジュリエットのように、もう古典といえるかな。


9)2020年2月6日(木)  新国立劇場オペラハウス ☆☆
 
  「セビリアの理髪師」 ボーマルシェ・原作 ロッシーニ・作曲 ヨーゼフ・ケップリンガー・演出 ルネ・バルベラ(伯爵) 脇園彩(ロジーナ) パオロ・ボルドーニャ(バルトロ)
    
フルオーケストラで始まる序曲、オペラカーテンがあくと、遠くに建物。その前で街中で主要人物がマイムで動く。
  序曲が終わると建物が前に出てくる。しかもぐるぐる回転する。三階建て。六つの部屋と中央の階段、二つのらせん階段。
  いろいろな場所で人々がいつも動いている。理髪師の登場は子役たちを使って。上手には娼婦の館に修道士が出入りする。
  骸骨模型がからかいの材料にもなる。ペンキ屋が金をもらう。おそらく原作にはないことがいっぱい。
   歌はイタリア語だが、日本語に直したら無理なんだろうな。くやしい。でも、歌は楽しい。字幕を読むので首が疲れた。
  あぁあーとか歌いたくなっちゃう。無理だけど。


8)2020年2月4日(火)  歌舞伎座 ☆
 
  「八陣守護城 湖水御座船の場」 片岡我富
    
毒を盛られた佐藤正清(加藤清正)が船の上で弱みを見せず琵琶湖を今日へ帰って行く。
   偵察のものも、鎧筒に隠れた刺客もしりぞけて。病態の我富が演ず。


  「羽衣」 坂東玉三郎・中村勘九郎
    
天女の舞を玉三郎、さすが。勘九郎も韋駄天と違ってさわやか。

  「人情噺文七元結」 ☆☆ 三遊亭円朝・口演 榎戸賢治・作 尾上菊五郎(長兵衛)・中村雀右衛門(お兼)
    
圓生の独演会で聴いた(見た)この話、やっぱり圓生はすごいと思いつつこれもまあよいかな。
   郭でのやりとりなどは歌舞伎の美しさがきいてくる。身投げをしようとするドタバタの長兵衛の心うちが
   落語ではもっと際だって泣けたし、女房のあられもない姿がもっと笑えて泣けたのは圓生の力だろう。

  「道行故郷の初雪」  中村梅玉(忠兵衛)・片岡秀太郎(梅川)・尾上松緑
    
雪の白、白に川と梅を染め抜いた黒の着物。絵の良さ。


7)2020年2月3日(月)  新橋演舞場
 
  「駕籠や捕物帳」 館直志・作 米田亘・演出 前田剛・美術 渋谷天外・久本雅美・高田次郎・曾我廼家玉太呂
    
城主がお茶屋に来て、捕り物に巻き込まれ、お金を投げて借金をチャラにする。

 「大阪の 家族はつらいよ」 ☆☆ 山田洋次・原作・脚本・演出 わかぎゑふ・助手 前田剛・美術 渋谷天外・井上恵美子・曾我廼家八十吉・川奈美弥生
    
映画とほぼ同じ、でも舞台も良い。猛烈社員も今は引退したわがままじじい。マッサージチェアにただ座って足を投げ出すと
   奥さんが靴下を脱がしてくれる。そんな奥さんが誕生日祝いに手数料450円の離婚届に判を押してと、願う。
   子どもたちはてんやわんや、あきらめて判を押してプレゼントするくだりがいい。


6)2020年1月24日(金)  こまばアゴラ劇場 渡辺源四郎商店 ☆
 
  「だけど涙が出ちゃう」 工藤千夏・作・演出 山下昇平・美術 各務立基・天明瑠璃子・山藤貴子・畑澤聖悟
    
同時に上演される「どんとゆけ」の姉妹作、前日譚という。
   「どんとゆけ」でメインとなる女の高校生時代の体験が繰り広げられる。
   死刑員制度という裁判官制度のパロディを軸に、目の前の茶の間で、この家の妻を安楽死させた医師が
   その夫と、妻の双子の妹の死刑員によって死刑を執行されるかどうか、という展開。
   犬を安楽死させた獣医は罪にならない、なら、多数の患者を安楽死させた医師は許されるのか。
   夫婦の愛と、出生に不安を持つ娘、とからみあって、死刑が確定されていく。
   これは前作をみていないと、すっきりしない感じ。生な理屈が勝っている気がした。
   そこにハイテンションな夫、普段を知っているだけに登場人物に見えなくなってしまう、悲しい性だな。


5)2020年1月21日(火)  船橋市民文化ホール CATプロデュース ☆☆
 
  「黄昏」 アーネスト・トンプソン・作 青井陽治・訳 鵜山仁・演出 原田愛・美術 高橋恵子・石田圭祐・瀬名じゅん
    
間口をぐっと狭めたセット。沢山の帽子、窓とカーテン。布に覆われた家具と電話機。
   電話交換手とのやりとりで笑いをとれるのはさすが。でもだんだんと若く見えてしまうのは残念。
   予定されていた村井国夫だつたら最後まで行けるのかな。高橋恵子と二人っきりの会話で充分、保てる。
   陽気な郵便配達夫、娘の結婚を邪魔した形になっている父と娘、その娘が連れてきたバツイチの歯科医。
   その歯科医の孫のような子が元気をもたらす。再びこの別荘を去るとき、来年もまた来る希望があふれる。


4)2020年1月20日(月)  東京建物ブリリアホール ホリプロ 
 
  「デスノート THE MUSICAL」 大場つぐみ・原作 アイヴァン・メンチェル・脚本 フランク・ワイルドホーン・音楽 栗山民也・演出 二村周作・美術 村井良太・横田英次・高橋颯 パク・ヘナ
    
池袋に新しく開かれた東京建物ブリリアホールで「デスノート The Musical」を観る。このホールが豊島区立なんて、なんてすごい‼️池袋には公共のホールがいっぱい。
   生演奏でジーザスクライスト風に歌い上げるのよい。父はじめそれぞれの歌唱もよい。
   デスノート自体は読んでいない。前半事件の概要が登場人物には見えていず客には見えている設定、それはよい。
   けれど後半、第二のキラが現れてあたりから話が急展開で、結局、エルは殺され、キラも死神退屈したのも飽きた、終わりだといってキラも殺して
   終わってしまう。何が言いたいの?なんて感じになってしまった。

3)2020年1月13日(月)  オーチャードホール 日本オペラ協会 ☆☆ 
 
  歌劇「紅天女」 美内すずえ・原作・脚本・監修 郡愛子・総監督 寺嶋民哉・作曲 馬場紀雄・演出 川口直次・美術 小林沙羅・山本康寛・嶋田言一
    いきなり始まるうなりと石笛。カラス天狗二人の人の世への批判。戦禍を嘆く民衆の群舞と合唱。
  北朝の天皇が世を鎮める仏像を彫る人間を探させる。死者を弔うために彫った仏、その底には真の文字。
  一真と名付けられた彫り師は、吉野の里へ。そこには阿古夜が大神の依り代として人々を助けていた。
  紛れ込んだよそ者を追って南朝と北朝が争う。禁足の地を血で汚した人間に梅の木の大神は怒る。
  ただ死んだ人々の心の安らぎのために、人々の安寧のために梅の木を切り倒し仏を彫ろうとする一真に
  阿古夜は昇天する。オペラのわりには聞きやすい歌声。それでも時々判らなくなって真横の字幕を見てしまう。
  見ると歌詞は一気に読み取れるのだけれど、そのために歌声から心を聞く楽しみが一気になくなってしまう。
  話の流れは始めから判ってるのだから、多少聞き損じても集中すべきなんだろうな。
   オペラの人は人の出はけを気にしないのか、舞台上から情けなく去る。千年の梅の木はまことに見事。
  けれど着替えの隠し幕、一度目はよいとして、二度目もっともっと出来るはず。新作の悲しいところかもしれない。

2)2020年1月12日(日)  浅草公会堂 新春浅草歌舞伎  
  「絵本太功記 尼ヶ崎閑居の場」  光秀=中村歌昇 十次郎=中村隼人 初菊=中村米吉 
    明智光秀が主君を殺したことが許せない母。父を支え戦いの場へ向かう息子十次郎は初菊と祝言をあげ戦いへ。
  既に忍び込んでいた久吉を槍で突き殺した相手は母、そこへ致死傷をおった息子が帰ってきて光秀は声を上げて泣く。
  何故、忍び込んでいたかは前段で語られているのでここではまったく判らない。母の思いも突然のこと。
  14段もある話の中の第十弾。物語を理解した江戸の観客たちがその芸を楽しんだのであるな、とは、思う。
  初菊のういういしさも面白い。

  「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」
☆☆ 由良之助=尾上松也 平右衛門=板東巳之助 お軽=中村米吉 
    有名な「手の鳴る方へ」「とらまえた、とらまえた」など遙かになじみやすい導入部。
   息子、力が密書を持ってきてがらりとかわる由良之助。間者九太夫が縁の下に潜む時、密書が読まれ、それを二階から
   読んでしまったお軽。そしてそれを殺す算段をした由良之助。偶然であった妹お軽に話を聞いて妹を殺そうとした平右衛門。
   巳之助が軽妙で深刻で親しみやすくダイナミック。ご城代としてはまだ若いと思えた松也も後半しっかり貫禄。

1)2020年1月10日(金)  三越劇場 劇団新派
 ☆☆☆
  「明日の幸福」 中野實・作 成瀬芳一・演出 中嶋雅留・美術 水谷八重子・波野久里子・田口守・喜多村緑郎 
    家庭裁判所の調停から始まる。昭和30年頃という設定がかなり大事で、嫁と姑の力関係が芝居を大きく支えている。
   裁判所の所長の父親は政治家。大臣になるかという時期。口を聞いてくれる大物に家宝とも言うべき埴輪の馬を見せる見せないで
   母、その姑、そして娘の嫁、がそれぞれ、馬の足を折るという事件を引き起こし、それを隠そうとするものだから
   爆笑が起きる。他愛のない話だが、うまく組み合わされ、それを支える役者の技量が相まって
   楽しめる。アフタートークで、息子の嫁を演じた4人がそろい、これもまた面白い。それにしても頑張ってると感じさせる
   波乃と、えーっこの人天然?という水谷、ずるいなぁ 舞踊
「神田祭」も併演(喜多村緑郎・河合雪之丞)


2019年
 今年劇場で26本
   ☆☆☆は文句なく「ラ・マンチャの男」
   ☆☆は「シェアハウス『過ぎたるは、なお』」「CHIMERICA チャイメリカ」「ヤルタ会談」「細雪」「ら・ら・ら」
      
「笑う門には福来たる ~女興行師 吉本せい~」
「治天ノ君」
「朝のライラック」
      
「春でもないのに」
「死に顔ピース」
「正しいオトナたち」
「神霊矢口渡 頓兵衛住家の場」


26)2019年12月26日(火)  歌舞伎座
  「神霊矢口渡 頓兵衛住家の場」
☆☆ 福内鬼外(平賀源内)作 お舟・梅枝 頓兵衛・松緑
     五段ものの第四段の中程にあたる。
    新田義興を溺死させた強欲な頓兵衛の娘が、落ち延びてきた義峯に惚れ落ち延びさせようと身代わりに。
    惚れる仕草、太鼓を打とうと登る人形振り、見応えがあった。

    

  「本朝白雪姫譚話」 グリム童話より 竹柴潤一・脚本 白雪姫・玉三郎 鏡の精・梅枝 野分の前・児太郎
    ディズニーと似て非なるものを創る。鏡の精とのやりとりはさすが。七人のこびとならぬ七人の妖精(子役)を
   使えるのは歌舞伎ならでは。16才に見える玉三郎というのもまあなんとも。
   最後は歌舞伎らしく自己犠牲で白雪姫が生き返り、王子(歌之介・大根?)と雪降る中に、イルミーションの森が現れる。


25)2019年12月21日(土) 東京グローブ座 ☆☆ 
  「正しいオトナたち」 ヤスミナ・レザ・作 上村聡史・演出 乗峯雅寛・美術 真矢ミキ・岡本健一・中嶋朋子・近藤芳正 
    
グローブ座の舞台がこれほどまで奥行きが深くタッパがそびえ立つほど高いと知る。
   パリの小物商の夫婦の部屋。妻はアフリカの虐殺や文化に造詣が深く書を集め本を書いている。
   この部屋の中央奥の角は深くVの字に裂けて、まるで戦場の瓦礫のようになっている。
   中央のペンダントは血のような朱色のコードで天から降りてきている。
    もう一組の男女は弁護士の夫とその妻。小物商の夫婦の子供が弁護し夫妻の子供によって棒で殴られ
   歯も二本折れ、その話し合いのために親同士が集まったのだ。
   緊迫した中で、弁護士は医療裁判にかけられるクライアントからの電話に出続け、男同士は時に意気投合し
   やがてさらし合う。物書きの女は単純に突き詰めようとするが、大人しそうな女(中嶋)は、一方的に悪いのではないと
   深く思って譲らない。やがて二組の争いは夫婦の中の争いともなり、なにがただしいのかほんとうなのか判らなくなってくる。

24)2019年11月26日(火)  船橋市民文化ホール 劇団NLT 
  「法定外裁判」 ヘンリィ・セシル・原作 池田政之・脚色演出 松野潤・美術 川端槇二・木村明里・加納健次 
    
船文のスピーカーがどうにかなったのかそれとも劇団の機器がおかしいのかいきなり割れた音響で始まった。
    セットは松野さんだが無難。役者たちは年齢に応じて安心してみていられる。法廷劇そのものもまあ面白い。
    問題は、悲劇で終わるべきであろうのに無理矢理喜劇に持って行こうとしている点ではないか。
    主要な問題はどうして冤罪が成立したのかと言うことである。誰が車ではねたかではない。
    浮かび上がってくるのは跳ねられた男の妻が偽証を企てたという事である。
    そしてその原因が駆け落ちしようとしたときに裏切られたから。それほどの恨みを持ったものが
    誤解が解けたからと言って結婚しようと言うことになるか?


23)2019年10月29日(火) 中野ザ・ポケット ワンツーワークス ☆☆
  「死に顔ピース」 古城十忍・作・演出 磯田ヒロシ・美術 奥村洋治・みとべ千希己・YAMA・小林桃子
    
病院での医師たちのカンファレンスの議論患者のプライバシーを知るのではなく患部を知ればいいという医者。
   だじゃれを連発する患者に笑顔も見せない。笑ってほしかったの言葉に揺れやがて終末ケアの医師に。
   かたや太い声のがたいの良い新米看護師。患者の死にも慣れベテランとなったとき癌がみつかり、
   立場が逆転。こんなはずじゃないと在宅医療に。それを迎える両親と夫と娘たち。
   かの医者は女装してあらわれ、クラウンも連れてくる。
   笑顔を求め部屋は暖かさに、病状は進行。苦い話。
   

22)2019年10月25日(金) TACCS1179 劇団鳥獣戯画 ☆☆
  「春でもないのに」 知念正文・作・演出 雨宮賢明・音楽 寺門一憲・知念正文・渋川チワワ・石丸有里子

    
前日伊深先輩の葬儀。冒頭の「俺や、ヤマダ~、高梨ががんでたおれて、きたってや」がなきそうになる。
   フォークソングの数々、学生運動、同時代がなつかしく気持ちいい。前に見たときはあのユニコが
   本当の親の前で子供の役をやっていることに、感心したが、今回は石丸の切れもまして見えた。
   村祭りのショーなどなにか物足りなく感じたのは元気うどんのショーが一人の人のためにという集中力が
   あったからと思った。村の人の思いをまとめる何かがあればそこでも泣けたのではないか。
   伊深さんの死を待っている病室での音楽活動の話を前日に聞いた身として、夫が妻に歌を歌う空気は
   ちがう様に感じた。それにしてもラストの一曲、ギターがぽろろんとなって、言葉にならないとの歌、ぼろ泣き。

    

21)2019年10月23日(水)  歌舞伎座 ☆
  「三人吉三巴白浪」通し狂言 河竹黙阿弥・作 尾上松録・中村梅枝・片岡愛之助・中村歌六

    
何回目かの三人吉三。花道の桟敷側、前から3列目。通し狂言なので全体がつかめて良い。大川端の序幕、
    斜めに見る席のせいがあるかもしれないが松緑の台詞が聞きづらい。愛之助の台詞はよく聞こえる。梅枝も。
    和尚吉三が兄貴分となる感じがしない。名刀庚申丸について冒頭に動きがあったのだがしっかり意識できなかったのは
    まだ耳が小屋慣れしてないせい。伝吉の歌六がいて安心。伝吉の盗みがもとで、お坊吉三のお家断絶。
    助けた手代がわかれた双子の片割れ、等、伏線が次々と結んでいく事が少しずつ理解できてきた。

  「二人静」 坂東玉三郎・児太郎
    
若菜を摘んでいる女の元に静御前の亡霊が現れ、神職の前で舞を舞う。
    玉三郎きれいきれいと周りのおばさんたちの声。神職彦三郎の声、すごいな。


20)2019年10月11日(金)  新橋演舞場 ☆
  「オグリ」 梅原猛・原作 横内謙介・脚本 市川猿之助・杉原邦生・演出 堀尾幸男・美術 市川猿之助(オグリ)・板東新悟(照手)・中村隼人(遊行上人)
    
横山の娘照手を相思相愛と言ってオグリ五郎が嫁入り行列から奪い去る。
   6人のオグリなにがしはみな小栗判官に惚れた世の中のあぶれもの。
   とにかくわかりやすいくさい台詞で、話が展開する。荒馬を制する場などは秀逸。
   餓鬼阿弥となってから自由にしゃべれるのがいや。あの異形が伝わらん。
   前から9列目、目の前でハーネスをつけ、馬ごと頭上を通過する。あんな簡単なクリップだけで
   飛んでいく、とややこわかった。

19)2019年10月8日(火)  船橋市民文化ホール 劇団昴 ☆
  「アルジャーノンに花束を」 ダニエル・キイス・原作 菊池准・脚色・演出 岡田志乃・伊藤重弘・美術 町屋圭祐
    
いつ見たのだろう。セットも変わっているのだろうか、病室のしきりの巨大なカーテン、あまり好きでないな。
   紗パネルに映し出されるシルエットを多用しチャーリー・ゴードンの知恵遅れであるがために、壊れた母と妹が、
   かなりウェイトが上がっている気がする。チャーリーの先生が、推挙し、驚き、恋人となり、後悔していくのが
   一つのキーワードとなるのだけれど、今ひとつ色っぽくない。シナプス、ニューロンの死、迷路実験など、昔はもっと面白く見た。
   時代がSFを乗り越えてしまったような古さを感じる。あの頃はソニーのウォークマンを使っていたのに
   今回はボイスレコーダーになっているし。ただラスト近くのパン屋の台詞、「病気が治って良かったな」が名台詞。

18)2019年10月5日(土)  帝国劇場  ☆☆☆
  「ラ・マンチャの男」 デール・ワッサーマン・脚本 ミッチ・レイ・音楽 エディ・ロール→松本白鴎・演出 田中直樹・美術 松本白鷗・駒田一・瀬名じゅん・上條恒彦
    
たぶん初めて見たのは1980年帝劇。染五郎、上月晃、小鹿番。
    それから幸四郎、鳳蘭。 さらに松たか子。
    初めて見たときの上月晃の時の衝撃がわすれられない。
    そして今回の白鴎。劇場に入ってセットを見たとき全てがよみがえる。
    序曲。フラメンコギターからあの曲が始まる。最初っから涙が出てきてしまう。
    微妙な台詞の変更、年齢のせいか大人しくなった殺陣、激しくなった強姦シーン
    いろいろ思うけれど、ドルシネアと歌い上げるとき、
    どんなにひどいしうちよりもあなたの優しさがと歌うとき、
    殿様、と語りかけるとき、憂い顔の騎士、輝くマンブリーノと……各所で泣いてしまう。
    そして、にしやんの事、なほの事、ちゃぼの事、にれき、
    むらかみ、おだそー、きく、かっしー、みんなみんな……
    あの日々が重ね合わされる。こんな特別の芝居ってあるのだろうか。

17)2019年9月28日(月)  駅前劇場 ふくふくや ☆
  「こどものおばさん」 竹田新・作 司茂和彦・演出 田中敏恵・美術 橋本剛・照明 山野海・熊谷真実
    
超熟女バーの支度部屋、メークをしているホステス。35年前の下町、幼なじみのあの頃と、今の事件が錯綜してあらわれる。
   50歳の熟女の経営者は婚活サークルで男を引っかけて金を巻き上げている。その母はトルコ嬢で力強く娘を育てていた。
   いかに中学生の娘が風俗で働くようになったかの顛末と、恋心が招いた仮の結婚と、子育て、再会があらわれる。
   トルコは男を喜ばせてその家庭を守る誇り高き仕事だとのヒモの台詞が、キーワードになるのだろうか。
   還暦になろうとしている熊谷真実が色っぽいし、がきっぽい役。


16)2019年9月23日(月)  築地本願寺 ブディストホール 劇作家グループ ステージの会
  「○○に片足つっこんだら」 兼平陽子・作 鈴木龍男・演出 
    
病院の検査から帰った独身女性。同年代のおばちゃんともうじき棺桶にはいるからとか、そんな話題。
   いつまで続くのかと思ったら、そのおばちゃんの孫が彼を連れてくる段になって話が動き、昔の一目惚れした男が
   色濃くみんなの中にあらわれて大笑い。


 「-平蔵異聞- 郡上の女」 篠﨑隆雄・作・演出 川崎初夏・河野正明・仁山貴恵 ☆
    女が紗幕の向こうで羽織と短刀を振り回している。大川端の夜鷹の女が白州に引き出され長谷川平蔵が吟味する。
   気っぷのいい女が仲間とともに男を誘い、だまされ、守ってきたかが徐々に明らかになる。男を刺したのも仲間の女を
   守るためだがそこで渡した30両の大金が平蔵のひっかかりとなって、郡上の女の生き様が見えてくる。
   転換によって過去に飛ぶのだが、もう一つスムースになれば、もっとしっかりした時代劇として通用する。


15)2019年9月14日(土)  紀伊國屋ホール 劇団青年劇場 ☆
  「もう一人のヒト」 飯沢・作 藤井ごう・演出 乗峯雅寛・美術 葛西和雄・吉村直
    
皇族であるがゆえに陸軍の参謀となっている宮様の防空壕に芸妓が頼ってくるから始まる。
   参謀でありながらこの秘密の防空壕の中では自由にしゃべれる宮様は戦局が思わしくなく
   日本がいかに負けるのよいか論じている。そこにかちかちの軍人が今の天皇は偽物であり
   南朝の天皇が継いで国民をまとめるべきだと論ずる。芸妓に弱いという笑いを使いながら
   戦局と天皇、皇族、庶民の暮らし、軍の動きを示していく。かちかちの軍人の声量よし。
   芸妓とのやりとり今ひとつ笑えない。全体としてはいいのだけれど。

14)2019年7月23日(火)  さいたま芸術劇場 さいたまネクスト・シアター ☆☆
  「朝のライラック」 ガンナーム・ガンナーム・作 眞鍋卓嗣・演出 伊藤雅子・美術 松田慎也・占部房子・手打隆盛・竪山隼太・鈴木真之介

    ISに選挙され町、若い芸術家夫婦、夫は演劇を、妻は音楽を教えようと来ていたが、占拠された街の中で
   閉じ込められてしまう。長老に体の関係を迫られたり、殺害される危機、の中で、夫の教え子が監視役として残される。
   その父母の悲劇が彼を兵として動かしている。説得しようとして彼が前に演じた劇を持ち出すが、
   彼の動かない心に 傷つき、二人は自殺してしまう。変換ポイントはこの劇中劇中のやりとりにあると思うのだけれど、
   それだけでは、この結末にはいたらないと思ってしまった。


13)2019年7月16日(火)  船橋市民文化ホール 劇団チョコレートケーキ ☆☆
  「治天ノ君」 古川健・脚本 日澤雄介・演出 鎌田朋子・美術 松本紀保・西尾友樹・谷仲恵輔・佐瀬弘幸
    
下手に天蓋、菊のご紋が入った玉座が一つ。客席から、皇后に支えられた大正天皇が必死に登場する。
    しゃべり出すと言葉もうまく言えない。たった14年しかなかった大正。皇后が語りになり、時空を一気に、
    新婚時に戻すとお茶目な天皇が現れる。圧力の象徴だった明治天皇、それを引き継いだ昭和天皇、
    脳、髄膜炎、あの時代には、有名だっただろう病気の天皇が、しゃべり、憤り、いらだち、追いやられる。
    皇室番組とはかけ離れた世界が老人しかいない船橋の演劇鑑賞会で繰り広げられる。
     「ある古い記憶」のこんなユダヤ人の秘密をよくかけたなとびっくりしたのと同じ驚き。しんと静まった2時間
    10分、大正天皇への弔意ではなく、明治天皇の誕生を祝う明治節を決め、日本は昭和の戦争の時代に
    突入していく。昭和天皇の出発を、天皇陛下万歳と送り出すエンディング、そこに拍手した人は
    明治天皇と同じ戦火を求める姿に拍手したのだろうか。


12)2019年7月9日(火)  新橋演舞場 ☆☆
  「笑う門には福来たる ~女興行師 吉本せい~」 矢野誠一・原作 小幡欽治・脚色「桜月記」より 佐々木渚・脚本 浅香哲哉・演出 藤山直美・喜多村緑郎・林与一・石倉三郎
    船場の老舗の箸屋だった夫の願望を叶えさせて寄席を始めた。場末の席から才覚で金竜亭を手にし、桂春団治を口説き落とし、吉本は大きくなる。
   しかし夫の浮気は止まらずついには女といる時に倒れてしまう。夫との間の子供達は幼くしてなくなる子も多く
   あととりと頼りにしていた男の子を笠置シズ子と別れさせたものの早死にされてしまう。成功と挫折と。
   焼け跡での芸人達との再会。「わかりやすい」とまなじりを決して病院に赴く姿。初登場から客をつかみ、
   自在に引っ張り続ける。冥土の旅への人力車、美しく。


11)2019年6月24日(月)  新宿村LIVE LIVEDOG GIRLS
  「CRAZY Marchen」 畑雅文・作・演出 堀切紫

    
へんな占い師がジャンヌダルクの生まれ変わりと予言した娘が、保育園でいじめ構造を、孤島で仕掛け人を、
   やっつけて行くのだが、大人になってただの付き人になっていて、という成長ストーリーを書こうとしたらしい。


10)2019年6月24日(月)  紀伊國屋サザンシアター 劇団民芸
  「闇にさらわれて」 マイク・ヘイハース・作 丹野郁弓・訳・演出 島次郎・美術 日色ともゑ・神敏将・篠田三郎

    
1931年の突撃隊の裁判で、ヒットラーを証人として呼び出しやりこめた男が、ナチが力をつけるとともに、
   拘束され、収容所を次々とうつされ、ついには縊死する。母が追求する。父は迷ってうろうろする。
   間に立つナチの高官がさりげなく関わる。小屋に入った瞬間にああ、これは島さんだ、丸い大きな切り穴がある天井。
   鉄骨のような柱の枠に囲まれ遠近法を利用した舞台。
   ラストはヒットラーの裁判の時の弁論と、縊死の現実が同居する。

   

9)2019年6月14日(金)
  三越劇場 劇団新派
  「夜の蝶」 川口松太郎・作 成瀬芳一・脚色・演出 河合雪之丞・篠井英介・喜多村緑郎・山村紅葉

    
銀座のナンバーワンクラブのそばに京都から進出してきたクラブ、両者のママは強烈なライバル。

 
  でも、出資者は同じ、振られ方も同じ、大切に思うものは一人で育てた娘と、別れた夫に育てられた息子。
   二人の女形が30代の女盛りとして争うのだが、ともに強面、がっちり芝居。微妙に笑いが起こる。
   堅いお芝居だけれど。
   三越劇場に盆を置き、洋風のクラブと京都風のクラブを回転して回す。下手の花道の奥は三越劇場がもつ
   大理石を配した壁。小屋と新派がマッチしている。

8)2019年6月11日(火)  東京芸術劇場シアターイースト モダンスイマーズ
  「ビューティフル・ワールド」 蓬莱竜太・作・演出 津村知与志・吉岡あきこ

    
壁際に何種類かの高さをもつ木の枠を端々に配置したセット。
    40代の引きこもりの男の実家が火事になり、弟のアパートから銚子の叔父の家に預けられる。
    そこには背の高い叔父が婿入りしたお菓子屋があったのだが今はカフェになっている。
    店のつぶれたあたりから夫婦仲はぎごちなくなり母と娘もぎくしゃくしている。
    その母と引きこもりの男が変な関係になっていく。一幕目は今のご時世と相まって痛い。
    ところが二幕目になると仕掛けられたヒントが結びついて、いきなり恋愛ドタバタになっていく。
    最後、引きこもり男は東京に戻っていくのだが、生まれてくる子を不安に思う弟に、
    世の中悪くないんじゃないかな、なんて言葉をかけて終わる。痛い→コント→なんとなく救い。
    


7)2019年6月10日(月)  新橋演舞場 熱海五郎一座
  「翔べないスペースマンと危険なシナリオ」 吉高寿男・作 三宅裕司・演出 渡辺正行・ラサール石井・小倉久寛・春風亭昇太 高橋礼子・橋本マナミ 

    
地球に隕石が衝突するので隕石にいって縛するという計画をJASCAでたてる。
   集められた隊員たちはやや怪しげ。やがて目的がはっきりしてくるが、さらに隕石が迫り
   ……。まあ、他愛もなくレベルの高くないギャグでつないでといういつものパターン。
   定例のアンコールの二回目、ネタバレが、ま、笑える。

6)2019年6月4日(火)  船橋市民文化ホール 劇団朋友 ☆☆
  「ら・ら・ら」 太田善也・作 黒岩亮・演出 しばたひでこ・美術 原日出子・牛山茂 

    
定年退職した亭主を持つ女性と退職した男性の合唱サークル。はじめは週一回のお遊び程度が
   仲の良さの原動力だったがコンクールに出ようということになって様々な事情が噴出する。うそがばれたり
   姑に気を遣っていたり、夫の理解が得られにくかったり。コンクールに出るより大切なことをつかんだようになって
   コーラス。電話のトリックに動く。

5)2019年5月26日(日)  明治座 ☆☆
  「細雪」 谷崎潤一郎・原作 菊田一夫・脚本 水谷幹夫・演出 石井みつる・装置 浅野ゆう子・一路真輝・瀬名じゅん・水夏希
    大阪船場に店を持つ木綿問屋の蒔岡商店の明治座の間口いっぱいに構える立派な本家。
   芦屋に構える次女の分家。三女は縁談が壊れ続けて三十歳、四女はハイカラで人形作りや踊り、駆け落ちと話題に
   絶え間がない。二つの家を盆を回してつないでいく。本家を守ろうとする長女が浅野ゆう子。
   細雪の話は舞台小説映画通じて初めてだったので、面白く見れたが、だんだんと長女がパターンに見えてきてしまった。
   ああ、浅野ゆう子だねぇ。ここらで夫婦仲良いところを見せるだろうなと、思っているとその通りに


)2019年5月21日(火) HDD ☆☆

  「太陽」 
前川知大・作・演出 杉山至・美術 大窪人衛・安井順平・浜田信也
    2016シアタートラムでの公演、全くの仮想が現実となってすでに存在している。以前にも見たが、
   太陽の光を浴びて死んでいく新人類から始まり、サスペンスが続いている。
   そして旧人類から新人類への変身願望。それがなにかむなしくなってくる構造。あきない。

)2019年3月4日(月)  HDD ☆☆☆
  「舞台 おくりびと 7年後」 小山薫堂・脚本 G2・演出 音楽・久石譲  中村勘太郎・田中麗奈・柄本明・真野響子 
   
  
本木雅弘、滝田洋二郎監督の映画の舞台かと思ったら、全く違う。あれから7年後の夫婦二人の話。
    納棺の会社社長は柄本明、「採用」の一言で笑いがとれる。中村勘太郎、大丈夫かなと思ったけれど、
    段だんとはまってくる。チェロ本当に弾ける?
    チェロを中心にした楽隊が舞台を作り上げ、左右にスライドする一階と、二階部分がある美術が、
    スムースな話の展開と、同時に二つの心を見せる芝居ならではの世界を作る。泣いてしまった。

)2019年2月25日(月)  HDD ☆☆
  「メアリー・スチュアート」 ダーチャ・マライーニ・作 マックス・ウェブスター・演出 美術・ジュリア・ハンセン 衣装・ワダエミ 中谷美紀・神野三鈴 

   
  
放送の最初に解説がつくので、十分覚悟ができる。現イギリスの北部がスコットランド、南部がイングランド。
    二つの王国、二人の女王。スコットランド女王のメアリー・スチュアートは、フランス王妃となり夫の死去により
    スコットランドに戻り、イングランドに逃げる。が、イングランドのエリザベス女王はメアリーを幽閉してしまう。
    この二人を同時に鏡の前で、互いの侍女を交互に演じる。時には、一人で夫を務めることも、キャストは二人だが
    次々と人と場面が浮き上がる。濃密な時間。

4)2019年2月19日(火)  こまばアゴラ劇場 青年団 平田オリザ展6 ☆☆
  「ヤルタ会談」 平田オリザ・作・演出 杉山至・美術 松田弘子・島田曜蔵・緑川史絵
    三十分間の三人芝居。スターリンがやってきてインターナショナルを鼻歌で適当に。
   やがてのりのりのルーズベルトがやってきて、太っちょのチャーチルが加わって、ポーランドをどうしようか
   インドはどうするんだ、日本がしつこいんだと、強烈なエゴをまき散らす。
   笑えるし笑うしかないのだけれど毒々。
   三人芝居でかわりばんこに一人退場して空気を変えるオリザメソッドそのままの芝居。

  「コントロールオフィサー」 平田オリザ・作・演出 杉山至・美術 
    三十分間の十人芝居。水泳のドーピング検査をまつ四人の選手の会話がメインなんだけれど
   題名はそれを漏れ聞く係員6人の職務である。つまり秘密を聞いてしまう傍観者が役のしどころ。
   こちらは毒がないが、四人の選手と噂に上る女子選手の名前はすべて原発の名前である。
   あまり結びつくとも思えないが、それも笑いのネタなのか?


3)2019年2月13日(水)  世田谷パブリックシアター ☆☆

  「CHIMERICA チャイメリカ」 ルーシー・カークウッド・作 栗山民也・演出 二村周作・美術 服部基・照明 田中圭・満島真之介・倉科カナ・占部房子

    
天安門事件の時にアメリカ人記者が一枚の写真を撮った。これが事件の発端。
   事前に下調べしておけば理解が早かったかもしれないが、この事件の動画をユーチューブで見て
   事実であるとわかると同時に、観劇前に見てなくて良かったと思った。あのたった一枚の写真から
   想起されるストーリーに驚く。中国人青年とアメリカ人青年の友情から、あの事件の当事者を捜す旅が始まる。
   編集長を説得し、ニューヨークの裏町を歩き、人の生活を破壊していく記者。トラウマに悩まされ、立ち上がり叩かれる青年。
   オバマやヒラリー・クリントンの選挙、マスコミと政治、アメリカと中国の密接な関係、言論統制の厳しさ、
   とっさに理解できない会話の内容も多いが、タッパの高いパブリックシアターを使い切った3時間に満足。


2)2019年2月10日(日)  こまばアゴラ劇場 渡辺源四郎商店 ☆☆
  「シェアハウス『過ぎたるは、なお』」 畑澤聖悟・工藤千夏・作・演出 山下昇平・美術  

    
二人の質の違った作家が一本の芝居を作る。ああ、いつもの畑澤節だと思っていると
   細かさが工藤節になる。シェアハウス、これがやがて、地下深くに作られたブルーコア型ロボットの
   廃棄場だとわかってくる。2万5千年という長い、悪夢。ベトナム、ダッチワイフ、あらゆる手を使いながら
   しみじみと深く入ってくる。

)2019年2月5日(火)  船橋市民文化ホール 前進座
  「柳橋物語」 山本周五郎・原作 田島栄・脚色 十島英明・演出  

    幕が開くと貼られた傘が下手の家の前に並び、中央に研師源六が砥石を使っている。このセットは良い。
   が、場面ごとに薄明かりの中で人が立ち尽くし、セットを変えていく。火事や地震なんだから屋体崩しで一期にとか思うけれど
   場面が多いのでそれどころではなくなり毎回出てくる。なんとかならないものかしら。山本周五郎ものだからわかるんだけれど
   最後のおせんの選択の仕方にすべては許されるのだけれど、それぞれの役者に自分の人生を笑い飛ばしていくような自由さがほしいな


2018年
劇場で24本の芝居しかみていない。
   ☆☆☆は「ゼブラ」ONEOR
       
 
霊験亀山鉾」国立劇場
   ☆☆は 蟹工船・赤道の下のマクベス・ぱんぴー・マレーネ・など

24)2018年12月5日(水)  シアター・ウエスト ONEOR8 ☆☆☆

  「ゼブラ」 田村孝裕・作・演出  美術・稲田美智子 

   
  
いきなり小学生の四人娘と洗い物の母の大騒ぎ。そして今に。母は入院中。長女の夫は善人だが浮気の相手を呼び出されている。
    四女の夫?はちょっといい加減。隣人の言葉障害?がややこしく入り込んでくる。三女の未来の夫は純粋系阿呆。
    ラッパ屋のような雰囲気かもしつつ、はははっと笑ってしまう。家族の父親が四人娘をおいて出て行ってしまったいたことに、
    この家族の底を流れる条件がある。さすが良く出来ている。


23)2018年11月28日(火)  船橋市民文化ホール オペラシアターこんにゃく座

  「アルレッキーノ 二人の主人を一度に持つと」 カルロ・ゴルドーニ・原作 加藤直・台本・演出 作曲・萩京子 美術・乗嶺雅寛 

   
  
円形舞台の上に円形のカーテンレール。上部に大きな三日月。上手側に楽器の群れ。ちょっと魅力的な外側。
     あとは道化四人が口上を述べうたい物語が始まる。アイデアはいいカーテン展開だけどなにかチープ。
     歌もわかりやすい?ちゃんとお芝居しているし、楽隊も良いんだけれど、なんかのんびりしてる。


22)2018年11月21日(火)  シアター・サンモール ドラマティックカンパニー

  「AmoreMeToo」 秋之桜子・作 加納幸和・演出  

   
  
普段は声優、たまには役者。水戸黄門と綱吉をかけあわせて他愛ない

)2018年10月31日(水)  HDD

  「鈍獣」 宮藤官九郎・作 井上尊品・演出 美術・中越司 古田新太・生瀬勝久・池田成志 

   
  
鈍いが不死身の肉体を持つ小説家凸やんを追って、元太陽の編集者が追いかけてくる。
      ここはホストクラブ、オーナーと常連の警官は幼なじみ。どうやら二人は中学の時凸やんを
      事故で殺してしまっているらしい。元編集者の追求が始まり、ママやホステス含めて語り始めるのだが
      謎は深まるばかり。もうどうでもいいやの世界になって幕が切れていく。


21)2018年9月11日(火)  新橋演舞場 ☆

  「オセロー」 シェイクスピア・作 井上尊品・演出 美術・中越司 中村芝・神山智宏・檀れい 

   
  
セットは蜷川風。悲劇の後、反乱に遭い全員死亡するのは、誰の企み?巨大な階段舞台で繰り広げられる
    戦場の空気、高さを使ったイアーゴーの企み、ただ阿呆な歌舞伎役者、ゴンドラが多数行き交うベニス。
    それなりに楽しめる。なぜあれほど単純にだまされるのか、なにかが不足。


20)2018年8月31日(金)  神奈川青少年センター NOMA企画

  「Papas Angel」 野間哲・作演出 

   
  
大きく囲まれたセットが自在に替わる空間を固定してしまう。質感も不足。もっとしゃれたセットで良いのでは。

19)2018年8月4日(土)  新橋演舞場

  「NARUTO」 岸本斉史・原作 G2・脚本・演出 美術・松井るみ 坂東巳之助・中村隼人・市川猿之助 

   
 
 漫画のファンと関係者がいっぱいの初日。人物が登場するたびに拍手が起きる。あきらかにいつもの演舞場の客層ではない。
    原作の絵を使った背景の街、原作になじみのない身としては平面的に見えてしまう。はじめから全72巻のダイジェスト版と
    思ってみているのでそれほどつらくない。大体の筋はつかめる。細かなところはわからない。どうやって母が呼び出されたのかとか
    父は九尾の力を半分持っていたということは生きてたんじゃないのか?とか、なぜイタチは身を捨てたのかとか。
    帰りの地下鉄の中で興奮してしゃべるファンのおしゃべりからするとかなり良い台詞がカットされているとか。
    宙乗りも水浴びも演舞場としては地味

)2018年7月31日(火)8月1日(水)  シアター・コクーン ☆
  「天保十二年のシェイクスピア」2005年上演 井上ひさし・作 蜷川幸雄・演出 木場勝己・唐沢寿明・藤原竜也・夏木マリ・高橋恵子

   
  
蜷川幸雄追悼番組、井上ひさしも元気。シェイクスピア前37作品を盛り込んで下総での宿場を舞台に対立する両家が争う様を描く。
    オープニングはリア王。やがてマクベス。ハムレットも色濃く登場。4時間。飽きさせないのは偉い。


18)2018年7月28日(土)  オリンピック記念青少年総合センター 劇団鳥獣戯画
  「ル・プチ・プリンス」 サン・テグ・ジュペリ・原作 知念正文・作・演出 石丸有里子・ユニコ 

   
  
船橋西高の一人芝居を思いながら見た。あのときのうちこはやっぱり良かったな。
    ボレロのダンスや街灯マンや王様や、肉体をすべて使って一人だからこそイメージが
    広がったのか。王子の人形がとてもかわいいのに、段ボールの星々がすべてを情けないものに
    しているのではないか。飛行士の芝居は良いとして、その他をあつかうユニコの芝居が
    ものたりない


17)2018年7月17日(火)  船橋市民文化ホール 東京芸術座 ☆☆

  「蟹工船」 小林多喜二・原作 大垣肇・脚本 村山知義演出による 印南貞人・演出 幡野寛・美術 

   
 
 マスト・船長室・船員部屋・波・波幕。八間間口の文化ホールいっぱいに40人ほどのキャストが揺れる。
    ホリゾントいっぱいの波幕が斜めに持ち上げられ下げられ水平になったかと思うと大きくかしぐ。
    まあもちろん役者たちは船の揺れにあわせてよたよたを繰り返す。台詞が全部聞き取れるわけではないが
    おおむねはわかる。函館から出向しカムチャッカの海に四ヶ月間鬼工場長の下に、工員たちが働かされる。
    時化の中も出漁するし、他の船のSOSは無視、船を奪い、網を奪い、逆らう者は殺す。工員たちの中に学生、
    元学生、白樺派からロシア革命の共産主義の影響、サボタージュ、やってきた重役への直訴、運動の成功、
    そして、海軍との癒着に負ける。唯一工場長が首になったことが逃げ道か。

16)2018年7月4日(水)  すずなり 玉造小劇店
  「眠らぬ月の下僕」 わかぎゑふ・作・演出 池田ともゆき・美術 

   
 
 人形を使って登場人物を表す。はじめは岡田嘉子。やがて枚方の農家の子どもたち。
    満蒙開拓団に村長の息子としてかり出された少年は、ロシア、東ドイツ、アメリカ、と回って日本に帰ってくる。
    宮大工の見習いだったから、手先が器用で、タシュケントの劇場の床の工夫、やがてスパイの隠しマイクの偽装細工、
    情報機関に見張られ、ついにアメリカで姿を消すことが出来る。ちょっと無理矢理の感もある。
    馬賊がいい声。

15)2018年7月3日(火)  吉祥寺シアター 青年団 ☆

  「日本文学盛衰史」 平田オリザ・作・演出 杉山至・美術  山内健司・志賀廣太郎・堀夏子 

   
 
 開演前のお客様へのお願いの中に「日本大学盛衰史、あ、間違えました」とのアナウンス。これで基調を決める。
    開場と同時に仲居さんたちがお膳を並べていく、いつも通り、歌などうたって明るく。
    四人の文豪のお通夜の場面だけですべて構成。北村透谷の通夜だから明治の話なのに、
    ラインで連絡とか、リツィートとかあり得ない言葉が並ぶ。四人目のお通夜の時にあらわれた未来人たちが
    文学はロボットの頭の中に‥‥などと締めくくっていく


)2018年7月1日(日)  録画 国立劇場 通し狂言 ☆☆
  「世界花小栗判官」 尾上菊之助・右近・菊五郎・松録・中村時蔵・梅枝・市村萬次郎 

    
発端から大詰めまで、話が通り、しかもわかりやすい。衣装や美術も申し分なし。小栗物はいくつか見たような気がするけれど
    これは楽しい。右近の一目惚れから、驚き、嫉妬、狂気、それに応える母の時蔵、笑いをとりながら、最後は納得させる、すごい。


14)2018年6月20日(水)  新橋演舞場 熱海五郎一座 ☆
  「船上のカナリアは陽気な不協和音」 工藤千夏・作・演出  

   
 
 ビックバンドの中で三宅裕司がドラマを叩き、小林幸子がシングシングをうたう。もちろんショーアップされている。
     これがあるからまあ、すべてが許される。

13)2018年5月5日(土)  すずなり 渡邉源四浪商店 ☆
  「愛とか死とか見つめて」 工藤千夏・作・演出  

    
 パイプ椅子5つ、煙突をイメージしそうな細長いドロップ三つ。椅子を動かすだけで葬儀場
    いたこカフェ、車、などすべてを表す。タクシーの運転手だった父が村長になって死んだ。
    その葬儀場で父が村の保存に尽くしていたこと、NPOの女のおなかに赤子を残していること、
    息子が村長に立候補せよと迫られること、意外な方向に話が進み、最後は嫁の思いが吐露され
    それがすくいとなる。

  「いたこといたろう」 畑澤聖悟・作・演出  
   
 
 いたこの自宅の祭壇を沢山飾りこんだセット。二人芝居85分。祭文を唱えているいたこのうちに
    女が訪ねてくる。いくつかのお祓いや呼び出しをしているうちに、いたこがお大事様を授かっていないこと。
    女が娘であることがわかってくる。いたこの本性は虚実ではなくクライアントの心をいたわること、それが
    つらい人生の中で必要と思えてくることがわかってくる。憑依する三上、なかなかよし。



12)2018年4月29日(日)  シアターΧ 演劇集団円 ☆

  「十二夜」 シェークスピア・作 安西徹雄・訳 渡邉さつき・演出 中根聡子・美術 

   
  オール男性。ヴァイオラも男、でもだんだん違和感がなくなってくる。スピードの速いしゃべり。
    シェークスピアシアターのテンポと似ている。後半、だまされたマルボーリオ、取り違えのバタバタ
    笑いが起きる。双子の再会はちょこっとうるっとくるほど。道化の歌はしっとり。

11)2018年4月4日(水)  シアターkassai 沢竜二の世界
  「大利根月夜」 ・作・演出 響彬斗・橘進之助 

   
阿漕な二代目飯岡の助五郎にいかにおとしめられたかの平手造酒、労咳に苦しみながら
  笹川繁蔵の客人として切りにいく。二部は出演者たちの歌謡と踊りのショー。ここで女形の響が
  いい。これは人気があるだろうはず。

10)2018年4月3日(火)  船橋市民文化ホール ☆
  「怪談牡丹燈籠」 三遊亭円朝・原作 大西信行・脚本 鵜山仁・演出 乗峯雅寛・美術 早坂直家・富沢亜古 

   
からんころんと下駄が鳴って、大きな牡丹の華の燈籠に導かれて焦がれ死にした娘とその乳母がやってくる。
  とりつかれたお侍を助けようとする出入りの男とその女房が、お札を貼り、百両に目がくらんでお札を剥がし、の
  人情怪談話なのだけれど、やっぱり円生でききたいところだなあ。

9)2018年4月3日(火)  歌舞伎座 ☆
  「西郷と勝」 真山青果「江戸城総攻」より 大場正昭・演出 尾上松録・中村錦之助

    
西郷が大人物であるとのこと
  「裏表先代萩」 尾上菊五郎・中村時蔵 ☆
    
大場道益宅・小助対決が毒を作った医者たち小物の世界。足利家御殿・床下・仁木刃傷が表の伊達家の世界。
   小物たちの世界がわかりやすく面白い。裏と表と順に展開していく通し狂言であるが、とすると最後の仁木刃傷が
   突然のストーリー展開になってしまう。まとまらないかな。子役の二人、千松の方が見せどころなのに、ちらしにのらない。
   鶴千代役の亀三郎の方がちらしの真ん中に。梨園のさがか。


8)2018年3月28日(水)  シアターΧ 

  「長女」 阿木翁助・作 川和孝・演出  

   
  1947年発表の戯曲。戦後すぐ、次女に好きな人が出来、小学校教師の父は認められない。
    長女は自分には好きな人がいるからと嘘をつき、次女を応援する。こんな単純な人情の話、
    よっぽどの役者じゃないと出来ないと痛感。
  「木曾節お六」 深沢七郎・作 川和孝・演出  
     深沢七郎、さてこのお六をどうやるか。お六の息子は飲み屋の女に振られ自殺を図る。
    嫁の世話をと思っていたお六は、今度は仲を取り持とうとし、首をつった息子の死をみとめない。木曾節は女性四人のコーラス隊。かっぷくのいいお六がそれなりの存在感を出してきた。

7)2018年3月21日(水)  こまばアゴラ劇場 ミナモザ
  「Ten Commandments」 瀬戸山美咲・作・演出 占部房子 

   
原爆を開発したアインシュタインの仲間の学者、の十戒を口がきけなくなった女が書いていく。
   かけなくなった。生まれてくるあなたに書いている。初日。まだ本が固まっていない。
   これからどうなるのか。

)2018年3月19日(月)  HDD
  「下谷万年町物語」 唐十郎・作 蜷川幸雄・演出 朝倉摂・美術 宮沢りえ・藤原竜也・西島隆弘 

  
緑色のひょうたん池の中に人物が潜り登場する。明るくなると二階建ての八軒長屋が登場しお釜たちが踊り狂う。
  水の中からあらわれた女が宮沢りえ。歌もうたうしステップも踏む。なるほどきれがいい。戦前と戦後に時空をこえて
  エネルギーがつながっていく。すじは相変わらず追い切れない、でも飽きるわけでもない。見続けられる。


6)2018年3月13日(火)  小劇場B1 名取事務所
  「渇愛」 金旼貞・作 寺十吾・演出  

   
ちらしの設定を後から読むとそうだったのかとも思う。完全暗転を使ったいきなりのカットバックの連続から始まる。
   日本のいたこに似たような位置のムーダンの娘が美術教師の妻。
   第一子を妊娠したとき夫は個展のためにいそがしく妻は子どもを堕ろす。
   二番目の子どもが連れてきた家庭に恵まれない少年を自分の子どもだと思い込み、少年も取り入っていく。
   美術教師も弟もその少年のために狂っていく。


5)2018年3月9日(金)  新国立劇場小ホール ☆☆
  「赤道の下のマクベス」 鄭義信・作・演出 池田ともゆき・美術 池内博之・平田満 

    
1947年夏、シンガポールのチャンギ刑務所の中庭。正面高いところに絞首台。左右に3つづつの独房のドア。
   ドアとその壁には泰緬鉄道の駅名がチョークで書き付けられている。
   奥の檻が開けられる音とともに笑い声。看守二人と将校が入ってきて、独房のドアをあけ5人の囚人が引き出される。
   赤道直下の暑い朝。シャワーは最後の時にしか使えない。いずれもBC級戦犯。日本人は3人、やがて再び連れてこられる男を含めて
   朝鮮人が3人。英軍捕虜に対する虐待で死刑判決が出ている。命令されてやむを得ず捕虜をかり出しただけなのに、日本人にやらされただけなのに
   の叫び。元陸軍大尉が一人、その部下が一人、戦線をくぐった男が一人、それぞれのものがたりが熱い会話の中から見えてくる。


4)2018年2月12日(月)  明日にかける橋 グッドフェローズ ☆☆
  「ぱんぴー」 オオタスセリ・脚本 寺門一憲・演出 あぜち守・表純子・亀田雪人・仁山貴恵 

    
おなじみのメンバーのショートコント集。亀さんに笑う。なぜ和やかになれるんだろう。
   母さん探して、よし。バスを待ちながら、あぜちさんのリアクション、抑えた歌、いいな。


3)2018年2月7日(水)  本多劇場 トム・プロジェクト ☆
  「Sing a Song」 古川健・作 日澤雄介・演出 中川香純・美術 戸田恵子・大和田獏 鳥山昌克 

    本多劇場・戸田恵子・歌手のものがたりと期待すると、そこは劇団チョコレートケーキの世界。
   舞台美術はラストの焼け跡をイメージする灰色の単調な直線の世界。動く塀で場面を切り替える。
   舞台シーンは白いカーテンや照明で表す。アコーディオン、ピアノ何でもござれの伴奏者がつくが実際に伴奏することはない。
   これが生伴奏したら様変わりした作品になれただろうに。戸田恵子が扮するのは淡谷のり子をモデルとした歌手。
   大戦前夜、華麗な衣装、禁止されているブルースをとがめられ憲兵に呼び出され、皇軍慰問を命じられる。
    一線も受け取らないと宣言し、衣装は歌手の戦闘服と譲らず、自分で選んだ歌を歌い、軍歌は絶対に歌わない。
   おめつけの憲兵隊軍曹と南方戦線の基地の大佐との交流の中で心が通い、最後は鹿児島の特攻隊基地での慰問で
   泣き崩れる。敗戦の焼け跡でうたうことを誓う。

2)2018年1月23日(火)  船橋市民文化ホール T-project ☆☆
  「マレーネ」 パム・ジェイムス・作 田中正彦・演出 岡田志乃・美術 旺なつき 

    70歳をこえたマレーネ・ディートリッヒがパリの劇場に歌いに来る。チケットは完売、キャンセル待ちの列が劇場を取り囲んでいる。
   かいがいしく世話をするのは宝塚の男役風の女優の卵。初めての付き人だが手際が良い。
   もう一人はアウシュビッツに送られ口がきけなくなった20年来の付き人。華やかにわがままにそして手の震え、歌詞を忘れる、
   精神安定剤を飲むか飲まぬかで苦しみ抜くマレーネ。このマレーネがどんな人物だったか、どんな過去だったかを知らない身には
   アイゼンハワーやドゴールやヘミングウェイ、たくさん登場する人物との関係を吐露する部分になかなかついて行けない。
   ただそれが歌に変わるとき、お、これすごいかもと思う。さんざ苦しんだ後、結局は舞台に立ってピアノとアコーディオンのバンドで歌う。
   ジョニー、リリーマルレーン・花はどこへ行った、なじみの曲が生で、そしてその中身で訴えてくる。このおよそ30分続くショーに力がある。


)2018年1月9日(火)  録画 帝劇ミュージカル

  「モーツアルト!」 ミヒャエル・クンツェ脚本・歌詞 シルヴェスター・リーヴァイ・音楽 小池修一郎・演出 山崎育三郎 市村正親・ 

    
神童といわれ父に連れられて演奏旅行を繰り返していたモーツアルトが、青年期にいたり庇護者の下を飛び出した後、貧乏にあえぎ35歳でなくなる。
    「アマデウス」と同じ題材をあつかう作品だが、父の思いが濃厚でその思いに裏切り、奔放に生活し、父を捨てた形が、晩年彼を苦しめたとの事がメインとなっている。
   次から次への場面はミュージカル。アマデウスの砲が濃厚で゛面白い。

1)2018年1月6日(土)  こまばアゴラ劇場 渡辺源四浪商店&おきなわ芸術文化の箱 ☆
  「ハイサイせば」 畑澤聖悟・作・演出 三上晴佳・工藤良平 安和学治・当山彰一 

    薩摩弁あまりにもわからないのでドイツ軍からおくられた潜水艦に中将が便乗する際、暗号として使われたという。
   これをヒントに、沖縄言葉ウチナンチューと津軽弁を同時に使うというドラマを組み立てた。
   沖縄の二人の俳優が魅力。国語元年など井上芝居にも通じると思うのだけれど。

    議論がそこまで高まっていかない感じがあるかなぁ。


2017年

 
劇場で38本の芝居を見たことになる。自分が出ているのでよくわからないが
    鳥獣戯画の「神様、あなたの出番です」が今年は良かったのではないだろうか。
   ☆☆☆は「始まりのアンティゴーネ」椿組
       
 
霊験亀山鉾」国立劇場
   ☆☆は ワンピース・萩咲く頃・逆櫓・お江戸みやげ・ありふれた話
        さよならだけが人生か・永い接吻・など

38)2017年12月19日(火)  歌舞伎座 ☆☆
  「瞼の母」 玉三郎・中車・萬次郎 

    長谷川伸のご存じばんばの忠太郎の話だがきちんと見たのは初めて。
   弟分の半次郎の家に訪ねてきた忠太郎が、追っ手をたたっ切り、切ったのは忠太郎と書き付けようとするが
   文字を知らず、半次郎の母(萬次郎)に手を取ってもらって字を書く。9歳の時に別れた母を探す身の上、母への思いが募る。
   江戸に来て、料理屋の女将が母と思い訪ねていくが、娘をおもんぱかって母と名乗らない。娘は兄だと気づき母を責め、二人は
   忠太郎を追う。しっかりしっとりと見られる。

  「楊貴妃」 玉三郎 
後ろの幕が次々と開いて控えていた楊貴妃があらわれ踊ってまた戻っていく。無限の世界。

37)2017年12月18日(月)  IHI ステージアラウンド東京 新感線

  「髑髏城の七人 月」 中島かずき・作 いのうえひでのり・演出 堀尾幸男・美術 原田保・照明 宮野真守・千葉哲也
    
豊洲の市場前駅から1分、キャッツの架設劇場の雰囲気ながら四角。中はディズニーランドのショー劇場風。
   ぐるりと周りを取り囲む緞帳の役のスクリーンに月が映し出されて開幕。スクリーンは特定の角度だけ開けられ、
   すでに仕込まれている次の場のセットは見えない。場が変わるごとに客席が回転し別の風景が広がる。
   荒涼とした川、遊郭、森、城、等。織田信長の家来たちが復讐に燃え、髑髏城にこもる。豊臣勢が押し寄せてくるという背景。
   天魔の鎧をきた天魔王と、どうでも良いと思う捨乃介と、蘭丸の密接な関係を軸に、築城家、家康、ただの暴れ者、など
   いそがしく騒がしく話をつないでいく。客席が回転するとき360度のスクリーンの光景も左右に上下に動くので、軽く船酔い感がある。
   話は騒がしくかっこよください台詞を連発、いつもの新感線。


36)2017年12月13日(水)  シアターΧ 俳小 ☆

  「袴垂れはどこだ」 福田善之・作 シライケイタ・演出 松村あや・美術  勝山了介・田中壮太郎
    
真田風雲録の翌年に書かれたこの本。話は聞いていたが実際に見るのは初めて。シンプルな階段セットと少しのカイ帳場。
   なぜこの男たちがという冒頭の疑問もあったが、シンプルに伝説を作りあげる集団ということで、本の上では許されることに。
   集団に女集団をくっつけたのは演出の工夫?馬の処理も同様。古い話を、袴垂れはどこで、誰か、という興味で芝居を引っ張っていける。
   
35)2017年12月12日(火)  すみだパークスタジオ倉 桟敷童子 ☆
  「標 sirube」 サジキドウジ・作 東憲司・演出 塵芥・美術 朴璐美
    
相変わらずの舞台セット。客席との境は丸太組。赤い布が垂れ、かざぐるまがさされ、頭の上には赤のふらしがはいった巨大な雪籠。
   九州、漁村、赤い蜃気楼の伝説、終戦直前の逃亡兵。戦士の知らせを食いちぎる七人の女たち。いつも通りの熱い芝居。
   まあ、そんな風になるだろうなとのいつも通りの展開。さあ、屋体崩しはいかに、と思っていたら、大量の赤い降らしに埋まった。


34)2017年11月1日(水)  新橋演舞場 ☆☆

  「ワンピース」 尾田栄一郎・原作 横内謙介・作 市川猿之助・演出 尾上右近
    
猿之助が骨折して代役は尾上右近。初演と比べてますますわかりやすく。本水、宙乗り、光る衣装。早変わり。
   これはこれでよし。と。


33)2017年10月8日(日)  国立劇場 ☆☆☆

  「霊験亀山鉾」 通し狂言  鶴屋南北・作 片岡仁左衛門・錦之助・孝太郎
    
剣術の試合に敗れた男が相手を闇討ちする。その弟が敵討ちに来たとき、立ち会いの侍が
   毒薬をもり返り討ち。養子はおびき出され返り討ち。次々と策略を当てて、殺していく姿が美学となって
   客の拍手を誘う。棺桶のすれ違いに客は笑い、井戸に落ちるそっくりさんに拍手する。
   本水は間口いっぱいに近いけれど奥行きに乏しく少し残念、けれど狼に追われる村人たちなど
   群衆たちもしっかりしていて面白い。早変わりも楽しく棺桶抜けもかっこいい。
   肝の生き血は不知火と同じだが子役が見得を切るのはかっこいい。
   発端から大詰めまでストーリーが流れていく通し狂言は、やはりこれがほんとだよと思わせる。


32)2017年10月7日(土) 紀伊國屋ホール
 ストレイドック ☆
  「海街diary」 吉田秋生・原作 森岡利行・脚本・演出   山崎真美・木下愛華・仁山貴恵
    
まるで高校演劇のような騒がしさ。生バンド・ボーカル付き。多人数の踊りと大騒ぎ。正面切っての台詞。
   最初、なんと雑な、的、お芝居で始まったけれど、少しずつしまってきて、映画をゆっくり思い出しながら見た。
   セットは二階建てで上にバンド、役者は上も下も行き来する。鎌倉をコラージュしたグレイに沈む大仏や鳥居のセット。
   銀行がカラオケのフロントにしか見えない雑、悲しい。母の造形は疑問、大竹しのぶはすごかったな。
   綾瀬はるかのやっていた長女、長身、しっかり芝居をしていたが、本の構成のせいか、梅のエピソードが生きてこない。
   結婚を断って、ターミナルケアの向き合う過程も、まだ響かない。

31)2017年9月26日(火) 俳優座劇場 俳優座 ☆
  「海の凹凸」 詩森ろば・作 眞鍋卓嗣・演出 杉山至・美術  岩崎加根子・塩山誠司・志村史人
    
書籍が積み上げられた棚に囲まれた部屋。棚の書籍はそれぞれ半分ぐらいなので光が入って
   すけた世界が浮かび上がる。
   水俣の映画を借りに
訪ねてきた女に人物を紹介していく形で、公害原理の自主講座を支えるグループと
   この時点での水俣の様子がわかってくる。まるで解説のような定型パターンで喜び笑って進む。
   徐々に狂ってくるのは、21年間も大学助手であった宇井純(宇田という名前になっている)が、沖縄の大学に
   行くあたり。公害が人間のもつ罪のような哲学、運動が生きる意味無自体となっている矛盾、そんなどわっとした
   違和感が空間を埋めていく。


30)2017年9月20日(水) 紀伊國屋ホール 青年劇場
 ☆
  「アトリエ」 ジャン・クロード・グランベール・作 大間知靖子・訳 藤井ごう・演出 乗峯雅寛・美術  
    
ドイツから解放されたパリ、アメリカ軍がまだ残っていて酒場で大暴れされたと踊りにいったお針子がまくし立てる。
   新しく入ったお針子が黙々と仕事をしマダムが皆に紹介していく形で登場するお針子たちの造形がなされる。
   役人の奥さん、若い女、歌好きの主婦、お針子たちはよく喧嘩をする。
   その中にフランス国籍を持っていなかったユダヤ人の夫が連れて行かれたまま帰ってこない芝居のベースが
   色濃く表れる。幼い子を抱え、疲れ果てるまで働き、恩給をもらうために走り回り、いい加減な死亡診断書まで
   受け取る。それを避難するマダムは逃げたユダヤ人、その夫はフランス人にかくまわれたユダヤ人。
   5、6年間の時間経過の中で女たち強くいる。親方、パリ解放の時、ドイツ語をしゃべりフランス人に囲まれ、
   意識を失いそうになったときの台詞などもっと聞きやすくほしかった。

29)2017年9月19日(火) 船橋市民文化ホール トム・プロジェクト ☆☆
  「萩咲く頃」 ふたくちつよし・作・演出 中川香純・美術  音無美紀子・大和田獏
    
いきなりマイクを通して聞こえる声にびっくり。これほどずれた感覚もそうはない。
   娘役が声量を出せないのかと思ってしまった。
    芝居は震災の時の引きこもりの息子が家族を助けられず、今は家を出て6年たっているという設定。
   なぜ引きこもり、暴れ、家をバラバラにしていったかを、時々挟まれる回想の形で開いていく。
   音無美紀子がおろおろした母、それでも子供を戻したい母を、自在にみせて、全体に笑いも得る。
   怪我をさせた父の前に現れた息子は上を引きちぎらないと落ち着けない。それも笑いにつなげる。
   ぼた餅とおはぎの違いも効果的でまとまった作品。

28)2017年9月5日(火)  秀山祭歌舞伎座 ☆☆
  「ひらかな盛衰記 逆櫓」 吉右衛門・歌六・雀右衛門 
漁師の親父のもとに入った婿が陽気に帰ってくる。
                               逆櫓を任された。この家には人間違いで預かっている子供がいる。
                               いつか自分たちの子が戻ってくると大事に思って。そこに腰元がやってきて
                               漁師の子は死に、預かってもらっている子は木曽義仲の跡取りで返してほしい。
                               漁師の夫婦は大泣き。婿が実は主君の仇を討つためにここに潜んでいるとあかす。 
                               きちっと芝居が組まれているのだけれど、やはり古典の台詞聞き取りにくいかな。
  「再桜遇清水 桜にまよふ破壊清玄」 染五郎 吉右衛門が脚本を手がけ昭和60年に上演。台詞が聞きやすい。
                               染五郎が一目惚れやら、浮かれやらせまりやら、怨念の塊やら楽しそうにやっている。


27)2017年7月25日(火) テアトルBONBON 鵺的
 ☆
  「奇想の前提」 高木登・作 寺十吾・演出 袴田長武・美術  佐藤誓 木下祐子
    
中野ザポケットには何回か来たことがあるけれどBONBONは初めて。タッパの高い劇場。
   そのタッパいっぱいに立体的な廃墟をつくり上げ、パノラマ島とそれを見つめる屋敷を表す。
   江戸川乱歩の世界を比較的わかりやすく展開。いやな音の幕開けからいきなりの不安な明かり。
   なかなか実体が見えない明かり運びから、霊感の鋭い娘の報告。祖母の島を見てはいけないの言葉。
   徐々にわかる東京の子供たちとこの屋敷にすむ母たち三姉妹の関係。猟奇。花火でふりかかる血と肉のイメージ。
   映画ならラストの正体あかしはベリベリとマスクをはぐんだろうな。そうでないから混乱する。
   ぼっこ、まともな役であった。


26)2017年7月18日(火) 駅前劇場 トラッシュ・マスターズ
 ☆
  「不埒」 中津留章・作・演出 原田愛・美術  カゴシマジロー 龍坐 川崎初夏
    
駅前劇場のタッパは二メートルほどしかないけれど、間口奥とも結構広い。マンションのLDKと寝室。
   床一
面にはられたほこりっぽい新聞紙が壁にも、椅子やソファーにも、冷蔵庫や流しにも床から体半分まで這い上がってくる。
   コンクリートごと
世界を浸食しているようなセットにちょっと期待。
   明らかに東芝?的会社の粉飾決算がもとで口論の友といらだっている妻。
   不倫があって戻ってきたけれどうまくいってない夫婦。ついに夫が出て行き妻の心は壊れる。
   家庭内の性から、
戦争から、鉄道の高架から、2時間半休憩なしで、くっつけて行く。
   展開はさほど無理なく興味もずっと引っ張られていくのだけれど、疑問がいくつか。
   時々、作者のじかの言葉にしか聞こえない台詞が無造作に出てくる。口論に論議を紛らわせていないか。
   線路の高架化による日照権問題がこの高級マンションの事件のエネルギーだけれど、
   線路に影響されるような低層マンションなのか?
   飛び出ていった息子に公務員にでもなるか警官にでもと前振りの台詞はあるが
   共謀罪法の結果として父親を逮捕しに来る最後は安易すぎないか。


25)2017年7月11日(火) 船橋市民文化ホール 劇団1980
 ☆
  「謎解き 河内十人斬り」 藤田傳・作 河本瑞貴・演出 佐々波雅子・美術・衣装
    
船文のただっぴろい客席が恨めしい。暗転幕の前で二人が襲う場面とそれを違うとのたまう場から始まり
   幕が飛ぶと屋台と長胴太鼓・三味線・エレキギター・マイクを持って歌う男たち・踊る女たちが飛び込んでくる。
   この大騒ぎの劇団が金になるから明治に起きた実際の事件を謎解きしようという。
   新聞、資料から各場を立ち上げて河内音頭にのせて歌い上げる。密通、借金取り、そして討論会、謎解きが始まる。
   なぜ、二人が10人の計140カ所を切り刻んだのかを考えていくうちに、この二人は村人の代表でなかったのか
   との憶測が見えてくる。聞き分けにくいところもあるがおおむねついて行った。最後は井上ひさし風な展開になるのだけれど
   え、それだけ?といった物足りなさも味わった。

24)2017年7月9日(日)  日暮里d-倉庫 劇団水中ランナー ☆☆
  「ありふれた話」 堀之内良太・作・演出 
    
シンプルなパネル、ちょっとマチエールつけたいなどと。朝顔にまつわる台詞がやがて群読となり
   大学の映画サークルの仲間たちが集まってくる。現在と過去がふいとあらわれ、写真で人の瞬間を切り取ろうとした男の映画と
   登場した人間たち自体を数年後にまた映画にしようとした監督、青春の映画人たちと困難と挫折と励ましと懸命と、
   やがて朝顔と七夕と煙と笑顔が重なって、涙した。


23)2017年7月5日(水)  新橋演舞場 7月名作喜劇 ☆☆

  「お江戸みやげ」 川口松太郎・作 波野久里子・市川萬次郎
    
田舎から出てきた呉服扱いの女二人。湯島天神前の茶屋でちょっと一杯。
     この茶屋芝居小屋とくっついていて役者が出入りする。
    めかけに売られそうになっている娘と上方で一旗揚げたい役者、それに惚れてしまった
    久里子がゆかい、いつもの強い女ではなく、いなかの婆の恋がお見事。

  「紺屋と高尾」 一竜斉貞状・口伝 浅野ゆう子・喜多村緑郎
    
大阪の紺屋の職人が吉原の花魁道中の高尾を見て一目惚れ。
     恋煩いで命を落とすところをに来て一念発起お金を貯めて会いに来る。おなじみの落語。
    七之助の花魁とあばたの吉右衛門で見た吉原風景だがレベルが違う。現代風の浅野ゆう子と
    喜劇を修行中の喜多村でどうなるかと思ったけれど、やはり話が良いのだな。最後にはふに落ちた。

22)2017年7月3日(月)  国立劇場 歌舞伎教室
  「一條大蔵譚」 檜垣茶屋の場・大蔵館奥殿の場  菊之助・梅枝・右近
    
亀蔵が大ホリに向かってたっていると盆が回り競りが次々と形を変える。
   BGMとあかりが盛り上がって、ふっと歌舞伎の解説が始まる。
   一階は高校生たちで満ち盛り上がる。
   本編がはじまりおおむねの状況がわかってきたところで屋敷の門が開き菊之助が
   ぴょこんとあらわれる。どっと笑いが起きる。藤山寛美とはまったく違った阿呆の作り。
   踊り合わせて縁台から落ちそうになるなど芸だなあ。奥殿の場でぶっかえりで役柄をかえたり
   首を切り落としたり歌舞伎の展開となる。


21)2017年6月28日(水)  吉祥寺シアター 青年団 ☆☆

  「さよならだけが人生か」 平田オリザ・作・演出 杉山至・美術
    
目パイプで組まれた飯場。外は雨。遺跡が発見されたのでマンション建築が中断中。
   暇をもてあましている作業員たちの中に娘をもらい受けたいと訪ねてくる男、留学するので
   別れることになるかも知れない二人、意味不明の縄文人ごっこ。開場するとすでに日常が始まっている演出、
   人の出捌けによって空気が変わるメソッド、たまに起きる同時会話、いかにも青年団の作品。
   1992年の初演の頃、きっとメソッドの方が目立っていただろうけれど、役者達が達者になっていて
   飽きずにみられる。
   


20)2017年6月17日(土)  目白ゆうど ☆☆

  「永い接吻」 工藤千夏・作・演出 天明瑠璃子
    
目白通りわちょっと入ると結構静かな住宅街が広がる。そんな中に梁がどーんと通った古民家が
   あってその違い棚が並んでいる和室をそのまま舞台セットとして使う。
   座布団が二つ、客席側の座布団の脇には女物の鞄と、菓子折。尼僧が一人出てきて、塩茶を出し
   奥側の座布団に座る。相手は人生相談に来た女性のよう。40年の間夫が浮気しているとのこと。
   そこに真実があると尼僧は堀部安兵衛の愛人であったことを語る。時に討ち入りの講談となり、
   あまり知られていない間者として吉良邸に潜り込んだ7人の女について語る。ここまでが前半。
   時に色っぽく講談も力強い。突然尼僧は消え、相談に来た女が尼僧を攻め始める。母が40年間浮気を
   されていた娘でなくなった父の遺産であるこの家を出て行って欲しいと。ここまでが中半。
   そしてさらに時は戻り尼僧がその浮気相手でであった頃の女流若手講談師になる後半。時勢もつじつまも
   一気に崩れることで、悩む帰り道を歩くことになる。


19)2017年6月14日(水)  赤坂レッドシアター 劇団道学先生
 ☆
  「梶山太郎氏の憂鬱と微笑」 中島淳彦・作・演出 田中敏恵・美術 青山勝・田中真弓・朝倉伸二・鈴木一功
    
書斎のセット、いきなり文学について語り出す。と、後の紗が透けて、文章教室の生徒三人が浮かび上がり、
   男は三人それぞれにまったくことなった対応をする。書斎に訪ねてきた編集者が20年続いた連載の中止を告げ、
   男が処女作以来活躍していないことがわかる。かつての弟子が編集者として現れたり、ついてくる奥さんがいたり、
   山師の従兄弟が頼ってきたり、快調に話が進んで、教室の生徒が新人賞をとったり、あとずさりの歌ががなられたり、
   くすくすと笑いながら進む。

18)2017年6月6日(火)  歌舞伎座 ☆☆
  「名月八幡祭」 池田大伍・作 松緑・笑也 
新歌舞伎。深川芸者の粋に田舎者がついて行けない。粋な笑也が気持ちよい。
                               単純な思い違いとも言える百両の工面、故に狂う。
                               狂ったあとから田舎侍の刀を奪ったり担がれたり、
                               最後は本水の大雨の中の錯乱、切り結び。満月が冷たく刺す。

  「浮世風呂」 木村富子・作 猿之助・種之助 
風呂屋の三助の舞踊。常磐津聞きとれたいな
  「御所桜堀川夜討 弁慶上使」  吉右衛門・雀右衛門 
頼朝の命により義経の正室の首を取りに来た弁慶。実の子を殺す。その嘆きがみものという。
 
17)2017年6月5日(月)  新橋演舞場 熱海五郎一座
  「消えた目撃者と悩ましい遺産」 吉高寿男・作 三宅裕司・構成・演出 金井勇一郎・美術 藤原紀香・小倉久寛
     
演舞場第四弾とあるがたぶん見たのは三回目、少しまともになってきたような感じ。
    発端からさりげない台詞で暗転の連続で紡いでいくのがまとも。藤原紀香もそれほどはみ出ていなく
    スターとしての位置取りもある。

    

16)2017年5月30日(火)  シアターグリーンBOX in BOX 劇団鳥獣戯画

  「三人でシェイクスピア」 ジェス・ウィンフィールド アダム・ロング ダニエル・シンガー・作 知念正文・演出 知念正文・石丸有里子・赤星昇一郎
    
キャパが100を超えるぐらいの劇場なのに5間間口、奥行きも4間。良い小屋。
   見るのは二度目だけど、前のことはすっぱり忘れている感じ。芸達者な三人ががんがんすっ飛ばしていくのだが
   これはどんな作品だっけと頭の中で復習を続けていた。休憩後のハムレットあたりが楽しい。

15)2017年5月30日(火)  紀伊國屋ホール 明後日プロデュース
  「名人長二」 三遊亭圓朝・原作 豊原功補・脚本・演出 豊原功補・梅沢昌代
    
モーパッサンの親殺しを圓朝が落語速記にし、古今亭志ん生などが高座にあげた、
   それをまた芝居にしたという。その設定そのままをリレー落語のような形式で使っていく。
   圓朝自体は真景累ヶ淵など怪談や人情話が代表作なので、気軽な笑いというわけではない。
   でも、さすがに重く感じられ、枕でも笑えない。梅沢昌代の湯河原の宿のばあさんに
   ほっとする。


14)2017年5月17日(水)  船橋市民文化ホール 青年座
  「からゆきさん」 宮本研・作 伊藤大・演出 長田佳代子・美術 綱島郷太郎・安藤瞳
    
気になっていた芝居を初めて見た。天草の小学校の国旗掲揚台から始まり
   シンガポールへ跳ぶ。女郎達の仕草がそれっぽいのはさすがだし、妖しげな
   中国人や買われた女たちの移動も出来ている。7年も身を沈めくずれた思いもわかる。
   棄てられた女、棄てられた日本人というテーマもわかる。けれど、これがなんだ?と
   わからなくなる。書かれた当時ならわかったものが今通用しない。


13)2017年5月16日(火)  紀伊國屋サザンシアター 青年劇場
 ☆☆
  「梅子とよっちゃん」 福山啓子・作 瀬戸山美咲・演出 乗峯雅寛・美術 船津基・池田咲子
    
大きな丸い鏡、花瓶、伯爵家の屋敷。そこで人形の家の稽古。初めのうちはこの女優には
   とか思ったけれど、結婚から、築地小劇場の衣装、家を手放し、やがてロシアに逃げ
   と、転々としていく生活にたくましさが増していく。小山内薫や千田是也が登場することに笑ってしまうし
   今、北朝鮮で起きているだろうな、やがて日本も再びそうなるのではないかという緊張、
   パリ農奴小屋の生活、演出家の仕事は俳優・裏方をまとめていく、から夢を作る仕事だのラストに。
   花をキーワードにした全員の顔が見える転換面白し。


12)2017年3月25日(土)  入間市民会館

  「わたしの家族は、世界一!」 知念正文・作・演出 佐藤憲司・美術 竹内久美子・入間市の人々
    
モモのような展開の部分が面白いけれど、金が第一の世界と、愛が第一の世界との対立が
    図式で中身のエピソードが足りない。こんなことがあったからこっちの世界がいいんだというような。
    役者達、素人っぽくない、がんばってる。


11)2017年3月22日(水)  新橋演舞場 

  「コメディ・トゥナイト ローマで起こったおかしな出来事 江戸版」 スティーヴン・ソンドハイム・音楽 宮本亜門・演出 石原敬・美術 片岡愛之助・ルー大柴・ダイヤモンドユカイ・高橋ジョージ
    
どーんとしたセットに、三つの家がせり出してくる。奴隷が自由になりたいと売春宿の女に惚れた若主人を利用する話を
   
江戸の商人の丁稚に翻案してある。奴隷と丁稚では自由になりたい強さがまるで違う、そこが皮肉が効かなくなって
   前半退屈する理由だろう。アフタートークのルー・高橋・ユカイが勝手で面白かった。


10)2017年3月21日(火)  吉祥寺シアター ☆☆ 
  「くじらの墓標」 坂手洋二・作・演出 加藤ちか・美術 中山マリ・鴨川てんし
    
東京湾の海近くの漁業用倉庫。半開きのシャッターの幅で、舞台奥に向かって下がっていく。
   ここで魚を引き揚げ解体したかも知れない。交通事故で身体を痛めたイッカクが机にもたれて眠っている。
   女が一人座っていて、目が覚め会話が始まる。終盤、これが再現されるので全てが夢だったかも知れない。
   次々と現れるイッカクの親族、みな故郷で鯨取りをしていた。セミクジラ、ゴンドウクジラ、ナガスクジラ、
   その思い出が次々と現れ、20年前、村で起きた事故の実態が明らかになる。飽きることなく緊張の中で
   客を引っ張っていく。いったいこの話はどうなっているんだ?と。どうやら長男の生死が要になっていき
   緊迫した捕鯨シーンとなる。


9)2017年3月14日(火)  日生劇場 ☆☆ 

  音楽劇「マリウス」 マルセル・パニョル・原作 山田洋次・脚本・演出 金井勇一郎・美術 今井翼・瀧本美織・柄本明・林家正蔵
    
大きなセットは気持ちいい。下手奥の動かない人たちは誰かなと思ったら楽隊だった。生演奏。
   フラメンコの踊り手歌い手がたむろしていて要所要所で唄い踊る。フラメンコいい。
   27才のマリウスが船乗りになりたくてうずうずしている。4つ下の彼女は彼と結婚したい。
   でも、彼は世界を夢見ている。この若さが勝負だと思うけれど今井翼のがっしりした身体が、
   もうなんでも人生を知っているように見えてしまう。柄本明は適当にやっている感じだけれど
   手紙を聞くときのあほな親父役などさすが。


8)2017年3月10日(金)  歌舞伎座 ☆ 三月大歌舞伎昼の部
   「名君行状記」 梅玉、亀三郎 
真山青果・作 伊藤喜朔・美術 現代劇で聞きやすいのだけれどなぜそこまで主君の心を知りたいの?
   「義経千本桜 渡海屋・大物浦」 仁左衛門の知盛 時蔵の女房 
字幕のおかげで全ての初めて語り台詞がわかった
    「神楽諷雲井曲鞠 どんつく」、己之助・松緑 
字幕見過ぎて、踊り楽しめなかった。字幕も使いよう


7)2017年2月28日(火)  すずなり ☆☆☆ 

  「始まりのアンティゴーネ」 瀬戸山美咲 作・演出 加藤ちか・美術 佐藤誓・占部房子・外波山文明
    食品工場の社長の家、久しぶりに帰ってきた長男はタイの衣装に身を包んだ婚約者をつれて「ひさしぶりぃ」と歓迎される。
   やがてこれは現社長の義理の兄弟の次男が亡くなったので通夜に集まってくる家族の物語とわかってくる。
   その数なんと18人、2時間弱の展開の中で必死に人物関係を追ううちに、死因は自殺だとわかり、それを公表するか、
   どうかに絞られ、さらに、その死は家族によってもたらされたかもとなってくるうちに、人を思う気持ちって、なんなのかが
   あぶり出されてくる。見事な会話劇。

6)2017年2月21日(火)  シアタートラム 
  「お勢登場」 倉持裕 作・演出 二村周作・美術 黒木華・片桐はいり・千葉雅子・梶原善
    江戸川乱歩の短編集をくみ上げて一つの作品とする。
   推理ものと怪奇幻想ものとが合わさって人間の闇を、というようなシアターガイドの特集からは少し遠い。
   片桐はいりや千葉雅子はさすがにうまいので笑ってしまうのだが、さて、それが乱歩の描く闇となるかというと
   そうならない。あの怪奇というのは、どうしようもない情念が人にあってそのどろどろしたものが、見るものに
   思い当たるだけに思わず笑ったりぞくぞくしたりするものだと思うのだけれど、コントに近い状態まで、行ってしまっている。
   全体に性格のあっさりした役者たちにみえて、最初、おっと思ったセットもやがて飽きてくる。もっとどろどろまで
   連れて行って欲しいな。主役も他に食われて目立たない。

5)2017年2月16日(木)  歌舞伎座 ☆ 猿若二月大歌舞伎昼の部
   「猿若江戸の初櫓」 七之助、勘九郎 
勘九郎の踊り楽しい。
   「大商蛭子島」 好色亭主が実は頼朝だった、松緑
    「四千両小判梅葉」、菊五郎の富蔵、さりけれ゛なく面白い。
    「扇獅子」 梅玉・雀右衛門で二枚の扇で獅子を。 
    今回はじめて字幕ガイド借りた。音声ガイドよりうるさくない。

4)2017年2月9日(木)  日生劇場 ☆☆ 
  ミュージカル「ビッグ・フィッシュ」 ジョン・オーガスト・脚本 音楽・アンドリュー・リッパー 白井晃・演出 松井るみ・美術 川平慈英・浦井健治・霧矢大夢
    久しぶりにちゃんとしたミュージカルをみた。冒頭一人語り、そしてオーケストラピット・舞台下から人物が増えるあたりから興奮。
   ところどころ歌詞が聞き分けられなかったけれど、これは作詞?歌唱?それとも耳の問題?
   でも面白かった。わくわくし、街の運命に立ち上がりかけ、予想される結末通りに泣いた。

3)2017年2月7日(火)  船橋市民文化ホール ☆☆ 俳優座プロデュース
   
「音楽劇 人形の家」 イプセン・作 西川信廣・演出 作曲・上田亨 美術・石井みつる 土居裕子・大場泰正・畠中洋・古坂るみ子
  土居裕子の黒っぽい衣装、若い。ぐるぐる回る壁のセット良い。このところ「ヘッダ・ガブラー」、「ジョン・ガブリエルと呼ばれた男」とイプセン読んでいたが、
  「人形の家」をみるのは初めてだと気がついた。状況が一つの部屋の中でどんどんと進展していく。イプセン達者。
  歌はききとりやすくこれもありかな。近代女性の自立と評判の高いラスト、今時にみると、なにか喜劇っぽい。
  八年間の結婚生活の夢がたった二、三日の間に壊れていくなんて。気づきというより、え?そんな?今までわからなかったの?
  とこの時代の女性像にびっくりしてしまう。客席に並ぶ方々はもっと沢山のことを見、経験し、裏も表もしりつつ生きてきたのではないか。
  女性をはなから人形とみてない現在、これをやるなら、大喜劇にしちゃったらどうなるだろう。
  難破船のあたりからもう大笑いとりまくりで、ラストの家出など
 、そらみろ、ざまあみろ、ぐらいの皮肉たっぷりの大喜劇、などと。

2)2017年1月25日(水)  新橋演舞場 ☆ 新春大歌舞伎

   「源平布引滝 義賢最期」 海老蔵 
海老蔵が大きく見えた。

   「口上」 右團次・右近 襲名 右近6才かわいい
   「錣引」 右團次・梅玉 
懸崖作りのセットの上下が見事。
   「黒塚」
 猿之助
   
猿之助の踊り、みせる。☆☆

1
)2017年1月20日(金)  国立劇場
   
通し狂言「しらぬい譚」  尾上菊五郎・尾上菊之助・尾上松緑
      九州、筑前黒田家のお家騒動を元にした絵入り長編小説を、
     発端・序幕・二幕目・三幕目・四幕目・大詰 の新作歌舞伎として復活させた。
     恨みを持った大友家の娘が妖術を得、襲いかかるところを忠臣が守り抜くというような話なのだけれど
     ぽんぽんと話が進み、呆気にとられる感じ。オープニングの海の中の龍?が野田の逆鱗を思い出させ
     筋交いの宙乗り、クモの糸、手水鉢割り、化け猫、光る槍、PPAPと、まあけれんの連続。
     

2016年

今年も34本を見た。☆をつけたのは
  
「パーマ屋スミレ」 ☆☆☆ ぼろ泣き

  「逆鱗」
 ☆☆☆ 回天につらなる流れに
 
 「女の一生」 しっかりしたお芝居
  「8月の東京家族たち」 いらだちに
  「星回帰線」 星空に 
  「ニッポン・サポート・センター」 気になる部屋のセットに 
  「埒もなく汚れなく」 さまざまな姿をみせるふさこに
 
  「エノケソ一代記」 猿之助に

34)2016年12月12日(月) 世田谷パブリックシアター ☆☆
   「エノケソ一代記」 三谷幸喜・作・演出 松井るみ・美術 服部基・照明 市川猿之助・吉田羊・浅野和之・山中崇・晴海四方
    
猿之助分するエノケンの偽物が地方を回っている。エノケンが大好きで、妻としたのも同じ名前の女、愛人も同じ女の名、
    エノケンの息子が亡くなれば大切な劇団員を首にする。その偏執狂的な真似が信じられるかどうかが勝負となる。
    各場面ごとに何役もこなす一人が笑いをとり、少ない人数を回して日本全国のどさ回りは井上ひさしとも少し似ているが、
    悪魔的に男を破滅に導いてしまう座付き作家が、なにも背負っていないところが大きく異なる。
    

33)2016年11月26日(土) すずなり  鳥獣戯画
   「踊れ唐獅子」 知念正文・作・演出・振り付け 雨宮賢明・音楽 石丸有里子・竹内久美子・三浦みつる
    狩野探幽が江戸城のふすま絵を頼まれた時を起点に狩野派の始まりからの歴史を次々に人物を入れ替わって描いていく。
    信長・秀吉・家康につかえ権力と常に共にあり、それを維持することが時に天才に頼ったり、システムを構築したり、
    実力のなさからのごまかしであったり、生き延びるための戦略であったり、駆け落ちであったり、自由であったりとてんこ盛り。
    江戸城ふすま絵を描き終わったがそれも指名されたものの力ではなかったとわかるあたりが落ちか。結局探幽描くしかないぞで
    終わり。漫画家が毎回その場で虎を描くのは売りだね。


32)2016年11月13日(日) 吉祥寺シアター
   「悲しき天使」 山之内幸夫・作 森岡利行・演出 片山萌美 河合龍之介 仁山貴恵
    
大阪の新地、ここではちょんの間でかせぐ女たちがいる。その女たちを仕切る?女士?。刑期を終えて出てきた女士と警官がなぜ女をさしたのかを話す。
    ふらっと迷い込んだ新地で天使にあったと。いろいろな女が居てそれを支える男。女に入れ込んで横領した金で貢ぐ男。女たちはここから逃れようとしながら
    ここでしか生きられないとも思っている。いくつかの事件が絡んで天使をさしてしまった過程が描かれる。大阪弁早口。どんどん踊りを差し込んで歌もある。
    ざわついた感じがこの演出の傾向か。


31)2016年11月9日(水) 世田谷パブリックシアター ☆
   「遠野物語 奇っ怪其の参」 前川知大・作・演出 堀尾幸男・美術 仲村トオル 山内圭哉 瀬戸康志 銀粉蝶
    
柳田という男が取り調べを受けている。標準語ではなく方言を書き記した本を出版したとして。その内容も伝承の聞き書きで
    科学的でなく人心を不安おとしめると。書かれている内容を学者が検証していく過程でその中身が取り調べの婦警や警官から始まっていく。
    遠野物語にも含まれる早池峰山などに囲まれた山国で起きるやつらや山人や神隠しや蛇殺しや長者一家の不審死が語り部によって次々と
    舞台上に現れる。パブリックシアターの高い天井赤い牛革のような大きなバックドロップ。おおーっと思うときもあるあかり。
    一階一番奥のセンターのせいか役者達の声が大きく聞こえた。


30)2016年10月26日(水) 歌舞伎座 芸術祭10月大歌舞伎 中村芝翫襲名披露
   「初帆上成駒宝船」 橋之助・福之助・歌之助 三人兄弟の船出、きれいに。
   「女暫」 
七之助   あいかわらずきれい。あそびもたのし。
   「浮時鷗」 菊之助・児太郎・松也   お染久松+女猿曳の舞踊
   「極付 幡随長兵衛」 河竹黙阿弥・作
 劇中劇「公平法問諍」の上演中にいさかいがありそれを納めた長兵衛を
                            倒そうと屋敷に招く。男気だとこれを受け一人屋敷に赴き、酒、木刀での立ち回り
                            風呂場と続く。きちんとみたのは初めてのような気がする。


29)2016年10月25日(火) 新橋演舞場
   「GOEMON 石川五右衛門」 水口一夫・作・演出 前田剛・美術 片岡愛之助 今井翼 中村壱太郎
     
まあよくくっけたもんだと。いきなりが宣教師が罪を犯し子供が生まれる話、秀吉によって引き裂かれ、子供は大泥棒になるって、
     まあ、なんでもいいけどね。イスパニアという言葉が入ったら突然フラメンコ、でもこれは歌もソロの踊りもちゃんと見られる。
     出雲の阿国まで出てきてこれを五右衛門が秀吉から奪い返して葛籠抜けなど、見たことがあるような場面を恥じらいもなくくっつけていく。
     愛之助にフラメンコ指導を願って阿国が新境地を開く。これが歌舞伎の下駄タップ的踊りとなって、フラメンコと歌舞伎の踊りが
     似ていると楽しくなる。はちゃめちゃに桜門からイスパニアに逃げることになっての大立ち回り、2階席のあちこちに登場して
     盛り上がり。サービス満点。

28)2016年10月19日(水) 東京芸樹劇場シアターウエスト ☆☆
   「星回帰線」 蓬莱隆太・作・演出 伊藤雅子・美術 向井理・平田満・奥貫薫
    
苫小牧のとは沼のことと平田満が語るオープニング。
    北海道のビール工房を開いた元中学教師のもとを産婦人科医でトラブルにあった男が流れ着いてくる。
    いとも簡単に女の子たちの心をつかみ、それが逃げてきた原因につながっていく。
    「イケメン」はなぜもてるかに端を発する話、男は語りもする、それもうまくはまっている。
    でも結局このイケメンずるい、平凡なやな奴だというながれがまだ不自然。
     題名からして星が現れるだろなとの予測が、期待裏切らずすごい効果となって現れる。
    ラスト近くのトラックの上、見事に浄化される


27)2016年10月7日(金) すずなり
   「愛の終着駅」 内藤裕敬・作・演出 小川菜摘 千葉雅子
    
まあとにかく小劇場で活躍中の女キャストたちが決まっていて、それには終着駅というキーワードが
    ふさわしいというだけの中身。


26)2016年9月27日(火) 船橋市民文化ホール 前進座 ☆
   「切られお富 処女翫浮名横櫛  河竹黙阿弥・原作 小池章太郎・補綴 中橋耕司・演出 
   河原崎国太郎・藤川矢之助
   
よくこれだけの大道具持ってきたなと感心。
   船橋市民文化ホールの暗天幕を三分の一ほど下し、定式幕で歌舞伎座風にみせる工夫。
   背景幕、12尺の書割、仕込みの松、商家・女郎屋・辻堂・川端・茶屋と定式幕、
   緞帳まで使ってあっという間にというわけではないけれど、つぎつぎと転換する。
   奥行きもみえる。國太郎が色っぽい。つづらのひっこみも楽しい。おおむね楽しめた。
   残念なのは下手の仮花道を使っての引っ込み。悲しい。
   本花道ってやはりすごいなと思う。途中から客席に飛び降りてくれないかななどと思った。

25)2016年9月24日(土) 紀伊國屋ホール 青年劇場 ☆
   「郡上の立百姓」 こばやしひろし・作 藤井ごう・演出 乗峰雅寛・美術
    
満席当日券もなし、のところ何とか採ってもらえた。狭い紀伊國屋の一番前。しかも通路を農民が走り回る。久しぶりに新劇の群衆パワー芝居。
    40名を超える農民が傾斜盆で暴れる。竹槍だけで家や山道をあらわす。大人数迫力芝居で最初人間関係をつかむのに苦労するがおおむねわかる。
    ラストは怒り抑えての無言の踊り。たまにこういうのもよし。

24)2016年9月20日(火) 新橋演舞場 ☆☆
   「ガラスの仮面」 美内すずえ・原作 G2・脚本・演出 松井るみ・美術
                    
貫地谷しほり
 マイコ 一路真輝 小西遼生
     
風をはらんだ大きな帆が上手側。3階建ての格子が下手側。これがくるくる回って他場面を処理する。
    ガラスの仮面の北島マヤは心の中で天才。でも舞台の上の役者は並。二人の王女の上品な方をやっても
    うまいとは思えない。姫川あゆみは布を使ってパンッと舞台舞い降りる。無論、そんな事はできない。
    月影千草は羽衣天女で夢の世界に連れて行ってくれる。連れて行ってくれない。
     今回は、二人の王女を何回も挟み込んで見せ場とし、速水と婚約相手がマヤを揺らすのを軸としている。
    冷凍庫事件、気温-22℃、旭川はいつも-35℃いってたぞ。中と外で会話するな。どこが役者の変化してるんだ。
    などと、だめ出しをしながら、オオカミ少女の名場面をここに持ってきたか、などと、楽しんだ。


23)2016年9月15日(木) シアター・コクーン M&Oplayプロデュース ☆
   「家族の基礎 ~大道寺家の人々~」 倉持裕・作・演出 土屋茂明・美術 三木たかし・作曲 澤田祐二・照明
                           松重豊・鈴木京香・六角精児
     
立体パズルのようなセットがくるくる回って様々な場面を作る。盆とこのしかけで、場面が前の場の空気のままジャンプする。
     これが笑いを呼ぶ。あまりに無理な飛躍と熱いテンションのおかげで一幕目はあまり弾まない。
     父親が息子にインタビューされている場から始まるのだが、これが後半もう一度繰り返されて面白い。
     なぜ大道寺家が劇場に関わったのかからはじまり、ぐんぐんと話がすっ飛ぶ。
     終わり近く、妻を失った男が、幸せについて妻に語りかける。ここから一気にしまる。ほろっとさせる。

22)2016年9月14日(水) 新国立劇場小ホール シスカンパニー
   「遊侠 沓掛時次郎」 北村想・作 寺十吾・演出 中根聡子・美術 笠原俊幸・照明
                  段田安則・戸田恵子・金内喜久夫
     
長谷川伸の作品をかけるどさ回りの劇団。家出してきた女子高生が話の引き出し役となって
    それなりの座長、その妻、役者、若手、などの模様が描かれていくのだが、沓掛時次郎などの作品を
    おりまぜ、最後、現実がそこにはめ込まれ、えーっ、それは今時、無理だろうと思うと、この現実自体が
    どさまわり芝居だったと、落ちをつける。松井るみのセットはさすがなのだけれど、うーん、うなっちゃうなあ。


21)2016年9月10日(土) 明治座 ☆☆
   「おたふく物語」 山本周五郎・原作 黒土三男・脚本 石井ふく子・演出 中嶋正留・美術
         藤山直美・錦織一清
     
場面が区切れる度に、盆が回る音がしてトンカチの音が聞こえる。長いな、工夫ないのかな。
    劇場備え付けの緞帳があがると帯留めや簪などが描かれた幕。だんだんとその意味が浮き上がる。
    山本周五郎の純愛もの。惚れた男が彫金した帯留めを買い集め、身丈に合った着物を縫い上げては
    眺めている。それが結ばれ、ごたごたはあっても夢は続く。そんなことあるの?とは思うけれど、
    要所要所に笑いをとり、芝居を引き締めていく力で許してしまう。



20)2016年9月5日(月) 自由劇場 浅利慶太プロデュース
   「李香蘭」 浅利慶太・構成・演出 土屋茂明・美術 三木たかし・作曲 澤田祐二・照明
     
歴史の教科書ののような展開、日本に勝利し漢奸の処刑。李香蘭の裁判から始まる。
    李香蘭の名前誕生、幼い頃の中国と日本の経済、軍人、政治家を、5.15、2.26、盧溝橋事件、
    真珠湾などをピンスポットでつなげながら時代を描いていく。その中で李香蘭は歌のうまさで、
    関東軍の宣伝に使われ、スターとなり、東京の日劇でも成功し、その一方義理の姉は抗日戦線に加わり
    最後の裁判で、李香蘭は中国人ではなく日本人であると証言する。漢奸なら死刑となるが、外国人には
    当てはまらないとして、李香蘭は命をつなげた、という話。
     歴史の復習、勉強にはなる。歌詞もほぼ聴き取れるし関東軍幹部達の厚みのある歌声風格も楽しい。
    ただ李香蘭自身の、心の悩み、揺れ、などはただ進行しているだけで愛せない。
     歌の部分はよいとして、地の芝居の四季節は激しい。語り役の川島が四季節であるのはいいけれど
    姉妹での会話までが口の動き・形を意識しすぎる四季節、量は多くないが、無理だろうと思う。


19)2016年8月28日(日) シアター代官山 劇団ひまわり
   「山姥」 土田峰人・原作 鈴村近雄・脚色・演出
     
高校演劇セレクションで見つけて養成所の夏の発表会に使いたいとなったという。
    オープニングの歌、子守歌等、新しく曲をつくり、集団演技で小さな子と青年と大人で劇を作っている。
    元の山姥の設定、主な台詞はそのままに、母がいかに思いを持って育てていくかを語り、歌う。
    そんなに言葉で言うもんじゃないし、母はめげずに、母以外の人生もりあるぞ、と言いたくなるが
    客席には幼い子とその母達、演者も小さい子がメインとなれば、わざわざ説明したくなるんだろうな。
    エンディングも台詞中心で戦っていくし、私はおまえを愛しているぞの子守歌を、使いたがっているし
    まあ、とにかく、よくこう書きかえられと、そこは感心。

18)2016年7月26日(火) すずなり 燐光群
   「ゴンドララドンゴ」 坂手洋二・作・演出
     
すずなりの客席最前列をつぶしてゴンドラを設定してある。
    最初のつかみに最初の3分で客をつかむ蜷川の言葉などを配して笑いをとろうとする。
    中身はゴンドラが揺れて人が入れ替わってしまう転校生、ただし中年の男同士。
    無意味な劇団の世界を救う赤いひも、いつもの飲み屋での取り違えの発見、家に帰ってきたときでの発見。
    わかりやすい設定なんだけれど、どちらが六か虎かわからなくなってしまう。やがて昭和から平成に、つまり天皇の死を
    あつかったり、サリンを扱ったり、とにかくビルの外壁修理やガラス清掃をやり抜いてきたぞ、俺たちは、の世界となる。

17)2016年7月16日(土) 新橋演舞場 松竹新喜劇 ☆☆
   「夜明けのスモッグ」 茂林寺文福・舘直志・作 渋谷天外・演出 藤山扇二郎
     
前半誰も笑わない。どれが藤山寛美の役なのかもわからない。そのうち、ああ、これ本人がやったら

    
さぞ面白いんだろうなという箇所が多数見えてくる。追善のご挨拶が劇中に入ったあたりからようやく
    笑いが客席に現れ、親子の名乗りでおしまいとなり、財布の中身に仰天でちょんぱあとなって、まあいいか。


   「はるかなり道頓堀」 舘直志・作 渋谷天外・演出 渋谷天外・水谷八重子
     
前半笑う必要が無い。芝居茶屋のお茶子が妊娠して悩んでる。それも上り調子の人気役者との子。
    役者には船場の大金持ちとの縁談が持ち上がっている。お茶子の姉が自分の亭主の子としてしまう所から、
    話が一気に動く。あまりの意外さに動転する笑いがはじけ、笑えない現実が進行する。
    時を経て、笑えない現実を笑いに替えてしまうパワーがこころを和ませる。


16)2016年7月12日(火) 船橋市民文化ホール 劇団民芸 ☆☆
   「集金旅行」 原作・井伏鱒二 吉永二郎・脚本 高橋清祐・演出 堀尾幸男・美術 中川隆一・照明 樫山文枝・西川明
     
なにげにおかしい。アパートの大家が亡くなり残された部屋の借り主が、小説家に踏み倒されている家賃をとりに西日本を回らせる。
    慰謝料をとる旅にと7号室の女性も加わっての二人旅。借りた上着の持ち主にでくわしたり、酔っ払って隣室のふとんに潜り込んだり
    お金がぐるぐる回ったり、くすくすとのんびり笑える。樫山文枝が元新橋の芸者、おーこんな役似合うんだとにこにこ。


15)2016年7月10日(日) サンシャイン劇場 ☆
   「グレートギャツビー」 原作・Fスコット・フィッツジェラルド 羽原大介・脚本 錦織一清・演出 内博貴
     
最初のニックの歌でびっくり。さらにギャツビーが憂い顔で登場してからいきなり歌い出して、ちょっといかり。
    デージーの軽さにあきらめが入り、それからはもうどうでもよくなった。あとは振り付けを、なるほどこうやるのかと
    思ったり、この軽さで、あの悲劇にどうやって持って行くのかとハラハラしどうし。なんとか筋を運んだことに、安心。
    ロバートレッドフォード版の、人々の共通するあの物憂げな不安は、全くなくなって、単純化の局地であった。


14)2016年6月27日(月) 吉祥寺シアター 青年団 ☆☆
   「ニッポン・サポート・センター」 平田オリザ・作・演出 杉山至・美術 志賀廣太郎・堀夏子
     
NPOの事務所。元はカラオケとのことで遮音がきいた三つの相談室が舞台奥に並んでいる。
     三つとも窓があるがブラインドの開け閉めとライトの点灯消灯で中が見えたり、ドアの開け閉めで
     中の会話が聞こえてくる。舞台の前面は民間のサポートおじさんやおばさんがたむろしたり、
     職員がお茶を飲んだり、外来の人のとりあえずの話を聞くテーブルがあったりする。話はおよそ4つ。
     相談員の旦那が事件を起こしたのでそれをどうするか。わけのわからない相談?希望者。
     どてっとしたこれから資格をとろうとする中年なりかけ男が、相談員に惚れていると周りが大騒ぎしていること。
     逃げ込んできた女性と、それを追ってきた夫を、あわせるかあわせないか。
     
いったい三つの部屋の中で何が進行しているのかと客が耳をそばだてるのが面白い。
     
13)2016年6月25日(土) 歌舞伎座 義経千本桜第一部
   「碇知盛(渡海屋・大物浦)・時鳥花明里」  染五郎(知盛)・松也(義経)・猿弥(弁慶)・典侍の局(猿之助)・武田タケル(安徳帝)
     
初お目見えの右近長男タケルがお見事。目を引く。赤の袴、台に立って抱えられ、2時間の舞台を務める。
    一月の興業の中学校休んでたのかなと思ったけれどまだ幼稚園?染五郎も初役。碇を海に投げ後ろ向きに飛び込む。
    所作事は、吉野の桜、がんどうかえしや、引きで次々と奥行きが深まり華やかになる。歌舞伎座舞台広いなぁ。


12)2016年6月14日(火) 熱海五郎一座
   「熱湯老舗旅館 ヒミツの仲居と曲者たち」 吉高寿男・作 三宅裕司・演出 金井勇一郎・美術 松下由樹・渡辺正行・春風亭昇太
     
まあ、笑ってくれと言うのだけれど、笑えたのはアンコールの2回目のトークショー。
    喜劇になりきれないのは、筋立てがしっかりしてないからではないのか。例えば、ホテルと旅館の対決のショーが
    どちらがどちらではなくなって、とにかくゲストに歌わせたい、だけ。ストーリーまで壊して平気なところとか。

11)2016年6月14日(火) 三越劇場 新派
   「深川の鈴」 川口松太郎・作 尾上墨雪・演出 
波野久里子
     
38年ぶりの上演とのこと。まさか久里子さんがやっていた訳でもないだろうけれど、さすがに赤ちゃんに乳を与える
    若い女将の役はきついかな。なぜ幸せを断ったのかわからなくなる。
   「国定忠治 赤城天神山より小松原まで」 行友李風・作 田中林輔・演出 市川月之助
     赤城の山のいつもの場面から庚申塚、小松原の山形屋まで。まふ、それなりに楽しそうに。

10)2016年6月1日(水) シアター711 オフィスコットーネ ☆☆
   「埒もなく汚れなく」 瀬戸山美咲・作・演出 占部房子・西尾友樹
     
山に一人で登りランプをつけコッフェルで料理する。死者である夫があらわれ料理についての会話。
    実はこれが遺作となった戯曲と重なって、最後に澄んだ会話が流れてくる。そこにあたたかさがある。
    今村昌平の映画学校に通って大阪で劇団を立ち上げ、でもコンクリートの仕事は辞めなかった。
    実在の人物で、妻も娘も会社の社長もみな生きていて、この劇を見ている。それなのに生で苦しんでいく。
    痛いよ、この男、そして妻。それを自在に妻役が引っ張り続けている。


9)2016年5月24日(火) 船橋市民文化ホール 青年劇場
   「臨界幻想2016」 ふじたあさや・作・演出 

     
1981年の初演である。チェルノブイリの前である。原発の従業員が死んだ。母は初め我慢していたが
    徐々に事故の詳細について突き止めていく。安全と入り込んだ原発を手作業でメインテナンスする恐ろしさ。
    客席も福島に重ね合わせ行きも出来ない。当時は警告であったことが、今は起きてしまったことの謎解きになる。
    警告だからこそ自由に表現できたことが、今は、そうだろうなと、今回もそうなのかの疑いの中で舞台を見守る。

8)2016年5月17日(火) 新国立劇場 ☆☆☆
   「パーマ屋スミレ」 鄭義信・作・演出 伊藤雅子・美術 小笠原純・照明  南果歩・根岸季衣・千葉哲也

     
1965年というと自分の高校一年の時だ。そして大学に入った頃とこの芝居と時代を共有する。所は九州の炭鉱の理髪店。
    パーマ屋スミレという題名は、主人公のすみがいつかここを出てパーマ屋を開き、自分の名前をさけたいという夢から来る。
    もう、そこで泣いてしまう。最初は祭りの日。ここにいた頃、ここを飛び出してファッションデザイナーになりたいと騒いでいた少年の
    現在が語り手となる。なんとも吉本新喜劇ばりのあまあまの新婚さんから大笑い。そしてこの新婚さんから粉塵爆発の一酸化炭素中毒が
    忍び込んでくる。喧嘩しっぱなしの髪結いとその亭主。第一組合と第二組合。朝鮮半島から連れてこられた父。一人の女を好きになる兄弟。
    その殴り合い。その殴り合いで泣けるなんて。炭鉱は閉鎖され、弟は北に帰り、ばらばらになっていく。でも力強い。
    床屋の椅子に座ったつよか無茶男と、ひげを剃るつよかおなご。初演を見た焼き肉ドラゴンは韓国の俳優さんにめちゃくちゃ泣かされたけれど
    ここでまた、違った強さと結びつきに泣いた。


7)2016年5月13日(金) シアターコクーン ☆☆
   「8月の東京家族たち」 トレイシー・レッツ・作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ・台本・演出 松井るみ・美術 
                             麻美れい・秋山菜津子・常盤貴子・犬山イヌコ・木場勝己・生瀬勝久
     
映画で母はメリル・ストリープ、娘はジュリア・ロバーツ。この舞台では麻美れいと秋山菜津子。麻美れいが強烈。
    不平不満、口にガンをもち薬漬けになって、口うるさい攻撃的母。最近こんな形で見ることが多くなったかな。自由自在。
    秋山菜津子はいつもどおりに。生瀬がなんかまじめな男に見える。骨がむき出しになった松井るみ的セット。
    スライディングステージや盆が回るなど工夫もいっぱい。ケラらしい笑いがいっぱい仕組まれていた。


6)2016年3月9日(水) 東京文化会館 ハンブルグバレエ団 ☆☆
   「ガラ公演 ジョン・ノイマイヤーの世界」 ジョン・ノイマイヤー・演出 
     
芝居というわけでもないけれど、客席で興奮する点でここに記録の二つ目。
     演出のバレエに目覚め入り込み成長してきたあかしを本人が語り、演出という役のダンサーが見守って行く。
     二部のニジンスキー、椿姫など、すごかった。


5)2016年2月29日(月) お台場ビックサイト シルク・ドゥ・ソレイユ ☆☆☆
   「トーテム」 ロベール・ルパージュ・演出 

     
芝居というわけでもないけれど、客席で興奮する点でここに記録。
    オープニングの亀の甲羅の中のトランポリン、男女二人のセクシーな空中ブランコ、首一つで女性を振り回すローラースケート、
    空中高く飛び上がるロシアンバー、おーっ、と釘付け。どちらかと言えば後半の方が盛り上がったかな。

)2016年2月25・28日(水・土)  DVD ☆ 
   「ヴェニスの商人」 シェイクスピア・作 蜷川幸雄・演出 中越司・美術 猿之助・高橋克実・中村倫也・横田栄司

     これはまた強烈なシャイロック。歌舞伎の悪をくっきりと際立たせ見せつける。かといって、無策にただ退治されるべき
   悪ではない。変装したポーシャに手が触れてふっと黙ったり、見つめたり、顔の形の変化だけで、飽きさせない。
   まして、最後に手だけ登場し、十字架をはぎ取り手から血がにじみ出す、こんなところにまけるか、存在するぞと、意地がある。
   結局誰が悪かわからなくなるこのベニス、指輪のくだりあたりからかっちり笑いがとれて、後味の悪さを払拭してしまう。

6)2016年2月17日(水) 紀伊國屋サザンシアター 民芸 ☆
   「光の国から僕らのために」 畑澤聖悟・作 丹野郁弓・演出 島次郎・美術 齋藤尊史
     
金城哲夫は、円谷プロの企画室長になった時、呼んだときには来ないで、戦って負けそうになった時に
    あらわれる、ヒーローを生み出した。東京オリンピックの体操で話題になった、ウルトラC。そのウルトラをもらって
    ウルトラマン。たった一人の企画室に集まった仲間に、アイデアをしゃべり続けあっという間に歌までできあがってくる、
    のが始めの場面。沖縄に生まれ、六歳の時、戦闘機に襲われ母を見捨てて逃げたトラウマを持つ金城は
    直接には沖縄を書かなかった。沖縄に帰り、ラジオや作家として活動、海洋博の推進で挫折していく。
    酒におぼれ、37才で泥酔の上、家の二階から落下し死亡。
     この実話を、シンプルな舞台と若手?で、民芸ぽくなく、とんとんと進めていく。カチャーシーの娘達、沖縄のにおいが
    少ない気が。終演後、犢橋高校演劇部卒の主役と制作を交えてのトーク大会がとても楽しかった。

)2016年2月15日(月)  DVD ☆ 
   「ジュリアス・シーザー」 シェイクスピア・作 蜷川幸雄・演出 中越司・美術 阿部寛・藤原竜也・吉田鋼太郎
     
アントニーの演説以外を初めて知った。高校の国語の授業中、教科書に載っていたので一人で朗読させられた。
    なるほど藤原竜也の演説はエキセントリック。全体はシーザーでもアントニーでもなくブルータスの苦しみと
    殺害実行と、追われ討たれる話であると理解。

)2016年2月12~13日(金・土)  DVD ☆ 
   「ヴェニスの商人」 シェイクスピア・作 グレゴリー・ドーラン・演出 マイケル・ヴェイル・美術 市村正親・藤原竜也・寺島しのぶ・西岡徳馬
     
品性正しいシャイロック。自由闊達なポーシャ。箱選びに変装して三度登場するバッサーニオ。

    
工夫が楽しい。前半早口に感じるのはシェイクスピアの台詞量からして仕方が無いのかな。ユダヤvsキリスト教徒の意味がはっきりする
    この上演、笑えるのが救いとなっているが、複雑、故に面白いのか。


5)2016年2月10日(水) 東京芸術劇場プレイハウス 野田マップ ☆☆☆
   「逆鱗」 野田秀樹・作・演出 堀尾幸男・美術 服部基・照明 ひびのこずえ・衣装 松たか子・瑛太・阿部定夫・井上真央
     
水族館のホログラムのパネル、魚たちの衣装、おーっ。やがて切られた巨大な魚、おーっ。いつの間にか、海底へ。
    さとりに通ずる人の心を読める力が笑いから、本音の発露に使われる仕組みが秀逸。文字の入れ替えはいかにも野田。
    回転する姿がさすが。あのセット、最貧前線に通じる。全国で見せたかったな。


4)2016年2月3日(水) 船橋市民文化ホール 文学座 ☆☆☆
   「女の一生」 森本薫・作 戌井市郎・演出による 鵜山仁・演出 中嶋正留・美術 山本郁子・赤司まり子

     
文学座のきちっとしたしゃべり久しぶりに聞いた。

    焼け跡から紗幕の上手奥にやけた松と石灯籠がぼんやりと見え、一つの歌から一気にお屋敷の一間が登場する。
    船文の奥行きの中でのマジック。日清、日露の時代から、小気味よく場面が入れ替わり、
    必要な人間の変化の有り様だけが適切な長さで示される。なるほど、これは名作。
    NHKの朝の連ドラとも時代が被さる。それもまた楽し。


)2016年2月1日(月)  HDD ☆☆ 
   「から騒ぎ」 シェイクスピア・作 蜷川幸雄・演出  吉田鋼太郎・小出恵介・高橋一生・瑳川哲朗
     
高速のテンポでぐいぐいと進む喜劇。男だけの上演も逆手にとり楽しい。凱旋、おしゃべりの男と女、
    すぐ恋に落ちる男と女、結婚させようという企みと、陥れようとする企みが、拮抗する。
    どう落とし前をつけるのとはらはら。


3)2016年1月25日(月) 浅草公会堂 新春浅草歌舞伎
   「毛抜」 坂東己之助
 
   
「義経千本桜 川連法眼館の場」 
松也 
がたいが大きい狐かな

2)2016年1月21日(木) 三越劇場 ☆☆ 新派
   「糸桜」 
齋藤雅文・脚本・演出  波乃久里子・市川月乃助・大和悠河
     
河竹黙阿弥の娘を波乃が。養子に迎えた河竹繁俊に黙阿弥の台詞を語らせ、
    特訓する蚊帳の場が無類に楽しい。養子に迎えた日、雷の夜、前半は呆気にとられるほど
    おも白い。三越劇場には回り舞台などないから関東大震災あたりからその後まで、舞台転換を
    待たねばならず、間延びしてしまうのが惜しい。


1)2016年1月13日(水) 19日(火) 新橋演舞場 ☆ 初春花形歌舞伎

   「車引」 右近・春猿・獅童 
勉強になるかな
   「弁天娘女男白浪」 海老蔵・獅童
 
しらざあ言ってで客はきっちりと笑う。屋根の上の立ち回り楽しそう。
   「七つ面」
 海老蔵
   
なるほど復活の価値あるかな。
    




2015年
 
 今年は34本を見た。☆☆をつけたのは
  「おもろい女」
 笑いから残酷へ藤山直美、見せてくれました。☆☆☆
 「十二人の怒れる男たち」 
名作を名作と感じさせてくれたアンサンブルに。☆☆
 
 「ベルリンの東」
 劇・小劇場の小さな空間に緊張があふれて。☆☆
 「妹背山婦女庭訓 四段目 杉酒屋・道行恋苧環・三笠山御殿」 わかりやすい歌舞伎、十七歳を演じる玉三郎に。☆☆
 


34)2015年12月21日(月) 文学座アトリエ 文学座

   「白鯨」 ハーマン・メルヴィル・原作 セバスチャン・アーメスト・劇化 高橋正徳・演出  小林勝也
      
久しぶりの信濃町文学座アトリエ。やはりこの劇場はいい。しかも今回は床が丸く切られていて
     銛が刺さっていて、椅子がばらまかれている。これはいいな。劇が始まるとさすが良く聞きわけられる。
     言葉と体の動きだけで白鯨の世界、港町、安宿、甲板、舟の持ち主達が浮かび上がり、人食い人種が
     現れる。片足の船長は、アトリエのすのこの上に現れる。そして、舟が揺れると、期待通り盆が回る。
     第一幕は好調。けれど二幕になるとそれ以上の興奮はない。海の上でのモービーディックとの戦い、
     クィークェグの死、エイハブ船長の死となるともう第一幕のテクニックを遙かに超えるしかけが必要だった
     と思う。


33)2015年12月16日(水) すずなり  オフィス300

   「ガーデン ~空の海、風の国~」 渡辺えり・作・演出  伊藤雅子・美術 渡辺えり・中島朋子・山崎清介・大沢健
      ごった煮。外枠は小麦粉を練って操り人形をあやつる糸を作る男ども。その人形達が自由自在に夢の中を行き来する。
     原始人、水を撒く女子中学生、その葬式、あらわれる不審な男ども、やがて井戸を通じて、古風な地底のような別世界へ。
     どちらが夢かわからない。めちゃくちゃな早替え、フォースの覚醒、何もかも取り込んで、ああ、昔の300ってこうだったよな的、
     ファンタジーというかごった煮的二時間。

32)2015年12月9日(水) 船橋市民文化ホール
   「フロッグとトード」 アーノルド・ローベル・原作 ウィリー・リアル・脚色 鈴木裕美・演出  中村公一・美術 ロバート・リアル・音楽 川平慈英 鈴木壮麻 
     がま君とかえる君の絵本をミュージカルに。あの単純な話をどうやってと少し不安。奥が浅いホールのせいか緑の仮説中割の前が狭い。
     だからオープニングの四人の鳥たちがかわいそうに感じる。一幕はこれは子供劇場なら喜ばれるなと少し飽きるけれど、二幕に入って、怖ーい話し、
     雪の中の橇の冒険、寂しいクリスマスと、楽しくなってくる。旅公演用のシンプルなセット、ああ仕方ないなと思っていたけれど後半、雪景色のシーンなど色合いがいい。
     ホリゾントに描かれた抽象模様、シンプルだけれど見飽きない。曲と歌が良い。川平も頑張ってるなあ。

)2015年12月7日(月) HDD
   三谷文楽 「其礼成心中」 三谷幸喜・作・演出  堀尾幸男・美術 服部基・照明
     wowowの放送での三谷の事前説明が面白い。文楽の舞台裏、人形の頭、動かし方、走り方、語りの位置、
     文楽のメンバーとどう交渉してきたかなど。充分に期待高まる。近松を利用し近松に近づきかわし、
     川の中の泳ぎなど文楽にしか出来ないチャレンジなど楽しい。話はなんか他愛なくなって、まあ、それなりかな。



31)2015年12月6日(日) 東京芸術劇場プレイハウス パルコプロデュース ☆☆
   「レミング ~世界の涯まで連れてって~」 寺山修司・作 松本雄吉・演出  林田裕至・美術 内橋和久・音楽 溝端淳平 柄本時生 霧矢大夢 麿赤児 
     寺山修司と松本雄吉だから、これはもう理解しないでいい。客席通路をさりげなく通ってギターを持つ。
    変拍子の世界が広がる。言葉を分解しリズムに。大きな時計。満州の匂い。映画の虚構。どちらが狂っているのか、
    何が現実なのかわからなくなる。でも、あきない。思わずホワイエで売っていた戯曲を買ってちらっと読む。
    やっぱり中華料理見習いは二人で一役。演出ってここまで解体していくんだ。維新派、野外劇見たいなあ。


30)2015年12月2日(水)  歌舞伎座 ☆☆
  「妹背山婦女庭訓 四段目 杉酒屋・道行恋苧環・三笠山御殿」 近松半二・作・演出 玉三郎・七之助・児太郎・松也・團子
    わかりやすい。團子がことにわかりやすく、楽しそう。七夕の井戸換えの日に、みんなは大騒ぎ。
   隣の烏帽子折の色男に文句を言うもみんな寛大。色男の所に女が忍んでくる。酒屋の娘とすでにいい仲になっているのに。
   三人はち合わせと成り、苧環の糸をたどって道行へ。五段ある中の一つだから、その前後のあらすじはイヤホンガイドに
   頼るしかないのが悔しいけれど、玉三郎の一瞬十七に見える所作、中車の遊び、袴つけたままのトンボ、よし。


)2015年11月26日(木) HDD ☆ 中国湖北省京劇院 2010年東京芸術劇場

   「赤壁の戦い」 
      なにげに面白い。歌と台詞と立ち回りと曲技。人情味あふれるドジな忠臣。表情豊かな周瑜都督。第一幕が楽しかった。

29)2015年11月18日(水) 新国立劇場
   「桜の園」 チェーホフ・作 鵜山仁・演出  島次郎・美術 沢田祐二・照明 緒方規矩子・衣装 田中裕子・柄本佑・石田圭佑
      グレイトーンのセット。濃い暗い赤のカーテン。シンプルな変形された椅子たち。透けて見える本棚。ホリゾントに影が出ている木立。
     誰もが知っている桜の園をどう現出させるか。カーテンから出てくるのははすっぱなメイド、そしてつぶやき続けるもと百姓の男。
     新国立小劇場らといえども一番後ろの席だったのでこれが聞き取れない。とにかくパリから女主人が帰ってくる。
      一行が到着し娘がパリでの女主人の様子を話し始めると全体がわかってくる。ラネーフスカヤはさすがけだるい、衣装もきれい。
     舞踏会わからない。庭の鍵をもっているワーニャ、わかる。でもそれに結婚を申し込めない商人の気持ちわからない。

28)2015年11月4日(水)  新橋演舞場 ☆
   「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」 尾田栄一郎・原作 横内謙介・作・演出 市川猿之助・演出 堀尾幸男・美術 猿之助・右近
      
たしかに漫画と歌舞伎はよく似合う。腕が伸びるの難題もさらっとかわした。鯨が出て、斜めの宙乗り、大滝の中の殺陣気持ちいいだろうなあ、
      ルフィーとハンコックの再三にわたる早変わり、サーカスのような演舞場。それはそれでよいのかな。
      結局は戦って相手を打ち倒していくだけの話、人生訓、時々来るけれど、それ以上では無い。


)2015年10月28日(水)  HDD ☆☆
   「テンペスト」 シェイクスピア・作 白井晃・演出 小竹信節・美術 古屋一行・高野志穂
      プロスペローの娘のミランダ、その存在が信じられる。3才の時に島に流れ着き、12年間を
     人間と言えば父だけと暮らした、だから天使のように、初めて会った紳士と恋に落ちる。
     そんなシェイクスピアだからこそ許されそうな設定が、くりくりした目で信じられた。

)2015年9月13日(日)  HDD ☆
   「今ひとたびの修羅」 尾崎士郎・原作 宮本研・脚本 ひのうえひでのり・演出 二村周作・美術 堤真一・宮沢りえ・風間杜夫・小池栄子
      いきなりの殺陣。大正から昭和へとかわる時代、組同士の抗争に、客人が顔を出す。
     相手方の親分が死に前橋の刑務所に三年。男の女はやがて会いに来なくなる。なぜだろう。
     3年を女は待てないという。ムショから出てきた男は徐々にわかってくる、何が起きていたのか。
      宮沢りえ、烈しいな。くるくる回る舞台。研さん、こんな本書いていたんだ、と感心。

27)2015年8月18日(火)  歌舞伎座
   「ひらかな盛衰記 逆櫓」 橋之助の船頭 児太郎の女房 扇雀の腰元 彌十郎の親父 勘九郎の茂忠
      
木曽義仲の遺児と船頭に化けた忠臣の樋口。漁師の親父と娘の子を思う気持ちと、
      と、まあ、わかるのだけれど、イヤフォンガイドをまだ使っている身としては、わかるけどというだけ。
      漁師姿の捕り手との大立ち回り、船の決めが楽しい。
   「銘作左小刀 京人形」 七之助の京人形 勘九郎の左甚五郎 ☆
     木でほった人形が動く。箱のふたが開けられたとき、やはり美しい。静止したままいつまでいるのかな、と思うと、
     甚五郎がよそ見をしたときにとととと動き出す。うわっとびっくり。芸だよね。素直に笑える。
     最後はサービスで姫を匿っていたので大工達との大立ち回り。サービス満点。

26)2015年8月17日(月)  東京芸術劇場プレイハウス
   「100万回生きたねこ」 佐野洋子・原作 インパル・ピント アブシャロム・ポラック 演出振り付け美術
                  脚本・糸井幸之介・成井昭人・中屋敷法仁  深田恭子・成河
      
あの絵本を芝居にすることはやはり難しいのだろうか。
      二年前の読売演劇大賞を取ったときは見損なったのでかなり期待していったのだけれど、えーっと思った。
      トリックハウスのような遠近法の部屋。そこの中に小屋やベッドや丸いカーペット。
      いきなり少女のくくりヒモからはじまる。そうかこの少女がねこに変わるのか、さぞ斬新な展開が
      と思ったがいきなりへんな王様、へんな泥棒、へんな海、へんなおばあさん、へんなマジシャンと
      魅力ない登場人物がすじをなぞっていく。一幕目はそれでおしまい。客席もしんとしたまま。
      二幕目、寄ってくる雌ねこたちがお釜集団なのでやっと笑いが、アクションのおもしろさもあってやっと
      「そう」に笑いが続く。と思ったら終わってしまった。むずかしいんだよなあ。ジュリーと山瀬まみがやったときもがっかりしたし
      納得させるの誰かやってくれない?

25)2015年8月6日(木)  新橋演舞場 ☆
   「もとの黙阿弥」 井上ひさし・作 栗山民也・演出 松井るみ・美術 片岡愛之助・貫地谷しほり・波野久里子・真飛聖・早乙女太一 
      
芝居小屋の外側と、中の舞台がぐるぐると回る。台詞にも使われた回る世界。そんな所も笑いの一つか。
     井上ひさしらしく官憲が出てきてこけの抜群の笑い。でも、それが世の中の怖さとまでは結びついてこない。
     唯一、ラストの元に戻らなくなった女中の姿が、とんでもない格差を浮かび上がらせる。

24)2015年8月5日(水)  船橋市民文化ホール NLT
   「殺人同盟」 ロベール・トマ・作 竹邑類・演出 齋藤浩樹・美術
      
古い。1977年初演のままの演出なのだろうか。それぞれ女房や姉に頭が上がらない男三人が、取り替え殺人を思いつく。
     うまくいかないドタバタが弾まない。公演の幕開きから笑わせる役者の力量が無かったと言うことなのだろうか。

23)2015年7月22日(水)  紀伊國屋 スタジオライフ
   「アドルフに告ぐ」 手塚治虫・原作 倉田淳・脚本演出 
      
2時間でぐんぐんすすめていく。△を基準とした舞台がそれを良く助ける。
      でも原作の全てを飛ばし飛ばしにみせられてもなあと、残念。
      手塚治虫の魅力の一つは色っぽさだけれど、それがスタジオライフの女役には、全くといっていいほどない。
      おばさん役でもみんなそれなりにきれいなのを全五巻きっちり読み直して確認した。
      イスラエルシーン、原作でもぎりぎりだったのが、劇場ではとってつけたようになってしまってる。
      なくすという手も有ったのでは無いか。

22)2015年7月10日(金)  新橋演舞場 ☆
   「阿弖流為」 中島かずき・作 いのうえひでのり・演出 堀尾幸男・美術 市川染五郎・中村勘九郎・中村七之助・市村萬次郎 
      
やはり両花道には興奮する。生演奏のぐるぐる回る活劇も、しっかりした脇役が固めているのも面白い。
      14年前の演舞場は見てない。今この国会の時に、この劇の一幕目がどうかぶるか、戦争を仕掛けるために、
      相手国がどんなにひどい奴かをありとあらゆる手で作り上げていく中央。
      そんなに言葉が通じない相手ではないとわかりかけると次から次へと、手を打ってくる。無理矢理戦を仕掛けていく姿は
      今国会と全く同じではないのか。二幕目に入ると蝦夷がわの神も戦好きとか、かっこをつけるために相手に身をゆだねるとか
      わけのわからない展開でつないでいく。結局ごちゃごちゃになって、法案も通ってしまうのだろうか。
       巫女の市村萬次郎の力が強く、勘九郎の一人じゃ持つまいといった場が急速に立ち直っていくのが見事。

)2015年7月7日(火)  HDD ☆
   「白石加代子 百物語 FINAL 天守物語」 泉鏡花・作 鴨下信一 白石加代子
     
なかなかイメージが膨らまない天守物語に対して一人で全て語ってしまうというのは成功かも知れない。
    無論白石加代子だからこそ出来たのだろうけれども。図書之助が雄々しいし富姫の恋心がわかりやすい。
    亀姫のあほさ、老女や男妖怪達の楽しさもよくわかる。さすがだなあ。

21)2015年6月24日(水)  船橋市民文化ホール 朋友 ☆
   「真砂女」 瀬戸口都・作 西川信廣・演出 朝倉摂・美術 富沢亜子
     
船文の二階席の下は声が聞き取りづらいのか。語りの俳句の最後の五文字が聞き取れない。
    役者陣は元気のいいおじさんおばさんがいっぱい。めちゃくちゃな人生のテンポ良く進めていく。
    中央に旧家を象徴する木(槙?)があり、横桟で病院や現代の住宅を表す表のセットと、吉田屋旅館の
    庭が見える広い部屋が盆を回すことで交互にあらわれる。最初に盆が回ったとき、え?船文に盆が?と
    思ったけれど必死に回している黒衣が見えた。でも「透け」る事を中心としたなるほどというセットだった。
     一幕で駆け落ちするのがどうにも納得できなかった。そう、見えない。
    パンフレットを見ると30才の若い女と年下の海軍士官とある。ならばあり得るだろう。役者の年齢が高い
    ことを計算しての、あえて理解を求めなかった形かしら。よく働きしゃべる17才の女が(これもそうは見えなかった)
   場面ごとに年を重ねていくのが見事で笑いを誘っていた。

20)2015年6月17日(水)  新橋演舞場
   「プリティウーマンの勝手にボディガード」 吉高寿男・作 三宅裕司・演出 大地真央・渡辺正行 
      
テレビで稽古風景などがよく流されていたけれどそのまんまの雰囲気。それ以上でもそれ以下でもない。
     昇太の落語が安心してきける。アンコールでのコメント、笑点ではとなりは木久扇さん、でも今日は大地さん、
     などいい。


19)2015年6月13日(土)  スペース・ゼロ  ラフカット2015
   「カウボーイ道に迷う」 堤泰之・脚本演出     「終電座」 谷山浩子・原案 工藤千夏・脚本演出

   「踊り場のハイソックス」 塩田泰三・脚本演出    「愚かなる人」 太田善也・脚本演出
     力をもてあましている役者達を集め発表の場、30分の芝居を作る。声を聞き分けづらい事が何回か。
     「カウボーイ……」ステーキ屋の従業員達が、働き者引っ張り屋の女史を巡ってブログと掲示板を中心にてんやわんや。
    ああ、そういち落ちね。といったところ。
     「終電座」森山浩子の歌と歌詞が先にあってどう料理するかが優先されているお芝居。
    終電を待つ人々があふれるプラットホーム。三人の先輩後輩の会社員。酔っ払い。ひとりぼっちの少年。
    家を飛び出してきた妻。面接試験帰りの女学生。など、それぞれの会話がクローズアップされ、
    電車が到着したところで、夜汽車の音とともにリフレイン。オープニングに戻って、全く同じ光景が繰り返されるが、
    今度は違う人間の声だけが聞こえ、電車到着してリフレイン。全登場人物の事件があらわになったところで、
    車内光景になる。リフレインの仕掛けがしゃれていてじゃあこいつはなあに?と興味を引っ張る。
     女学生が飲み屋の女を口説いている最中の試験官に話しかけるのが面白い。
    ああ、終電の中ってこんな汚さだよね。それは良い。それが列車が大きく揺れ、空に飛び出していく。
    歌が歌われ、まるで銀河鉄道だと、見事にダンスになり、銀のふらしが舞い続ける。
    なんでそんなにきれいになるの?少年が前半ぽつぽつと銀河鉄道の一部をつぶやいて導線はあるけれど
    あの、汚らしいみんなが浄化されてきれいになっていくのが許せない感じがした。
     四本の芝居の合間に舞台転換が有り客電が落ち、ぼんやりと青い灯体がプロセニアムサスあたりで8灯ぐらい
    ついている。それが銀河なんじゃないかなと思った。スペースゼロの客席の上のそこかしこに星のように灯体が
    ならんで、客自体が銀河鉄道の客になる。けしてきれいにならず汚いまま、客が星になる。そんなんであればいい。
     「踊り場……」漫才コンビが魅力のショートショート。はいはい。
     「愚か…」論外。

18)2015年6月10日(水)  歌舞伎座 6月大歌舞伎
   「新薄雪物語」 広間・合腹・正宗内  仁左衛門・幸四郎・魁春    
      
通し狂言だが昼の部に花見と詮議の場をやって夜の部で全ての通しとなる企画。
     んー、要は昼夜とも来てという商売ですかね。
      昼の部のあらすじはイヤホンガイドなどで大体解ったけれど、やはり通してみたかった。
     疑いのもたれた若い二人をそれぞれ相手の家であずかる。薄雪姫を預かった園部兵衛(仁左衛門)の話。
     娘を逃がし、さてという所に、息子が白状したので首をはねたとの使者。母親は気持ちあらわにその刀で
     後を追おうとするが、兵衛がその刀から、ある事を知る。
      合腹の場では、娘の父伊賀守(幸四郎がやってくる)。ふらふらと階段をやっとの事で上がる。
    ぞうりすらきちんと脱げない。出てきた兵衛も見事。三人で笑って出発というのが見せ場か。
     正宗の場では悪役団九郎(吉右衛門)とその父(歌六)のやりとりが見せ場となるが、
    昼の部を見ていないとそのおもしろさは十分には来ない。
   「夕顔棚」 川尻清譚・作  菊五郎・左團次
      
菊五郎の婆のゆあがりの姿に客席盛り上がる。イヤホンガイドが邪魔したかんじ。


17)2015年5月29日(金)  しあたー1010 ☆☆☆
   「おもろい女」 小野田勇・作 田村孝裕・潤色演出  藤山直美・渡邊いっけい 
      
シアター1010舞台の初日。マイクを拾う時に小さなミスがあったけれど、おもろい女が登場して
     一気に吹き飛んでいく。ぽんぽんと時代が進み、実写映像が重なって心を打っていく。
     一幕の終わり、検閲がうるさくなって台本どおりにしゃべらないと大変なこととなる頃、
     部隊長の死を臨時ニュースを聞いたときのおもろい女のアナウンス。泣いた。
      こくこくと年をとっていく度にふと森光子の横顔があらわれる。笑いとドスとそして終盤の変化。
     上手袖からふわふわぎくしゃく登場したときから、日本一の漫才に向かう注射。すごかった。
     藤山寛美がやっていたら、首つりなどさぞもっと笑ったろうなと思うけれど、後半離婚したあたりから
     渡邊いっけいもしっかりしていて良かった。


16)2015年5月26日(火)  新橋演舞場
   「蝶々夫人」 プッチーニ・作曲 西本智実・指揮 佐藤路子 
      
定式幕がひかれると、新橋の芸子が舞を舞っている
。下座音楽ではじまっていて、
     ピンカートンが案内の世話役とともにこの芸者を見ている。
     盆が回ってオーケストラが上手を占め、芝居は下手に置かれた障子をメインの道具として
     時折、花幕や紗幕が舞台を形どる。
      新橋の芸者衆達がとにかくきれい。15才の蝶々夫人、歌詞にもあるよう確かに子供。
     でもそうは見えない。強いし大人だし。
     あっという間に惚れる男の気持ちもわかるけれど明らかに身勝手という前提が全体を覆っている。
     領事の歌が良くて舞台に楽しさをもたらす。本物のオペラを見たことがないので、ピンカートンを
     一日一夜待っている曲の間どうなっているか気になった。ここでは、障子に待ちわびている蝶々の
     心の踊り?が入っているのだけれど必要なのかな。幕切れ、あっさりしていて、花吹雪も決まっている。


15)2014年5月19日(火)  紀伊國屋サザンシアター 青年劇場
   「オールライト」 瀬戸山美・作 藤井ごう・演出 
      
東京に4ヶ月、単身赴任のお父さん。誰も家に入れてはいけないよ、との言葉とは裏腹に
      いきなり家出した生徒が飛び込んでくるし、玄関前に倒れているおばあさんは居るし、
      おばあさんは残ったへんな男の子拾ってくるし、いつのまにか部屋の中は見知らぬもの達が
      食卓を囲んで大騒ぎの場に。ここらあたりのシュールさは笑える。
       同級生のお父さんが連れ戻しに来てのドタバタも笑える。でも、その親父が暴力的になってきた
      時の防御態勢への係り結びが完結していない。ラインのついキャスや、高校生ねたも入っているのだけれど
      仲間に対するいじめ、いじめに対する対決と、対象が自分になる恐怖、あたりが当たり前すぎる。
      迷いによっていらいらしていた娘が自立していこうとするその悩み方がそこまで暴れるかと
      もう一つ。最後に青年劇場らしく、シュールさを解決してしまうのだけれど、もったいないなあと思った。

14)2015年5月10日(日)  花園神社特設テント 唐組
   「透明人間」 唐十郎・作 久保井研+唐十郎・演出 

      久しぶりの紅テント。風があって落ち葉がテントに舞い込む。寒い中、女が水の中に落ちる。
     水たまりの中にダリヤの花が落ちて取りに行く。待ち構えている白衣の兵隊。そんなイメージが
     次から次へ何度も出てきて、イメージをつなぎ合わそうと必死になる。
      はじまりは、焼き鳥屋の二階。保健所の職員が賭に勝って、負けた男は妹を差し出す。その妹の歌から芝居ははじまる。
     やがて水を恐れる犬、恐水病の犬とその飼い主が物語の中心となる。
      梁山泊の役者達より全体に若いので、みやすかった。初演の空気はいったいどうだったのだろう。

13)2015年5月8日(木)  本多劇場 劇団鳥獣戯画 ☆
   「雲にのった阿国」 知念正文・作・演出・振り付け 佐藤憲司・美術 雨宮賢明・音楽 石丸有里子・竹内くみこ・
     
何回目だろう、20年前にも、13年前もみた。知念さんが引っ込んで、弟子として捨丸の後ろで踊っている。これは緊張する。
     こなれて見やすかった感じがした。踊っている阿国、荷車を引く阿国、あいかわらずで、すごい。
     大道芸取り入れもなじんでて楽しい。くみこの役が上がってて、緊張。

12)2015年4月28日(火)  紀伊國屋ホール こまつ座
   「小林一茶」 井上ひさし・作 鵜山仁・演出 堀尾幸男・美術 宇野誠一郎・音楽 服部基・照明 和田正人・石井一孝・荘田由紀
     
賭の句会から始まる。俳句の中に何個同じ文字をいれられるか、7個いれた二人が竹里と小林弥太郎、この出会いが
    実は金子盗難事件の吟味のためのお芝居と解る。食い詰めて米を鍋ごと盗んだ男が竹里を演じ、同心見習いが一茶を演じて
    こんな事があっ、こんな事もあったと、一茶のできあがっていく姿を、出していく。流山の手前、馬橋宿で油屋の手伝いをしながら
    句に親しむ。そこの娘といい仲になりそうに成りながら、俳諧へのデビューをあきらめられず、来合わせた竹里に娘を押しつけ
    江戸に向かう。二人は互いにだまし合い、だまされあい、女を押し付け合い奪い合い、あこぎな480両盗む人間であると証明していく。
    俳句ではなかなか売れず、ただ女にたかり、金持ちに寄生したような一茶の姿が浮かび上がってきた頃、本当に480両が盗まれたかが
    気になってくる。札差が濡れ米をつくって、大もうけをしようとする、その軍資金。それを役人のチェックからのがれるための犯人作り。
    竹里を演じさせられ続けていたくいつめの犯人こそが、どうやら…。
     こまつ座らしい、芸達者の集団。たった一人しかいない女を色気と勝ち気で使いまくる。そして一茶がこうやって生まれたと、
    そこには大金持ちの罠があったと思わせる。句のテンポが早いなあ。


11)2015年4月27日(月)  すずなり 離風霊船 
   「夜が明けたとしても」 大橋泰彦・作・演出  伊藤由美子
     
役者たちがみな年をとった。それは劇団の厚みになったか?ベテラン勢は充分。若手はまだまだ。みな台詞を噛む。
     ショックだったのは屋体崩しが無かったこと。無理のある展開も最後の屋体崩しの期待でそれはそれでいいと思っていたのが
     ただ終わった。所沢と大宮をくっけたようなしゃったー街の街、所宮。若者が居なくて街はわずかに残る個人商店のみ。
     老化を防がんと体操をやって愚痴をこぼす集団。この寂しい街をなんとかしたいとたよりない市長が動く。作戦は
     ローカルラジオ局の局長。不満を持つ若者を集めて家を与え給料を支給する。四人を見本として確保。
     街の人とのつきあいをいやがっていた若者が体操に巻き込まれて心を開いて前進していく。ここらあたりは順調で楽しい。
     そこに時計屋の息子がトルコでの傭兵訓練を終えてリーダーとして戻ってきた。若者を軍隊へと替えていく。
     ここに劇団らしい意図を感じる、けれど、それが派遣した局長の真意を探ろうとしていただけとなると
     答えが安直すぎる。局長は内閣官房長官の命を受けて居たとの対比で形は作るけれど、だったらなおのこと屋体崩し見たかった。

10)2015年4月22日(水)  船橋市民文化ホール 俳優座プロデュース ☆☆
   「十二人の怒れる男たち」 レジナルド・ローズ・作 西川信廣・演出 石井強司・美術 塩山誠司・原康義
     20年前にも船文で見た。その時に12人座れる大テーブルの作り方を教えてもらって、ラヴィータのテーブルを作った。
    何回見ても面白い。扇風機の小ネタなどもあるけれど、徐々に展開していく事実への疑問が推理する楽しさを持続させる。
    役者たちに年齢の幅があり安心してみていられる。
    今回はアメリカの社会が浮かび上がるというか、何か日本風でわかりやすく感じた。
    スラム街の黒人に対する差別感情、それに反発する心、ただ疑問を持つ人。やる気が無い人。
    大統領がオバマである今、アメリカ社会に対する視線が、弱まっているのだろう。


9)2015年4月15日(水)  サンシャイン劇場
   「広島に原爆を落とす日」 つかこうへい・作 錦織一清・脚色・演出 前田剛・美術 戸塚翔太・藤山扇二郎
     
ジャニーズがつかの台詞をしゃべりきれるのか。冒頭から、あ、無理、てな事もあるが、そこはそれジャニーズで
     なんとか最後まで持って行く。そして最後はスタンディングオベレーション。
      何度見てもめちゃくちゃなこの話、人の心を逆なでにするこの話、
     逆なでにしながら実は逆なででは無いという役者の力が必要なのか、バタバタ大音量のアクションロマンでは
     やってはいけない気もする。

8)2015年4月14日(火)  シアター・イースト 劇団チョコレートケーキ ☆
   「追憶のアリラン」 古川健・作 日澤雄介・演出 佐藤誓
     
調べて書く。きっかけは祖父が戦争中平壌の総督府に実際に居た事だという。
    
日韓併合して35年が過ぎた。日本から第三席の検察官がやってくる。朝鮮と日本の人々の交流を夢見て。
     ついた朝鮮の補佐官を対等に扱う姿と、それを脅す日本軍憲兵。のんびりした検察官たち。三人の子供を育てる妻。
     8月15日の前から、立場は逆転する。憲兵は逃げ、公人たる検察官は後処理に携わり、人民委員会に拘束され、
     人民裁判にかけられる。うらみを晴らそうと訴える農民の父娘。いかりの人民委員。
     ソ連の陰をにらみつつ責務を果たす裁判官。
      そんな事があったんだろうという流れは解る。よく調べたなと思いも残る。今の日韓関係にも思いをはせ、
     人と人のつながりという言葉もわかる。では何がもう一つと感じさせるのか、「古い記憶の記録」を読んだときは
     すごいと思った。じゃがいもかあさん、ラエルとパラナとであつかったことがわかりやすいどうしようも無いドラマとしてぶつかっている。
     でもそれはユダヤとナチとパレスチナといういずれも遠い世界のことだったからかも知れない。
      日韓の交流としてとらえると、これはこうだろうか、これはあったのだろうか、などと余計な考えが浮かぶ。
     もう一つ、人民委員と農民の父娘、ここが、リアリティが無い芝居ではなかったのではないか。
     朝鮮の人々の怒りを体現しなければならない父娘がその役を果たしていない。

7)2015年4月8日(水)  シアター・コクーン
   「禁断の裸体」 ネルソン・ロドリゲス・作 三浦大輔・演出 田中敏恵・美術 内野聖陽・寺島しのぶ
     
自殺する女が残したオープンリールテープ。妻に死なれていじけていた男を救い出そうと、訳がわからない
     処女の叔母達が男のやさぐれた弟に神父を連れてこいと命じる。弟は売春宿に行き、娼婦の写真を撮り、
     兄に見せつける。兄はついに娼婦の元に来て三日三晩過ごしてしまう。
      相変わらずの三浦演出なのだけれど、問題はこの宗教に縛られている人物達という設定では無いだろうか。
     なぜ、そこまで男がこだわるのか、結婚式をするから処女でいろ、なんていう台詞が、
     大笑いになるべきなのだろうけれど、わらいきれない。エロティック・コメディと考えて、伊東四朗が男をやったら
     さぞ、大笑いになっちゃうだろう。女の手に落ちていく男。宗教上の倫理を持ち出す男。落ちた息子。
     父の女を寝取った息子。ところがそれがさらに最後に落ちがついて、大爆笑、なんてのが期待できちゃう。

6)2015年3月4日(水)  スズナリ  ハートランド
   「バリカンとダイヤ」 中島淳彦・作・演出  大西多摩恵
      
リアルで痛いお父さんが死んで母はぼーっとしている。姉は宮崎から葬式に来たまま帰らない。
     長女は旦那と別れ、中学生の娘の気持ちも顧みず新しい男に走っている。次女は会社経営に失敗し
     いらついている。三女は5年前から60過ぎの男と同棲している。近所のおばさんは無神経にしゃべりつづけ
     化粧品の女はわかりやすく馬脚を現し、宗教家は全てを引き倒しそう。そんなすかっとしないありふれた
     いらいらが三分の二も続く。笑いは時々起きるし後半はそれでいいとは思うのだけれど、前半の
     いつものことじゃんが、ねとねとしている。



5)2015年2月20日(金)  本多劇場 加藤健一事務所 ☆
   「ペリクリーズ」 シェイクスピア・作 小田島雄志・訳 鵜山仁・演出  加藤健一・加藤忍・山崎清介・福井貴一
      
シェイクスピアのパターン劇。近親相姦の娘に求婚し、命からがらの逃避行。王侯として次々と冒険と
     恋と悲劇と大団円と盛りだくさん。2時間10分にまとめてぐんぐん進める語り。妖しい姫、妻、そして娘と一人で沢山の役をこなす。
     母子の出会いには映像まで使って笑いを呼ぶ。生まれてすぐ嵐にのまれ、太守に預けられて、裏切られ、殺されたと思った娘との再会、
     強引で単純な展開なのだけれど泣きそうになるのは誰の力?

     

4)2015年2月14日(土)  劇「小劇場 名取事務所 ☆☆
   「ベルリンの東」 ハナ・モスコビッチ・作 小笠原響・演出  内山勉・美術 桜井真澄・照明 佐藤和正・西山聖了・森尾舞
      
男がパラグアィの自宅に戻ってきて語る。たばこに浸らざるを得なかったわけを。税関でトランクを開けられたことも。
      父親がドアの向こう側に居るとも。父は黒いスーツを着て、きちんとした人。だがアウシュビッツに派遣された医師であって、南米各地をてんてんと逃げしかも裕福な暮らし。
      カエルの解剖の授業の時に友ヘルマンに漏らされる。あんたの親父もこんな風に。そこから荒れた生活が。
      ヘルマンを打ち切りドイツに逃げる。ドイツで収容所の資料をあさる彼女と出会う。恋をする。ドイツ人とユダヤ人の恋。しかもSSの子とアウシュビッツに送られた親の子。
      妊娠し結婚を決めたときふらっと友人があらわれ、壊れる。父を売ることを約束し、それに日がかかることを知った男が戻ってくる。
       小さな劇場、目の前のセットに照明が入るまで、それが鉄条網のあるセットだとは気がつかなかった。あかりと美術との見事なコラボ。
      中央にドア、その前にテーブル、両サイドに食器棚、それだけのセット。震える手でたばこを吸いながら笑いながら厳しく語られる過去の出来事。三人だけの巧みな本。

3)2015年2月11日(水)  高円寺1 DULL-COLORED POP
   「夏目漱石とねこ」 谷賢一・作・演出  佐藤誓・木下祐子
      
題名を聞いたときなにか見たことがあるなあと思ったのだが、それは東京ギンガ堂の「ねこになった漱石」の事だった。
      夏目漱石、死の病の床で、弟子や妻が見守っている。そして、これまでに関わった猫たちも。猫たちの会話を漱石がのぞき込み
      漱石の人生が、浮かび上がる仕掛けなのだろう。静かにじっと押さえて、明かりも暗く、猫使いも黒猫は黒子の衣装に紛れて
      よく見えず、さして趣向が生きているわけでは無い。暴力を振るう漱石像が新しいのかも知れないけれど、漱石の書いた言葉も
      こなれないまま使っている感じ。楽しさが欲しいな。

2)2015年2月10日(火)  あうるすぽっと ペテカン
   「蛍の頃」 本田誠人・作・演出  濱﨑けい子・山口良一
      
なぜそんなに惨めに持って行く必要あるのかな。送り出された男の子は大学を中退し、三流企業も首になり
      それを報告した妻からは離婚され、そして遺骨を抱いて川に行く。豪快なキャバレーのママさんの子供ってだけで
      いいのじゃないかな。母がまだらにぼけて、病院で診察を受けている間に、九州延岡の町で起きたことが、浮かび上がる。
      客のまだ居ないキャバレー。売れそうに無い女給たちが話している。ママは酔って吐き気が収まらない。
       終演近くの医者の一言でお母さんはアルコールが飲めない体質だと告げられる落ちがある。一気飲みして救急車で運ばれて
      死んでしまう体質だと臭わせる。子供のために無理して飲んでいる事は伝わるんだからそんな理屈づけもいらないかな。

1)2015年1月24日(水)  新橋演舞場

  「石川五右衛門」 市川海老蔵・中村獅童     
     ここまで歴史変えちゃうか、ならもうどうでもいいや。の世界。秀吉の子、鶴松はあっさり殺されちゃうし
    茶々は五右衛門と恋仲で子供作るし、秀吉は五右衛門の実の父だし、明国に茶々はさらわれて五右衛門が助けに行って
    、戦って傷ついたとき秀吉が弓を射て助けるし、五右衛門はついに清国を建国するし。

    まあ、でも、ここまでやればもうこれでいいのかなと思っちゃった。

     


2014年
 今年は授業に部活にと手が離せなかったから見た本数少ないなあ
 「鶴八鶴次郎」
二人がいい
 「もっと泣いてよフラッパー」 
夢・歌いい
   
この二本がベストかなあ

 
「ブロードウェイから45秒」怪老夫婦に
 「トロワグロ」間と会話のはしはしに
 
「痕跡(あとあと)」なぞときに
 「母に欲す」どうしようもない男と新しい母に
  
23)2014年12月24日(水)  新橋演舞場
   「笑う門には福来たる」 藤山直美 
      
吉本興業の
創業、吉本せい、うわき癖のある夫と10人の子供を作ったせい。夫がはじめた興業師、を
     少しずつ大きくしていった。わがままな落語家、寄席を譲ってくれた先達、戦争、復活などなど、時を追いかけていく。

22)2014年12月7日(日)  ザ・スズナリ ☆☆
   「トロワグロ」 山内ケンジ・作・演出  杉山至・美術 石橋けい・平岩紙
      
専務の家で開かれたパーティ会場のテラス。ふっと気分を変えるため女が出てくる。トヨタ社員の若者が
     出てきて見とれていると専務夫人がじとっと後ろから見つめている。女が去ると、夫人が腕がきれいだったでしょと、責め立てる。
      男と女、嫉妬、微妙な自己紹介が、笑いを誘う。あるある、こんな状況、という設定だけで、笑いが継続して空間を、引っ張っていく。
     同じ名前の齋藤さんが三人居る笑い。齋藤さんの奥さんの旦那さん?だから齋藤です。夜の野外のテラスの暗め光の中で
     シュールな笑いと、ジャンプする行動。90分、くすくすと、あるあると、おーそうなるかで過ぎる。


21)2014年12月3日(水)  船橋市民文化ホール テアトル・エコー
   「フレディ」 ロヘール・トマ・作 上原一子・演出  太田創・美術 安原義人

      サーカスにお客が来ず金策に走り回っている団長、天才クラウンだと楽屋の人々はたたえながら借金の成立に
    おびえる。息子はサーカスやめて弁護士になろうとしている。帰ってきた団長を殺人犯と刑事が追う。悪徳金貸しばあさんを
    正当防衛で殺したとなると陪審で無罪になる。有名になってサーカスは満員になる。そんな言葉に踊らされ、満場の観客の前で逮捕。
    裁判。無罪。客満席。そこに真犯人が…。この状況を作り上げていく前半がたるい。
     テアトル・エコーだから喜劇のはずだ、と、予想しながら見なければならない。気持ち悪い犯罪礼賛になってしまってると感じさせていいのかな。

20)2014年11月9日(日)  新橋演舞場
   新派特別公演 「鶴八鶴次郎」 ☆☆☆勘九郎・七之助  「京舞」水谷八重子・波乃久里子 
      
鶴八鶴次郎がいい。勘九郎が勘三郎そっくりになってきた。それだけで泣けちゃう。
     こんな喧嘩有るのかあたりのオープニングは、まあ、そんなもんだろ、程度なのだが、場面の切れのあたりで
     しっくりとみせる。これるがじわじわと効いて、焼き餅焼いて全てをぶちこわすシーン、その後の落ちぶれた鶴次郎と
     再会するシーン、再び成功の楽屋で喧嘩を売るところ、そして最後の飲み屋。参った。

19)2013年11月6日(木)  紀伊國屋サザンシアター 加藤健一事務所 ☆☆ 
   「ブロードウェイから45秒」 ニール・サイモン・作 堤泰之・演出   加藤健一・滝田祐介・中村たつ
      
ブロードウェイの一角にある手頃なホテルの気軽なコーヒーショップ。ポーランドから来たマスター夫婦が無名の
     若手俳優を応援して、写真を貼っているような店。コメディアンやプロデューサーや、ぽっと出のお兄ちゃんや
     お姉ちゃん、そして訳のわからない珍妙な老夫婦。芝居談義が盛んに行われ、なるほどこんな話をしたかったんだ
     と思う傍ら老婦人に笑っちゃう。こんな爆弾的なキャラクターが大切なんだなと思わせる。
      あとになって夫が爆発しそれでもきれない奥様がすごい。そしてどんでん返し。これが楽しい。

18)2013年10月15日(水)  東京芸術劇場シアターウエスト 
   「鷗外の怪談」 永井愛・作・演出 太田創・美術 中川隆一・照明  金田明夫
      
秘密保護法・言論の自由と弾圧、それを小説家の顔と軍人の顔を両方持った森鷗外によって近づこうとする。
     その気持ちはよくわかるというのがまだ未消化という、生の説明を聞いているようになってしまったのではないか。
     井上ひさしならもっとおいしく料理してくれそうな気がするんだけれど。


17)2014年10月12日(日)  新橋演舞場 ☆
   花形歌舞伎 「俊寛」右近 「金弊猿島郡」猿之助 
      「俊寛」わかりやすい。ぼろ布のおじいさん。平家物語の俊寛は37才というものも見てみたい。
      漁師の娘千鳥、娘役はこうやるんだと。前の方の席でよく見えたのは良いけれど花道の並布見たかったな。
      岩の立体感も船の引き枠もよっく見た。
        「金弊…」色っぽいね七綾姫。奥へご案内とは。目が見えてから清姫が嫉妬に狂うのだけれど、笑いがとれて
      でもまだ亀次郎ってな感じかな。道成寺と無理矢理絡ませて双面。ちらしの顔ぐらいにメークでやれたら楽しいのに。、


16)2014年8月17日(日)  青山劇場 
   「ガラスの仮面」 美内すずえ・原作 G2台本・演出 松井るみ・美術  貫地谷しほり・マイコ・一路真輝
      
マヤが逃亡したところから絶え間なく解説していく。全員マイク音声。青山劇場の分割された床を絶え間なく動かし
     いそがしく漫画どおりのあらすじを思い出させていく。あ、ここで、このシーンを入れるか、ここに差し替えたか、と。
     その意味では前半それほどあきない。客は原作を熟知している事を利用しているからだし、役者もそれ以上のことが出来ていない。
     あの漫画チックな「おお、みえる」などのギャグタッチは舞台でもそのあほらしさが通用する。
     停滞するのは二人の王女、まともな芝居を二人で運ぶには、いかにも力が無い。がくんと落ちる。


15)2014年8月13日(水)  青山円形劇場 KAKUTA ☆☆
   「痕跡(あとあと)」 桑原裕子・作・演出 田中敏恵・美術 斉藤とも子・松村武
      
なぞとき。円形劇場の中央に光と、小さなはしご状のボックスでクリーニング屋・焼き肉屋・バーをあらわす。
     円形舞台の端に置いた柵が川の欄干。周りのゴミが川の縁に集まった過去。
      川縁にぽつんとあるバーの店長が10年前の嵐の夜を語る。ふらふらと欄干に登った男が店に入って
    オールドファッショングラスでビール飲みふらふらと出て行ったこと。子供が一人遊んでいて、車にはねられたこと。
    はねた男が必死に探し回っていたこと。強風でガラスが割れ片目を失明したこと。
     入りやすいイントロから一見何の関係もない駅の夫婦、あやしげな焼き肉屋に行こうと誘うクリーニング屋の社長、
    余命半年の姉さんと一緒に居るビデオカメラの男と続く。何があの時起きたかが徐々に明らかになる中、
    国籍の無い、名前の無い、身分証も無い、人たちが登場人物の半分を超えていることに気がつく。
     クリーニング屋の中堅の父とその息子の謎も明らかに。いったいこれはどこに結論を持って行ったらいいのだろう。
    名前が無くとも必要だと思う人々、国籍をプレゼントしようとする内縁の妻、はねられた子供を連れ去った男、
    偽装結婚していながら、本当のつながりを求める女、それぞれのつながりを気にしつつ、母はすれ違った我が子に気がついて
   走って追いかけただろう倒れた自転車で終わる。

     


14)2014年7月30日(水)  船橋市民文化ホール 俳優座 ☆
   「樫の木坂四姉妹」 堀江安夫・作 袋正・演出  内山勉・美術 中村たつ・岩崎加根子・ 川口敦子

      巨大な樫の木が奥に、その木が中央部が透けて見えている幕として目の前に。これがすごく有効。
     2000年、長崎のあの日から55年たった坂の上の旧家。住んでいるのはあの日に被爆した三人の娘というかおばあさん。
     長女は語り部として写真家に支えられて戻ってくる。四女は屋根の上で雨漏りの修理。
     次女はとても70とは見えない派手な格好で英語のレッスンに出かける。わがまま娘。
      三姉妹が仲良く?暮らすいらだちの元は、あの楽しい日々にあった。
     1944年航空兵の訓練を受けて居る兄の帰宅。おはじきのぜんざい。ピアノの連弾。
     父が出したとっておきの焼酎。歌好きのみんなが歌う琵琶湖周航の歌。あの楽しさから
     徐々に体が動かなくなっていく日々に戻る。写真をきっかけに思い出が語られ、家族それぞれが
     どうしていたかが明らかになる。四女は工場で軽い怪我ですんで戻る途中で双子の姉が焼けただれて助けを求めているところに出会う。
     助けられなかった事に罪を感じている。長女は被爆したため将来を共にと思った男と別れた。
     被爆していた次女はアメリカに渡りアメリカ兵の子供を産みそしてにげかえってくる。
      静かな喧嘩と徐々に明らかになってくる家族のあらまし。緊張した3時間あまりをすごした。

)2014年7月15日(火)  DVD 
   「夜叉が池」 泉鏡花・作 長塚圭史・台本 三池崇史・演出   武田真治・田畑智子・松田龍平
      
なるほどこうやって遊ぶのかと前半は納得。白雪が登場する後半はただ騒ぐだけ。

13)2014年7月14日(月)
  パルコ劇場 ボツドール ☆☆
   「母に欲す」  三浦大輔・作・演出   峯田和伸 池松壮亮 片岡礼子 田口トモロヲ
      
男が汚ーい一室で電話の音も気にせず寝ている。デリヘルに電話した後、留守番電話をきいてみると
      一週間前に母親が倒れ、すでに死んで葬式も済んだという。わけわからず高速バスに乗る。葬儀の終わってみんなが帰った後
      弟はなじる。友達によってクリアになっていくどうしようもない東京生活。
       気取り屋の父が女を連れてきた。飲み屋の女、けれどそれをひた隠しに隠し威張り散らす父。兄弟は追い出し作戦に入る。
      味噌汁は赤味噌じゃ無きゃダメ。ご飯は堅めじゃ食えない。父は二人っきりになると甘えるくせに子供達の前では威張り散らす。
      つい爆発した弟の言葉をきっかけにか父は階段を落ちて入院してしまう。入ってきた女と息子達の緊張感。洗濯しようと、゜シャツからズボンから
      果てはパンツまで脱がしていくあたりから笑いが続く。微妙に兄弟が認め始めたとき体面を気にする父が女を追い出してしまう。
       みっちりとした時間はボツドール。なんとなく楽しめちゃうのはなぜなんだろ。

)2014年7月13日(日)  HDD ☆
   「小野寺の弟 小野寺の姉 お茶と映画」 西田征史・作 片桐はいり・向井理
      
家の裏の公園で姉が荷物を持てと騒いでいる。40台の姉と30台の弟の二人暮らし。
     姉は、ありがとうの一言もいえない弟にいらだっている。突然吸血鬼がやってきてしゃべり始める。
     なんとこの家が映画のロケ地として提供されていた。どたばたはともかくとして核は弟を心配してやまない姉と
     両親が自分の一言で死んでしまったと心を閉ざしていた弟のやさしい意地。たぬきのたたあたりがたとの人形で
     解決していく。


12)2014年7月6日(日)  新橋演舞場
   「松竹新喜劇爆笑七夕公演」 

      「船場の子守歌」 舘直志・作 四国から出てきたご隠居に孫が首にした社員を追って家出したとは
         伝えられない息子。みなで口裏合わせての大騒ぎ。本家がやってきてすべて明るみに、はっと声が変わる祖父。
         場が変わって貧しい暮らしの夫婦の場。大家は家賃の値上げを言い立て困り果てているところへすれ違いで
         父ならぬ祖父がやってくる。悪口浴びせてた祖父が娘の帰宅で本人とわかり七転八倒の大家。
         大家の嫁に久本雅美。うーん格が違う感じがしたかなあ。
      「お祭り提灯」 舘直志・作 借金取りが提灯にかくされた寄付金を取ろうとして取り違えの大騒ぎ。花道の毎回の出はけが笑いを誘う。
         あああれが藤山寛美の役かと一目でわかる。孫の初役。笑えれば良しと。

11)2014年6月16日(月)  スズナリ 劇団鳥獣戯画 ☆
   「神様あなたの出番です」 知念正文・作・演出・振り付け 雨宮賢明・音楽
      
みつめてしまう。ありこ、ユニコ、くみこ。ああこんなに大きくなったんだと。アニメボイスチェンジャーのコロ助を楽しむ。
     この人たちをこう使うんだとにこにこする。それが鳥獣戯画の芝居の見方になってしまう。つぶれかけた工場。技術だけは
     すごいけれどつぶれかけてみんなもやる気を失いかけて。乗っ取られるパターンとそれを逃れる大筋は元気うどんと同じ。
     元気うどんは神様を登場させなくとも全てを納得させうるのがすごいんだと考察。


)2014年6月8日(日)
  HDD ☆☆
   「唐版 滝の白糸」 唐十郎・作 蜷川幸雄・演出  朝倉攝・美術 服部基・照明 大空祐飛・窪田正孝・平幹二朗
      取り壊されるアパートの前、少年を誘拐した男が現れる。少年の兄はこのアパートで女と心中して一人だけ死んだ。
     
女は手首を切って水を流しっぱなしにした流しに手を入れていたけれど死にきれなかった。兄に貸したお金を返してくれと
     少年を呼び出した。小びと達と、巡業に出るからお金が欲しいのだ。お金を持っていかないとこびと達は竹馬に乗って血を売りに行く。
     だからお金をくれ。芸人なんだから芸を見せろと言われ女は水芸を始める。妨害され、芸を再び始めたとき、水は血に変わって噴き出す。
     そしてクレーンで女の首は宙を飛び回る。わけがわからない、でも、見ちゃう、なぜかタンスが運び込まれその上にいきなり登場する女。
     落下する物干し。こびと。水。血。宙を舞う人。スペクタクルとはこのこと。しかもコクーンのせいかきれい。

10)2014年6月1日(日)  駒場アゴラ劇場 青年団 ☆
   「忠臣蔵OL編」 平田オリザ・作 杉山至・美術
      赤穂浪士が国元で殿の切腹を知る。さあどうする?籠城する。討ち入りする。なあなあにして次の士官をさがす。
     外資バージョンの社員食堂でOLたちがああだこうだ。討ち入りして切腹する。こんなところでみんな大満足。
     なんだ、馬鹿にしてるの?とか思いつつ、新たな登場人物による空気変換で笑ってしまう。金髪のOLまで来る。
      アフタートークもまあまあ楽しんで。選択の余地がある登場人物ってなるほど大切だ。

9)2014年5月2日(金)  青山円形劇場 Nyron100℃ ☆
   「パン屋文六の思案」 岸田国士・作 ケラリートーノ・サンドロピッチ・潤色・構成・演出 加藤ちか・美術
      麺麭屋文六の17才の娘は下宿している妻持ちの小学校教師とできてしまう。思案に暮れる文六に地球滅亡の危機が迫る。
     ママさん先生の旦那は浮気性、子供を失った夫人とつきあったり、若い先生に手を出したり。
     みんごとママさん先生は結末をつける。その様が楽しく、16の岸田国士の一幕劇を見事にコラージュした
     3時間が過ぎる。臭いシートも楽しくサービス精神満載。

8)2014年4月27日(日)  新橋演舞場
   「滝沢歌舞伎2014」 企画・ジャニー喜多川 滝沢秀明・演出

      フライングから始まる前半。変面、和太鼓、歌舞伎のショートショート、一列目の客席との交流、飽きずに見る。
     休憩後は源義経、平泉炎上から牛若丸に戻り、頼朝をあやつる配下、勧進帳、弁慶死す、殺陣の連続と続く。
     おおすじ、最後のセットは去年と変わらない。京本政樹いじりも同じ。

7)2014年4月24日(木)  すみだパークスタジオ 劇団桟敷童子
   「海猫街」 サジキドウジ・作 東憲司・演出  塵芥・美術 
      崖にしがみついて暮らしている海賊の子孫達、それにもさげすまされる海女達、そこに政府御用達の企業の視察団が
     やってくる。這い上がろうとする者たちと、炭鉱探しに来た国策の手下。危険なもぐりと死、神の怒りの嵐。全てが
     奪われていく。企業がなんで大砲撃ってくるのか、よくわからない。ふらしもLEDも丸太も熱さもいつもの通り。
     5つに別れてシーソーになる舞台は舞台の前奥へゆれる。危ないなあと思いつつ、横に揺れた方が怖いかなあ等、
     なれて来ちゃったのかなあ、このスタイルに。バックステージツアーでシーソーの軸が単純なイントレの一部であると確認。

)2014年4月13日(日)  HDD ☆☆
   「サロメ」 オスカー・ワイルド・作 宮本亜門・演出   多部未華子・成河・麻美れい・奥田瑛二
      多部未華子をどう見るのかにつきるのかな。自由奔放とみるか、予想された範囲の中と見るか。
     奥田瑛二は無難におどおどしているし。血の池の演出は生で見ないとわからないかな。
     ほしい物が全てほしくなる女、その本当の恐ろしさ、表現できたのかな

6)2014年3月26日(水)  船橋市民文化ホール
   「その場しのぎの男たち」 三谷幸喜・作 山田和也・演出  石井強司・美術 佐藤B作・山本龍二

      大津事件、ロシア皇太子ニコライ二世が警官に切りつけられ怪我をした。ホテルに集まった総理大臣、外務大臣
     その他政府の要人達は必死に善後策を練る。食べ物で電報で。死刑を約束したり、外国人を傷つけたものを死刑にできないと
      法律で悩んだり、暗殺を企てたり、太った妖しげなくノ一まで登場。靴のにおいまで使って、東京ヴォードヴィルショーの
     笑いが展開していく。井上ひさしと比べて笑いだけと思ってしまうのは勘違いか?

5)2013年3月10日(月)  パブリックシアター
   「神なき国の騎士 あるいはなにがドンキホーテにそうさせたのか」 
川村毅・作 野村萬斎・演出 ・美術・衣装 野村萬斎 大駱駝艦
      なおなじみのあのキホーテとサンチョの挿絵が動き出して二人が現れ、原文通りに始まる。大駱駝艦は身体だけでどくろをつくりだし
     怪物マタゴーヘルになる。ここら辺までは楽しかった。新宿の雑踏に紛れ込み街の女がドルシネア姫になるのもよい。
     やがて破壊された街にいきつく。原発で破壊された街、そんな街?難解になってくる。

4)2014年3月7日(金)  新橋演舞場 
☆☆
   「空ヲ刻ム者 若き仏師の物語」 
前川知大・作・演出  堀尾幸男・美術 市川猿之助・佐々木蔵之介
      口上から始まる。スーパー歌舞伎セカンドの幕開け。ただ口上の掟に下手端の浅野和之だけはのっからない。
     これが解説の役を果たす。天才的な腕を持つ若き仏師が、貴族の慰みものになっている仏像、母の病さえ治せない仏に
     嫌気をさしいたずらに走るうち役人をあやめ都へ逃げていく。領主の息子は都で民の力になろうと都へ上る。
     貴族の中で領主の息子はいいように利用され百姓をあやめ、あおる小役人に成り下がっている。
      一方、仏師の方は都で仏像を壊しまくっている。両者は戦うことになる。宗教を民衆の不満を交わす道具、
     さらには戦争に向かわせるための道具として扱う権力の流れを描こうとするのはイキウメ的発想か。
      印をいたずらする仏師の抵抗はわかる、くだらない仏像だとして貴族が作らせたものを壊しまくるのはわかるか。
     貴族の依頼であろうが彫った仏師は己の気持ちを彫り込むのではないか。名も無きものが彫った仏像、人々が撫でたために
     相が変わった地蔵には目を覚まさせるものがあるかもしれない。一番わからなかったのは、依頼された仏像を、空を表すために
     ついに削りくずだけになった像、それを見ただけで小役人は己の非を一瞬にして認められるのか。亀治郎転じて四代目猿之助、
     楽しそう。亀治郎時代からの役者の資質だろう。二人宙乗りになり、佐々木蔵之介がこわばって動かないのに対し、
     これが宙乗りと遊びまくっていた。


)2014年3月2日(日)
  HDD ☆☆
   「ストリッパー物語」 つかこうへい・作 三浦大輔・構成・演出   リリーフランキー 渡辺真起子 でんでん
      
つかこうへいなんだろうか、台詞は一切書いてないというのだけれどまるでボツドール。えんえんとヒモの男がしゃべり続けるのが
     つかなんだけれど、おなかに傷持つ元バレエダンサーのストリッパーとそのヒモ、座長、照明係、ヒモの娘と絡んでくるのはまた別の世界。
     ヒモの娘とダンス踊って見守るなんて、ここまでの積み重ねがあるから泣けてしまう。仕送りするなんて馬鹿な宣言も納得してしまい、
     かせぎのために脳まで冒され、突き放して、残す。これはつかなのか三浦なのか。

3)2014年2月27日(木)  新国立劇場 
   「アルトナの幽閉者」 ジャン・ポール・サルトル・作 上村聡史・演出  池田ともゆき・美術 岡本健一・美波・辻萬長・横田栄司
      
むずかしいなあ。辻萬長はわかりやすい俗物の大実業家の親父。岡本健一は部屋に閉じこもり、蟹に向かって狂気の会話。
      でも生で見る役者の狂気って何だろう。饒舌なしゃべりが、生の役者を感じさせる。ロシアからの退却の時のパルチザンの事件の結末が
      どっちだったのか、逃がしたのか、虐殺したのか、わからなくなってしまった。収容所の脱走者を父が密告し父が息子を救い出し
      それによって無力感で戦地で活躍した過程はわかったけど。美波の元女優はどうだろう。元女優、人々に美しいと言われ続け虚構に住んでいた
      ことと、助けた牧師が目の前で殺され、父に救われたり、戦地を転々と逃げて最後に部屋に13年間も閉じこもったことが、釣り合うのだろうか。
      それを信じさせるプラスアルファがあの役には必要なのじゃ無いのか。


2)2014年2月19日(水)  新橋演舞場 
   「母を訪ねて膝栗毛」 マキノノゾミ・作・演出  中島正留・美術 水谷八重子・藤山直美・中村獅童・奥田瑛二
      
大巌寺にて育った三人、火事で焼け落ちた寺を再建するため子を捨てた親たちを捜し当て、金をせびる。
     一人はやくざの姉御。一人は大泥棒一味。一人は大名の妾。前半無理矢理だなあなどと思いつつ、後半笑っていた。

1)2013年2月13日(木)  シアター・コクーン ☆☆
   「もっと泣いてよフラッパー」 串田和美・作・演出・美術・衣装 松たか子・松尾スズキ・秋山菜津子・りょう・石丸幹二
      
なんといっても美術。床屋のカラフルな街、おとぎの世界に入ったときのサーカス的な人々。そして生演奏。
      ああ、シカゴにやってきた田舎娘は吉田日出子じゃないとだめだよなあ、などと最初は思っていたが、つぎつぎと出てくる
      ギャングと踊り子達の夢物語にこれでもいいなあ、楽しいなと思えてくる。歌って踊って、よし。

2013
 今年劇場で見たのは39本 そこで ひとが実際にやっている事 それがいい
   思わず☆☆つけたのを捜してみると
   
「お種と仙太郎」「大当たり高津の富くじ」「おやじの女」新派の松竹新喜劇 安心して笑えるって素晴らしい。
     「わが闇階段からはじまる別荘劇に

     「ピグマリオンシンプルなセットとスムースな展開に
     「さくら橋」はしはしの一人一人に
     「ORANGE」パワーに
      「大人の高校演劇」企画に

    ビデオで見たのだけれども 「黴菌」「雨」「太陽 The Sun」 「トロイアの女たち」

)2013年12月12日(日)  VHS 夢の遊眠社
   「半神」 萩尾望都・作  野田秀樹・演出 上杉祥三・円城寺あや
     
台本を読んですーっと感じられる事と、上演の映像を見てあーこうやるのかということは
     違う。もしかしたら、原作と野田の形にすき間を見つけられるかも知れない


39)2013年12月5日(木)  にしすがも創造舎 ☆
   「石のような水」 松田正隆・作 松本雄吉・演出・美術  照明・吉本有輝子 占部房子・山中崇
      
廃校になった中学校の校舎が稽古場、体育館が劇場、小さな体育館だけれど劇場としては充分。
     急傾斜の階段席と向き合うように階段状になったステージ。通りであったり、公園であったり、マンションの一室であったり
     丸窓のある部屋であったり、スタジオであったり、自転車が下りおりる坂であったり、祈りの場であったり、
     水がおちてくる洞窟の中であったり。
      無機質な戯画化されたようなしゃべりと、さりげない会話と、唐突なしゃべり、情感豊かな深夜放送のしゃべりであったり、
     いのりであったり。中心の話は、機能が壊れかけた街、深夜放送のDJをつとめる姉と妹の話。
     スタジオから見下ろす姉の世界観の中で人々がうごめいている。妹の夫は、人が近づけないゾーンへの代々伝わる案内人。
     人を連れて行き帰ってきた人はみなおかしくなる。祈るように案内を続けている。二人の間には子供が居たようだが死んだよう。
     妹は姉の男を奪いとる。
      緊張感の中、筋をさぐり続ける、さまざまなイメージがわいてきて、所々変な会話で笑えてしまったり、あきない。

38)2013年12月4日(水)  ワーサルシアター八幡山 MOHHch
   「頭の上のハエを追いなさい!」 かとう智恵理・作・演出  西原久美子・百々麻子 ・竹内久美子
      
「夜叉が池」を元にするとこうなるらしい。1000年前に禁断の恋に落ちた龍と大蛇が天罰によって引き裂かれ
     1000年の間相手を求め続ける。その1000年目。昆虫学者の三人の娘は、夫婦仲がうまくいかなかったり
     二次元の世界に浸っていたり、結婚へ踏み切れなかったり、三途の川の近くまで行っていた父親は心配でしょうがない。
     なんとかなるかと、さまよう魂に頼み込み、三人の娘を諏訪地方の池の近くに引っ越させたのだが、
     恋心に狂う姫に乗り移られてつぎつぎと相手を求める次女、誤解を生む長女、ますます別世界にはまる三女と
     思惑通りには行かない。
      鳥獣戯画のティストはそのままに、ラッパ屋風の家族ドラマをたして泉鏡花が暴れる。
     「夜叉が池」って、いいなあ。


37)2013年12月3日(火)  新橋演舞場 新派
   「三婆」 有吉佐和子・原作 小幡欣治・脚本 齋藤雅文・演出  中島正留・美術 水谷八重子・波野久里子・沢田雅美・笹野高史
      
妾宅で旦那が死去。30年間一緒に居たからと葬儀を準備したところが本妻が引き取ってしまう。居ないところでは
     相手の悪口言い放題の妾が本妻が現れると下手に出る。金融の苦しくなったところで死んでしまったおかげで、
     渋谷の妹の家も、妾宅も抵当にとられなくなってしまい、本妻の所に妹、そして妾も逃げ込んでくる。
      喧嘩ばかりの毎日。専務が取り持とうとするがうまくいかず、本妻は老人ホームに妹を送り出す強硬手段をとる。
     それは孤独な一人ぐらしになることを意味する。必死に止める専務も娘の嫁ぎ先から逃げてきて4人暮らしとなる。
     喧嘩も収まり無事これからの暮らしを思ったとき、終幕の場となる。嫁に行って子供と一緒に戻ってきたお手伝いさんが
     見た4人。懐かしさに沸き立つと供に、4人とも高齢となって日だまりでじっとしている姿を見て、あたし帰れなくなる、と
     涙ぐむ。演出はふっと夢のように暖かいシーンを用意して終わる。喜劇というより、ふっと悲しくなる。
      12月3日は新派誕生125年目との事で口上があった。


36)2013年11月30日(土)  新国立劇場中ホール ☆☆
   「ピグマリオン」 ジョージ・バーナード・ショー・作 宮田慶子・演出  松井るみ・美術 沢田祐二・照明 石原さとみ・平岳大
     
前一瞬、うすっぺらなセット、モノトーンでぺったんこの家具と壁、パネルのタクシー、えっ、と思っていたら
     これが結構邪魔にならず色を感じてくる。セットが奥からせり出され、盆で三分の一ずつ展開し、舞踏会では
    本物の車まで出てきて、競りを思いっきり使って大階段を作る。次はどうなるのかとわくわくする。
     ロンドンの片隅で見つかった汚い言葉遣いの花売り娘。言語学者が目をつけ記録する。
     娘はもらったお金で言語学者の家に乗り込み、言葉を直せと迫る。半年で公爵夫人並にすると賭をする。
      中産階級と貧民とどちらが幸せか、必死に生きて一日を酒を飲んで終わるのがよいか、
     気取って何をして良いかわからず暮らすのが良いのか。そんな対立を引き立てながら、汚い言葉が
     中途半端に修正されたときが笑いをよぶ。小娘を直してしまう息子に学者の母は怒りさえ覚える。
      舞踏会、物の見事に、正調の英語を話しハンガリーの王族の娘とまで噂され、見事なダンスを披露する場は
     夢のよう。帰宅して男二人が一言も女を気にかけない展開もお見事。
      半年を終わった今、自分はなんなのかわからなくなった娘。娘は考えることを始めた。家出。そして学者との対決。
     惹かれていると素直になれない男に同情すべきなのか、この女はどこに行くか行き先が無いのか
     わからなくなったとき、女は言語学の自分の才に気がつき独立心を持つ。
      さて、この先、どうなっていくのか。フレディと結婚すると男は言い放って、焼け笑いをして舞台は終わる。
     はて、いったいどっち?あの討論だと女は本気でフレディに惚れているとも思えない。
     言語学者を越えてどうするのだろう。
     

35)2013年11月27日(水)  船橋市民文化ホール NLT
   「OH!マイ ママ」 ブリケール&ラセイグ・作 釜紹人・演出  西川成美・美術 
     
14尺〈?〉のパネルで作られた豪邸の一部屋。緞帳が開いて、鏡や窓外に幻想的な絵が現れていくオープニングは
     とてもきれい。けれど光が入ってしばらく立ってくるとマチエール不足。20年前に失踪した妻が、息子と夫の結婚式の話が
     わき上がったと聞いて隠れ住んでいたアメリカから帰ってくる。ただ性転換をして男になって現れて、
     あとはしっちゃかめっちゃかに時に笑いをとりながら。プールヴァール劇とは小屋がけの喜劇のこととか。

34)2013年11月17日(日)  国立劇場小ホール 前進座
   「赤ひげ」 ・脚本 ・演出  松井るみ・美術 嵐圭史 高橋祐一郎
     前進座の芝居、診療所の風景から、診療所の裏の井戸端の風景、長屋のばたばたとスムースに場はながれる。
    診療所に現れ、むくれ、手術に立ち会って気を失う。酒におぼれ、狂った女に殺されかけ助けられる。
    長屋の男の死、金持ちからの金の巻き上げ、だんだんと赤ひげの力に心酔していく。
    最後には御典医への道を断りあれほど嫌っていた診療所づとめを選ぶ。
    しっかりしたしゃべりだしまずまずだとは思うけれど、赤ひげの殺陣などあたりから黒澤映画の印象がぬけず、比較比較で見てしまった。

33)2013年11月17日(日)  シアター・トラム
   「クリプトグラム」 ディヴィッド・マメット・作 小川絵梨子・演出  二村周作・美術 安田成美
      明日父親と湖に行く少年と話しているのは話しているのは父では無い。眠れない、屋根裏から見つけた破けた毛布。
     先週行った湖でナイフをもらい受けたと言うが、実は湖には行っていない。女と泊まっていたのをかくすために
     アリバイに使われた。女と男と夫は仲のいい友人だったようだが。時々二階に上がっていく少年と女。
    そのときに赤い光が壁を這う。
     うーん、やっぱり暗号解けない。客席も終わったときしんとしてショックのまま。ロビーは「なんだったんだろう」
    の会話があふれていた。


32)2013年11月4日(月)  サンシャイン劇場 ☆
   「ショーシャンクの空に」 喜安浩平・脚本 河原雅彦・演出  松井るみ・美術 成河 益岡徹
      二階建ての檻のセット。紗幕が上げ下げされて人が出てくる。三人のポスターの住人が
     語り手を務める。リタ・ヘイワード、マリリン・モンロー、ラクエル・ウェルチ。凶悪犯を閉じこめた
     ショーシャンク刑務所の中の一室に貼られたポスター達が、男だけの世界に色気を加える。
      話全体は調達屋が仮出所のあと勤めている店で書く記録の形をとっている。
     50年間も刑務所にいてなおかつ、自分が殺した妻、隣家の奥さんと娘の幻影に悩まされ続けた
     男は、出所した自由によって自分を失ってしまっている。
      冒頭から次々と仕掛けられた仕掛けによって混乱しそうになりながら正確に筋を追える。
     けしてきれいな話ではない。無実の罪で27年間も放り込まれ下水道を汚物にまみれながら
     逃げた男だからだけでもない。見事な頭脳によって刑務官の節税を助けていくのは拍手が出る。
      黒曜石の下の秘密、仮出所中の失踪、けしてきれいではない。でも、充分持って行けるの は
     益岡徹の渋さからかなあ。
      ラスト、海、奥行きのないサンシャイン劇場を思う。紗やスモークや立体にしてほしいなあ。
31)2013年11月3日(日)  新橋演舞場
   「さらば八月の大地」 
鄭 義信・作 山田洋次・演出  中村勘九郎・今井翼・木場勝己・壇れい
      満州映画撮影所にカメラ助手がやってくる。中国人を満人と呼び、助監督と喧嘩になる。
     すでに日本は劣勢となりわずか13年の命だった満州国が消えるという時期。勘九郎が中国人
     として片言の日本語をしゃべる。スターに上りかけている女優は撮影所の理事長に近づいていく。
     木場勝己、さすがなのだけれど、あやしげ、という域を出ない。
       日本人監督のおざなりな撮り方、と、中国人脚本家とのぶつかり、いいかげんな女優の演技。
     中国人は深いお辞儀をしない、むやみに笑顔を見せない。
     そんな主張が日本人監督の女とはこうある べきという、押し切りで変わっていくのだが、
     何かただそれだけのような感じがする。「焼き肉ドラゴン」のようなものすごさを感じない。
      ラスト、コーリャンの畑が広がる、これが立体だったらどんなにいいかと思った。
 

)2013年10月27日(日)  HDD 新国立劇場 ☆☆
   「雨」 井上ひさし・作  栗山民也・演出 松井るみ・美術 市川亀治郎・永作博美
     歌舞伎の亀治郎、雨を見るのは二回目。あれはいつのことだったろう。船橋市民文化ホールで見たのでは無かったかしら。
    10年以上前。カメラでズームされていて、みんなヘッドセットしているが、でも楽しめた。
    両国の橋の下で代々拾い屋をしていた徳が、失踪中の紅花問屋の旦那と間違えられ、ものは試しと山形まで出張って
    旦那になりきる。妻も大喜びで迎えたものの夜の寝床でわかってしまったはず。それなのになりすましは成立し続ける。
    わからないことは天狗に魂を奪われたと称し、人々の歌と踊りでの旦那のうわさ話から、情報を収集し、旦那の残したメモから
    知恵も回復していく。自分が作った用水路の事も忘れ、人々に「本人じゃ無い」と疑われながら妻の守りで切り抜けていく。
    江戸からの乞食仲間を殺し、浮気相手を殺し、失踪中の旦那さえ殺しと、いく内に次々と話が逆転して、収束していく。
     面白い。

30)2013年10月18日(金)  新橋演舞場
   「大和三銃士 紅の獅子たち」 齋藤雅文・脚本 きだつよし・演出  中村獅童・藤井隆・早乙女太一
      関ヶ原の合戦、豊臣方に三人の獅子たちが居たという設定。家康を打ち損ね、妻は五年待てずに仲間の男に嫁いでいて
    などという筋もあるのだが、ただ暴れているだけ。アンコール獅童が座長らしく仕事をしている。


)2013年10月17日(木)
  HDD kaat中スタジオ イキウメ ☆
   「暗いところからやってくる」 前川知宏・作  小川絵梨子・演出
     見えない物が居る。触れてしまうと聞こえるようになってしまう。新米はうっかり少年に触れてしまった。
    少年はパニック。やむなく新米は少年を脅す。こんなどこにも持って行きようが無い話を、
    どう納めるのか。新米の誤解と、むちゃくちゃな説得。そしておばあちゃんをぼけたと思わせてしまった
    少年の罪の告白、そしてくるだろう贖罪。見えない物がある事を感じつつ前に進む。


29)2013年10月14日(月)  東京芸術劇場プレイハウス
   「MIWA」 
野田秀樹・作・演出  堀尾幸男・美術 宮沢りえ・古田新太・井上真央
      
美輪明宏へのオマージュ。ペニスの踏み絵から男と女が選別され、踏めなかった男でもない女でもない
     宮沢りえが、男でもある女でもある古田新太と天から人間界に落ちていく様は確かに野田秀樹。
     あとはただよいとまけまでたんたんと現在までを追いかけていくだけ。それは古田新太が歌うわけでも
     宮沢りえが歌うわけでもなく美輪明宏の声がスピーカーから流れてくるところに役者も野田もしぼんで
     いってしまう。


)2013年9月22日(月)
  HDD 大阪BRAVA パルコプロデュース
   「ホロヴィッツとの対話」 三谷幸喜・作・演出 段田安則・渡辺謙・高泉淳子・和久井映見
     生中継というのがうりもの?天才ピアニストは細かくわがまま、エビアンが薄められていることにさえ気がつく。
    ホロヴィッツの妻ワンダは他人の家の風水やらキッチンやら子育てやらぐいぐい入り込む
    調律師夫婦はそんな二人が来て大騒ぎ。生で見て笑って終わるべき物かな。

)2013年9月8日(日)  HDD 青山円形劇場 イキウメ ☆☆
   「太陽 The Sun」 前川知宏・作・演出
     未来。バイオテロにより絶滅に瀕した人類の生き残り。夜に生きる新人類と旧人類が
    同じ日本に住んでいると設定し、互いが互いに憎み合い、うらやみあう関係を描いていく。
    その世界が収まっているために、片側への移行が恐ろしく、日常が不気味に感じられる。
    紫外線で焼き殺した死体を片付けるオープニング、手首、変身、ショッキングな事を交えつつ
    話していることはまじめで優しくて信じられる。


28)2013年8月12日(月)  新橋演舞場 ☆☆
   「さくら橋」 松原敏春 作 『流水橋』より 齋藤雅文 補綴
・演出  古川雅之・美術 甲斐正人・音楽
                                    藤山直美・加賀まりこ・安達祐実・石倉三郎・ベンガル
      芸を楽しみながら意地を楽しむ。浅草さくら橋に掛け持ちしに来た女がものの見事に捨てられる。身投げしようともがくところを
     見物していた金貸しの女将が身重の女を汁粉屋に誘い話を聞く。妄想入交の説明に笑いながら事情がわかる。金貸しに出産まで
     とやっかいになる。生まれた子は金貸しの子として育てられ、産みの母親はおばさんとよばれる。生まれた子も都内で三本の指に入る
     名門高校には受かった物の遊び人達とつきあい、しかる産みの母を無視し、金貸しの母に甘える。そんな時女将は倒れる。
      女もまた男とよりを戻しまた捨てられ、娘は娘でててなし子をはらみ産み、そんな葬式のあと番頭は香典を持っていなくなり、悲喜劇は
    つぎつぎとおきて、わらって泣いて、最後の花見で現れた幽霊達と、生きた亡霊のようななじみの衆の変化を楽しみながら、最後は
    AKB48をみんなで踊って絵が決まる。集団シーンが確実で端の一人一人が絵になっていて楽しい。

27)2013年8月7日(水)  船橋市民文化ホール トム・プロジェクト
   「100枚目の写真」 児玉隆也・原作 ふたくちつよし・作・演出
     一度は上演したいと読み込んだ本期待していったのだが……。まずいきなり壁のスピーカーから声が聞こえてびっくり。
    最初はナレーションだから仕方ないかと思っていると地の芝居でもマイク&スピーカー。写真はきれいにホリに出るのだが
    そのために日本の家の壁を全てきり落とし、切り口を波線であらわすセットが限界を超えた。
     せめて写真部分以外のところはつくりこんでほしい。6人で全ての登場人物をのりきる設定だが、マイクのせいもあるのか
    同じ役者がいろいろやってる苦しい事情としか写らなかった。

26)2013年7月26日(日)  新橋演舞場 ☆
   「香華」 
有吉佐和子・原作 大藪郁子・脚本 石井ふく子・演出  池畑慎之介・高橋恵子・佐藤B作
      池畑慎之介がそのままおばさんに見える。身重な体の取り回しはわらい取りに型にはまっているかと思うけれどいいかなと。
    芝居がかった登場はエンディングのため。
    高橋恵子が18の半玉から48歳まで。佐藤B作がそれほどいやみなく楽しませてくれる。それにしてもいとはんを思い続けているなんて
    なんなんだろうなあ。


)2013年7月6日(土)
  HDD 東京芸術劇場 ☆☆
   「トロイアの女たち」 エウリピデス・作 蜷川幸雄・演出  中越司・美術 白石加代子
      ユダヤ人の俳優と、パレスチナ人の俳優が、日本で稽古を積み三カ国語が並べられて、
     東京とテルアビブで公演される。テレビではガザ地区への攻撃が流される中、稽古が続けられた。
     ヘカベは白石加代子、ギリシャの伝令はアラブ人、ヘカベの姉娘はユダヤ人。コロスの台詞、まず市川夏江などの
     日本人がしゃべり、それをユダヤ人が繰り返し、最後にパレスチナ人が繰り替えす。同じ台詞ながらしゃべり方、持ち物、着物、動きが
     異なってこの劇の試みが鮮明になっていく。
     紀元前5世紀に書かれたギリシャ悲劇。イスラエルで今おきていることを見よ、なにも変わらないではないか、町が崩壊されていく景色
     3.11の津波と火事と放射能から逃げる人々とかわらないではないか、とたたみかける。
      唯一、この三者が同じ稽古場に立ち続けたこと、同じ拍手を浴び続けたことに望みが見いだされる。
     

25)2013年7月5日(金)  本多劇場 Nyron100℃ ☆☆
   「わが闇」 ケラリーノ・サンドロピッチ・作・演出  中根聡子・美術
      中に入ると二階建ての大きな家。下手奥に階段、三姉妹が柱の間に座っていてこの屋敷に来たときのことを語る。
     末娘は三歳。文筆家の父の叔母の家。叔母は死の床についていて父が引き継ぐことになる。
     文を書くのに最適と思った父とは逆に母は神経質に子育てや花瓶の置き方にこだわり狂っていく。
      長女は10歳の時から小説を書き、父娘二代の小説家として取材を受けるようになる。書生が何十年もこの家族を
    見守り支えていく。父の別居、母の入院、そして父が連れてきた新しい女、母の死。この流れるような恐ろしさまでが
    前置きで30分ほど立ったこのときにタイトルが示され劇が始まる。
     父はすでに病に倒れ、長女は文筆に衰えを感じ、次女は不幸な結婚に悩み、末娘は芸能活動のさなかに不倫スキャンダルで
   逃げ帰ってくる。父を追いかけて映画をとろうとする男を時間軸に、それぞれの闇と、それを受け入れての許しが示される。

)2013年6月2日(日)  HDD シアター・コクーン ☆☆
   「黴菌」 ケラリーノサンドロピッチ・作・演出  伊藤雅子・美術
      昭和20年3月大本営の発表がラジオから流れている。うるさくて会話も聞こえない。
     空襲警報の飛び交う中、紅茶を楽しむ豪邸がある。脳病院の院長の家、父は軍需産業の持ち主で現在は倒れて
     階下には降りてこない。男4人の兄弟、兄弟の中には大きな傷がある。3男が病院の患者によって殺されていた。
     次男はそれによって親父と会話もできなくなっている。
      3月舞台はこの家に身を寄せる夫婦から始まる。老いた父の愛人は我が物顔に振る舞っている。愛人の兄がやってくる。
     国民学校の先生と結婚すると言って。けれどその先生は4男坊と帰ってくる。長男の院長は薬をの人体実験を試みている。
    次男は影武者、自由に外にも出れない。8月戦後価値観が変わりつつある。そして12月、没落と再生。激動の日々を一つの部屋で
    一つの家族で興味をひきつけたままみせいてく。頭の中の黴菌というキーワード。
     

24)2013年5月26日(日)  新橋演舞場
   「ザ・オダサク」 金秀吉・脚本 錦織一清・演出  内博貴
      あまり受けないつなぎが多いけれど、和製ミュージカルとしては普通。
    森本薫が京都三高の一年上である事を軸に、カフェで知り合った妻との出会いと別れ話。
    関東軍に燃える学生と、マルクスを信奉する学生、時代を歌と踊りであっさりと描いて、その間で
    織田作之助は売れ始め、森本や妻ととも若死にする。33歳。

23)2013年5月18日(土)  東京宝塚劇場
   「モンテ・クリスト伯」 アレクサンドル・デュマ・作 石田昌也・脚本・演出  宙組公演
      1時間半で長編小説を一気に仕上げる。歌が聴き取りやすい。投獄され焼き印を押されるシーンから、
     一気にマルセイユの甲板、幸福の絶頂のシーンへ。前船長が倒れナポレオンのいる島によって手紙を預かった
    ところを、誇張した密告で次から次へと政治犯とでっち上げられていく。ハイスクールの演劇の先生と生徒の解説役を使って
    たのしくぽんぽんと、ファリア神父との出会い、財宝の入手、ダンテスを陥れた人々の出世、再会、復讐と進む。
    劇場は満席。わかりやすさが客を呼べるのだろうな。    

22)2013年5月18日(土)  歌舞伎座
   「鶴亀」「寺子屋」「三人吉三巴白浪 庚申塚」
      寺子屋、松王丸は幸四郎、源蔵は三津五郎。もう寺子屋何回目だろ。
      庚申塚、お嬢吉三は菊五郎、やっぱりお嬢は若い人でみたいなあ。柿おとしなのでここだけ。

21)2013年5月16(木)  シアター・トラム イキウメ ☆
   「獣の柱 まとめ*図書館的人生下」 前川知大・作・演出
      灰色の図書館のセットとたくさんの布。いきなり不思議めいた会話に、ん、これは?とひきこまれる。
    要は何者かによって地球に送り込まれた隕石。人を幸福感にひたらせ何もできなくさせてしまう。仕事をしなくなった人々の
    生活は崩壊。この隕石の巨大化した柱は人口密集地にやってくる。だから人々は分散して慎ましく暮らすようになる。
    なんとかして、昔の都市の繁栄をと思う人と、このままでいいのではないかと思う人。隕石の力を安楽死に利用する人も現れる。

20)2013年5月15日(水)  新国立劇場中劇場 ☆
   「アジア温泉」 鄭義信・作 ソン・ジンチェク・演出  池田ともゆき・美術 勝村政信・ソンハ・千葉哲也・ちすん・キム・ジンテ
      南の島。韓国語がメインの国。そこに開発に来る人間が日本語をしゃべる。焼き肉ドラゴンと違ってここでは韓国語がメイン。
    字幕を必死に追いかける。韓国と日本の今を感じて二つの言葉が飛び交うこの空間こそすごいと思ってしまう。
    中劇場の高い天井から布の柱が降りてきてご神木を表す。敵同士の恋人達が死んで死後結婚式が執り行われるラスト。
    それが迫力がある。ああこの芝居はこの場面のためにかかれたんだと思う。地元の伝統あるいは因習と、金と開発の対立。
    または二つの国の文化が対立しそれが踊りと歌で彩られていく。敵同士にあたる男と女がひかれあい軋轢の中で死んでいく。
     その死に方に、え?という軽さ、ものの弾み?そしてそれを追いかけて自刃する女にえ?とも思うけれど、祈りとセンターの布が
    ひろがって劇場をくるんでいく様に、なるほどこれは最初から鎮魂と希望の祝祭劇なんだと妙に納得。

17,18,19)2013年5月5日(日)6日(月)  すずなり 渡辺源四郎商店 ☆☆
   「オトナの高校演劇祭」 
     
 「ひろさきのあゆみ」柴幸男・作 畑澤聖悟・潤色 工藤千夏・台本・演出
         10人で演じたあゆみを、一人で演じる。会話がなくなってしまうところを録音で複数化して変化をつける。
         がんばってるなあという小さいときの違和感と大人の女性になったときしっくり感と。老いて車いすになったときから
         残酷さをそのまま出している感。アフタートークは中屋敷法仁、贋作マクベスの青森県大会、審査をしたときが懐かしい。
   「河童 ~はたらく女の人編」 畑澤聖悟・作・演出
         高校の教室で起きたことをオフィスで起きた設定にする。部長がなんとかこらえている様が話を立体的にしている。
         オープニングは少し乱暴かなといった印象だけれど、どんな設定にも変えてしまう力に感心。アフタートークは亀尾佳宏、
         おちょくられている感でにこにこ。
  
 「修学旅行 ~TJ-REMIX Ver 畑澤聖悟・作 多田淳之介・構成・演出
         卒業式風な出だし。高校生でない幅広い年齢層が演じる事を、役者の実年齢を紹介する事でクリアさせていこうとする。
        はじめ群読風にクスミのオープニングが作られ、え、どこまで?と焦るが、「着衣」の号令の元通常の修学旅行に入っていく。
        音は意欲的に使われ、あきら等男優の登場はヘリコプターや戦時の音が使われ、この劇が戦争と密着していることを忘れさせまいとする。
         オトナの芝居の嫌みは残るけれど、高校生が演じている感じがしっかり残り、笑いも十分とれる。枕投げでは布団のみならず
        畳まで投げられ、その姿は、津波の音とともに3.11後の廃墟に見えてくる。9.11と3.11を常に感じさせようとする演出の意図が明らかで
        全くといっていいほど台詞の変更がないこの芝居に奥行きを与えた。アフタートークは私、なんとかごまかせたのかしらん。
         トータルで予約した高校生無料という恩恵もあって客層の五分の一ほどが高校生、そして毎回大人達で満席というすずなり始まって以来の
        雰囲気の中で進んだこの回、いい。

16)2013年4月24日(水)  新橋演舞場
   「滝沢演舞場2013」 滝沢秀明・演出  滝沢秀明
      引き手をみせる派手なフライングやダンス。仮面のダンスがマジックでおーっ。
     歌舞伎が混ざってくると、無理だ、芸と遊びの違いを見せつけられる。

15)2013年4月21日(日)  本多劇場 劇団鳥獣戯画 ☆
   「好色五人女」 知念正文・作・演出  石丸有里子
      扇でぐるぐるまわると楽しくなっちゃう。花びらの女性達さまざまな工夫が楽しい。少女の恋心をありこがたのしく演ずる。
    キングコング、笑ったけど、うーん、もっといい役やりたいな。

14)2013年4月7日(日)  アトリエ春風舎 世田谷シルク
   「ブラック・サバンナ」 堀川炎・作・演出  木下祐子
      大量の隕石がふりそそぎ人類はほぼ絶滅する。たまたまエレベーターに仕込まれた脱出装置で何人かはアフリカに到着する。
     共同生活を始めるうち少しずつ食われていき来訪者と出会って終わる。
      無理矢理話を作りあげようとしている。一つ一つの会話に仕掛け以外の台詞がないこと、
     ダンスでつなごうとしていることが何かいらいらした。

13)2013年4月7日(日)  赤坂レッドシアター 地人会新社 ☆
   「根っこ」 アーノルド・ウエスカー・作 鵜山仁・演出  島次郎・美術 占部房子・渡辺えり・金内喜久夫
      渡辺と金内の掛け合いで笑ってしまう。水くみだけでもおもしろい。田舎から都会に出て行って社会主義者と
     恋に落ちた娘。けれど三年たっても結婚しない。人の噂しかしない父や母や兄姉の姿に失望し考えることを強要するが、
     彼女に根っこはない。
      気になったのが、受け売りだけでしゃべっている彼女はラスト、根っこをつかんだのだろうか。
    それとも結局受け売りしかできなくなったのだろうか。ラスト付近のあきらめの家族の視線をどう受け止めていいのだろうか。
    不安でしゃべりまくる彼女、しゃがれ声で怒鳴りまくるのかな。

12)2013年4月4日(木)  本多劇場 AMUSE*PEOPLE PURPLE  ☆☆
   「ORANGE」 宇田学・作・演出  奥村泰彦・美術 音尾琢真
      神戸のレスキュー部隊の日常訓練から始まる。スクワットを1000回、どっちが先に値を上げるかを賭ける。
     ミス沖縄のミスや、子煩悩な父や、笑いを前半30分に配す。レスキューの訓練風景をまじえ、新人教育の一環として
     阪神大震災で消防士達が出会ったことが再現される。地震、停電、交通麻痺、倒壊、多くの人を見過ごさざるを得なかった。
     その苦しみ、それがあっての今。今も火事は起き続け仲間を失い、トラウマを背負い、それでも、また出動していく。
      わかって居ての震災下の姿、やはりそれは涙を引き起こす。

11)2013年3月27日(水)  すずなり 桃園会
   「よぶには、とおい」 深津篤史・作・演出
      病院の屋上。青年団のような空気。核になるのは三人の病人と不思議なポジションにある生きているか死んでいるかわからない病人。
     20年前家を出て行っていきなり死の床にいることを告げられた兄と妹。しかもその父は家を出てすぐ再婚し新しい妹をもうけていた。
     嫌っている父を見舞うことに戸惑っている兄と妹、そしてもう一人の妹とその彼。
      個室に移され死がくなったときに現れた別れた夫。
      死を怖がる軟弱男とそれを愛する女、軟弱男が好きだった女の子をゲットした同僚。
     じょじょにじょじょにこれらの事情が明らかになっていく。それを海の音、向こうの世界と詩がつなぐ。
      もう一人の妹の彼にも別れた父のトラウマを重ねる必要があったのかなあ。詩の表現も何か固い。

10)2013年3月19日(火)  すずなり 燐光群
   「カウラの班長会議」 坂手洋二・作・演出  島次郎・美術 円城寺あや・鴨川てんし
      すずなりってこんなに奥が深かったっけと思う収容所の宿舎の内部。
     若い役者達が懸命に日本兵を表現しようとする。この人たちは本当のにおいを理解しているんだろうか。
     えんえんと人間の条件を見たあとでこれを見るとこいつらは嘘だと思ってしまう。
      途中で集団パフォーマンスが入り手のひらが光り、行進が行われるのだけれど、それは場面を進めたり戻したり
     するのに必要なのかもしれない。映画を勉強している女学生がこの話を作っている。そのアバターでしかないとすると
     この嘘っぽさは救われるのか、エンディングはまさにそれで、過去が亡霊で未来はこっちだと言うのだけれど。

9)2013年3月12日(火)  CBGKシブゲキ Nyron100℃
   「デカメロン21」 ケラリーノサンドロピッチ・作・演出  
      渋谷ユニクロの6階にシブゲキはある。ポップなロビー、中は見やすい。ステージは紀伊國屋ほど。
     若い客層。女の子も多い。幕前にデカメロンの白黒映画のいくつかのカットが流される。え、これを見るの?
     映像の途中で開演のアナウンスが流れ闇になる。闇の中からあえぎ声が高まって、突然「待って」と男が現れ
     演じる事を突き止めていく。ゲキを対象化しつつ、少年が性に目覚めていきその父が罪を犯すエピソードと
     娘の友達と援助交際した男のエピソードを中心にまあめちゃくちゃにつないでくる。
      性を扱いながらつなぎ合わせ。ボツドールの性を追いかけながらリアルに厳しく突き止めていくのとは違う。
    どうせならつなぐだけじゃなくボツドール風なのがいいかしら。それともこの程度でいいのかしらん。

)2013年3月1日(水)  HDD ☆
   「エッグ」 野田秀樹・作・演出 椎名林檎・音楽  堀尾幸男・美術 妻夫木聡・深津絵里・橋爪功・秋山菜津子・
       録画ビデオでみる。生で見たかったけれど。前半、いつものハイテンションでスタジアムの裏が描かれる。
      さらにその外枠は改装なった建物の梁から落ちてきた原稿。卵をわらずに中を分ける。そんな技術を持った田舎者が
      スターになっていく。歌手、オーナー、監督、が支配をしていきながらいったいこの話はどこへ持って行かれるのかわからなくなる。
       エッグの起源が卵を使った培養の技術だとわかってきた頃から急に話はわかりやすくなる。満州で毒ガスをつくり人体実験を
      繰り返していた部隊。そこに足を踏み入れた若者。大変なテーマを、説教でなく目の前に展開させていく。

8)2013年2月27日(水)  本多劇場 G2プロデュース
   「デキルカギリ」 G2・作・演出  中根聡子・美術
      ぼけた父が水の中に沈んだ村を思い出している。長男は行方不明。
     軽い会話と無理矢理とろうとする笑いの中で長男は放射性廃棄物の危険を主張し
    高速増殖炉に反対する活動家とわかってくる。プルトニウムを盗み出しているらしいとわかってくる。
    謎解きとくすぐりと社会性、燃焼しきれない感じ。

7)2013年2月21日(木)  シアター・クリエ ☆
   「ザナ」 ティム・アシート・脚本・音楽・歌詞 小林香・演出
      久しぶりにミュージカルを楽しむ。同性愛が当たり前で、異性愛が恐れられる町、恋のドタバタ、力強い歌。
     そうか、音楽を楽しめればいいんだとの結論。

6)2013年2月18日(月)  銀河劇場
   「3150万秒と少し」 ラルフ・ブラウン・原案 藤井清美・脚本・演出  升平香織・美術 中川隆一・照明
      雪崩でクラスの友達と担任をいっぺんに失った。自分だけ雪の中から生き返った。一人だけ助け出せた。
     雪崩に巻き込まれたら15分以内に出てこないと命を失う。運ばれた病院に死んだ友達の家族と自分の母と妹が来た。
     ほとんど無傷の自分が許せない。生き残ったものの苦しみ。学校へ戻っても苦しみは続く。死のうと思う。もう一人も
     そう思っていた。そいつが言う、まて、3150万秒待て、一年たったら岬から飛び降りて死のう。でもその前にやりたいことやろう。
      教室で暴れるだけでなく、火事を起こし、動物を殺そうとし、派手な格好で歌い踊りまわりの怒りを買う。大人を拒否し、親しくしようとする
     新しいクラスのメンバーに挑みかかる。家出をしどこまでも遠くへ行こうとする。でも、そんな彼を身を粉にして支えていた母が倒れる。
     何かが変わってくる。思い出の中のかの女はかれんで美しかったのにぶれ始める。
      葬式にも行けなかった彼女の誕生日に、彼女が大好きだと言っていたケーキ屋を探し当て、
     彼女の家を訪ねる。そこには娘を失って傷心の彼女の父が居た。持って帰れ。口論となる。一年たつうちに二人は徐々に大きくなっていく。
     そして運命の日がやってくる。
      強い外枠。メッセージ性強い中身。青年劇場ならまっすぐそのことを言ってくるだろうな。このホリプロの若手達、身体が動く。
     パイプを使っての鉄棒、ターン、バック転、バック宙、、ダンス。そんなものは青年劇場にはなかったろう。
      強い外枠に対し、ものすごい数の他場面が現れる。外の強さと、中身とが釣り合わなくなる。ケーキのシーン、彼女との出会いのシーン、
     彼があなたを助け出したのは偶然じゃないのシーン、など、見るべきシーンはいくつかある。
     なぜ12のリストがあったのかも外枠のひっくり返しとしていい。もとの映画を見たくなった。

5)2013年2月14日(木)  シアターコクーン アトリエ・ダンカン プロデュース 
   「教授 ~流行歌の時代とある教授の人生」 五木寛之・作
      鈴木勝秀・構成・演出 二村周作・美術 中村中・ピアノ弾き語り・音楽 椎名桔平・田中麗奈
     タッパの高い地下の研究室のセット。中央高見にピアノ。寄生虫の瓶が妖しくひかる三つの動く棚。
     青い妖しい光の中でビーカーに寄生虫を入れて飲む。
     寄生虫を身体に住まわせて海外から日本に持ち込む。のみならず死期を早めるために飲む教授。
     学生運動に敗れた学生は転向し官僚となり、女子学生は教授に寄生する。場が切れるごとに入る
     ピアノと歌が全てを引っ張っていく。上条恒彦に旅立ちの歌を歌わせたり、五木寛之はすごいらしいとうわささせたり
     まあ楽しんでいると。ところが、女が気持ちをぶつけだした瞬間にがなりたて、突然芝居が滑落する。
      見合いの話で兄とけんかするところも怒鳴りっぱなし。教授に実らぬ愛をぶつけるところも。
     もっと全てを含めることもできたろうに。たった一人で壊すことができるんだなあ。
      アフターライブは由紀さおり。おしゃべりと「手紙」の歌。引っ込み方。あ、この人はできる人。
     見ることができて得した気分になった。

4)2013年2月12日(火)  船橋市民文化ホール 俳優座劇場プロデュース 
   「わが町」 ソーントンー・ワイルダー・作  西川信廣・演出 上田徹・音楽 土井祐子 原康義 花山佳子
     なんども見たことがある、読んだことがあると思っていたが、実は最後まで見たのは初めてだったことに気がついた。
    脚立に乗ってしゃべっている姿を何度も見た気がするのだが。わかりやすい歌詞、聞きやすい知っているようなメロディー。
    ストロベリーアイスソーダの歌など楽しい。結婚式も直前になって震え上がって戸惑うのもよい。けれど、二人でいるのは自然で
    一人で暮らすのは不自然と、両家の親たちが歌い上げると、そんな幸せを幸せと思える時代はすでに遠く去ったのだと思ってしまう。
     わからなくなったのは第三幕、死んで、生の姿を見に行ったとき誰も死者の自分に気がついてくれないので逃げ帰ってきて、
    生きている一瞬一瞬が素晴らしかったかのようなことを言う。死んでから気がつくようなことじゃない。

3)2013年2月11日(月)  OFFOFFシアター 
   「モジョ ミキボー」 オーウェン・マカファーティ・作  鵜山仁・演出
     「俺たちに明日はない」に感化された二人のガキが映画館に出入りし、ガキ同士でけんかし、
    秘密基地を作り、娼婦に声をかけ、遊びまくる。片方は北アイルランドのプロテスタント、イギリス派。
    片方はカソリック、独立派。カソリックの父はガスが止められてしまうほどの貧乏なのに酒屋に入り浸り、
     何かというとオーストラリアに行こうとかおおぼらをふく。プロテスタント派に属することになる道上にすむ父は
    母をごまかしながら息子を愛人との逢い引きのアリバイに使う。ガキ同士のけんかはつぎつぎと事件が起きていくが
    北アイルランドのテロ、内戦はエスカレートするばかり。橋が爆破されカソリック派に属するのんべの親父は死に、
    二人の関係も壊れる。宗教の対立に巻き込まれる二人。
    数年後街で出会ったとき二人は「俺たちに明日はない」の世界に戻っていく。
     それらをたった二人で演ずる。ガキ同士の対決も瞬時に入れ替わる。父さんと語りかければ父役になり、母さんに聞け
    といった瞬間に母になる。交代のリズムが激しくなるにつれ楽しくなる。劇の構造も二人で20役をこなすスタイルもよいのに、
    なにかがんばってるなあで終わってしまうのはなんでだろう。早口のスラングの応酬が落ち着きを奪うのだろうか。

2)2013年2月8日(金)  
シアタートラム ペンギンプルペイルパイルズ 
   「cover」 
倉持裕・作・演出 中根聡子・美術
     
人里離れた屋敷の離れ、ツタが絡まって今にも家が絞め殺されそう。30年前にいなくなった姉を追いかけて来た兄弟。
      この屋敷の人たちはみな不思議で。謎解きのために懐中電灯4つ、そして軽々と動く二台の車のカーチェイス、このつかみ
      映像的で安っぽくないか。鹿をはねるのも。ところがこれが最後に重要なモチーフを持ってくる。笑いとらなくてもいいのじゃないのかな。
     車がなくなると崖の上。愛人と言いながらのさるみたいな家政婦登場。崖から子供部屋の机が浮き上がり、壁がよって来て部屋になる。
     不思議な姉が現れ、妾の子の長男があらわれ、伏線を絡ませながら、この人達はいったい何なんだと推理を働かせられる。
      30年前の手紙ってなんだったのかはそうぞうするしかないか。


1)2013年2月6日(水)  新橋演舞場 喜劇名作公演 ☆☆☆
   「お種と仙太郎」 茂林寺文福・作 米田夏・演出 中村梅雀・英太郎
    
「大当たり高津の富くじ」 平戸敬二・作 中村梅雀
   
「おやじの女」 安藤鶴夫・原作 渋谷天外・水谷八重子・波野久里子   

       富くじ、人助けは気持ちがいい、と言っているのが客には前段のお母さんの登場でわかっている。
      きっと富くじ当たるぞとばればれだけれど楽しい。富くじの場では笑いすぎて涙が出てくる。芸ってすごいなあと。
       おやじの女、前半の波野久里子の恰幅の良さが、水谷八重子の登場で一気にかすれていく。
      酒を受け、自分でつぎ、あの人はとくるだけで、なんで笑えてしまうんだろう。一升瓶から直につぎ始める波野久里子も
     同じ事やっているのだけれど笑いの幅が違う。すごい。そして、人生いいなと思えてしまう。


2012
今年見ておもしろかった7本
 今年見たのは22本、すくなかったけれどよかったなあ
  乾杯

 「籠釣瓶花街酔醒」 菊之助の美しさに
 「こんばんは、父さん」 枯れた平幹二朗に
 「遭難、」 
 
設定に
 「負傷者16人」
 くるしんだ益岡徹に
 「満ちる」 すまけいのたたずまいに
 「少しはみ出て殴られた」 
集団のおもしろさに
 「地獄のオルフェウス」
 
テネシーウィリアムズに


22)2012年12月16日(日)  東京芸術劇場ウエスト  ☆☆
   「地獄のオルフェウス」 テネシー・ウィリアムズ・作 岡本健一・演出 石原敬・美術 保坂知寿・中河内雅貴・占部房子
      
小劇場の天井が高く見える。高いところにシャンデリア。二階に夫婦の部屋と自転車のある空間。
     下手側の壁は床からぐーんと透けて見える磨りガラス。
      二人の口うるさい女がこの屋の夫婦の不仲を解説する。妻のイタリアから来た父は果樹園で焼き殺された。
     絶望で派手派手になった女が飛び込んでくる。妻の元恋人の妹。保安官の妻が留置場に止めたよそ者の男を連れてくる。
     ここで働かせてやってくれ。男を派手な女が紹介していく。あったことがあると。男は傷ついた子供時代を経て風来坊になった。
     足のない鳥、ギター、傷ついた女達を慰める言葉。店の女主人は彼を雇う。女と亭主の関係が明らかになるにつれ
     この男が幸せをもたらすのではないかと、夢を持たせる。だがそれは明らかに破滅に向かう道。
      にっちもさっちもいかない状況と、妊娠し神を感じるうれしさと、一気に終幕へと引っ張り込まれる。
     インディアンのイメージと音楽と、とんでもなく大きな杖の音と、やかれるイメージ。
      ああ、これがテネシーウィリアムズの、アメリカの、あの逃げ出せなかった人たちへの優しさと、いかりが
     まざった世界だと感じられる。欲望という名の電車より、さらに暴力的な強さで。

21)2012年12月5日(水)
 新橋演舞場
  「籠釣瓶花街酔醒」 河竹新七・作 菊五郎の佐野屋 菊之助の八つ橋 ☆☆
    菊之助がとにかくきれい。最初の花魁道中の登場から、すっきりしていていい。福助と吉右衛門で見ているが何かまるで違う。
   茶屋に来て声をかけるのも気っぷがいいし、愛想づかしもきれい。こんなに気持ちをたてて、やってくれるなんて。
   歌舞伎の台詞はとっくに決まっているのを聞くのだが、同じ台詞がまるで違って聞こえた。心がわかりやすかった。
  「奴道成寺」三津五郎
    リズム楽し。途中口上が入り、今朝のこともあって緊張した。立て三味線等の襲名の事だけであった。
      

20)2012年11月28日(水)  船橋市民文化ホール 青年座 
   「赤シャツ」 マキノノゾミ・作  宮田慶子・演出 川口夏江・美術 中川隆一・照明
     船文で盆が回るのを初めて見た気がする。ぼっちゃんの裏話。なにかそこに終わってしまう気がする。
    角を立てないで生きていこうとしたためにぼっちゃんや山嵐に殴られる。表の話の進行と同時に裏がこうなっていたと
    創造していく。うーん、でもそれにとらわれてはちゃめちゃになれない気がする。

19)2012年11月4日(日) 新橋演舞場
  「熊谷陣屋」
  「汐汲み」藤十郎
  「四千両小判梅葉」河竹黙阿弥・作 菊五郎・梅玉
     四谷見附のお堀端で大物の盗人とやや臆病な食い詰め侍が再会。お金蔵破って
    ついに四千両を侍の屋敷に運び込む。ここらいらあたり、大悪のどんなドラマがと
    期待はさせるけれど、次はもう唐丸籠に乗せられて雪道の中、
    8年前に分かれた妻・娘・義父に見送られ反省する所なんざ、えーっ。
     小伝馬町の牢の中は不思議な雰囲気で御金蔵破りと元々の人間の大きさをみせて
    言い渡しの場で博多の帯と立派な着物、牢仲間から「日本一」と声かけられてちょん。
     
18)2012年11月4日(日) 世田谷パブリックシアター 二兎社 ☆☆☆
  「こんばんは、父さん」 永井愛・作演出・大田創・美術 中川隆一・照明 平幹二朗・佐々木蔵之介
  廃墟と化した町工場、破れた窓ガラスから手がニュッと忍び込み窓鍵を開け、オレンジ色のベスト姿の
  おっちゃんが窓から侵入してくる。作業台に懐かしく触れ、ふと気がついた首つり用のロープに顔を
  突っ込んでいる所に、今時のソフトな怪しげ若者が顔を出しポーズを要求。スマホに納める。
   若い男はヤミ金の取り立て係、おっちゃんをアパートからつけてきたのだ。自慢の息子に電話すると脅し
  ついにかけてみると、工場のどこかから着信音。息子もここに逃げてきていた。
   三人がかわりばんこになぜこうなったかを明かしていくことになる。時には水をとりにいき、時には
  パトカーおびえて逃げ出し。二人になると話のなかで過去が浮かび上がる。開くはずのない壁から昔の姿が
  走り出てくる。
   腕のいい町工場の工場長。息子を私立にやり第二工場をたてやがてバブルではじけていく。
   職人になりたかった息子は、一流企業を上り、やがて投資に失敗して、破産、逃亡中。
   うかび上がってくるのはおかあさん、今は壊れた二階で母さんが職人や町の人達の人気者だったこと
  がわかってくるあたりでしみてくる。息子にあげようと取っていた高級時計を借金とりに渡した所から
  一気につらいだろうけれど、ささやかな未来がこの二人に感じられて幕。

 )2012年10月20日(金)  HDD  ☆☆
   「オケピ!」 三谷幸喜・作・演出 戸田恵子・布施明・ 
      
第一幕はそれほどはずまない。状況説明というか、さわがしいというか。一幕の後半、天海祐希の本当の私あたりから
     歌が魅力的になってくる。二幕に入ってぐんぐん話が進む布施明の娘との再会などないてしまう。天海と戸田恵子の
     やりあいなどおもしろくてしょうがない。どこかがよければいい、という歌が都合よくはめているなとおもいつつ楽しむ。

17)2012年10月18日(木)  東京芸術劇場イースト  ☆☆
   「遭難、」 本谷有希子・作・演出 松井るみ・美術 
      
リメイク後初めての芸劇。中央のエスカレーターがなくなって壁がシックなオレンジ系。
     小劇場の中は変わってはいない。客席の前に4階の空き部屋の職員室。窓壁があって客席が反射されている。
     このせまいタッパで?光が入って中に「うんこすれば」と片桐はいりの強烈な台詞は窓越し。マイクから流れる。
     教室をのぞき込んでいるというせっていそのまま。やがて窓壁全体が引き上げられてそのまま聞こえるようになる。
       いじめで飛び降りた息子は担任に相談していた、その手紙をゴミ箱から発見した、だからあなたが悪いと
     毎日乗り込んで騒ぎ立てついに学年主任を含む4人がはみ出されてきた第二職員室。
      さんざん責め立てて、病院に母親が向かった後、話は一気に展開する。手紙をもらったのは担任ではなくあなただと。
     ところが自分のトラウマを武器に女は攻撃に身を転じる。盗聴マイクから偽手紙、脅し、次から次へと周りを巻き込み、
     もともと持っていた母親の危うさ、学年主任の弱さを引き出して、どうすることもできない方向に進んでいく。
      トラウマの主役が病気で突如降板。代役に男を女性として使うことに。これによってますます笑いが濃くなって
     客席は最初から笑い始める。トラウマを語ることにより相手を傷つけていく女性、これはこれで女性キャストで見たかったかも。 

16)2012年10月12日(金)  PARCO劇場  ☆
   「ヒッキー ソトニデテミターノ」 岩井秀人・作・演出 吹越満 占部房子 
      
不思議な芝居。ひきこもりを経験していなければ書けない。ひきこもりが外に出て社会復帰したように見えるが
     一目で社会復帰できていないとわかる役作り。ついには笑いが起きてしまう。親たちはまともで神経質な演技。
     ひきこもりたちは、超越した演技。外に出てみたらやはり、苦い結論?

15)2012年10月7日(日)  相鉄本多劇場 鳥獣戯画 ☆
   「はい、ゑびすホテルです」 知念正文・作・演出 石丸有里子 竹内久美子 
      
相鉄本多ははじめて、道に迷ってぎりぎりで滑り込んだ。新発田町の古ホテル、つぶれそうなところに
     いきなり泊まり客のラッシュ。豪雪に閉じ込められ、つぶされそうなところに、救いの手が。
     いつもどおり暖かい。豪雪スキーヤーの踊り、みんなの歌、マジックショー。終演後に杉山さんたちとも飲めたこと。
     たのしい。

14)2012年9月23日(日)  新橋演舞場 秀山祭 ☆
   「時今也桔梗旗揚」 吉右衛門 信長にことごとく否定された明智光秀がついにたちあがる
   「娘道成寺」 
福助金烏帽子の時、ほそおもてに見えたなあ 
   

 )2012年9月9日(日)   ☆ HDD 
   「90ミニイッツ」 三谷幸喜・作・演出 西村・近藤
       宗教上の理由で輸血を拒む父。交通事故に遭った息子は下の階の手術室で瀕死の状態。
      医者は90分以内に手術すれば必ず助かると説得するが、父は携帯で妻の支持を得ながら書類にサインをしない。
      刻々と下の階から病状が報告され、危機が迫る。父が宗教を捨てるか、医師が規範を捨てるか、どちらになるかわからない。
      笑いがとれちゃっているが、かたい劇。医師の結論とそのあとのなまあたたかいけだるい感じ、そこに勝負ありか。

13)2012年7月5日(木)  上野ストアハウス MODE ☆
   「逃げ去る恋2012」 チェーホフ「三人姉妹」より 松本修・構成・演出 西田薫 占部房子
      
上野ストアハウスに初めて行った。チェーホフの三人姉妹が二組、若いのとそれなりのと。
     それなりのグループが三人姉妹の世界に入り込む。アンドレイの結婚式。そこでの次女と男との再会。
     新妻の元彼とのつきあい。チェーホフの甘酸っぱい切なさの世界に「ぶっちゃけ、どうなの」と登場人物が語り出しちゃう。
     なにげに面白かった。

 )2012年7月1日(日)   ☆☆ HDD 
   「ベッジ・パードン」 三谷幸喜・作・演出 野村萬斎・深津絵里・大泉洋・浅野和之
      
夏目漱石のロンドン留学。英語教師を熊本でしていたのにうまく話せない。
     下宿の使用人はコックニー訛り、元気いっぱい。彼女の前だと気楽に話せる金之助。
     手紙の返事が来ないと孤独にさいなまされていた彼は、少し頭が足りないからと夢の話だけに能弁となる彼女に
     自分を見る。階下の下宿人は秋田人で日本語にコンプレックスを持ち、英国人ともやり合えるが、金之助への手紙を
     隠してしまう。英国人の無理解と興味半分の接し方に疎外感を感じていた金之助の元に彼女の弟が嵐を運んでくる。
      漱石には英国人が皆同じ顔に見えるというヒントを逆手に使って英国人の役11役は全て一人でやったり、日本語モードと
     英語モードを切り替えたり、舞台の工夫の中で、漱石の人間観察とユーモアが育って行くのがみえいとおしくなる。

12)2012年6月28日(木)  スズナリ 南河内万歳一座
   「夕陽ヶ丘まぼろし営業所」 内藤裕敬・作・演出 
      
まぼろしのような目的地、それがどこなのか、どんなところなのかわからない。雨の中、河童を着て探していく。
     旅行業者の適当に組んだ4980円のパックに満足しないお客達はけれどどこに行きたいかはわからない。
     高校演劇審査体験記など含みつつ2時間、裏返せばパンフレット台になる街角の壁を動かして、どこにも行き場のない夕陽ヶ丘に着くのだけれど
     結局はもとの営業しに戻っている。つかれるかな。

 )2012年6月24日(日)  ポツドール ☆ HDD 
   「おしまいのとき」 三浦大輔・作・演出 
      
子どもを失って苦しむ夫婦と隣人の夫婦。そちらがわとこちらがわ。気持ちはわかるけれどあなたたちではない。
     でも何かしたい。それがおしまいの時へとすすむ一歩ともなる。
      呆然としている子を亡くした母といれずみをしたクーラーの修理人。それが立ち直るためとの理屈の元エスカレートしていく。
     当然の破綻。おしまいのとき女は米の飯をかっくらいつづける。
      あいかわらずの毒。露骨にわかる死んだ子どもが喜ぶために私は元気になる。というモノローグを言わせての展開とその逆転。
     流れはスムーズで緊迫していて、でもそれを、他人が踏み込めないんだ、おしまいまで行くんだとしたら、それを理屈を前に出して
     この女の言うことは狂ってるぞといちいち思わせる必要があったのか。ただのへ理屈と思われてはそんではないのか。

 )2012年5月27日(日)  第三舞台 ☆ HDD 
   「深呼吸する惑星」 鴻上尚史・作・演出 
      
未来。宇宙の果ての星。この星に来ると心に傷がある人は幻影を見る。
     昔の恋人が現れ再び振られ。謎解きしながら楽しむ

11)2012年5月20日(日)  スズナリ はえぎわ ☆
   「I'm where」 ノゾエ征爾・作・演出 
      
一面壁紙の正面。側面は黒布。正面入り口隠しに一間四方ほどの動く壁。床へベージュがベースのパッチワーク。
     全体として安っぽい感じ。床穴から次から次へと登場人物15人が現れ整列。自己紹介。鳥取出身の女から。
     25才です。のコメントにぎょっとし笑い。これがあとできいてくる。ただのオープニングかと思ったら結末からつくられた芝居だった。
      はじめはわけがわからない。私は鬼ですの発言をどうとらえるかのドタバタは赤鬼のまねかとも思ったし。
     主筋にやくざの母と姉がかんでくる。高校時代からいなくなったとだけわかる前半から母のぼけとたたかう娘に絞られていく。
     それとは別に、ふられ続け一人でいる事に焦っている女。グアム島に行って婚約指輪も渡せないですれ違っている二人。
     やくざの女の踊り子にからむ男達。それが母の息子となってバラバラな断片が結びついてくる。最後に一面の壁がせまり
      登場人物達の居場所を脅かす。だったらもっと奪っちまえば良いのに。

10)2012年5月16日(水)  新国立劇場小ホール ☆☆
   「負傷者16人」 エリアム・クライエム・作 宮田慶子・演出 益岡徹・井上芳雄・あめくみちこ 
      
登場人物は5人のみ。60分の逢瀬を経た娼婦と初老の男。息が切れていてさらにここに居たいとくどく。
     そんな色っぽさから始まりながら、いきなりナイフで傷つき訳のわからぬ言葉で毒づく男とであう。病院に運び込み
     ゲームをして心を開かせ自分のパン屋に招き入れる。
      働くもんかの姿勢からやってきたダンサーに引き込まれ、男はここに居着く。時の流れにプロジェクターとアラビア音楽を使う。
    女の部屋に一緒に暮らしている青年、そのちいさな幸せと対比するパレスチナのテロリストという自分。
    ユダヤ人で有りながら収容所でユダヤ人を焼き殺し民族を捨てたパン屋とぎりぎり攻防が続く。
      この構造に甘い終わりはないと予感しつつ、それを求め、結局は立ち尽くす。息を継げずにみる芝居。

9)2012年5月8日(火)  平成中村座 ☆
   「毛抜き」 橋之助 かっこいいかも弾正
   「志賀山三番叟」 
勘九郎 面白い踊り 
   「髪結い新座」 
  勘三郎 髪結いがあららあららで楽しい。
      
そこからいきなり娘を誘拐する悪となる。仲介に入った親分に金を投げつけて追っ払い
      大家に巻き上げられる。最後は親分と斬り合い肩口を切られたところでチョンパー

8)2012年5月6日(日)  新橋演舞場
   「椿説弓張り月」 曲亭馬琴・原作 三島由紀夫・作演出 市川染五郎 七之助 歌六
      
伊豆大島の場が発端。保元の乱に破れた源為朝が、妻を殺され、息子は自害、島を出て行く。
     為朝は九州で旧妻白縫姫とであうが、攻め上った海が嵐。白縫姫は身を投げて為朝を救う。
     突然、琉球。王妃を助けるのが為朝。白馬に乗ってあまがけていく。
      三島割腹の一年前の作。みんなよく自害する。

7)2012年5月6日(日)  スズナリ 渡辺源四郎商店
   「翔べ!原子力ロボむつ」 畑澤聖悟・作・演出  
      
1000年前、放射性廃棄物の最終処理施設を受け入れることを決意した町長が冷凍保存され、とかされた。
     双子のロボットがユニゾンでしゃべって楽しい。処理が出来ると思った廃棄物は10億年も残り何度冷凍されても
     なくならない。

6)2012年4月26日(木)  四季劇場 海 ☆
   「オペラ座の怪人」 ガストン・ルルー・原作 ハロルド・プリンス・演出 アンドリュー・ロイドウェーバー・作曲  マリア・ビョルンソン・美術  
      
仮設劇場のような劇場にびっくり。オペラ座のような客席で見たらすごかったろうな。
     さして大きくはない劇場の間口、幕開きは、解体されるオペラ座の品々の競売から始まる。猿のオルゴールから、汚れた幕たちははじけとび
     シャンデリアが舞い上がり、ドロップが床から立ち上がって柱が空にのぼっていく。
     迫力あるハンニバルのシーンから、オペラ座が売りに出されていること
     事件が次々と起こってマドンナが飛び出すこと。その代役に踊り子が抜擢され、見事に歌いきり、それを見ていた幼なじみが恋に燃え上がる。
      踊り子をプリマに育てていたのはこの劇場の地下に住む怪人。地下に導かれていくまで一気に持って行かれて飽きない。
    白黒版の映画を見、さらにミュージカル映画を見、その後の観劇。
    シャンデリアの豪華さ、狭い屋上の迫力などをどうしても思い出してしまう。舞台を先に見たかったな。

5)2012年3月28日(木)  座・高円寺1 MODE ☆☆
   「満ちる」 竹内銃一郎・作 松本修・演出 島次郎・美術  すまけい 山田キヌヲ
      
すまけいの鬼才の老映画監督がすごい。ほんとうになりそう。でれでれしゃべり、強情。
     強引さ故のセクハラ事件。いやそれどころか、民宿のおかみとの一夜の最中の救急車。
     別れた娘は脚本家として映画監督として賞をとりながら、この小島で会うのが小学校以来。
     わがままな父親を否定しながらその力は認めている娘。口では否定しながら映画雑誌や記事で娘の動向を見てきた父。
      台本のなおしをプロデューサーが娘に依頼したことからこの島での事件が始まった。
     互いを否定しつつ、認めていた物が、父の倒れ監督としての力がなくなったあと、病院から車いすで戻って来た日に
     作品作りの展開ですーうっと寄り添っていく。認められない物を認める。娘は父の作品を精一杯本で認めつつ、去る。
      自分にはメガホンを握る力が無く名手居ると感じつつ、作品の夢をもつ父。そして世を去る。
     分骨した骨壺に唇を寄せた娘に潮が満ちてくる。この浪のセットが素敵。

4)2012年2月29日(木)  紀伊国屋サザンシアター こまつ座 ☆
   「雪やこんこん」 井上ひさし・作 鵜山仁・演出 高畑淳子・金内喜久夫・キムラ緑子
      
雪に押しつぶされそうな中、温泉旅館がある芝居小屋に先乗りが来て元役者仲間の番頭と話をしている。
     中村梅子がいかにきっぷのいい座長であるか。どんな苦労をしているか。旅館のおかみも元役者、厚く一行をもてなそうと待っている。
     そこに到着した一座、給金を貰えないで途中で逃げたぬ役者が居る。ついた役者達も喧嘩ばかり。
      一座を文化祭瀬名炒めの仕掛けの仕掛けの仕掛け。笑わせるし泣かせるし。けれどそれがただ女将を引っ張り出すための工夫だったとすると
     いつもの大きな巨悪が浮かばない。とするとこれは庶民の力強さだけをあてにしたものと考えるのか。

3)2012年2月22日(水)  吉祥寺シアター MONO ☆☆
   「少しはみ出て殴られた」 土田英生・作・演出
      
まるで「あの人にわたせ」はこうやったらどう?みたいな。盗作されたかとさえ思ってしまう。
     刑務所の中。虐待が禁じられ囚人達は看守とさえ仲良く暮らしている。ところが刑務所のある国が突然二つに分かれた。
     出身地を考えると僕らの間には線があるのかなと、夢中になって遊び始める。みえない線の上に仁王立ちになって
     二つの国を股にかけるとしゃれのめす。あっちに行って海外旅行。上手に戻って帰国。
      やがて、東と本家の中に小さな町が王国となってたった一人仲間はずれ。いつのまにか東と本家の間に遊びの中の溝。
    地図が登場し回りの世界と自分たちの小さな三つの国が意識される。看守も東と西に別れぎくしゃくした友達関係となり
    会話も通じなくなる。ロープを張って食堂には入るなと敵対関係まで発達するとスタンガンまで持ち出され、ついに
    決定的な騒動となる。怪我人も出、もしかしたら囚人仲間の一人は死んだのかもしれない。国の情勢が変わって
    規律正しい刑務所になっていく時、一人の囚人の願いが浮き上がってくる。

2)2012年2月15日(水)  スズナリ 流山児事務所
   「田園に死す」 寺山修司・原作 天野天街・脚色・演出 ジュリアス・シーザー音楽
      
真っ暗になって、いきなりマッチが擦られて「ちょっとの間」と言葉が叩きつけられ続ける。ちょっとの間が合唱になりお経になり
     マッチの火があちこちについては消えて火薬の香りが立ちこめて世界が始まる。
      時計が故障して始まる世界、寺山の母が居て、家出願望があって、女が居て駆け落ちがテーマとなって。汽車やカラスや文字が
     プロジェクターでぐるぐると回る。寺山を味わってないときついか。

1)2012年2月5日(日)  三越劇場
   「パルレ 洗濯」 チュ・ミンジュ・作演出  木村花代 大鳥れい 川島なお美
      
ソウルの貧しいアパートの屋上。ソウルに来て五年目の田舎での女の子。五年目のモンゴルからの不法滞在の青年。
     屋上で洗濯物を干している時に出会う。男は一目で恋に落ち、すれ違っては気持ちを歌い上げる。
     女の子は夢破れ、大学もあきらめ、転職を繰り返し、恋もあきらめている。
      鬼のように家賃の取り立てをする大家は、娘を抱えて困っている。トンデモンで働く女はバツイチ。男が出入りするが喧嘩ばかり。
    不法滞在ゆえ工場で給料を貰えなくとも文句が言えず喧嘩をすれば誤るばかりの青年。横暴な本屋の社長と喧嘩してくびになりかかる娘。
    病院に大家の娘を担いでかけこんだトンデモンの女。どん底だけれど洗濯をすればきれいになって明日があるというメッセージ。
     歌はわかりやすい。でも何だろう。洗濯してきれいになるかなと思うとならないイメージの方を感じた。重症四肢切断の汚物まみれの娘の現実。
    それはこの状況では未来も変わらないのではないか。乙武君の良さと比べてあまりにも悲惨な材料として扱われていないか。
    ビザ切れの不法滞在の外国人労務者、その未来は結婚したからと言って解決しないだろう。まけない。と歌っているけれど、無理と聞こえてしまう。
     川島なお美、がんばっているようで、やっぱり力がないのかなと思ってしまう。

~2012年  2011年~2004年  2003年~1998年 


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